Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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黒羽美砂

男に案内され着いたのはもう経営してないであろうクラブだった。

 

中に入り、案内されるまま部屋の一室へと入ると、そこにはニット帽をかぶった男と、西森柚咲がいた。

 

「戻ったか」

 

ニット帽の男は赤ジャケットの男に声を掛ける。

 

西森柚咲はと言うと、パイプ椅子に座り、マシュマロを両手で持って食べていた。

 

マシュマロって両手で食べるの逆に辛いと思うんだが…………

 

「本物のゆさりん!」

 

高城は目の前に本物の西森柚咲が居ることに感激し、近づこうとする。

 

それを赤ジャケット男が捕まえようとすると、するりと体をくねらせ躱し、西森柚咲へと近づく。

 

「ハロハロのCD!全部持ってます!」

 

「………ありがとうございます!」

 

西森柚咲は、高城に若干引きつつも笑顔を浮かべ、お礼を言った。

 

高城はまるで神でも崇めるかのように膝をつく。

 

これがアイドルの力が。

 

目の当たりにすると凄いな。

 

「おい、なんだそいつらは?」

 

「美砂と同じ、特別な力を持った連中だ」

 

「美砂?本名は柚咲じゃなくって、美砂なのか?」

 

「それがややこしい所なんだ」

 

俺が尋ねると赤ジャケット男は頭を掻きながら言うと、ニット帽男が赤ジャケット男の脇を肘で突っつきながら話す。

 

「おい、いいのか?こいつらに話して」

 

「彼奴らをその力で撃退してくれた奴等だからな」

 

「では、直接事情聴取してもいいっすか?」

 

「くだらねぇこと聞きやがったら無事では帰れないと思え」

 

無事ねぇ………果たして無事で済まないのはどっちだろうか………

 

ま、くだらないことを奈緒が聞くはずがない。

 

高城は正直、微妙だが。

 

「初めましてー、友利と言います」

 

奈緒はビデオカメラ片手に西森柚咲に近づく。

 

「初めましてー、ゆさりんこと、西森柚咲です!」

 

自分でゆさりん言うのか?

 

それって少しイタイぞ。

 

「いやー、アイドルって生で初めて見ましたー。まるで作り物の様に可愛いっすね」

 

「私もそこまでお近づきになりたい」

 

高城が暴走気味に前で出る。

 

高城を奈緒が抑え、質問を開始する。

 

「では、まず、貴方の本名を教えて下さい」

 

「黒羽柚咲でっす!」

 

「テメーには聞いてねぇ!」

 

高城が質問に答え、その言い方にイラッと来たのか奈緒は渾身の力を込め、高城を蹴り飛ばす。

 

「黒羽ってかっこいい名字だな」

 

「本名の方が芸名っぽいな」

 

「はい、良く言われます!でも、黒い羽なんて、あまりにもアイドルっぽくないとのことで、西森と付けてもらいました!」

 

「で、黒羽さんは、黒羽さんではない時がある。それは自覚してますか」

 

「自覚はしてない。なんでそんなこと知ってるんだ?」

 

「テメーに、聞いてねぇよ」

 

「んだとっ!?」

 

赤ジャケット男が代わりに答えると、奈緒は高城に向けたような顔をして赤ジャケット男に言う。

 

「で、黒羽さんどうですか?」

 

「そうなんですよ!眠り病というんでしょうか、最近いつの間にか寝ていて起きると違う場所にいたりする…ということがありまして。お医者さんには多重人格のおそれがある…とか言われちゃってます」

 

「そうですか。多重人格ではないので安心してください」

 

事情聴取を止め、奈緒は赤ジャケット男とニット帽男に話をする。

 

「彼女は我々と同じ特殊能力者。死人を自分に降霊させる能力です」

 

「まじかよ」

 

「その能力を使い、貴方たちの言う美砂って子を呼ぶ出してるのでは」

 

「美砂?」

 

マシュマロを食べていた、黒羽が反応する。

 

「どうしました?」

 

「何も聞くな」

 

ニット帽男が奈緒を止め、黒羽に美砂の事を聞くのを止める。

 

「お知合いですか?」

 

「柚咲の一つ上の姉だ。半年前、事故で無くなってる」

 

美砂の話をすると、急に黒羽の様子が変わり、雰囲気、瞳の色、そして、少しではあるが髪の色に僅かな変化が現れた。

 

「てめえ……見ず知らずの相手にあれこれ教えてるんじゃねえよ!!」

 

行き成り黒羽が、ニット帽男の腹部をける

 

「ぐっ…!?」

 

「ええええええっ!!?」

 

アイドルの予想外所か、予想の斜め上を行き過ぎる行動に高城が声を上げる。

 

声に出してないだけで、俺と乙坂も驚いてる。

 

「もしかして、貴方が美砂さん?」

 

奈緒は嬉しそうにビデオカメラを構えて聞く。

 

「狭い場所に揃いもそろってうっぜぇな!!!」

 

黒羽の変わり様………いや、黒羽美砂と言う人物の性格に驚きを隠せずにいると、美砂は掌を翳した。

 

すると、何もない所から火が上がり、別の所に掌を翳すとそこが燃え出す。

 

能力をコントロールできてる!

 

てか、何やってるんだ!

 

「うおっ!すっごい能力!」

 

奈緒は興奮気味にカメラでその様子を録画する。

 

高城は驚きのあまり、乙坂に抱き付いていた。

 

「止めろ、美砂!全員焼き殺す気か!?」

 

赤ジャケット男がそう言うと、美砂は舌打ちをする。

 

「…………そいつはセンスがないな」

 

センスのあるなしで、人を焼き殺すのかよ!

 

美砂が指を鳴らすと、火は嘘のように消えた。

 

「驚きました。自由に呼び出せるのではなく、主導権は美砂さんの方にあるんですね」

 

「なんか文句あるのかよ?」

 

「と言うことは類まれなる憑依体質。そして、その柚咲さんに憑依する美砂さんが発火能力者」

 

「…ああ」

 

「この二人との関係は?」

 

後ろにいるニット帽男と赤ジャケット男について奈緒が聞くと、美砂はすぐに答えた。

 

「生きてた頃、ヤンチャしてた仲間だ」

 

「何故妹さんが追われてるかご存知ですか?」

 

そう聞くと、美砂は顎を動かし、ニット帽男に指示をする。

 

ニット帽男は懐からスマホを取り出し話した。

 

「こいつだ。どっかの現場で柚咲が間違えて持って帰ったテレビ局の大物プロデューサーの物だ。それにメールが届いて、柚咲が読んじまった」

 

「メールを読んで追われるってことは、ヤバイメールなのか?」

 

ニット帽男に尋ねると、ニット帽男は頷き話しを続ける。

 

「金の使い込み。ヤバい連中との付き合い。サツに持っていけばしょっ引かれる内容だ」

 

「電源は切ってありますか?」

 

「ああ。だが、昨日までは切ってなかった」

 

「なら、携帯のGPS機能でこの辺りにいることは知られてるな」

 

「今更、返したところで無事には済まないだろうし、警察に行けば、黒羽さんがそのプロデューサーを売ったことになり芸能活動が出来なくなる」

 

となると、別の方法を取るしかないか。

 

安全かつ、黒羽の今後に影響が出ないようにする方法か……………

 

「なら、テレビ局ごと燃やしてやる」

 

「馬鹿か!そんなことしたら、妹さんが警察に逮捕されるわぁ!」

 

「テメー何様だ!ああん!」

 

「テメーこそ、妹さんを少年院送りにしたいのか?ああん!」

 

女二人が女がしてはいけない顔をして、メンチを切り合う。

 

何て言う構図だ。

 

美砂は少年院って言葉に、表情を変え、椅子に座る。

 

「くっ………そいつはセンスがねぇな」

 

「冷静になって下さい。妹さんを助けたいですよね」

 

「もちろんだ」

 

「なら、協力しあって、相手を逆に脅しにかかりましょう」

 

「……勝算は?」

 

「私は脅す作戦を立てるのが大の得意なんです。信じてください」

 

「リップが良いなぁ。分かった。言う通りにしよう」

 

「お二人も協力してください」

 

「もちろんだ」

 

「美砂が言うなら」

 

そこで、急に美砂が体の力を抜き、どうしたのかと思うと、雰囲気や瞳・髪の色が黒羽のに戻った。

 

「あれ?ひょっとしてぇ、私、また寝てましたかぁ?」

 

「お疲れなんですねぇ。大丈夫っすよ。焼きマシュマロでも食べて落ち着いてください」

 

「あ!マシュマロが焼きたての焼きマシュマロに!」

 

先程、美砂が焼いた焼きマシュマロを黒羽は美味しそうに食べ始める。

 

すると、高城が額を壁に叩き付けはじめた。

 

「私はゆさりんと……今後どう接すればいいのか……さっぱり分からない……」

 

異常な事態に、高城はぶっ壊れ額から血が噴き出すまで壁に額を叩き付けた。

 

そんな高城を無視し、作戦会議が始まった。

 


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