Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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崩壊の能力者

今日から星ノ海学園は夏服に衣替えする。

 

着慣れない夏服に袖を通し、学校へと向かう。

 

昼休みの時間になると今日はもう協力者が現れると言うことなので、全員生徒会室で昼飯を食べることになった。

 

食べ始めて数分後、いつも通り協力者がずぶ濡れの状態で扉を開けて入ってくる。

 

やはりと言うか、行き成り扉を勢いよく開けるので、乙坂と柚咲はビビっていた。

 

そして、地図に水滴を垂らすと能力を告げた。

 

「能力は………崩壊」

 

協力者が出て行くと扉も閉じられる。

 

そこで、乙坂がバランスを崩し椅子代わりにしていた段ボールから落ちる。

 

「崩壊?どんな能力だ?」

 

上体をお起こしながら乙坂が言う。

 

「さぁ?狙った物を壊せるとかそんな所でしょう………にしても」

 

破壊じゃなくて崩壊。

 

その違いがなんだか怖いな…………

 

「場所は?」

 

「ここは………併設する我々のマンションですね」

 

「なら、能力者がいて当然じゃないか」

 

「そうでしょうか?平日の子の時間に居るんですよ?」

 

「何が言いたい?」

 

こいつ、ここまで言って分からないのか?

 

「親は特殊能力者にはならない。思春期のみにしか発症しないからな。となれば」

 

「風邪でも引いて欠席してるとかでしょう」

 

奈緒がそう言うと、乙坂の表情が変わった。

 

「乙坂どうした?」

 

「何か知ってるんですか?」

 

「……きっと偶然だ」

 

「話してください」

 

「………僕の妹が熱で寝込んでるんだ」

 

「やっぱり兄妹だと両方発症する可能性があるのかも………」

 

いつの間にか奈緒は、柚咲の顔を至近距離から見つめ思案顔になっていた。

 

「ま、私たちに専門的なことは分かりませんし、お見舞いも兼ねて歩未ちゃんが本当に発症したのか確認しに行きましょう」

 

「奈緒、相手は病人だぞ。大人数で行ったら迷惑だ」

 

「それもそうですね。なら、私と響が行きましょう」

 

すると乙坂が急に何かを考え始め、柚咲を見つめる。

 

「どうかしました?」

 

今度は高城を睨みつけるように見つめる。

 

すると奈緒が急に声を上げた。

 

「へぇー、キリンってああやって寝るんだー」

 

「そうなんです。キリンは眠る時、首をとくろの様にまい………って!キリンがいるんですか!?」

 

キリンに反応し高城が窓に近づき外を見る。

 

「何処!?何処!?」

 

「おりゃあああああああ!!!」

 

高城の背後から奈緒がドロップキックをかました。

 

「うわあああああああああああ!!?」

 

高城は窓ガラスを突き破って悲鳴を上げながら外へと真っ逆さまに落ちた。

 

「あわわわわわわ!?」

 

奈緒の行き成りの行動に柚咲は青ざめ、乙坂はガッツポーズをしていた。

 

俺はスマホを取り出し、119番へとコールした。

 

「彼奴が来るのは野暮かと思いまして」

 

「すいません。救急車一台お願いします。はい、いつものです」

 

そう言い、俺は通話を切る。

 

「あの……大丈夫なんですか?」

 

「高城は制服の下に防具を着てるから頭から落ちない限り大丈夫だ」

 

「では、放課後この四人でお見舞いに行きましょう」

 

俺は遠くで聞こえる救急車のサイレンと外から聞こえる生徒の悲鳴を聞きながら、割れた窓ガラスの外を見つめる。

 

崩壊…………なんか嫌な予感がする。

 

放課後になり、俺達はマンションへと向かう。

 

「コンビニでお見舞いの品を買わせてください」

 

「私も買いたいでーす!」

 

奈緒と柚咲がお見舞いの品を買うと言うことで俺達はコンビニへと向かう。

 

「僕もお粥のレトルトを買って帰りたかったところだ」

 

「お粥でもレトルトはどうかと思うぞ?」

 

「僕にはそこまで料理ができる腕は無い」

 

「なんなら俺が作るぞ」

 

「作れるのか?」

 

「少なくともお前よりは出来る」

 

「では、晩御飯は響の作るお粥にしましょう」

 

「ですね~」

 

「お前たちは帰ってから自由に食べればいいじゃないか?」

 

「そう言うなよ、乙坂。皆で食った方がうまいし、それに」

 

俺はそこで言葉を小さくし、乙坂のみに話しかける。

 

「柚咲は引っ越して間もない。一人での食事は寂しいだろうし、奈緒は親に科学者へと売られてたった一人のお兄さんは、自分の事を覚えていない。今も奈緒は一人きりなんだ」

 

「………そうだな。僕はまだ妹が居るだけマシなんだな。分かった。夕食は皆でお粥にしよう」

 

「ああ」

 

コンビニへと入り、お粥の材料を購入する。

 

材料以外にも、お茶やスポーツドリングなども購入し、会計する。

 

「1360円になります」

 

「う!?………予算オーバーだ」

 

乙坂が財布の中を見ながら青ざめる。

 

「いいよ、乙坂。俺が出すから」

 

「………悪い」

 

乙坂は気まずそうに謝ってくる。

 

こいつが謝るなんてね。

 

随分丸くなったな。

 

そう思い、財布から万札を取り出そうとする。

 

「あ、これもお願いします」

 

奈緒が横からなめ茸の瓶を三つレジに置く。

 

「何故…………なめ茸?」

 

「えぇ!なめ茸最強っしょ!お粥に乗せても抜群の相性ですよ!」

 

「僕は構わないが、一之瀬の財布から出るんだ。一之瀬に許可貰えよ」

 

「別にかまわない。これも一緒にお願いします」

 

なめ茸も一緒に会計を済ませお釣りをもらう。

 

「すみませ~ん!」

 

柚咲は大きな声で、レジの後ろにある大きな菓子折を指差す。

 

「あのクッキーの缶!貰えますでしょうか?」

 

まさかアレを買う人が本当にいるとは…………

 

「2500円になります」

 

しかも高い。

 

おまけに、高そうな紙袋にまで詰められた。

 

あれってそんなに凄いものなのか?

 

そんな疑問を持ちつつ、俺達はマンションへと向かった。

 

乙坂の部屋の前まで付くと乙坂は柚咲の方を向く。

 

「この部屋だが、妹は相当なお前のファンだ」

 

「それは会うのがますます楽しみになってきました!」

 

「だが、アイツは今熱で寝込んでいる。あまり興奮させてはいけない。少なくとも鼻血が出る」

 

興奮して鼻血を出すとか漫画じゃあるまいし…………

 

「だから、行き成りではなく徐々に「あれぇ~?ひょっとしてゆさりん?」みたいな感じでお願いしたいんだが」

 

「では、変装用のマスク付けておきますね」

 

そう言い、柚咲はサングラスにマスクの装備をした。

 

何て言う不審者?

 

「よし!」

 

よし!なのか?

 

「ちょっと待っててくれ」

 

そう言い、乙坂は部屋の中へと入って行った。

 

暫くすると二人の女の子と一人の男の子が部屋から出てきた。

 

三人は俺達に会釈と挨拶を帰って行った。

 

歩未ちゃんの友達か?

 

すると、奈緒がいつの間にか部屋の中へと入って行った。

 

待ってろって言われただろ。

 

溜息をついて、俺と柚咲も続く。

 

「こんにちは!お邪魔しまーす!てかしてまーす」

 

「待ってろって言ったろ!」

 

「入れ替え制かと思いまして」

 

絶対嘘だ。

 

「よ!歩未ちゃん。久しぶり」

 

「おお!友利のお姉ちゃんに響お兄ちゃんなのですぅ!」

 

「また会えるって言ったでしょ」

 

「それともう一人お客さん」

 

それを合図に柚咲が部屋に入ってくる。

 

「初めまして~」

 

「………ゆ……さ……り……ん………うはぁ!!」

 

「「「「うおわ!?」」」」

 

本当に鼻血が出た!!

 

リアルで興奮して鼻血出す人初めて見た!

 

てか、マスクとサングラスしてるのに分かるの!?

 

「止血します!」

 

奈緒が素早く動き、歩未ちゃんの鼻を押さえる。

 

「下向いて口で息して」

 

奈緒の指示に従い歩未ちゃんは下を向きながら息をする。

 

すると、鼻血は見事に止まった。

 

「おお!凄いのですぅ!」

 

「ふぅ~、良かった~」

 

柚咲は安堵し、マスクとサングラスを外す。

 

「………ゆ……さ……り……ん………うはぁ!!」

 

また鼻血出た!

 

「止血します!」

 

そして、また奈緒が歩未ちゃんの鼻を押さえる。

 

「あわわわわ!鼻血が止まるおまじないしましょうか?」

 

「止めろ!余計に悪化する!」

 

有り得ないと思いたいが、この様子を見ると本当に悪化してしまいそうだな。

 

「ふぅ………生ゆさりん殿………驚いたのですぅ」

 

どうやら喜んでもらえたようだ。

 

「じゃあ、乙坂。台所借りるぞ」

 

「ああ、悪いな」

 

皆を部屋に残し、俺は台所でお粥づくりを始める。

 

といっても簡単な卵粥だ。

 

三十分も掛からないで完成し、全員を居間に呼ぶ。

 

テーブルには五人分の卵粥となめ茸の瓶が置かれた。

 

「「「「「いただきまーす」」」」」

 

俺が作った卵粥を一口食べると

 

「「めさめさおいしいのですぅ!!」」

 

歩未ちゃんと柚咲がそう言った。

 

「確かにうまい」

 

「相変わらずうまいっすね」

 

乙坂にも中々に好評だった。

 

意外にもお粥となめ茸は相性が良くこれもうまかった。

 

なめ茸の瓶を二つも開けてしまい、晩御飯が終わる。

 

それと同時に、柚咲の携帯に着信が入った。

 

相手はマネージャーらしく内容は仕事みたいだった。

 

「すみません、これからお仕事ですぅ」

 

「ええ!」

 

「相手は現役の芸能人だ。仕方がないだろ」

 

「おお、そうでした!ゆさりん殿!お仕事頑張って下さいでござる!」

 

「はい。歩未ちゃん、お大事に」

 

全員で玄関まで見送り、後片付けに入る。

 

「乙坂、皿洗うから手伝ってくれ」

 

「別にこれ位いつでも洗えるだろ?」

 

「そう言うと、奈緒が怒るぞ。文句言わずにさっさとやる。皿拭くだけでいいから」

 

「まぁ、わかった」

 

皿洗いもササッと済ませ、歩未ちゃんを布団まで連れて行く。

 

「薬飲んだらもう休め。布団掛けてやるから」

 

乙坂の言うことを素直に聞き、歩未ちゃんは布団に入る。

 

「いいお兄ちゃんで良かったね」

 

まぁ、単純に妹に甘いだけなのかもしれないけどな

 

「うん!でもね、寝るのちょっとだけ怖いんだ。昼間に怖い夢見ちゃって」

 

怖い夢か…………

 

「熱がある時に悪夢を見るのは良くありますますから、気にしなくていいと思いますよ。ちなみに、どんな夢でした?」

 

「おい。悪夢を態々思い出させるな」

 

「………そうですね。では、帰るとします」

 

「歩未ちゃん、またね」

 

「はい!」

 

歩未ちゃんに別れの挨拶をし、玄関を出る。

 

乙坂が見送りに来た。

 

「貴方から歩未ちゃんに悪夢の内容を聞きだしといてください。それが崩壊の能力への手かがりになるかもしれません」

 

「待て!まだ歩未が特殊能力者と決まったわけじゃないだろ!」

 

「確かに証拠はないが、可能性は高い。それに、崩壊の能力………とても嫌な予感がする」

 

「私も同感です。なので、聞き出して下さい。歩未ちゃんの為にも」

 

「………わかった」

 

「もし明日、熱が下がっていても念のため休ませてください。現時点では、情報量が少なすぎます」

 

「………わかった」

 

奈緒はそれだけ言い、帰って行った。

 

「……乙坂、俺も帰るぞ。何かあったら連絡くれ」

 

「……ああ」

 

乙坂に別れを告げ、俺も部屋に帰る。

 

「このまま何事も起きなければいいんだがな…………」

 


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