翌日、生徒会室で乙坂が歩未ちゃんの悪夢に付いて話した。
内容は地面が分かれて行くと言うものらしい。
「地面が分かれて行く……何かの暗示でしょうか?」
高城が考えながら話す。
ちなみに頭や顔に包帯が巻いてあったり、ガーゼが貼ってありと痛々しい。
「奈緒、もしかしたら崩壊の能力は狙った対象を破壊するんじゃなくて、辺り一帯を破壊する能力なんじゃないのか?それなら、破壊じゃなくて崩壊ってなるのもうなずける」
「確かに、その可能性が一番に高いですね。でも…………やっぱり情報が少な過ぎる」
奈緒は落ち着きなく動き回って話す。
「どうするんですか?」
「今の所できるのは、中学校にも大量の監視カメラが設置されてるのでそれで能力の傾向を窺うぐらいです。後は教師に歩未ちゃんへの注意を促すぐらいですかね」
やはり、今の段階でできるのはそれぐらいか。
せめて、どんな能力なのかがはっきりすればある程度対策は立てれるんだがな………
「中学校には人が大勢いるので何かあったら危険です。マンションの方が安全です。もう少し情報を集めたいので明日も休ませてください」
「風邪が治るおまじないしに行きましょうか?」
柚咲が急にそう言い出した。
何故そう言う話になる?
柚咲は柚咲なりに考えてるんだろうが、意味が分からない。
「出たー!ゆさりんのおまじないシリーズ!21!風邪の治るおまじない――!」
高城は相変わらず暴走してやがる。
「引くな!」
「いや、また鼻血出るし勘弁してくれ」
「では、治ってからにしますね」
「………そうしてくれ」
そして、特に進展もなく今日は終わった。
翌日。
登校してきた乙坂に話し掛けた。
「乙坂、歩未ちゃんの熱はどうだった?」
「もう下がったが、言われた通り今日一日休ませた。ま、熱がぶり返すこともありえるからどの道休ませるつもちだったがな」
やっぱ妹に甘いな。
そう思いつつ、授業を受け昼休み。
今日も三人で学食で昼飯を食べる。
「怪我の方は大丈夫なのか?」
乙坂が一昨日の事で高城に話し掛ける。
「一昨日生徒会室から落されたことでしょうか?」
「ああ」
「よくあることなので、あれぐらいのアクシデントには対応可能です。まぁ、出会ったころは即入院でしたが」
「……友利がリーダーでいいのか本当に不安になってくるな」
「……貴方が思ってる以上に計算高い人ですよ」
「高城の言う通りだ。アイツはアイツなりの考えと信念を持ってる。信じてやれよ」
そう言うと、携帯に奈緒からメールが入る。
「呼び出しだ。さっさと食べるぞ」
「はい」
残りのパスタを必死に食べ、急いで生徒会室へと向かう。
生徒会室には既に、奈緒と柚咲が居た。
「ようやく来たか」
「三人共パスタだったので、掻き込む事も出来ず申し訳ありません」
「そんなパスタをくるっくるっ巻いて食べる余裕がよくあったな!」
「お説教なら後でいくらでも聞くから、要件を頼む。何かあったのか?」
俺が本題に入るように仕向けると、奈緒は真剣な眼差しで俺達に言う。
「歩未ちゃんが登校しています」
「え?いや、学校にも連絡して今日は休ませてるはずだが」
「今朝の状態は?」
「熱は下がったが、ぶり返しが怖いから休むように言った」
「平熱だからか」
そこで俺は気付き、尋ねた。
「まさか、自分の判断で登校したのか」
「平熱だったからでしょう。三時間目から登校してるようです」
「え?」
「嫌な予感がします。急いで歩未ちゃんの様子を見に行きましょう」
慌てて外に出て、隣の中学校まで走る。
だが、距離があり過ぎる。
「こっちです!」
奈緒の後に続いて来たのは、中学校の敷地と高校の敷地を仕切る金網フェンスの所だった。
「何をするんだ?」
「ショートカットです!」
そう言い、奈緒は金網に手を引っ掛け登って行く。
俺達も金網を登り、中学校の敷地内へと潜入する。
中学校の校舎に向かって走り、校舎が見え始めた頃、俺達の目の前で校舎の一部が崩れ崩壊した。
その光景に俺達は唖然とし、ただ見つめるしかできなかった。
辺りにはけたたましく非常ベルの音が鳴り響く。
「これが………崩壊」
「行きます!」
「ダメだ!危険過ぎる!」
救助に向かおうとする高城を奈緒が止める。
能力による崩壊は止まっても、二次災害でまた崩れる可能性がある。
今、行くのはダメだ。
「あ………歩未……歩未―――――――!!」
乙坂は叫びながら、崩壊した校舎の瓦礫の山へ走っていった。
「行くな!巻き込まれるぞ!」
奈緒が呼び止めるが、乙坂は瓦礫の山を登って行く。
「奈緒たちは此処にいろ!乙坂は俺が連れて来る!」
そう言い残し、俺も乙坂の後に続いて瓦礫の山に向かう。
「乙坂!」
瓦礫の山の中で乙坂は必死に瓦礫を退かしながら歩未ちゃんの名前を呼び続けた。
「乙坂!ここは危険だ!早く逃げるんだ!」
肩を掴みながら叫ぶが、乙坂には聞こえていないのか瓦礫を退かす手を止めようとしない。
「くっ………恨むなよ」
殴って気絶させてでも、連れて行こうとした矢先、柱の一部だったコンクリートの瓦礫が音を立てて崩れ、俺達の真上に落ちてきた。
俺は咄嗟に、乙坂の上に覆いかぶさり目を閉じた。
そして、その直後俺は意識を失った。