Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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おかえり

乙坂を見守り続けて数日が経った。

 

相変わらず、乙坂はネットカフェで寝起きし、ピザを食べ、みたらし団子を食べながらゲーセンでシューティングゲームをする。

 

俺と奈緒は同じネットカフェの一室を借り互いに交代して仮眠を取りながら乙坂を見守り続けた

 

だけど、見守ってるだけじゃダメだ。

 

どうにかして、アイツを救わないと。

 

るある日、乙坂はいつも通りみたらし団子を買ってゲーセンへと向かった。

 

俺は外で待機し、奈緒は能力を使って近くで見守る。

 

乙坂はいつもここで、ゲーセン閉店時間までシューティングゲームをする。

 

が、今日は先客が居たらしく、乙坂は団子を食べながら順番を待った。

 

だが、先客の高校生は連コインでプレイし続ける。

 

マナーがなってないな。

 

そう思って見続けると、高校生たちはずっとプレイし続けた。

 

すると、乙坂が切れ、食い散らかした串を蹴り飛ばし、ぶつけた。

 

ゲームをプレイしていた高校生二人と、近くで別のゲームをしていたリーダー格の高校生が乙坂に近づき、乙坂を店から連れ出す。

 

その後に続く形で奈緒が店から出て来る。

 

「奈緒、これヤバいんじゃないのか?」

 

「そうですね。後を追いましょう」

 

後を追って着いたのは、薄暗いトンネルだった。

 

「ケンカ売ってきたのはテメーの方だぞ」

 

「ちょっと痛い目見てもらうぞ」

 

「へ~、僕に勝てるかな?来いよ」

 

乙坂は挑発するように笑う。

 

「暫くゲームが出来ない体にしてやろうか」

 

乙坂の胸倉を掴み、坊主の男が言う。

 

すると乙坂は能力を使い坊主男に乗り移った。

 

そして、そのままリーダー格の男を思いっきり殴り飛ばした。

 

「テメー、行き成り何してくれてんだ!?」

 

「いや!確かに俺はコイツを!?」

 

「おっと、仲間割れですか?大丈夫?」

 

坊主男は今度は乙坂の方を向き、殴りかかるが、その前に乙坂がもう一人の男に乗り移る。

 

体から力が抜けたことで坊主男の拳を躱し、坊主男の腹に蹴りを入れる。

 

リーダー男はナイフを取り出し、斬り掛かるが、乙坂に乗り移られ、ナイフを無事な男の腕に投げつけ刺す。

 

そして、勢いよく走り、頭を壁に向ける。

 

当たる直前で能力の発動が終わり、リーダー男はコンクリート壁に頭を強くぶつけそのまま倒れた。

 

乙坂は袋の中からみたらし団子を取り出して食べる。

 

「て、テメー………一体何を……」

 

最後の言葉も聞かずに乙坂は、リーダー男に近づき、串を脚に突き刺した。

 

「ぐあああ!?……つつつっ!?………あああ!!」

 

「もう一本あるよ~」

 

そう言いもう一本食べ、串をまた突き刺す。

 

「うあああああああ!!?」

 

「僕が強いだけさ。次僕に歯向かったら文字通り殺してやるよ」

 

乙坂はそう言い残し、その場を去った。

 

「……響。救急車を呼んでおいてください」

 

「…………ああ」

 

俺は悪い方向に変わりつつある乙坂の背中を見続け、救急車を呼んだ。

 

後を追い続けると、今度は別の不良に絡まれていた。

 

「テメーか?一人で権藤の連中をのしたってのは」

 

「権藤?中にはそんな奴もいたかもね~」

 

流石は不良。

 

こういった噂が広まるのが早い。

 

「俺は細山田だ」

 

「数分後には忘れてそうな名前だな」

 

乙坂はそう言い笑う。

 

「大した度胸だな。まったくナメられたもんだ。テメーら、ちょっと教えてやれ」

 

その瞬間、乙坂は一人の男に乗り移り、隣の男を殴る。

 

そして、能力が消える直前で、自分の顎目掛け殴る。

 

「何やってんだ、テメーら!」

 

細山田が叫ぶが、その間に乙坂はナイフを持った男に乗り移り、細山田の足を刺す。

 

「あああ……!………うう!」

 

細山田は足を押さえ、その場に蹲る。

 

乙坂は細山田の後ろに回り、髪を掴んで上を向かせ、右目の真上に団子の串を持ってくる。

 

「片目………潰しちゃっていい?隻眼の細なんとかって言う、厨二病的な肩書きが付くよ」

 

「ひっ……!ひぃ!」

 

「何迷ってんの?隻眼、かっこいいじゃん。いくよ~」

 

そう言って串を刺そうとした瞬間、細山田は声を上げた。

 

「分かった!俺の………負けだ!」

 

細山田がそう言うと、乙坂は細山田を解放する。

 

そして、乙坂は不良を倒すことに快感を得たのか、街を歩き回り不良を次から次へと挑発し、倒す。

 

俺の時と同じだ。

 

最初は俺も、生活費を稼ぐために不良を狩っていたが、と途中からは不良を倒すのが楽しくてしょうがなかったのを覚えている。

 

今のアイツはあの時の俺だ。

 

そんな乙坂に俺は何もできず、俺は自分の無力さを痛感した。

 

そして、次の日。

 

夕方の時間帯、乙坂はまた別の不良グループと喧嘩していた。

 

全員を倒し、団子を食べていると一人の男が何かのケースを求めて手を伸ばしていた。

 

「何だよこれ?大事なものなのか?」

 

そう言いケースの蓋を開ける。

 

中身を見ると乙坂はにやりと笑い、男を見る。

 

「そういうことか」

 

夜になり乙坂は人気のない場所へと移動する。

 

雑誌の上にケースから白い粉を出し、それを丸めたレシートで吸おうとしていた。

 

薬かよ!

 

俺が止めようとする前に、奈緒が動き、薬を吸おうとしていた乙坂の手ごと薬を蹴り飛ばした。

 

「………お前………いつから……?」

 

「ずっとです」

 

「俺もいるぞ」

 

俺も乙坂の前に姿を現す。

 

「一之瀬………お前もずっと僕を………?」

 

「俺はお前がゲーセンではしゃいでる時からだ」

 

「それより、この先に進んだらもう二度と人としては戻れません。だから、止めました」

 

「………誰かの差し金かよ?」

 

「いえ、休学届を出してます。プライベートです」

 

「俺は病院で入院中だったが、抜け出してきた」

 

「何のために!」

 

「……お前が心配だからだ」

 

俺は乙坂を真っ直ぐ見つめ言う。

 

「……私も責任を感じてるんです。あの時、私が取った行動は適切だったのではないか?すぐにでも歩未ちゃんを安全な場所に確保すべきだったのではないか?とです。だから、貴方が立ち直るまで付き合う。そう決めたんです」

 

すると乙坂は立ち上がり怒鳴る。

 

「余計なお世話なんだよ!大体、お前に僕の気持ちが分かるのか?どうせ分かんねーだろ!お前なんかに…………僕の気持ちが分かってたまるか!」

 

その言葉を聞き、俺は乙坂の胸倉を掴んだ。

 

「乙坂………いい加減にしろよ。テメーだけが不幸だと思ってんじゃねぇよ!」

 

「なら、お前は僕の気持ちが分かるのかよ!?」

 

「ああ!痛いほどにな!だから、言ってやるよ!薬なんか使って一時的に楽になった所で、何も変わらない!お前が自分の意志で変わろうとしない限りな!」

 

「………………るさい」

 

「歩未ちゃんが亡くなって辛いのは分かる!だがな、薬に手を出して体がボロボロになれば歩未ちゃんは悲しむぞ!」

 

「……………うるさい」

 

「自分の所為でお前が壊れて行くってな!」

 

「うるさい!」

 

乙坂が叫んで、俺を殴る。

 

「知ったような………知ったような口を聞くなぁ!」

 

俺の腹に跨り、俺の顔を殴る。

 

「僕の気持ちが!分かるってなら!どうしてこうなってるのかも!分かるだろ!だったら!ほっといてくれよ!」

 

!の度に乙坂は俺の顔を殴る。

 

最後の拳を受け止め俺も負けじと叫ぶ。

 

「ほっとけるかよ!」

 

「なんでだ!」

 

「友達だからだ!」

 

そう言うと、乙坂の表情が変わり攻撃の手が緩む。

 

それを好機とみて、俺は頭突きを乙坂の額に当てる。

 

「悪いが、お前をぶん殴ってでも連れて帰るぞ!」

 

「やってみろよ!」

 

互いに叫び合いながら殴り合う。

 

唇を切ったり、鼻血を出したり、頬に痣が出来ても俺たちは殴り合った。

 

いつの間にか雨が降り、俺達の体温と体力、気力を奪っていく。

 

そんな俺達を奈緒は傘を差して黙って見つめていた。

 

俺も乙坂も吐く息からもう体力が無いのが分かる。

 

それでも、俺と乙坂は最後の力を振り絞り、走り出す。

 

「うおおおおおおお!!」

 

「うあああああああ!!」

 

互いの拳が交差するようになり、互いの頬に当たる。

 

そして、俺と乙坂は糸の切れた操り人形の様に仰向けに地面に倒れた。

 

「はぁ………はぁ………はぁ………一之瀬………結構強いな………」

 

「はぁ………はぁ………はぁ………乙坂も……やるじゃねぇか………」

 

体を雨で濡らしながら俺達は会話をする。

 

「なに青春物の少年マンガみたいな展開してるんですか?」

 

そんな俺達の間に、奈緒が入ってくる。

 

「取り敢えず二人とも濡れてますし、温かいお風呂に入りましょう。その後は、温かい食事です。食事は元気の元気の源ですから」

 

「……飯ならちゃんと食ってる」

 

「……みたらし団子とピザのどこがちゃんとした飯だ?」

 

「……なら何を食えってんだ?」

 

「任せてください」

 

奈緒はそう言うと携帯で誰かに電話をする。

 

「ああ、すみません。……はい。あと、風呂も沸かしといてもらえますか?……ありがとうございます」

 

「……何勝手にセッティングしてんだよ?」

 

奈緒は乙坂の方を向きながら、指を一本立てる。

 

「一口です。一口だけ食べたら、もう関わりません。響もそれでいいですよね?」

 

「ああ、いいぜ」

 

濡れた体を起こし、乙坂に手を伸ばす。

 

「ほら、行くぞ」

 

「………一口だけだぞ」

 

そう言い、乙坂が俺の手を取る。

 

「では、行きましょう」

 

俺達が着いたのは高城の表札が掛けられた大きな民家だった。

 

「高城?」

 

「彼の実家です。でも、誰もいないから安心してください」

 

そう言い扉を開け中に入る。

 

「用意しますから、先に風呂に入って下さい」

 

「何を食わせる気だ?」

 

「それは出来てからのお楽しみです」

 

台所に向かう奈緒の背中を見つめ、乙坂は風呂場へと向かった。

 

数分後、乙坂と入れ替わるように風呂に入る。

 

着替えは何故か用意されていて、俺は新しい制服に袖を通す。

 

乙坂も制服だ。

 

居間へ戻ると乙坂はソファーに倒れ寝ていた。

 

疲れてたんだろう。

 

そう思い、俺は向かい側に座り時間が過ぎるのを待った。

 

「はい、できました」

 

その言葉と共に、乙坂が跳ね起きる。

 

乙坂の目の前には、オムライスが用意され、その上にひでんとケチャップで書かれていた。

 

「どうぞ」

 

「冷めないうちに食えよ」

 

乙坂はスプーンを手に一口食べる。

 

「……同じ味だ!」

 

「だったら良かったです」

 

「どうして?」

 

「貴方のお母さんはレシピノートを残していたんです。勝手に持ってきちゃいましたが、オムライスのページだけ大きくはなまるが書いてありました。恐らく、貴方の一番の好物だったのではないでしょうか?」

 

色褪せたノートを開き、オムライスのページを見せるように出す。

 

そこには「秘伝ソースで有宇君ご機嫌!」と書いてあった。

 

「歩未ちゃんは、お母さんが居なくなった後もこのノートを見てずっと同じ味を再現していたんだよ」

 

「………あれが………最後のオムライスだったのか………」

 

乙坂がそう呟くと、目から涙が零れ始めていた。

 

そして、勢いよくオムライスを食べ始めた。

 

「……くそ……甘くてまずいのに………なんだよこれ!」

 

「早食いは健康上良くないっすよ」

 

「落ち着いて、ゆっくり食えよ」

 

「…………ああ」

 

泣きながら乙坂はオムライスを完食し、奈緒から渡された濡れタオルを目に当てていた。

 

「………なぁ、二人とも」

 

「はい?」

 

「なんだ?」

 

「……僕はこれからどうすればいいんだ?」

 

「生徒会に戻ると言うのはどうでしょう?」

 

「でも、もう二度と関わらない約束をしたじゃないか」

 

「それは一口だけ食ったらの話で、完食したらって話じゃないだろ。…………戻ってこいよ」

 

そう言うと乙坂は笑い、俺達に顔を見せた。

 

「そうだったな………分かった。生徒会に戻るよ」

 

「よかったっす」

 

「ああ、お帰り」

 

そして、俺達は笑い、乙坂の帰りを受け入れた。

 




雨の中、喧嘩するのはkeyでは必要だと思うんですよね。

CLANNADでも、リトルバスターズでも、エンジェルビーツでもあったから、今回雨を降らして乙坂とオリ主を喧嘩させました。

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