熊耳さん(年上だからさん付)と目時さん(名前は車の中で知った)に連れてこられて、俺達はこの前来た特殊能力者の研究所に来た。
この前の部屋の中に入ると姉さんと隼翼さんが俺達を迎えてくれた。
「よぉ、有宇、歩未、響君」
「……あの~、どちら様で?」
「僕たちの兄さんと、響の姉さんだよ」
「訳あって貴方たちから私たちの記憶を消させてもらったの」
「え?本当に?何故でしょう?」
「まぁ、色々あったんだよ」
「みたいだね」
歩未ちゃんは話が理解できてないらしく有宇と隼翼さんの顔を交互に見た。
「有宇、響君。二人は、それぞれの能力“略奪”と“直感”を自覚し、それによって得た能力を使った。だから、歩未と共に来てもらった」
「つまり、どっちにしろ俺達は此処に来ていたんですね」
「なら都合がいい」
俺と有宇は未来で姉さんと隼翼さんの言われた通りにこれまでの経緯を説明した。
「そうか、俺のタイムリープを奪い、由美の時空間制御をコピーしたのか。それはよくやったな」
「で、これからどうなるの?兄さんたちと帰れるの?」
「それは無理ね。有宇君の能力はどんな能力でも奪える最強の能力。それに加え、隼翼のタイムリープまで持ってる。それは、あまりにも脅威よ」
「どういうことですか?」
「有宇の能力を悪用とする奴等が現れるかもしれないからですね」
「ああ。残念だが、これまで通りの生活は送れない。その能力が消えるまでここで過ごすんだ」
「ここで!?」
「ああ。知ってると思うがここは特殊能力の研究施設。いわば、日本で一番安全な場所だ」
「じゃあ、付いて来て」
そう言うと、姉さんと隼翼さん部屋を出て、俺達をある場所へと連れてきた。
そこには、白衣を着た大人たちが、たくさんいた。
その中に、俺と有宇は知ってる顔を見付けた。
「これはこれは、よくお出でなさった」
「この人が研究チームの責任者の堤内先生よ」
知っている。
この人は夢で俺と有宇を助けてくれた人だ。
「ここは?」
「この先、二度と能力を発症させないワクチンを開発する研究施設だ」
「ワクチン?僕たちは病気なのか?」
「うむ。まさに特殊能力は病のようなものであるから、次粒子が降り注がれる前に、全世界の人々に投与せねばならない」
「粒子?」
「シャーロット彗星と言う、長期彗星をご存知かな?」
堤内先生の話によると、シャーロット彗星は75年の周期で地球に接近し、その時に未知の粒子を地球に降り注ぐ。
その粒子は脳神経までにもぐりこみ、一番多感な時期、思春期になると粒子を吸った人間の脳の眠っている部分を呼び覚まし、能力を発症させる。
大昔にもシャーロット彗星は地球に接近し、その時にも能力者が現れた。
その能力を恐れ、人々は能力者を魔女とし、魔女狩りまでも行った。
そして、十二年前にその彗星が待機を掠め、粒子をばら撒き、能力者を生み出した。
今後その様なことが起きない為にもワクチンの開発が進められ、日本では製造の段階に来ているそうだ。
「なら、これでもう安心なんだね」
「いや、守られてるのは俺と由美が統率する日本だけだ。魔女狩りは今だに行われてる」
「でも僕たちには関係ないんじゃ」
有宇の奴、普段の様子から何度なく分かってたか、頭弱いな。
「それは違うと思うぞ、有宇。もし海外の能力者が手を組んでテロなんか起こしてみろ。日本も関係ないとは言えないぞ」
「でも、ワクチンがあるじゃないか」
「感染者はワクチンで抑えられるが、既に能力が発症した者には効かない」
「じゃあ、特効薬を作ればいいじゃないか!」
「簡単に言うな。薬一つ作るのに、どれだけの時間がかかると思ってるんだ?10年以上が掛かるぞ」
「響君の言う通りだ。これから世界がどうなっていくかは分からない。けど、お前らのことは守って見せる」
「………わかった。でもせめて、歩未に兄さんの記憶を思い出さしてやってくれ」
「無理だ」
「どうして!僕と響は取り戻せたのに!」
「なんで二人が記憶を取り戻せたのかは分からない。何か大きな要因があったのか、それとも偶然か。どちらにせよ、今は無理だ」
「そんな………歩未が可哀想じゃないか………」
有宇は悔しそうに拳を握る。
歩未ちゃんは話が分からないらしく、こめかみを指で押しながら考える。
隼翼さんは、そんな歩未ちゃんの目線に合わせしゃがむ。
「歩未、俺がお前達の兄貴、隼翼だ」
「私は響の姉の由美よ」
「目が不自由な俺と体が弱い由美だが、よろしく」
「よろしくね」
「う~~~~ん…………では、隼お兄ちゃんと、由美お姉ちゃんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ああ」
「ええ」
受け入れ早いな。
流石は歩未ちゃん。
次に俺達は姉さんたちの仲間を紹介された。
熊耳さん、目時さん、前泊さん、七野さんだ。
「コイツらが友達だ。能力者でもある」
「乙坂歩未です!よろしくお願いします!」
「よろしく」
「よろしくね、七野、壁抜け見せた上げたら」
「いいだろ。腰を抜かすなよ!」
そう言い、七野さんは走り出し壁を通り抜けた。
「おお!凄いのですぅ!」
「ここのレクリエーションは充実していて、楽しいものいっぱいあるわよ
「音楽とかハロハロとかあるですか?」
「もちろん」
「やったー!」
「勉強は俺が教えてやるからな」
「はーい!」
そんな会話をしながら、俺と有宇以外部屋を出て行く。
「何だが、僕だけ距離を置かれてる気がする」
「考え過ぎだろ。気にすんなって」
乙坂の背中を叩きながら励ます。
歩未ちゃんを隼翼さんに取られて拗ねてやがる。
すると七野さんが疲れ切った様子で部屋に戻ってくる。
「へぇー、へぇー………あれ?もう誰もいない?」
なんか七野さんの扱いが可哀想に見えてきた……………
そう思ってるとまた扉が開き、今度は姉さんが入って来た。
「響、ちょっと話があるの。来て」
姉さんに着いて行くと、先程の部屋に隼翼さんが居た。
「隼翼、連れてきたわ」
「ご苦労」
「隼翼さん、話しって一体………」
「響君、君には星ノ海学園に戻っていつも通りに生徒会活動をしてもらいたい」
「どうしてですか?俺はてっきり俺も此処に居させられると思ったんですけど…………」
「それも今から説明する、座って」
席に座ると、隼翼さんも俺の向かい側に座り理由を説明してくれた。
「まず能力者の保護の為に君が必要だ。今の生徒会メンバーを見た所、いざという時、彼等を守る為の力が不足している。それを解決するためにも、君は必要だ。幸いにも、君がコピーで使った能力は人目では分かりにくい能力だから、有宇程危険は少ない」
「それに、能力者の保護の時も、何かと物騒でしょ。その時の為にも、一人は闘える人が必要なの」
確かに高城の能力は一回使えば自分もダメージを受けるし、美砂の能力は強力だが下手すると人を殺しかねない。
美砂がするとは思えないが、生徒会の目的は能力者の保護であって、懲らしめることじゃない。
「分かったよ、俺は学園に戻る」
「すまないな、守ると言った矢先にこんなことを押し付けてしまって」
「いいですよ、それに俺自身、ここより生徒会に居る方が楽しいんで」
「……すまない。次、熊耳が学園に向かう時、一緒に行ってくれ」
「はい」