恐らく、後3、4話で終わると思います。
高城がお見舞いに来た次の日、再び誰かがノックをしてやってきた。
「はい?」
「お見舞いに来ましたー!」
やってきたのは黒羽だった。
正直、会うのが気まずい。
「よ、よぉ、黒羽」
「あの……こんなの作ってきたんですが」
「もしかして…クリームシチューか?」
「すごいです!正解です!」
黒羽が鍋を置き蓋を開けると、クリームシチューが湯気を立てていた
「ゆさりんの手作りクリームシチューは、元気の源として黒羽家では重宝されているのです!病にも怪我にも効果テキメンなんです!」
そうか……あれにはそんな意味があって………
「ありがとな」
「はい!では、あーんして下さい」
「え!?」
黒羽の行動に一瞬驚くが、これが黒羽なんだと納得し、口を開ける。
高城には見せられないな。
クリームシチューを食べ終わると、黒羽は鍋を洗っていた。
僕はそんな黒羽の後姿に声を掛けた。
「なぁ、黒羽。響の事なんだが」
すると黒羽は鍋を洗う手を止める。
「この前、お通夜がありました」
黒羽は語るように言う。
「その次の日にはお葬式で、その後は火葬場。響さんの遺骨は、ちゃんとお墓に入れられました」
「黒羽は……参列したんだな」
「はい。私だけじゃありません。高城さん以外にも色んな人が来てました」
「………すまない。僕の所為なんだ」
シーツを強くつかみ、絞り出すように声を出す。
「僕が能力を暴走させた所為で、響は……………」
「協力者さんから話は聞きました」
俺が最後の言葉を言うまでも無く、黒羽がそう言う。
「響さんは、守ろうと思えば自分の身を守ることが出来たそうです。でも、響さんは自分ではなく、協力者さんと友利さんを守った。私は、そんな行動を取った響さんを信じます」
「黒羽………」
「響さんが亡くなって辛いですし、今でも泣いちゃうことがあります。でも………例えどんなに悲しくても辛くても、私は響さんを信じます。だからあの日、響さんがしたことは間違いなんかじゃないですし、乙坂さんは悪くありません」
「……高城にも似たようなことを言われたよ。ありがとうな」
「はい」
そうだ。
アイツに聞いてみたいことがあるんだよな。
響が死んでからずっと考えていたことが。
「なぁ、美砂。いるか?」
「え?………死人になんの用だよ」
「…人は死んだらどこへ行く?」
「…さあな。あたしはまだここにいる。柚咲が手に持つ風船のような存在さ。柚咲の能力が消えたら、あたしはそのままどっかに飛んでっちまう」
美砂は軽く発火能力を使って表現する。
「そうか…だったら、今のうちに大切な人に会いに行くべきなんじゃないか?」
「あ?急になんだよ?」
「僕は死にかけるような体験をした。いつ自分がいなくなるか知れないんだ。会いに行く時に会いに行くべきだ」
「そいつは…あたしも一度死んでるし、分からなくもねえが…」
美砂は髪をくしゃくしゃと掻きながら、黒羽が洗っていた鍋を見る。
「そういや、そいつをよく食べてたな。それはおふくろの得意メニューだったんだが、それを柚咲が真似てよく作ってくれたんだ」
そうだったのか。
…………うちと同じだな。
「あたしは柚咲と違って親不孝もんだ。死んじまったのが一番の親不孝なんだけどな」
「なら親に会いに行けよ。その力が失われる前に」
「ふーん…ま、その意見も参考にさせてもらうよ」
そう言うと美砂は引っ込んだ。黒羽がほえ!?とまぬけな声を出す。
「私また眠っちゃってましたか?」
「大丈夫だ。一つ質問だけど、お前の両親は何をしてるんだ?」
「長野県の山奥で、そばを打って提供しています!」
「そうか。なら近いうちに会いに行くことをオススメするよ」
「ほえ?」
「いや!時間がなさすぎる!行け!すぐに行け!」
「は、はい!マネージャーさんと相談してみます!!」
そう言うと黒羽は慌てて、病室を飛び出した。
鍋も持たずに。
「………お前でも、きっとこうしたんだろうな。響」
次回予告 響君の再登場