Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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優しい味

生徒会の初仕事を終えたその日の夜。

 

懐かしい夢を見た。

 

知らない女性と一緒に、桜並木を歩く夢。

 

繋がれた手を見て、隣にいる自分より背の高い女性を見上げる。

 

見上げられていることに気付くと女性は、にっこりと笑い、俺の頭を繫いでる手とは逆の手で優しく撫でた

 

本当に知らない女性だった。

 

だけど、何故か懐かしいと感じた。

 

そこで夢が終わった。

 

あの人は一体誰だったんだ?

 

布団から起き上がり制服に着替える。

 

その時、上の方は昨日友利に貸したことを思い出した。

 

「返してもらわないとな」

 

「そうだと思って返しに来ました」

 

「…………昨日もそうだが、どうやって入ってくるんだ?」

 

「部屋の鍵ぐらい三十分もあれば開けれます」

 

ロッカーのカギを開けたり、部屋の鍵まで開けたり、お前の手先はどんだけ器用なんだよ。

 

「まぁ、返しに来てくれた事は感謝する」

 

上着を受け取り袖を通す。

 

「俺、今から朝飯なんだが」

 

「どうぞ、待ってますんで」

 

……………コイツ、また集るつもりか?

 

「「…………………」」

 

互いに目を合わせたまま一歩も引かなかった。

 

数分後

 

「「いただきます」」

 

結局、友利の目力に敵わず、俺は泣く泣く朝食を提供した。

 

今日の朝食はトーストとハムエッグだったので、皿洗いもすぐに終わり、学校まで能力を使わずに済んだ。

 

「おはようございます」

 

「おお、おはよう」

 

隣の高城に挨拶をし、席に着く。

 

「今日も友利さんと登校ですか?」

 

「ああ。部屋まで制服の上着を届けに来てくれるのはいいんだが、朝飯を集られたらこっちの身が持たねぇぜ」

 

「仲が良さそうで安心しました」

 

「はぁ?どう見たら、俺と友利が仲が良いんだよ?」

 

「……………彼女の能力はご存知ですよね」

 

急に高城が声のトーンを下げて言う。

 

「?そりゃ、一度目の当たりにしてるしな」

 

「対象の人間以外から視認されない。言い換えれば、それ以外の人間からは見えるんです。それなりの理由があるとは言え、彼女が能力を使って暴力を振るってる姿を周りの人間が見ていたら、どう思うでしょう。監視カメラにはただの喧嘩にしか映らない。そんなことをしていたら、嫌われ者になるのは当然かと」

 

そこまで聞き、俺は席に座る友利を見る。

 

友利はイヤホンで音楽を聞きながら、ビデオカメラを弄っていた。

 

「だから、貴方の様に気軽に話し合える関係の人がいるのはいいことなんです」

 

気軽にね……………………

 

そう言えば、俺にとっては友利が始めてなんだよな。

 

先生や施設の人間以外で、俺がまともに会話できる奴って。

 

ま、それは高城にも言えることか。

 

「ま、積極的に仲良くするつもりはないが、俺は俺なりにアイツと仲良くさせてもらうよ。無論、お前ともな」

 

「それは光栄です」

 

その後、適当に高城と雑談をしてると担任がやって来てホームルームが始まり、授業開始となった。

 

授業を終えた昼休み、教科書やノートを机に仕舞うと高城が隣りから声を掛ける。

 

「一之瀬さん。今日は学食にしますか?それとも、パンにしますか?」

 

「そうだな…………今日はパンにでもしとくか」

 

席を立ち購買に向かおうとすると、友利が目の前に現れた。

 

「どうした?」

 

「協力者が現れましたか?」

 

「いえ、違います。用があるのは貴方にです」

 

「俺?」

 

「ええ。これをどうぞ」

 

そう言って、渡されたのは小さな包みだった。

 

「開けていいのか?」

 

「どうぞ、ご自由に」

 

高城が俺の手元を覗き込むのを感じながら、包みを開ける。

 

そこには二段に分かれた弁当箱があった。

 

「………弁当?」

 

「昨日のお礼です。他意は無いんで」

 

「そうかい。ま、お礼って言うなら遠慮なく貰っとく。弁当箱は後で返せばいいか?」

 

「いらないんで、そのまま上げます」

 

そう言うと友利は自分の席へと戻り、コンビニ弁当らしきものを鞄から取り出し食べ始める。

 

「では、私はひとっ走り購買まで行ってパンを買ってきます」

 

「あ、ああ」

 

昨日と同様に能力を使い購買へと、高城は向かった。

 

数秒後、昨日と同じように血まみれの姿で高城はパンを買って来た。

 

「ただいま戻りました」

 

「な、なぁ、本当に大丈夫なのか?」

 

「制服の下に防具を着ているのでそれ程深い傷はありません」

 

そう言って高城が胸板を叩くとコンコンっと音が聞こえた。

 

「いや、体より守るべきところがあると思うが…………」

 

頭から吹き出す血と流れる血を見て俺は言う。

 

「お、今日はカツサンドに卵サンド。当たりです」

 

席をくっつけ、向かい合う形で昼飯を取る。

 

高城がパンの包みを破る前で、俺は弁当箱の蓋を開ける。

 

中身はシンプルに卵焼きと唐揚げ、ポテトサラダにリンゴ(ウサギカット)が入っており、下の段にはおにぎりが二つ入ってた。

 

「うまそうだな」

 

「そうですね」

 

カツサンドを頬張りながら高城が言う。

 

箸で唐揚げをつまみ口に放り込む。

 

「…………」

 

「どうですか?」

 

正直言うと微妙だ。

 

まずくはないが、うまいわけでもない。

 

だが、人が作った料理なんて久々だな。

 

「ああ………うまい」

 

そう言って卵焼きも口に放り込む。

 

ちょっと焦げてるが、食えないわけじゃない。

 

だが、俺は弁当を食べることに夢中で気付かなかった。

 

教室の外から数名の女子が友利を睨みつけるように見ていることに。

 




第七話の友利が料理を作ってるシーン。

あの時の体勢から、友利は料理を作り慣れてないと言う意見が出ています。

なので、友利の料理は微妙な味設定にしました。

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