私のご主人様   作:天神神楽

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A.カカオ85%くらいの甘さです。



恋とは甘いものかしら? その二

いつまでも校門にいては騒ぎになってしまうので、業平様も一緒に車に乗る。

「帰ってきていたなら、連絡を下さってもよかったのに」

「二人を驚かせたかったからね。凰の家には伝えておいたんだけどね」

つまりは、運転席でクスクス笑う堤さんもグルであると。

「もぅ、お母様の悪戯ね。堤さんも笑わないで」

「ふふふ、失礼いたしました」

そう言いつつもまだ笑い続ける堤さんに、舞姫様は困ったように溜め息をついた。

「もぅ……。でも、お仕事は終わったのですか?」

業平様は既に有馬グループで働いている。有馬のおじ様曰くまだまだとのことだが、若手No.1の実績を誇り、ヨーロッパに出張していたのだ。

「つい先日だけど、無事上手くいったよ。それで、小さな会を開くみたいでね。急で悪いがお誘いしにきたんだ」

確かに急だが、それも込みで奥様の悪戯なのだろう。現に堤さんもまっすぐ有馬本社に向かっているし。

「悪戯はこれっきりにしてくださいね? でないと、嫌いになってしまいますよ?」

そういう舞姫様はとても綺麗で、悪戯を仕掛けた筈の業平様の方がたじろいでいた。

やがてビルに到着すると、途中で舞姫様達と別れることになった。私は一人、秘書のお姉さんに連れられて最上階に向かうことに。

そこにある部屋に入ると、一人のお方に出迎えられる。

「王季様、杏奈様をお連れしました」

「うむ、ご苦労。すまぬが、茶も用意してくれるか?」

胸の奥まで響くようなお声は、私にとって、気を引き締めねばと思いながらも、安心感を覚えるお声だ。

有馬王季様。日本に有馬ありと称賛される有馬グループ中興の立役者にして、私の大切なおじ様である。

秘書の方に案内されたソファに腰かけると、王季様が笑いかけてくれる。

「半年ぶりじゃな。怪我……は凰の訓練をしていれば仕方がないか。病気などはしておらぬか?」

「はい。一日一日が充実しております。舞姫様や藤姫様、旦那様方にとても良くしてもらっております」

私の解答に、王季様は満足そうにお髭を撫でていた。

「そうかそうか。紫からは聞いていたが、元気そうな顔を見れて嬉しいよ。どれ、久し振りに頭を撫でさせてくれないか?」

王季様と紫さんの関係は中々に複雑だ。何より紫さんの方が年上ということの方が複雑である。

ともかく、王季様のお願いに、私は喜んで王季様の前に移動する。

「ふむ……杏奈位の娘は半年会わないだけでも美しくなるな。舞姫や業平もそうだが、杏奈は特に見ていて面白い」

「面白い、ですか?」

面白いと言われたのははじめてだ。首を傾げていたら、王季様は説明してくれた。

「お主は女性でありながらとても男らしい。それでいて美しく、強くあろうとする気高さも持っているからな。正しく《騎士》というに相応しかろう」

「私など、まだまだです」

「はっはっはっ、まだ十代なのだ。焦ることはない。紫でさえも今のようになったのは二十を超えてからなのだからな。そう思えていることが何より素晴らしいということを覚えていなさい」

笑みを浮かべつつも、真剣な王季様のお言葉に、私は決意を新たにする。それを感じ取ってくださったのか、王季様は私の頭から手を離されると、秘書の人に何か指示を出していた。

「歳を取ると説教臭くなっていかんな。今日は杏奈にプレゼントがあるのだ」

「私にですか?」

仕事を終わらせてきた業平様やその婚約者の舞姫様にならともかく、ただのメイドである私に、というのは少々不思議である。

「ワシはなにもメイドに贈り物をするわけてはない。可愛がっている孫娘にプレゼントをするだけだ。それに凰の奥方殿や紫にもお願いされていてな」

「奥様と紫さんに?」

ますます謎である。そんな私を余所に秘書のお姉さんが戻ってきた。

「王季様、準備が調いました」

「うむ。ではワシはここで待っているから、杏奈は彼女についていってくれるか?」

「はぁ……」

良くわからないものの、王季様に贈り物をしてもらえるというのはとても嬉しい。

「では、杏奈様。こちらに」

秘書のお姉さんと部屋を出て、隣にある和室に移る。

そこに飾られているものを見て、私はますます首を傾げることになるのだった。

 

 

Another side 舞姫

 

杏奈が王季様の秘書の紗良川深螺(さらかわしんら)様に連れられていくのを見送った後、私は今回の会がただのパーティーではないことに気が付いた。

「業平さん、何を企んでいらっしゃるのかしら?」

「企みだなんて酷いな。とはいえ、私も詳しくは知らされていないんだ。祖父が中心に動いているらしくてね」

業平さんのお祖父様、王季様。私の凰家を凌ぐ大企業ながらも、とてもよくして下さる。そして、杏奈のことをとてもよく可愛がっており、政財界では、杏奈のことを取り込もうとしているのではないか、とも噂されている。

……まぁ、おじ様は孫娘と遊びたいだけなのだろうけど。有馬のお家は男性ばかりだから、尚更なのだろう。私や藤姫もよく可愛がってもらっている。

「杏奈ちゃんを次期当主に、とか言われているけど、祖父は全くその気はないだろうし、まぁ、ジジ馬鹿を拗らせただけだと思うよ」

言い方はともかく、業平さんの言う通り心配はいらないだろう。

だけど、内緒でことを進ませたのはいただけない。

「取りあえず、紫さんに色々お願いしておかないといけませんね」

「あ、え、そ、それは……」

有馬家の方々にとって、紫さんは絶対に逆らえないお方。紫さんも一枚噛んでいるでしょうけど、このくらいの仕返しはいいだろう。

「それじゃあ会場に参りましょうか。まだ始まらないにしても、挨拶しなければいけませんしね」

オロオロする業平さんの手を取り、会場に向かう。

これから起こることは分からないが、王季様がすることならば、素晴らしいことになるに違いない。

だからだろうが、私は笑みを抑えることが出来なかった。

「あ、ちょ、紫さんにだけは……舞姫さん? 聞いて……」

あら、男性が狼狽えるなんて男らしくありませんわよ?

 

Another side out




舞姫は微S。アラアラウフフ言いながら、後ろにフェードアウトする感じ。CV.大○さんみたいな?

おまけ
超簡単なキャラ紹介(杏奈視点)
吉祥杏奈 :転生者元男、重い、《騎士様》っなに?
凰舞姫  :ご主人様、キレイ、アラアラウフフ
凰藤姫  :妹様、デケェ、元気一杯いいこ
凰飛鳥  :奥様、特盛、悪戯好き、アラアラ
神楽灯  :料理長、張りがある、可愛いもの好き
堤さん  :運転手さん、ほっとする、奥様と話が合う
大槻唯依 :武士、メガ盛り、撫でテク免許皆伝
冷泉華琳 :とっぷすたぁ、スリム、かっこいい
柊さん姉 :お嬢様、可愛い、愛らしい
柊さん妹 :お嬢様、愛らしい、可愛い
水無瀬楓 :へぅ、へぅ、へぅ
ソフィア :プリンセス、キレイ、和が似合う
叶さん  :先輩メイドさん、おぉぅ、優しい
藤波紫  :七不思議筆頭、おぉぅ……、ご飯おいし
藤堂百合 :芍薬、牡丹、百合の花
御門輝夜 :輝夜姫、和服美人、若しくは御前
吉祥刹那 :お母さん、同じくらい、ちょー強い
ロシナンテ:ロバ、メス、最高は8回転アクセル
紗良川深螺:秘書さん、隙がない、くーるびゅーてぃ

二番目の項目は、杏奈の感想。
こういうくだらないことを考えるのが大好きです。
男編は気が向いたら。
私が好きな作品が分かった方は、是非小説版を読みましょう。完全版? ファイルも貰いましたが、何か?

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