私は今、柊さんと共に街に来ていた。
ここは、修凰にも程近い商店街で、風情ある街並みと素晴らしい品揃えから私達もよく訪れる。
何故ここに来ているのかと言えば。
「あっ、ソフィアさんソフィアさん! いらっしゃいました!」
杏奈さんのデート(あくまでも仮)を見守るためです。
舞姫様の爆弾投下の後、舞姫様は私達だけにこっそりと杏奈さんの行き先を教えたくださった。
因みに輝夜様も来たがっていらしたのですが、舞姫様に部活へと引っ張られていったため、この場にはいらっしゃらない。
しかし……。
「な、何て絵になるのでしょう……」
柊さんの言うように、私も目の前の光景に戦慄していた。
杏奈さんは、とても美しい。二つ名の如く騎士然とした凛々しいお姿と、それを損なわずに彩られる美が見事にマッチしている。
そんな杏奈さんだけでも注目の的となるのに、もうお一方もまた殊更美しい。
まるで女性と見間違うほとに艶やかなお髪は、絹糸のように滑らかで、黄金をそのまま引き伸ばしたかのように美しく輝いている。碧色の瞳の美貌は、老若男女を問わず魅了するかのようで、傾国という言葉が自然と浮かんでくる。
お二人とも凛としているため、その様子は、仲良く会話をする騎士を描いた絵画のようであった。
つまりは、あり得ないほど目立つため、逆に直視が出来ないレベルである。
「レン、これはどう?」
どうやら彼のお方のお名前はレン様というらしい。
「杏奈様の砕けたお言葉遣いもまたドキドキいたしますね」
「そういえば……随分親しいようですね」
杏奈さんは、歳上の方には勿論、私達同級生にも丁寧な言葉遣いで接している。また、歳下の方にも丁寧な態度を崩さないので、あのように砕けた言葉遣いをするのは非常に珍しい。
「そうだね、これもいいけど……あ、これとか杏奈に似合いそう。ほら」
レン様は、髪留めをお取りになると、とても自然に杏奈様の髪に添えた。
「うん、よく似合ってる。杏奈は美人だけど、もっと綺麗になった」
「あら、相変わらず気障なんだから。でも、ありがとう」
「うん、笑った杏奈は花みたいだね」
「ふふ、それをいうならあなたでしょう? あなたは蓮華の花みたいに綺麗だわ」
……エスプレッソが飲みたくなってきました。いつもはお砂糖をいれますけど、リストレットのうんと濃いのが飲みたい。
「まるで、お伽噺の騎士と姫様のようですね。その姫役が杏奈様というのがまた素晴らしいです」
そんな状況でも、柊さんは瞳を輝かせてお二人のことを見つめていた。
「それはそうですが……」
「あら、何か?」
何と言うか、柊さんは色々と活発になられたような気がします……。
Another side end