ウルトラマンX  これくしょん   作:ベンジャー

3 / 24
宇宙恐竜ゼットン
巨大魚怪獣ゾアムルチ
ホログラム星人軍団
登場。


第3話 『差し延べるための手』

ある雨の降る日のこと……そこは森で囲まれた海辺。

 

そこには大雨ということもあって人も誰一人としていなかった。

 

そう、「人」はいなかった。

 

その海辺にいたのは人ではなく……「深海棲艦」の一人、「駆逐棲姫」が脇腹や口から青い血を流し、肩で息をして今にも彼女は死んでもおかしくはないほどの重傷だったのだ。

 

ちなみに、彼女は艤装を装備した際は足がなくなるのだが……今は艤装を解除しているためか両足がちゃんと生えていた。

 

「はぁ……はぁ……ふざ、けるな……。 この私が……デカいだけの生物に……ぐぅ……」

 

どうやら棲姫のこの傷はデカい生物……つまり、「怪獣」にやられたらしく、彼女がなぜこんなところにいるのか、それはどこか身を隠して傷を癒せる場所はないかと思ったからである。

 

しかし、中々休めそうな場所が見つからず、もう既に足下もフラつく上に目眩までしてきていたのだが……そんな彼女の追い打ちをかけるかの如く……上空から火の玉のようなものが棲姫のいるすぐ近くに落下してきたのだ。

 

「っ……!? な……んだ……。 こんな時に……」

 

そして……その火の玉から出て来たのは昆虫にも似た外見の怪獣……「宇宙恐竜ゼットン」が火の玉の中から出現したのだ。

 

「ゼッ……トン」

 

棲姫はまた自分の目の前に怪獣が現れたことに驚き、もしもゼットンが自分の方に気づけば攻撃してくるかもしれないと考えて彼女はすぐにゼットンに気づかれないようにこっそりを身を隠そうとしたのだが……。

 

「フィロロロロ」

 

既にゼットンにはバレていたらしく、ゼットンは棲姫の方へと顔を見下ろすとゼットンは顔から一兆度の火球を棲姫に向かって放ってきたのだ。

 

「っ!!?」

 

目を瞑り、流石にこれはとうとう自分も死んだ……そう思った棲姫だったが何時まで立っても身体にこれ以上の痛みを受けたような感覚はなく……そっと目を開けてみると……。

 

自分の目の前に……自分を庇うように、そこには光の剣を構える赤い巨人が立っていたのだ……自分を守るように……。

 

その巨人はどことなくウルトラマンエックスとも似ているようにも見えた。

 

しかしその巨人はエックスではない。

 

「無限の、輪……?」

 

その巨人からは無限の輪を思わせる光が溢れ、やがてその光はすぐに消えたが、棲姫はそれを見てこう呟いた。

 

「メビウスの……輪、ウルトラマン……メビウス?」

 

そう、その巨人の名は……「ウルトラマンメビウス」

 

戦闘BGM「メビウス!」

 

メビウスは棲姫の方へと少しだけ顔を振り向かせるとメビウスは棲姫を安心させるかのように頷く。

 

『セアッ!!』

 

メビウスは左腕の「メビウスブレス」から出した光の剣「メビュームブレード」を構え、ゼットンへと向かって駆け出し、対するゼットンは一兆度の火球をメビウスに向かって放つがメビウスはメビュームブレードでゼットンの火球を切り裂きながら突き進む。

 

『シュア!!』

 

ゼットンに一気に接近したメビウスはメビュームブレードでゼットンに斬り掛かるがゼットンはそれをことごとく回避し、後ろ回し蹴りをメビウスに喰らわせる。

 

ゼットンの攻撃を受けてたじろくメビウス、その隙をゼットンは見逃さずドロップキックをメビウスへと繰り出すがメビウスはメビュームブレードをしまい、両腕を交差してメビウスは攻撃を防ぐ。

 

しかし、メビウスは大きく吹き飛ばされて地面を転がるが……すぐに反撃するためメビウスブレスに右手を添え、右手を前に突き出して放つ光刃「メビュームスラッシュ」を放ち、ゼットンは周囲にバリアを張る「ゼットンシャッター」で攻撃を防いだが……メビウスはそのまま高くジャンプし、相手の頭上目掛けて蹴りを叩き込む「流星キック」をゼットンの唯一バリアの張られていない頭部に叩き込んだ。

 

「ゼッ……トン!?」

『シュア!』

 

メビウスは怯んだゼットンに向かって勢いをつけて拳をゼットンの胸部に叩き込み、ゼットンも負けじとメビウスに右腕を振るって殴り掛かるがメビウスはゼットンの右腕を掴んで巴投げを繰り出す。

 

投げ飛ばされたゼットンは地面に倒れ込んだがすぐに起き上がり、テレポーテーションを使って一度メビウスの目の前から姿を消す。

 

『っ!?』

 

メビウスはゼットンが消えたことに驚くが……メビウスは空中へと突然飛行し、棲姫はメビウスは逃げ出したのかと思ったが……。

 

メビウスが空中に去った直後、ゼットンは再び姿を見せ、火球をメビウスに向かって放つがメビウスはそれを避ける。

 

これはゼットンが飛行できないということを突いたメビウスの作戦であり、幾らテレポートが使えるといってもそれは地上だけの話。

 

つまり、空中から地上を見ればゼットンがどこに現れるのかが地上にいる時よりも見つけ易くなる、そのためメビウスは空中へと飛んだのだ。

 

ゼットンを見つけるとメビウスは素早くメビュームスラッシュを放つがゼットンは再びゼットンシャッターで攻撃を防ぐ。

 

だがその直後、メビウスの飛び蹴りがゼットンのバリアに炸裂し、ゼットンはバリアを維持してメビウスの攻撃を防ぐが……。

 

『シュアアアアア!!』

 

メビウスは炎の模様を纏った「バーニングブレイブ」となるとメビウスはそのままきりもみ回転し、炎を巻き起こす「メビウスピンキック」を炸裂。

 

そしてゼットンのバリアはその技によって砕かれ、メビウスの蹴りがゼットンに直撃した。

 

「ゼッ……トン!?」

 

メビウスはこのまま一気にトドメを刺そうとするが……突然、メビウスの背中に青い光線のようなものが直撃した。

 

『ウアア!!?』

 

メビウスは膝を突きつつも慌てて後ろに振り返るとそこには海から出現した「巨大魚怪獣 ゾアムルチ」が出現したのだ。

 

ゾアムルチの出現に驚くメビウスだったが、そこにさらにゼットンから放たれた火球がメビウスの背中に直撃し、メビウスはその場に倒れ込んでしまう。

 

『グアッ……!?』

 

倒れ込んだメビウスに向かってゾアムルチは容赦なく蹴りを叩き込み、メビウスは地面を転がる。

 

さらにゼットンが倒れているメビウスに掴み掛かって彼を無理矢理起き上がらせるとメビウスの腹部に膝蹴りを叩き込み、メビウスは悲痛な声をあげながら後退する。

 

そしてメビウスが怯んだところにゾアムルチが突進を繰り出してメビウスを突き飛ばしてしまう。

 

『グッ……ウゥ……!?』

 

メビウスはフラつきながらもなんとか立ち上がってゼットンとゾアムルチに挑もうとするが……その時、突然ゼットンとゾアムルチの動きがピタリと止まったのだ。

 

『……?』

「先ほど助けて貰った礼だ。 借りは……返させてもらう!」

 

メビウスは声がした方へと顔を向けるとそこには棲姫が青く光る右手をゼットンとゾアムルチに向けており、ゼットンとゾアムルチは棲姫の力によって動きを封じられたのだ。

 

「グアアアアアアアア!!!!!?」

「ゼッ……トン……!?」

 

突然の出来事にゼットンとゾアムルチは対応することができず、そのまま2体の怪獣は地面の中へと徐々に沈んでいき、棲姫はゾアムルチとゼットンを封印してしまったのだった。

 

「ぐっ、がはぁ!?」

 

しかし、ゼットンとゾアムルチを2体同時に封印するほどの力を使った棲姫は自分の力の殆どを使い果たしてしまい、彼女は一気に身体から力が抜け、その場へと倒れ込んでしまったのだ。

 

『はぁ、はぁ……』

 

メビウスは肩で息をしながらも棲姫の元へと寄り、そっと彼女に右手を向け……そこから光の粒子を棲姫へと放つ。

 

するとメビウスの放った光の粒子を浴びた棲姫の傷はどんどん回復していき、やがて……彼女は気を失ったままであったものの傷の方は完全に回復し、メビウスは「よし」とでも言うように頷くと彼はその場から薄らと消え去るのだった。

 

「お姉ちゃん! こっちなのです!!」

「ちょっと雷! 怪獣の反応が消えたからってもうちょっと慎重に……!」

 

そこにやってきたのは夜空のところの鎮守府に所属している駆逐艦の雷と電。

 

この2人は遠征任務の帰りの途中であり、偶然この辺りで怪獣の出現をキャッチ、この辺りはあまり人が住んでいないところではあったが相手がどんな怪獣かを見る必要があると判断し、偵察に来ていたのだ。

 

「でも、なんで急に怪獣の反応がロストしたのかしら……?」

「雷お姉ちゃん! あそこに人が倒れてるのです!」

 

電が砂浜で棲姫が倒れているのを発見し、2人は急いで棲姫の元へと駆け寄る。

 

どうやら今のいる場所からでは棲姫の姿は雨が降ってることもあってよく見えなかったらしい。

 

そして2人が駆け寄った直後、彼女たちはそこで倒れていたのがようやく自分達が戦う相手である深海棲艦であるということが分かり、雷は腕に装着されている主砲を驚きつつも棲姫へと向ける。

 

「深海棲艦!? なんでこんなところに!? しかも駆逐棲姫!?」

 

駆逐棲姫は深海棲艦の中でも強敵に数えられる1人であり、艦種は駆逐艦であるにも関わらずその戦闘力は凄まじく……まさに「お前のような駆逐艦がいるか」とでも言いたくなるような強さを持っている。

 

そのため、雷は今の内に倒しておくべきかと思ったのだが……電が慌ててそれを止めた。

 

「だ、ダメなのですお姉ちゃん!!」

「電……」

「怪我は、見当たらないみたいですけど……でも、とても苦しそうにしているのです! 幾ら敵だからって……そんな相手に、攻撃しちゃダメなのです!!」

「電、でも……」

 

雷は困り果てたような顔を浮かべるが、電は気絶している棲姫の前に手を広げて彼女を庇うように立ち、そんな電の様子を見て雷はため息を吐いた。

 

「もう、しょうがないわね」

「雷お姉ちゃん……!」

「でも、この子が起き上がって攻撃の意思があれば全速力で逃げるわよ?」

「はいなのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2週間後、モズイの騒動があった翌日のことである。

 

執務室では夜空が奈々の前で正座しており、彼女は夜空に向かってジッと彼を見下ろしていた。

 

『なあ、夜空……私のこの位置だとちょっと彼女のスカートの中見えるんだが? 教えた方がいいか? あと青か……』

「お前はなにしてんだ」

 

ちなみに夜空がエクスデバイザーをつけてるのは腰の右横……そして奈々はスカート、地味にその中が見える。

 

するとそんなエックスの発言を聞いて「イラッ」とした奈々は夜空からエクスデバイザーを取り上げると机の上に素早く俯かせて置いた。

 

『うわあああああ!? な、なんだ!? なんだ!? 夜空!! 急に周りが真っ暗になった!! 助けてくれ夜空!!』

 

奈々が素早く置いてしまったためか、なにが起きたのかエックスは理解できなかったらしく、彼女はそんな風に慌てるエックスを軽く無視して腕を組んで再び夜空の方へと視線を向ける。

 

恐らくは、自分がエックスとユナイトし、怪獣と戦っていたことについて追求するのだろうと考えていたのだが……。

 

「……暁ちゃんとお風呂入りたい」

「おいコラ」

 

と思ったら全く関係ない上に奈々の趣味全開の話だった。

 

「いやぁ、だって普段からレディーレディーって言ってる暁ちゃんは色んなところがどのくらい成長してるのかなーっと思いまして」

「お前……。 それより俺とエックスの話は聞かなくていいのか!?」

 

夜空がそう尋ねると奈々はなぜか満面の笑みで「あっ、大体の事情は察してるんでもうその辺どーでもいいです」なんて言い出す始末。

 

「『どーでもいいの!?』」

 

流石にこれには夜空もエックスもビックリ、絶対に自分達のことについて追求されるかと思ったものだから当然だろう。

 

しかし奈々はそんなこと気にする様子すら見せず、むしろ今は暁と一緒にお風呂入ることしか頭にない。

 

「暁ちゃんと一緒にお風呂入る以外に重要なことがあるとでも!?」

「あるだろ! 十分に!!?」

 

すると、突然奈々は「ふぅ」と一度ため息をつくと最初のときのような真面目な表情となり、夜空はやっとまともなことを言うのかと思ったが……。

 

「でも、暁ちゃんと一緒にお風呂入るなら響ちゃん、雷ちゃん、電ちゃんとも入りたいですね」

「ちょっとタカトさんと菊月呼んでくる」

「すいませんタカトさん呼ぶのだけは……それだけは勘弁してください。 逆に菊月ちゃんはバッチコーイ!!」

 

いい加減女といえども殴りたくなってくるが……「まっ、冗談はこのくらいにして」と言ってようやく気持ちを切り替えたらしい。

 

最もその後に「第六の子とお風呂入りたくはありますが」と付け加えていたりしたが。

 

「提督、それとエックス、私は先ほども言った通り……大体事情は察してます。 あなたがなぜ、私たちにこの事を隠しているのか」

『まだ暗いぞ!? なあ、夜空! これもしかして故障なのか!? なら早く直してくれ!』

「勿論、私はこの事を口外するつもりはありません。 この事を打ち明かす時はあなた次第だと思いますから」

『なあ、無視しないでくれよ。 こっちは本気でデバイスが故障してないか不安なんだぞ』

「いい加減うるさいです」

『アッハイ、スイマセン』

 

それから奈々は「私もその辺りのフォローはなるべくします」と言って執務室を出ようとしたのだが……その途中、夜空に呼び止められた。

 

「その、ありがとな」

「いいんですよ、あなたのことは前提督から頼まれてますから」

 

奈々はほんの少し笑みを浮かべて執務室を出て行くのだった。

 

彼女が部屋から出たのを確認すると夜空はエクスデバイザーを手に取り、周りが見えるようになったエックスはホッとするのだった。

 

「お前、少しビビりすぎじゃないのか?」

『精密機械なんだぞ、幾ら私でも急に目の前が真っ暗になったら故障かと思って不安になってしまう』

 

そこでエックスは「ところで、先ほど彼女が言っていた前提督とは誰なんだ?」と話題を変え、夜空はエックスにそう聞かれて少し口籠った。

 

『なにか、聞いてはいけないことだったか?』

 

エックスが不安そうに夜空に問いかけるが彼は首を横に振る。

 

「まあ、俺がこの鎮守府に着任する前にいた提督だな」

 

夜空が語るには昔は自分とは違う、別の人物がこの鎮守府に着任していたらしいのだが……1つ、問題を起こしてしまい、提督をやめることになったのだという。

 

その後、その前提督と入れ替わるように夜空は鎮守府に着任したのだが……その前提督とは夜空とも面識があり、とても複雑な気持ちだったというのだ。

 

今ではどこでなにをしているのか分からず、行方も掴めないというのだ。

 

「あの人がいれば奈々の暴走も止められるのに……」

『えっ、あの暴走を止められるのか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、夜空が鎮守府内で使用している私室……。

 

夜空は未だに夢の中、目覚ましたがなったというのに時計を止めた後、またついついうっかり眠ってしまったのだ。

 

そんな時、部屋の扉がガラっと空き、雷と時雨が一緒に入って来た。

 

「しっれいかーん!! あっさですよー♪」

 

雷は元気いっぱいに夜空に向かってダイブし、雷が乗っかって来たため夜空は「うぐぉ!?」と小さな悲鳴をあげ、そこでようやく目を覚ましたのだ。

 

「ほら、提督? もう朝だよ」

「全くもう、お寝坊さんなんだから司令官は! ほら、寝癖直してあげるからジッとしててね!」

「僕は提督の朝食を作るから、その間に布団とか片付けておいて。 提督はすぐに着替えてね」

「じゃあ先ず着替えるから一度出て行ってくれないか?」

 

まだウトウトしている夜空だが、時雨と雷は夜空の言葉に頷いて一度外に出て行き、夜空はすぐに着替えを済ませて2人を呼び戻す。

 

「ってあら? 布団片付けちゃったのね」

「あっ、提督、服の襟曲がってるよ?」

 

時雨はそっと手を伸ばして夜空の制服の襟を直し、時雨と雷は早速夜空の朝食の調理を開始。

 

夜空も可能な限り時雨と雷の調理の手伝いを行った。

 

朝食ができあがり、3人でそれを済ませると3人はそれぞれ仕事の準備を終わらせて雷は暁たちのところへ、夜空と時雨は執務室に向かうことになった。

 

「それじゃ私は先に行くわね!」

「あぁ」

「いってらっしゃい」

 

すぐに準備を終わらせた雷は2人よりも先に部屋を出て行き、少しした後、夜空と時雨も執務室に向かおうとする。

 

「はい、提督鞄だよ」

「あぁ、ありがとう」

 

するとこのやり取りを行って夜空はフッと思った……「なんか旦那を見送る嫁さんみたいだな」っと……そんなことを思ったら急に気恥ずかしくなり、まともに時雨の顔が見れなかった。

 

「ねえ、提督?」

「えっ? あっ?」

「いってらっしゃいのキスしてあげようか?」

「ファッ!?」

 

まさかの発言に夜空と、声こそ出さなかったものの驚くエックス……だが、時雨はすぐに「冗談だよ」と夜空に言い、彼女は夜空の腕を引っ張って司令室へと向かうのだった。

 

「ったく、からかうなよ……」

「あっ、そうだ。 今日は書類の方を片付けたらリョーガさん達が開発した新システムのテストを行うことになったから提督もそれに立ち合ってね?」

「テスト? なんのテストだ?」

「うん、なんでもサイバー怪獣の力を艦娘に宿す実験……らしいよ?」

 

それから……一通り書類整理を終わらせ、夜空と時雨は実験を行う場所へと向かった。

 

そこでは夕立、荒潮、朝潮はグルマンとリョーガの新たに開発した艦娘の新システムを試す為に鎮守府の目の前にある海の上に立っていた。

 

近くにはリョーガ、グルマン、夜空、時雨、タカトの5人が3人の様子を伺っている。

 

今回の実験……それはジオデバイザーと艦娘の艤装システムをリンクさせ、サイバー怪獣の力の一部を艦娘が使うというものだった。

 

これはリョーガが前回、サイバー怪獣の力を身に纏ったエックスの姿を見て思いついた実験であり、リョーガとグルマンはある装置を使って夕立たちが新たな力を使うための相手を用意した。

 

そのある相手とは……「サーベル暴君 マグマ星人」「触覚宇宙人バット星人」「悪質宇宙人メフィラス星人」の実体を持ったホログラムである。

 

ちなみに、バット星人は見た目が初代、メフィラス星人は2代目だった。

 

「それにしてもあれだねぇ、今回グルマン博士はあんまり活躍できてない感じがするね?」

 

リョーガはニヤニヤとした笑みをグルマンに向ける。

 

実際、この実験の発案者はリョーガであり、実体を持ったホログラムなんてものを呼び出せる装置を作ったのもリョーガであるため、彼の言うとおり今回はグルマンはあまり活躍していなかった。

 

「フン! そもそもエックスとサイバー怪獣を合体させることに気づいたのは私だぞ! 私がこの事に気づかなければどうなっていたことか」

「言ってくれるねぇ」

 

リョーガとグルマンはお互いに睨み合うが……「いいからさっさと始めろ」とタカトに注意されて2人は未だに睨み合いながらもホログラムを呼び出した装置を使い、マグマ、バット、メフィラスを自動で動かせる。

 

「言っておくが3人とも、そいつ等はホログラムと言っても戦闘力は本物と同等だ。 油断しないように」

 

リョーガは通信で朝潮たちにそのことを伝え、旗艦の朝潮は「了解!」と頷くと3人は戦闘を開始。

 

「来ます!!」

「ここは私に任せて朝潮ちゃん♪ さて、それじゃ早速使わせてもらうわね〜」

 

荒潮は早速ジオデバイザーにサイバー怪獣のカードを装填する。

 

『サイバーキングバモス、ロードします』

 

「変貌怪獣 キングバモス」のサイバー怪獣のカードをジオデバイザーにロードさせると荒潮にキングバモスの能力が宿り、主砲から砲口から光の爪が伸び、さらに荒潮の左手は電撃を纏う。

 

「サイバー怪獣の力が使えるのは1分間のみだ。 それを気をつけてくれたまえ」

「りょうか〜い」

 

間延びした声で人懐っこそうな笑みを浮かべる荒潮だが……マグマ星人が腕に装備したサーベルは光線を放った直後、人懐っこそうな笑みから荒潮は獲物を狩るような目つきとなり、彼女は空中へと跳び上がって主砲に生えた爪を構え、目にも止まらぬ速さでマグマ星人の攻撃を避けながら接近。

 

マグマは荒潮がこちらに向かって来ている彼女に対し、サーベルを振るって荒潮を叩き伏せようとしたが……荒潮は素早く繰り出した電撃を纏った手刀で……サーベルをマグマごと切り裂いたのだ。

 

「っ……!?」

「あらぁ〜? この程度?」

 

のんびりした口調、しかも笑顔なのだが……目が笑っていない、しかもちょっと血走ってるくらいである。

 

「てんで期待外れね♪」

 

そう言うと同時に荒潮の強烈な蹴りがマグマの腹部へと叩き込まれ、そのままマグマの頭を鷲掴みにすると彼女はグイっと引っ張ってマグマの顔面に膝蹴りを叩き込んだ後、爪でマグマを何回も何回も引っ掻きまくってダメージを与え……トドメとばかりに電撃を纏った手刀を炸裂した。

 

そして、荒潮の攻撃に耐えきれなくなったマグマは火花を散らして爆発した。

 

「あらあら、綺麗な花火ねぇ」

 

そんなことを呟く荒潮の表情は相変わらずの笑顔、しかし……その目はまるでゴミを見るかのような目をしており、そんな荒潮を見て夜空たちは……。

 

「「「こええええええええええ!!!!!?」」」

 

タカト、夜空、グルマンが声を揃えてそう叫ぶが……時雨とリョーガは「えっ、別に普通じゃない?」と首を傾げていた。

 

「むしろ荒潮はアレが普通だけど?」

「どこがだァ!!? 何時ものほほんとした雰囲気だっただろう!!?」

 

実を言うと、荒潮の戦闘を夜空、タカト、グルマンが実際にまともに見るのは始めてであり、3人が驚くのも無理はなかった。

 

一方で朝潮は「サイバーブラックキング」のサイバーカードをジオデバイザーに装填し、朝潮はその身に「用心棒怪獣 ブラックキング」の能力を宿す。

 

『サイバーブラックキング、ロードします』

 

朝潮は腕に装着されている主砲から砲弾をメフィラスやバットに向かって発射し、2体は朝潮の攻撃を余裕で回避するが……。

 

「っぽおおおおおおい!!!!!」

 

夕立の膝蹴りがメフィラスの顔面に炸裂し、メフィラスの頭を鷲掴みにすると彼女はそのまま空中に投げ飛ばす。

 

一方でバットは剣を手に持って朝潮へと向かっていき、剣を振るって彼女へと斬り掛かるのだが……。

 

朝潮はなんと、バットが振るった剣を腕で防ぎ、バットの持っていた剣はそのまま折られてしまった。

 

「凄いですね、ブラックキングの力!!」

 

実際、ある世界では精神が不安定だったとはいえウルトラマンの攻撃をことごく防いだことのあるブラックキングなのだ。

 

その防御力を身に宿した朝潮にただの剣如きが通じる筈もないだろう……。

 

そのまま朝潮はバットに向かってラリアットを決め、倒れ込んだところで朝潮はバットの足を掴んでスイングした後、投げ飛ばす。

 

投げ飛ばされたバットは水面を転がりながら倒れ込み、ヨロヨロと立ち上がってなんとか反撃しようとする。

 

「これでトドメです!! ブラックヘルマグマ!!」

 

だがそれよりも早く朝潮は主砲を構えてトリガーを引くと砲口からマグマ光線「ブラックヘルマグマ」を放ち、ブラックヘルマグマはバットをあっさりと飲み込み、バットは悲鳴をあげながら爆発した。

 

「やりました! 提督—!! 見ていただけました!? これが、朝潮型駆逐艦の力なんです!」

「いやそれはブラックキングのちかr……うぐぉ!?」

 

リョーガがなにかを言いかけたがタカトとグルマンがリョーガを両サイドから殴ったため最後まで言い切ることができなかった。

 

「朝潮はまだマシな部類なのかもしれんが……お前等揃いも揃って接近戦好きだな」

 

タカトが苦笑い気味に時雨にそう言うと時雨は薄らと笑みを浮かべ……。

 

「そりゃ、大体の深海棲艦や他の艦娘は普通は接近戦は苦手だからね。 僕たちの鎮守府は艦娘が駆逐艦しかいないんだから……」

 

時雨が言うには殆どの深海棲艦などが接近戦が苦手であるため、時雨たちは接近戦闘ができる訓練をずっと行っていたのだ。

 

接近戦が得意となれば接近戦が苦手とされる相手に優位に立ち回れるためである。

 

勿論、だからと言って艦娘本来の戦い方を忘れていい訳ではないため、一応は遠距離戦の訓練もしっかりと行っている。

 

「僕たち駆逐艦は弱い部類に含まれるからそういった工夫をしないといけないんだ。 みんな大好きな提督の気持ちに応えるためにも……ねっ?」

 

時雨が笑みを浮かべて夜空の方に振り返ると夜空は少し気恥ずかしくなったのか、彼はそっぽを向いてしまった。

 

「アレ? 提督照れてるの?」

「うるさい」

 

時雨はそんな夜空の様子にニヤニヤと笑い、夜空の表情を何度も伺おうとするがその度に夜空は時雨から顔を背けて表情を見られないようにする。

 

「「「イ チ ャ つ く な」」」

 

また……夕立はというと彼女も早速サイバー怪獣のカードをジオデバイザーに装填し、「サイバーガルベロス」の力をその身に宿す。

 

『サイバーガルベロス、ロードします』

 

「フィンディッシュタイプビースト ガルベロス」の能力を持った夕立はなんと主砲を……メフィラスに向かって投げつけた。

 

「投げたァ!?」

 

無論、主砲を投げつけた程度で怯むメフィラスではない。

 

メフィラスは余裕でそれを腕で弾き飛ばし、メフィラスは右腕を夕立に向けてそこから青い光線を夕立に放つが……光線は夕立はすり抜けてしまう。

 

そこにいたのは夕立ではなく、ガルベロスの能力を使用して作った彼女の幻覚だったのだ。

 

「ソロモンの悪夢……見せたげる!!」

 

そして本物の夕立はメフィラスの背後に回り込んでおり、ガルベロスの力で鋭く伸びた爪でメフィラスの背中を切り裂いた。

 

『キアアアアアアアアア!!!!?』

 

切り裂かれたダメージで叫び声をあげ、メフィラスは火花を散らして爆発した。

 

「しゅ……瞬殺……」

「怪獣の力を使ってるとはいえ、お前等ホントに駆逐艦か」

 

タカトと夜空があまりにも(味方が)一方的過ぎる戦いに戦慄し、2人は「こいつ等ホントに駆逐艦か」と言いたくなる戦い方だった。

 

いや、朝潮はまだマシな方なのだが……なんというかもう……荒潮と夕立が酷かった、色んな意味で。

 

「まあまあ! 兎にも角にも実験は大成功! 早速実用化をするとしよう。 実用化の準備でき次第、他鎮守府にもデータを送らないとね、怪獣が現れた時に対処するためにも」

 

リョーガの言葉に夜空は頷き、「早速取りかかってくれ」と彼に頼んだ後、夜空は時雨と一緒に司令室に戻るのだった。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ時雨」

「はい? なんですかグルマン博士」

 

いきなりグルマンに呼び止められると時雨は彼から1枚のサイバーカードを手渡される。

 

「それはサイバー怪獣のカードではないし、君たちが使っても特に意味はないカードだが……そのカードはエックス専用のカードだ。 念のためにこれは君に渡しておく」

「このカード……これって……」

 

時雨はそのカードを見てかなり驚いた様子を見せるが……彼女は頷き、「分かりました」と答えた後、夜空と一緒に今度こそ執務室に戻るのだった。

 

『「「「司令官/提督!! 文化祭がしたい!!(でごぜーやす!!)」」」』

 

司令室に戻るや否や……そんなことをいきなり響が前回制作した警備ロボット「ドアダム」と、響が「夕立に着せたい」と言ってワイル○タイガーのスーツを着込んだ夕立、頭に鍋を被った響、なぜかネコミミとメイド服を手に持った奈々がそんなことを夜空に向かって言い出したのだ。

 

「……なにこのカオスな光景」

 

ちなみに夕立が着ているスーツはクソスーツの方ではないのであしからず。

 

「んっ? 文化祭って……急にどうしたんだいみんな?」

「いえ、文化祭を開くことで街の人達と艦娘の交流などして頂こうと思いましてね。 ほら、やはり艦娘……彼女達のことを悪く言う連中も多い。 そういった悪いイメージを色んな人達に持たさないためにも……こういった文化祭という場が必要なのではないかと思いまして……」

 

そこまで言いかけたところで夜空は「でっ? 本音は?」と尋ねると奈々はその手に持っているネコミミとメイド服を夜空に見せつけるように持ち……。

 

「第六駆逐隊のネコミミメイドカフェとかスゲーやりたいです」

「はい却下」

 

奈々の本音を聞いて即座に却下する夜空、それに対して当然奈々は「えぇ〜!?」と不満そうな声をあげる。

 

「文化祭って言っても金だってかかるんだぞ? 屋台だってここにいる人数じゃそんなに出せないだろう」

「心配しなくてもその辺はちゃんと考えてるさ。 私の知り合いに是非とも手伝わせてくれという人達がいるからね」

 

響がそう言いながらサムズアップし、夜空は「響の知り合い」と聞いて少し不安な気持ちになり、その知り合いとは誰なのかと聞いてみたのだが……響は「それは後のお楽しみ」と言ってハブらかした。

 

「ちなみに私が文化祭をしたいのは他の鎮守府をそういうのをやろうとしてるっていうのを聞いたからだよ。 確かウチよりも戦闘が全くない鎮守府だったね」

「あぁ、あそこか……俺も行ったことあるな。 確か鈴谷とか熊野とかいるところだったか。 まあ、なんにしてもだ……金がかかる以上、そういったことは……」

 

すると時雨が夜空の服の袖をクイっと引っぱり、夜空は時雨の方へと「んっ?」と顔を振り向かせる。

 

「提督……僕も、文化祭やって、みたいかな? ダメ……かな?」

 

不安な表情を浮かべつつも上目遣いで夜空を見つめる時雨に夜空は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーっしお前等!! 文化祭やるぞぉ!!」

 

滅茶苦茶やる気になりました。

 

「提督さんって時雨ちゃんには甘いよね」

「この鎮守府に着任する前からの付き合いだもんね〜。 っていうかそのスーツ何時まできてるにゃ?」

 

ワイル○タイガーの夕立と睦月がそんな会話をしており、2人の会話が偶然耳に入った電はどこかしゅんっとした暗い表情となった。

 

「電? どうかしたの?」

「い、いえ! なんでもないのです暁お姉ちゃん!」

 

実を言うと電はこの鎮守府の前提督の秘書官であり、先ほどの2人の会話で夜空と時雨がこの鎮守府に着任した頃のことを思い出したのだ。

 

(前の、司令官さんは……今、どこでなにをしているのでしょうか……?)

 

電がそんなことを考えている時、マイクを持った響が食堂に集められたメンバー全員に挨拶をした。

 

「さて、では文化祭ではそれぞれの班に分かれてそれぞれ自分達がやりたいことをやって貰うよ。 ちなみに班分けと班の名前は私が勝手に決めた」

 

そう言って響は壁にその文化祭の班のチームが書かれた名簿を張りつけ……班分けはこうなっていた。

 

アベ○ジャーズ組 夜空 時雨 グルマン

イ○ベーダーズ 暁 響 電 雷

サ○ダーボルツ 睦月 如月 皐月 村雨

ディフェ○ダーズ 菊月 タカト リョーガ

ニューウォ○アーズ 文月 朝潮 奈々

 

「パクってんじゃないわよ名前をぉ!?」

 

明らかにどこかで聞いたことのある名前ばかりなのを暁は響にツッコむが……響は「文句は受け付けないよ」と言ってチームの名前を変えるつもりはさらさらなかった。

 

その頃……この鎮守府から少し離れた森の中、そこでは1人の青年が森の中からジッと夜空たちの鎮守府を見つめていた。

 

「文化祭……かっ」

『文化祭……確か、色んなお店を出してみんなで楽しむお祭りなんですよね! でも、盗み聞きはよくないです!』

「聞きたくて聞いたんじゃないよ! 君と同化してまだ間もないから……力のコントロールが上手くできなくて……」

 

1人しかいない筈なのに明らかに誰かと会話を行っている……もしここに彼以外に人がいれば確実に不振に思われる光景である。

 

『でも、そんなに気になるのなら会いに行けばいいじゃないですか! あなたの仲間達に』

「いや、それはできない……昔の、僕のせいで彼女たちを傷つけたんだ。 そのせいであの娘たちは僕のせいで……また仲間や姉妹を失ったかもしれないんだ……」

『それでも、やっぱり会いに行くべきです。 あなたが行ったその行動……僕は間違いだとは思いません!』

 

青年に向かって来るその声に対し、青年は特になにも答えようとはせず……そんな時、鎮守府の出入り口の辺りで電がコソコソと周りをキョロキョロしているのが見えた青年はなぜそんなに不振な行動をとっているのかと疑問に思い、首を傾げる。

 

「なにしてるの電?」

「ひゃい!?」

 

鎮守府から出ようとしていた電は突然背後から声をかけられて慌てて振り返るとそこには暁と響が立っており、電は冷や汗をかきながら慌てふためく。

 

「出かけるの? それなら私もついて行くわ! 1人じゃ危ないもの」

「え、えーっとそれは……えっと……」

 

「ついて来られると困るのです!」と思いながら必死に誤摩化そうとするが……慌てるばかりで中々言葉が浮かんで来ず、焦っていると……。

 

「もう、ダメじゃない電!」

 

そこに雷が駆けつけ、雷は暁と響に「文化祭の買い出しに行くだけよ」と言い、暁は「それなら自分達も……」と言うのだが雷は首を横に振る。

 

「暁姉と響姉は鎮守府での文化祭の作業をお願いするわ! 買い出しは私と電でなんとかするから!」

「そう? まあ、雷がついてるなら心配いらないかもね。 じゃあ行ってらっしゃい! 変な人には気をつけてね!」

「暁姉じゃないんだから大丈夫よ」

 

雷が余裕の態度で暁にそう答えると暁は「どういう意味!?」とぷんすかと怒り、電はそんな風に喧嘩する2人を慌てて止める。

 

「はわわ! 2人とも喧嘩はダメなのです!」

「まっ、兎に角行くわよ電!」

 

雷は電の手を引いて鎮守府を出て街へと向かって歩き出し、暁と響はそんな2人を手を振って見送るのだが……どうにも、響は浮かない顔をしていた。

 

「どうかしたの響? さっきから喋らないけど……」

「いや、2人ともどうも様子がおかしい気がしてね……」

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、司令室にて……別鎮守府府の提督の男性……「遠藤 壮一(えんどう そういち)」とその秘書官「大鳳型1番艦 装甲空母 大鳳」が訪れていた。

 

「それで? アンタがウチみたいなザコ鎮守府に何のようだ?」

 

実を言うと、夜空はこの壮一という人物が大嫌いである。

 

なぜなら壮一はこの鎮守府……駆逐艦しかいない鎮守府ということで自分達のことを格下に見ている節があり、実際にここの鎮守府のことを「ザコ鎮守府」と夜空の目の前で言ったことがあるのだ。

 

「まあ、そうかっかするなよ。 今回はお前に頼みがあってここに来たんだ」

「頼み?」

「お前のところのエースの夕立、さらに戦闘になると頼もしいと聞く時雨を是非とも俺の鎮守府に迎え入れたい」

 

壮一の言う頼みとは要するに「お前のところの優秀な艦娘を寄越せ」というものであり、それを聞いた時雨や夜空は口をポカンっと開け……壮一の勝手な申し出に呆れ果てていた。

 

「聞いた話によればこの2人は戦艦にも引けを取らないくらいに頼もしい駆逐艦だと聞く。 そんな彼女達はこーんな下らない鎮守府に置いておくのは実に勿体ないし……お前が持つにはまさに宝の持ち腐れだ」

 

「俺なら彼女達を上手く使える」と自信満々に言い放ち、時雨、夕立の引き渡しを要求するが……当然、夜空はこれを断る。

 

「いいか西崎? これは彼女達のためでもあるんだ。 彼女達のような人材はその人材にあった鎮守府に行くべきなんだよ。 時雨、君もそう思うだろ?」

「残念ですけど……僕も夕立も、ここが気に入ってるんです。 お引き取り願います」

 

時雨も壮一の元に行くつもりなどさらさらなく、夜空はドアダムに壮一を摘み出すように頼む。

 

『かしこまりいいいいィィィ!!』

 

ドアダムは言われた通り壮一に掴み掛かって彼を追い出そうとし、壮一は必死に抵抗するが抵抗空しくズルズルと引きずられて行ってしまう。

 

「お、おいなんだこいつ!? 西崎!! 絶対にお前のところの艦娘をウチに引っこ抜いてやるからな!!」

 

そんな捨て台詞を吐きながら連れて行かれた壮一に、秘書官である大鳳は呆れたような表情を浮かべており、彼女は夜空たちに対して頭を下げた。

 

「申しわけ有りません、ウチのバk……提督がご迷惑を」

「今自分の提督のことバカって言おうとした?」

「根は悪い人ではないのですが……ちょっと強引なところがありまして。 もしかしたら時雨さんたちを無理矢理連れて行くという強硬手段に出る可能性もありますので……お気をつけて。 私もしっかりとそんなことがないように見張るつもりですが」

 

少しやつれた様子の大鳳を見てると……夜空と時雨はあの提督の秘書官をやってる大鳳は大変そうだなと思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前、メビウスがゾアムルチとゼットンを相手に戦った海辺にて……。

 

その海辺の近くにあった洞窟、その中には棲姫が岩にもたれて倒れ込んでいた。

 

「チッ、まだ回復しないか……」

 

メビウスによって傷を治してもらい、一命を取り留めた棲姫だったが……それでも怪獣にやられた時のダメージがまだ残っていたため、海に帰るには体力が持ちそうになかったためにこの洞窟の中で身を隠し、身体を休めていたのだ。

 

「おい!! こっち来てみろよ!! 深海棲艦がいるぜ!!」

 

そんな時、不良学生と思しき人物が棲姫を見つけ、不良が仲間の不良を2人呼ぶと当然不良たちは驚きの声をあげ、棲姫は舌打ちしてすぐにここから逃げ出そうと立ち上がるが……。

 

「っ!」

 

上手く力が入らず、彼女はその場に座り込んでしまう。

 

「なんだ? こいつ弱ってんのか?」

「丁度いい、こいつを叩き潰せば……俺たちヒーローになれるぜ!!」

 

リーダー格の不良がそう言い放つと不良たちは邪悪な笑みを浮かべて棲姫へと踏み寄り、すかさず彼女の腹部へと強烈な蹴りを叩き込んだのだ。

 

「がはっ!?」

 

さらに不良の1人が少し大きめの木の棒を発見してそれを拾い上げると棲姫の頭上目掛けてそれを振り下ろし、頭を叩かれる。

 

「ぐっ……!?」

 

彼女は不良達に殺意を込めた視線を送るが……逆にそれは不良たちを煽ることになってしまった。

 

「なんだその目はこの化け物がぁ!!」

 

再び棲姫の腹部に蹴りを叩き込み、苦痛の声をあげる棲姫だったが……そんな時、電と雷がそこに駆けつけたのだ。

 

「あなた達なにしてるんですか!?」

「や、やめてください!!」

 

雷と電が棲姫を庇うように不良たちの前に立ち、それを見てリーダーが「化け物退治の邪魔をすんな!!」と怒鳴るが……。

 

「この娘は……化け物なんかじゃ、ないのです!!」

「はぁ? なに言って……んっ? もしかして、お前等艦娘か?」

 

リーダーにそう言い当てられてギクリとする電と雷、するとリーダーは相手を見下すような視線を2人に送る。

 

「なんだよ、艦娘の癖にそんな化け物庇うのか!? あぁ、そうか……お前等も化け物だもんなぁ! そりゃ同じ化け物同士、庇い合うのも当然かぁー」

「ちょっと!! さっきから聞いてれば化け物化け物って失礼じゃない!!」

「黙ってろよ化け物!!」

「ちょっ、髪引っ張らないで痛い!?」

 

リーダーは反発した雷の髪を引っ張り、他の不良2人もリーダーの命令で電を取り押さえようと迫るが……突然、リーダーの腕を誰かが掴み上げ、リーダーの腹部にその人物に蹴りを叩き込むとリーダーは大きく吹き飛ばされ……そのまま彼は海の中へと「ドボン!」と叩き込まれた。

 

「な、なんだテメーは!?」

「なんだはこっちだよ。 その娘たちに、手を出すな」

 

その人物は鎮守府を見つめていたあの青年であり、青年は殴り掛かって来た不良の1人の攻撃をあっさりとかわし、拳一発をその不良に叩き込むと不良は鼻から鼻血を出して気絶した。

 

「この野郎!!」

 

最後に残った不良が青年に背後から拳を振るったが彼はしゃがみ込んでそれを回避し、背後へと回り込むと不良の膝の後ろを蹴って不良のバランスを崩し、膝を突いたところに青年の手刀が不良の首筋に当てられ、不良はそのまま気を失って倒れこむ。

 

「はぁ……ついて来て正解だった」

「あ、あなた……」

「えっ? えっ? まさか……そう、なのですか……?」

 

雷と電は青年の姿を見て目を見開いて驚いた様子を見せ……やがて、2人は目尻に涙を浮かべると……。

 

「「し、しれいk『ウラアアアアアアアア!!!!!!』」」

 

いきなり現れた響の飛び蹴りが青年に炸裂し、青年は「ぐはああああ!!?」という悲鳴をあげながら吹き飛ばされた。

 

「地獄からの使者!! 駆逐艦 響!!」

「てっててれー♪ って言ってる場合じゃない!」

 

そこに現れたのは暁と響、2人とも様子がおかしいと思った雷と電について来たのだ。

 

「大丈夫だったかい2人とも? 遠くから今にも2人を誘拐しそうなロリコンっぽい奴を見かけたから撲滅しといたよ」

「いや、撲滅って……相手をよく見なさいよ響姉!!」

「えっ?」

 

響は雷に言われて先ほど自分が蹴り飛ばした青年の方へと顔を向けると彼女は青年の姿を見て雷や電と同じように驚いた表情を見せた。

 

「えっ? 電……雷、あれって……」

「そうよ……あの人は……」

「司令官さーん!!」

 

電が駆け出して誰よりも先に起き上がったあの青年の元へと駆け出して行くと彼女は青年へと抱きつき、青年は見事に電をキャッチした。

 

「おっと、えっと……その、久しぶり……だね? 電」

「うえええええん! 司令官ずっと会いたかったのですよぉ! 今までどこに行ってたのですか〜!?」

 

電は泣きじゃくりながら青年にがっちりと抱きつき、青年は困り顔を浮かべつつも電の頭を優しく撫でる。

 

「それで……司令官……。 いや、今は『風上 光(かざかみ ひかり)』さんと呼べばいいのかな? どうしてこんなところに?」

 

そう、彼こそが今現在、響達のいる鎮守府の……夜空の前任者である前提督の「風上 光」である。

 

「響も……久しぶりだね。 まあ、ちょっと……そこにいる娘に用があってね」

 

光は視線を棲姫の方へと顔を向けるとそれに釣られて暁たちも一斉に棲姫の方へと顔を向け、彼女の姿を見て暁がハッとしたような顔を浮かべ、彼女は雷に掴み掛かって一体これはどういうことなのかの説明を求めた。

 

「雷! あなた、深海棲艦を匿ってたの!?」

「えっと……それは……」

 

どう説明すればいいのか思い悩む雷だが……そこに電が暁と雷の間に割り込むように入ってくる。

 

「暁お姉ちゃん! 雷お姉ちゃんを怒らないでほしいのです! 雷お姉ちゃんはただ、電の我侭を聞いてくれただけで……」

「見たところ、そこの深海棲艦は随分弱ってるらしい。 電のことだ、大方……そんな彼女を電は助けたいと思ったんだろう?」

 

響が自分の大体の予想を言うと電は静かに頷き、彼女は棲姫へと駆け寄る。

 

「……お姉ちゃんたち……どうか、お願いです! この事は、誰にも言わないでほしいのです! こんなに弱ってるのに……」

「……お前、なぜそこまで私を……。 敵なんだぞ、私はお前達の!! お前等の仲間だって沈めたこともある! それなのになぜ私を助けようとする!?」

 

棲姫は分からなかった、なぜ彼女達の仲間を奪ったこともある自分を……電は必死に救おうとするのか、それが全く理解できず、彼女は怒鳴るように電にそのことについて問いかけた。

 

「確かに、そうなのかもしれません。 でも……敵だからって苦しんでる人を放っておくなんて、できないのです」

 

電はどことなく悲しげな表情を浮かべ、そんな彼女の表情を見た棲姫は彼女が本気でそう言っているのだと分かった。

 

そして……電は暁たちに「この事は誰にも言わないでください!!」と頭を下げて頼むのだが……。

 

「……無理よ」

 

暁の返答は……「無理」というものだった。

 

これを聞いて電や雷はショックを受けるが……次に暁から出た言葉は……。

 

「弱ってる娘を放っておくなんて……無理に決まってるじゃない!」

「「えっ?」」

 

暁の言葉に雷と電はキョトンっとし、暁は「響もそれでいいわね?」と響に問いかけると彼女は無言で頷き、サムズアップして見せる。

 

「なんたって私、お姉さんなんだし、妹たちが助けたい人なら可能な限りお手伝いするわ! 司令官も、いいでしょ!」

「えっ? あ、うん……でも……」

 

「えっへん!」と胸を張る暁、しかし……そんな彼女達を見て光は不安を抱かずにはいられなかった。

 

「本当にそれでいいのか」っと……棲姫に対してそんな風に手を差し伸べても、もしも……彼女に裏切られたらどうするのだという不安が彼の中には会った。

 

そんな時、光だけに再びあの声が聞こえて来る。

 

『いい娘たちですね、あなたの仲間は』

『いや、僕はもう……彼女達の仲間じゃない』

『またそんなこと言って……』

 

兎に角、先ずは人に見られた以上、棲姫を別の場所へと映す必要があるため、一同はここから一刻も早く離れるべきだと考え、場所を移そうとしたその時である。

 

「動かないでください」

 

ボウガンを構えた大鳳とその提督の壮一……そして彼が引き連れた艦娘たち……天龍と……「金剛型3番艦 戦艦 榛名」の4人が、光達の前に現れたのだ。

 

「さて、最近はあの鎮守府の電と雷が不審な行動を取っていると聞いていたが……まさかこんな秘密を隠していたとはな」

 

壮一は棲姫に見下したような視線を送っていると……その隣に光が立っていることに気付き、壮一は光を強く睨みつける。

 

「成る程……そういうことか。 流石はアンタの元部下だな。 こういうバカなことするのも一緒とは! お前達はまだ懲りないらしい」

 

棲姫や榛名、天龍は壮一の言っている意味が理解できず、首を傾げると壮一はニヤリと口元に笑みを浮かべ、一体なんの話をしているのか、彼は彼女等に向かって語り始めた。

 

「そう、お前もかつて……電と同じように怪我をした深海棲艦を自分の部下に黙って匿まい、そして裏切られた!!」

「えっ!? ということはあの人が……」

 

榛名の言葉に壮一は頷き、話の続きを彼女達に聞かせる。

 

「それからその深海棲艦はこいつのいた鎮守府を襲撃し、艦娘も大したことがなかったとはいえ、怪我人を多数出した! そしてあいつの元部下が今、同じ過ちを繰り返そうとしている」

 

壮一はどこからか取り出したカメラで光達が棲姫と一緒にいるところを写真に収めると壮一は大鳳たちに棲姫を攻撃をするように指示を出す。

 

「同じ過ちが繰り返される前に、そいつを始末しろぉ!!」

 

天龍、榛名、大鳳は壮一の命令に「了解」と答えると棲姫に攻撃を仕掛けようとするが……瞬時に電が艤装を出現させて装着し、主砲を構える。

 

「そこを退いてください。 数ではそちらが勝ってるとはいえ、駆逐艦では私たちに勝つことなど……」

「いえ、退きません!! この娘は……絶対に守るのです!!」

「電の言うとおり!! ここでこの娘を見捨てるようじゃ、レディの名がすたるってものよ!」

 

電に続き暁、響、雷が艤装を取り出して棲姫を庇うように立ち、その光景を見て壮一たちにも……光にも、どうしてそこまでして棲姫を庇うのか、全く理解できなかった。

 

「みんな、あんなことがあったのに……どうしてそこまでその娘を?」

「信じる心を、失いたくないから……なのです。 司令官だって……そうでしょう?」

「っ……」

 

電にそう言われてなにも言えない光、そんな時、あの声がまた光に語りかけて来た。

 

『……優しさを失わないでくれ。 弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも仲良くなろうとする気持ちを忘れないでくれ。 例えその気持ちが何十回、何百回裏切られようとも……』

「えっ?」

『僕の、兄さんの言葉です! 光さん、あなたにも……かつてはあったんじゃないんですか? そんな気持ちが』

 

その声の主の言葉を受け、光は顔を俯かせる。

 

一方で壮一は中々棲姫の前を退かない電たちに苛立ち、自分が持つ拳銃を取り出して電たちへと向ける。

 

「おい!! ガキになに銃を向けてんだよ!」

 

天龍が流石に電たちに銃を向けるのはどうかと思い、早くしまうように言うのだが……壮一は銃をしまう気配はない。

 

「さっさと退け! さもなくばお前達も撃つぞ」

「退きません」

「このまま反逆罪としてお前たちをこのまま消してもいいんだぞ?」

「いいねそれ、私の本のタイトルにしよう。 『コード○アス 反逆の響』っていうタイトルで」

 

「それパクリ!?」と暁がツッコミを響に入れる。

 

「チッ、仕方が無い。 構うことはない、そいつ等をさっさと押し退かして駆逐棲姫を始末しろ!」

「仕方がありません……こうなったら力づくでそこを退いてもらいます」

 

大鳳が壮一の指示を受けてボウガンを構え……ボウガンから幾つもの艦隊機を3機射出し、艦載機は電たちは棲姫を守る為に艦載機を撃ち落とそうと主砲を構えるが……。

 

すかさず天龍と榛名が素早く電たちに接近し、彼女たちの腕を掴み上げて動きを封じてしまう。

 

「なっ! 離してよ!!」

「……悪りぃな」

 

「大丈夫です、彼女は捕虜として連れて行くだけですから」

「オイコラ大鳳、俺は奴を倒せと命じたんだ。 捕虜なんかにするつもりはないぞ」

「ですが、彼女を尋問すれば敵の情報を掴める可能性が……」

 

しかし、大鳳の提案は壮一は「そんなものはいらん!!」と却下し、兎に角棲姫の始末を優先しようとする。

 

「ただでさえ最近は怪獣の出現率があがっているんだ。 深海棲艦はもう絶滅寸前、少しでも今の内に敵を減らすんだ!!」

 

壮一の言葉に大鳳は不満そうな表情を見せ、彼女は止むなく艦載機で棲姫を攻撃させようとしたその時……。

 

「夕立、あの艦載機の翼をへし折って来い」

「っぽい!!」

 

そこに突然現れた夕立が跳び上がって斧に変形させた主砲で3機の艦載機の翼を素早く切り裂いて撃墜し、彼女は斧を天龍に向ける。

 

「また会ったっぽい? 天龍さん……その手を離すっぽい」

「お前……」

 

さらに、現れたのは夕立だけではなく……夜空と奈々……そして彼の鎮守府に所属する艦娘全員だった。

 

「き、貴様ぁ……! 俺の邪魔をするのか!?」

「まっ、そうなるかね」

 

夜空たちは電たちの元に駆け寄り、電は「どうして……」と首を傾げて尋ねると……夜空曰く「最初から全部知ってた」かららしい。

 

なんでも、最近の雷と電の様子がおかしいことには夜空も感付いていたらしく、もしかすれば壮一がこの事を探る可能性があるかもしれないと考え、彼は今……ここに仲間達と共に駆けつけたのだ。

 

「はぁ、まさか光までいるとは……随分とお久しぶりですね」

「奈々……」

 

光は奈々の顔を見て少し気まずそうにするが……奈々は「まっ、話は後回しでいいです」と言って壮一のたちの方へと彼女は振り返る。

 

「どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!! そんなにその化け物を庇いたいのか! 昔あんなことがあったのに!!」

「でも、同じことが起こるとは限らない」

 

満潮がそう呟くと他の者達も彼女に同意するように頷き、夜空のところの艦娘たちは全員、棲姫を守る姿勢を見せていた。

 

「俺の部下が、俺の仲間が、俺たちの家族が守りたいって言ってんだ。 その家族が守りたいものを、俺たちも守る!」

 

その光景を見た光は、薄らと口元に笑みを浮かべて彼女達と同じように、棲姫を守るように壮一たちの前に立ち塞がったのだ。

 

「お帰りなさい、光提督」

 

如月が光の姿を見てそう言うと他の艦娘たちも同じように「お帰りなさい」と光に伝え、光は彼女達に対して力強く頷いた。

 

「どうして、そんなに私を……」

 

棲姫は電や暁たちだけでなく、他の者達も彼女を守ろうとすることに驚きを隠せなかった。

 

「どう、して……そこまでして……私を?」

「だって……もう、電たちとは……あなたは友達なのです! 友達の友達は友達、だからみんなも、あなたを守ろうとするのですよ!」

「私が……お前達の友達?」

 

電は満面の笑顔で「はいなのです!」と頷き、彼女を手を差し伸べ、棲姫は戸惑いつつもその手を掴もうと手を伸ばすのだが……そんな時。

 

「っ!?」

「……えっ?」

 

棲姫の背後から誰かが……彼女を撃ち抜いたのだ。

 

「あっ……」

 

そして……棲姫は電の手を掴むことができず、彼女はお腹から血を大量に流しその場に倒れ込んだ。

 

「そ……んな……。 棲姫……ちゃん?」

 

この突然の出来事にはこの場にいた全員が……壮一すら驚愕した。

 

「棲姫ちゃん……! 棲姫ちゃん……!」

 

電は必死に棲姫に向かって呼びかけるが……棲姫は電の手を強く掴む。

 

「あり……が、とう……」

 

それだけを言うと棲姫は静かに目を閉じ、彼女は息を静かに引き取った。

 

「そん……な、嘘……ですよね、棲姫ちゃん……。 う……うぅ……うわあああああああああああああ!!!!」

 

電は大声をあげながら泣き叫び、夜空たちは一体誰が彼女を殺したのか辺りを見渡すが……周りにはそれらしき人物が誰もいなかった。

 

その時である、突然地響きが鳴り……地面から棲姫に封印されていたゼットンとゾアムルチが復活したのだ。

 

ゼットンとゾアムルチが復活すると同時に、雨が突然降り始める。

 

「なんで……こんな時に怪獣が現れる!」

「棲姫ちゃんが……封印していたのです。 あの怪獣たちを……」

 

それを聞いた壮一は「なに?」と首を傾げ……そこで彼は理解した。

 

自分がやろうとしたことは、あの怪獣たちを復活させることを意味していたのだと……。

 

そう考えると壮一はぞっとした、自分があの怪獣たちを呼び起こしたかもしれないと考えると……。

 

「だが、どちらにせよあの怪獣たちを呼び出したようなものかもしれん。 大鳳、榛名、天龍! あの怪獣共を倒せ!!」

「お前達も頼む、あの怪獣たちを街には絶対に行かせるな!!」

『了解!!』

 

壮一と夜空の指示で彼女達は一斉にゼットンとゾアムルチの元へと向かい、攻撃を始める。

 

しかし、棲姫に抱きついて泣きじゃくる電と……それを心配そうに見守る暁、響、雷はそこを動こうとはしなかった。

 

その事については夜空もとやかく言うつもりはなく、今はそっとしておこうと思うのだった。

 

一方、ゼットンとゾアムルチを相手に戦う艦娘たちは……。

 

「こんな奴ら! サイバー怪獣の力で一気に決めてやる!」

 

皐月はサイバーカードを取り出して使用しようとするが菊月が慌ててそれを止める。

 

「いや待て! サイバー怪獣の力は一分しか持たないんだぞ、もっと慎重に使え!」

「で、でも怪獣が今回は2体もいるんだよ!?」

 

そんな時、菊月と皐月に向かってゼットンが火球を放ち……ゼットンの攻撃に気づいた2人は慌てて回避しようとするが……このままでは間に合わない。

 

『サイバーガルラ、ロードします』

 

そんな時、菊月と皐月の前に睦月が現れ、「サイバーガルラ」のカードをジオデバイザーに呼び込ませて「超古代怪獣 ガルラ」の力をその身に宿し、周囲にバリアを発生させてゼットンの火球を防ぐ。

 

「2人とも大丈夫!?」

「うん、助かったよ睦月姉さん」

「よし、満潮! 如月、お前達はサイバーカードを使用して奴を攻撃してくれ!」

 

菊月の指示に「了解!」と2人は答え、如月と満潮はサイバーカードをジオデバイザーに装填する。

 

『サイバーグビラ、ロードします』

『サイバーサラマンドラ、ロードします』

 

「深海怪獣 グビラ」の力を満潮に、「再生怪獣 サラマンドラ」の力が如月に宿り、満潮が手に持つ主砲がドリルへと変わり、満潮はドリルを前に突き出すとそこから強力な光線が放たれてゾアムルチに直撃する。

 

「これでも喰らってなさい!!」

「グアアアアア!!?」

 

さらにそこに榛名の放った砲弾がゼットンの足に直撃し、流石に戦艦クラスの攻撃は多少は効いたらしく、ゼットンは足下をフラつかせる。

 

フラついたところで如月が主砲から放った火炎がゼットンに襲いかかるが……ゼットンは鬱陶しそうにするだけでまるで効果がなかった。

 

「ゼッ……トン!」

 

ゼットンは彼女達に向けて火球を向けて何発も発射し、先ほどの攻撃で怒ったゾアムルチも口から光線を吐き出して彼女達を攻撃する。

 

しかし、睦月がガルラの力でバリアを可能な限り巨大化させて張り巡らせ、必死に彼女達を守るが……間もなく1分の時間制限を切ってしまう。

 

「う、うぅうううう……! もう、時間が……!」

 

そんな苦戦する彼女達の様子を見て、夜空は「ここは任せる」と奈々に頼んだ後、彼女は頷き、夜空はどこかへと駆け出して行く。

 

「彼は一体どこへ!?」

「彼女達を助けに……ですよ」

「えっ?」

 

そして夜空は人気の無い場所へと行くとエクスデバイザーを取り出す。

 

「行くぞエックス、ユナイトだ!」

『よし!』

 

エクスデバイザーの上部ボタンを押し、側面のパーツをX字に展開したXモードに変形させるとエックスのスパークドールズが出現し、リードさせた後、夜空はエクスデバイザーを掲げる。

 

『ウルトラマンエックスとユナイトします』

「エックスーーーーーーー!!!!」

 

すると夜空は光に包まれ、その光は「ウルトラマンエックス」となるとエックスは地上へと降り立った。

 

『エックス、ユナイテッド』

『シャア!!』

 

エックスはゼットンとゾアムルチに向かって光エネルギーを矢じり型にして放つ「Xスラッシュ」をゼットンとゾアムルチに向かって放ち、直撃を受けた2体は睦月の攻撃をやめてエックスに敵意を向ける。

 

『シュア!』

 

エックスは駆け出してゼットンに蹴りを繰り出すがゼットンはそれを受け流してエックスの胸部にチョップを叩き込み、さらに横からゾアムルチの尻尾攻撃が繰り出されてエックスは吹き飛ばされてしまう。

 

『ウアッ!?』

 

ゾアムルチは光線を放ってエックスを攻撃するがエックスはそれをどうにか避けてジャンプしてゾアムルチに跳び蹴りを喰らわせる。

 

「ギシャアア!!?」

 

その直後に背後からゼットンに背中を殴りつけられ、膝を突くエックス。

 

そのままゼットンは後ろからエックスの首を締め上げる。

 

『グアッ……!?』

 

しかしゼットンの腹部に肘打ちを叩き込んで怯んだところでどうにかゼットンの高速から抜け出し、体制を立て直すとエックスは再びゼットンに向かって駆け出して行く。

 

『デアッ!』

 

エックスはゼットンに掴み掛かるとエックスはゼットンの肩にチョップを叩き込むがゼットンはエックスを振り払って彼を殴りつけ、さらには体当たりをしてエックスを突き飛ばす。

 

『グウ!?』

「エックス! 一気に決めるぞ!」

『分かった!』

 

両腕を胸の前でX字にクロスさせて発射する「ザナディウム光線」をゼットンに向かって放つが……。

 

『「ザナディウム光線!!」』

「行けない!!」

 

それを見た光がそう叫ぶが時既に遅し……ゼットンはエックスの光線を吸収し、それを波状光線としてエックスに撃ち返して来たのだ。

 

『「なに!?」』

 

エックスは慌てて壁状に展開する「Xバリアウォール」でゼットンの攻撃を防ぐが……すぐに砕かれてしまい波状光線をエックスは受けて吹き飛ばされてしまう。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

それを見ていた光はこのままではまずいと感じ、どこかに行こうとするが……それよりも先に光は電たちの方へと駆け寄る。

 

「電……」

「司令官……さん」

「悲しい気持ちは分かる。 だけど……今は大変なことになってる」

 

未だに涙を流し続ける電にそう語りかける光。

 

「みんなが、戦ってるんだ」

「……」

 

電は涙を拭って頷き、暁たちも彼女に対して頷くと彼女達は仲間達の元へと駆け出して行った。

 

それを見届けた光もまた、どこかへと駆け出して行き……突然の行動に奈々は「光! どこへ!?」と言うが光には奈々の声が届かなかった。

 

そして光は夜空と同じように人気のない場所に行くと彼は左腕を構え、そこに赤いブレス……「メビウスブレス」が出現する。

 

「メビウース!!」

 

そして右手でメビウスブレスのクリスタルサークルを回転させてそれを掲げると光は「ウルトラマンメビウス」へと変身したのだ。

 

「あれは……」

「新しい……ウルトラマン?」

 

朝潮と満潮がメビウスを見てそう呟き、メビウスはゾアムルチに駆け出して後ろからゾアムルチに掴み掛かる。

 

「ギシャアアア!!」

 

ゾアムルチはメビウスをどうにか振り払って腕を振り上げメビウスを殴りつけようとするがメビウスはゾアムルチの腕を掴んで背負い投げを繰り出す。

 

『セアッ!』

 

そのままゾアムルチに追い打ちをかけようとするメビウスだったが……後ろからゼットンがメビウスに掴み掛かって無理矢理自分の方へと振り返らせるとゼットンはチョップをメビウスの胸部に叩き込む。

 

『グウ!?』

『シュア!!』

 

だがその直後にエックスの跳び蹴りがゼットンに繰り出されるのだが……ゼットンはそれを受け流して近距離からの火球をエックスに撃ち込む。

 

『グアッ!?』

 

さらにゾアムルチの光線がメビウスに、ゼットンの火球がエックスに放たれ……2人は2体の攻撃の直撃を受けてその場に膝を突いてしまう。

 

「大丈夫? 電?」

 

一方で雷は電が戦闘に参加できるのか大丈夫かと心配していたが……彼女は涙を拭い去る。

 

「大丈夫なのです! エックスさんもあのウルトラマンさんも、助けて見せるのです! 電の本気を見るのです!」

 

電がそう叫ぶと同時に……降っていた雨が止み、太陽の光が差し込む。

 

「よし、サイバーカードを使ってウルトラマンを援護よ!」

 

その電の表情には力強さが籠っており、暁、響、雷、電が並び立つと4人はジオデバイザーにそれぞれのサイバーカードを装填する。

 

「さあ、第六駆逐隊の力見せつけてやるわよ!」

「「「おー!!」」」

 

戦闘BGM「バトル・フィールド」

 

『サイバーモモザゴン、ロードします』

 

響は「くいしんぼう怪獣 モモザゴン」の力をその身に宿し、主砲から怪音波をゾアムルチに向かって放つ。

 

「グアアアア!!?」

 

その怪音波にゾアムルチは耳を塞いでもがき、その隙に今度は暁がサイバーカードをジオデバイザーに装填する。

 

『サイバーザラガス、ロードします』

「ってぇー!!」

 

「変身怪獣 ザラガス」の力を宿した暁は主砲から砲弾をゾアムルチに向かって発射し、それがゾアムルチの目の前で目の前が光り輝いたかと思うとゾアムルチはその光に目をやられて視界を防がれ……地面を倒れ込んでしまう。

 

「ギシャアア……」

 

ゾアムルチは目が見えなくなり、隙だらけとなってしまう。

 

『サイバーネロンガ、ロードします』

『サイバーエレキング、ロードします』

 

雷は「透明怪獣ネロンガ」、電は「宇宙怪獣エレキング」のカードをロードさせる。

 

さらにそこに時雨、夕立も加わってサイバーカードをジオデバイザーに装填。

 

『サイバーガルベロス、ロードします』

『サイバーゴモラ、ロードします』

 

ガルベロスの力とゴモラの力を夕立と時雨は宿し、4人は主砲を構えて一斉にゾアムルチに向かってそれぞれの攻撃を発射する。

 

「ゴモラ振動波!!」

「ガルベロス火炎弾!!」

「ネロンガ電撃光線!!」

「エレキング電撃波!! なのです!」

 

時雨、夕立、雷、電の攻撃が一斉にゾアムルチに放たれ……直撃を受けたゾアムルチは悲鳴をあげて爆発した。

 

「グアアアアアアアアアア!!!!!?」

「……ごめん、なさい……なのです」

 

ゾアムルチを倒した電は、そう静かに呟いた。

 

「エックス!! こっちは片付いたよ! それと、このカードを!!」

 

時雨がエックスにそう伝えると彼女はジオデバイザーを使ってエックスにあの時、グルマンから渡されたカードを送信して送り、夜空は時雨から渡されたカードを受け取る。

 

「これは……サイバー怪獣じゃない?」

『成る程な、君たちの絆という訳か』

「よし、行くぞエックス!」

『おう!』

 

夜空は迷う事無く時雨から渡されたカードをエクスデバイザーに装填させる。

 

『駆逐艦 時雨 ロードします』

 

するとエックスはメインカラーは黒で他のモンスアーマーと同様に胴体の中央部分にはX字の文字が刻まれており、その手には時雨が持つ2つの主砲が握られる。

 

また肩部はゴモラアーマーよりも鋭利に尖ったデザインをしており、太もも部分には時雨の艤装と同じ魚雷を撃ち込む為の装備もある鎧……。

 

『駆逐艦 時雨アーマー アクティブ!』

 

エックスは時雨の力を宿した鎧……「時雨アーマー」をその身に纏ったのだ。

 

挿入歌「ウルトラマンX」

 

同時にメビウスも炎の紋章を纏った「バーニングブレイブ」へとパワーアップする。

 

エックスは主砲を反対に持ってトンファーのように手に持ち、ゼットンに向かって駆け出して主砲でゼットンに殴り掛かり、ゼットンは両腕で交差して攻撃を防ぐが結局はゼットンは殴り飛ばされてしまい、ゼットンは地面を転がる。

 

「ゼッ……トン」

 

ゼットンは火球をエックスに向かって放つがエックスは主砲を元の状態で手に持って砲弾を放ち、ゼットンの火球を相殺する。

 

『セアッ!』

 

さらにそこにメビウスの跳び蹴りが炸裂し、倒れ込んだゼットンの足下を掴んでスイングし、ゼットンを空中へと投げ飛ばす。

 

『デアッ!』

 

エックスは再び主砲を反対に持ち、跳び上がってゼットンよりも高く空中へと飛ぶとそのまま急降下しながらゼットンを殴りつけ……ゼットンは地面へとたたき落される。

 

『シャア!!』

 

挿入歌「ウルトラマンメビウス」

 

しかしそれでも尚ゼットンは立ち上がり、火球をメビウスとエックスに向かって放つが2人はそれを避け……メビウスはゼットンに向かってジャンプして勢いをつけた拳をゼットンの顔面に叩き込む。

 

『シュア!!』

 

メビウスはゼットンの胸部に何発も拳を叩き込んだ後、ゼットンに回し蹴りを喰らわせる。

 

『デア!』

 

ゼットンはどうにか反撃しようと火球を撃とうとするが……それよりも先にエックスに顔を主砲で撃たれ、ゼットンの顔が焼け焦げてしまう。

 

「フィロロロロ!?」

 

メビウスとエックスは並び立ち、メビウスはメビウスブレスから発生した炎のエネルギーを胸の部分に集中させて、巨大な火球を敵に放つ「メビュームバースト」を繰り出す。

 

「バーストデストロイヤー!!」

 

エックスは主砲にエネルギーをチャージさせ……それをゼットンに向けて発射する「バーストデストロイヤー」を発射し、ゼットンはバリアで攻撃を防ぐが……2人の技を同時に防ぎ切ることはできず、ゼットンはバリアを砕かれて2人の攻撃を受け……火花を散らして倒れ爆発した。

 

「ゼッ……トン」

 

メビウスとエックスはゼットンを倒し、2人は互いに顔を見合わせて互いに頷き合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が、ウルトラマンエックスだったのか……」

「そういうあなたは……あのウルトラマンだったんですね」

 

その後、2人は変身を解いて元の姿に戻ると光はメビウスブレスを出現させてそれを夜空に見せる。

 

「彼の名は、ウルトラマンメビウス。 彼はある者を追ってこことは違う世界から来たらしいんだ」

「ある、者……?」

 

夜空の言葉に光は静かに頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……電は棲姫の墓を建てた。

 

彼女はそのお墓にしばらく手を合わせた後、電は立ち上がり「じゃあ、また来ますね」とそれだけを言ってその場を立ち去るのだった。

 




棲姫がウルトラマンを知っていたのは深海でもウルトラマンの存在が知れ渡っているためです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。