時刻は深夜零時を回ろうとしていた。
スマートフォンがメールが届いた事を知らせるアラームが鳴り響く。
それ自体は何処にでもありそうな光景だ。
眠気の残る眼を擦りながら、一人の青年がメールを開いた。
「報酬:補充霊装・装飾銃、輸送済み」
短い一文が表示される。
送り主は魔術教会、現代まで魔術を秘匿し、魔術師の血統で魔術師を志す者達を受け入れ、育成していく所謂、秘密結社からだ。
で、何でそんな秘密結社のメールを青年・藤宮カズマが受け取っているかと言うと答えは一つ。
数ヶ月前から藤宮カズマは魔術教会と関わりを持っていて、魔術教会からの依頼を遂行しては、魔術師としては素人同然のカズマに適した魔術霊装と装備を要求している。
「今度は銃ですか?」
「ああ、今度の連中が出てきたら・・・コレくらいね」
画面を覗き込む金紗の髪を三つ編みにした少女は尋ね、カズマは答えた。
極東の島国、日本。
魔術教会が認知していない異能力者が隠れているこの島国で、そう言った
血生臭く、非現実的な世界で生きるようになったのは半年前。
相棒の
クラス・ルーラーのサーヴァントの少女、真名:ジャンヌ・ダルク。
調停者を名乗るジャンヌは相手に真名を隠さない。
サーヴァントの中でエクストラクラスに属する為、特に弱点となるクラスの相性は無いという。
だが、カズマは違う。
「で、これが令呪で契約の証と?」
「そうです。と言うか驚かないのですね?」
「別に、見慣れてるだけさ。」
自嘲気味にカズマは言う。
誰にも言えない、彼だけの悩み。
それが、サーヴァントであって人ではないと言ったジャンヌの事を奇異に見せない。
「見慣れていると仰いましたが、何をですか?」
「言っても信じないだろうね。けど、行き成り甲冑姿の女の子が降ってきたのは驚いた。割とマジで」
「私も驚きました。マスターの元に現界したと思ったら落ちるのですから」
「俺の上にな!」
「すみません。」
そう、ジャンヌとの出会いは最悪だった。
何せ、仕事から帰宅して、疲れきっていたカズマは必要最低限の事を済ませて眠ろうとベッドにはいった。
左手に痛みを感じたと思うと手の甲には見知らぬ模様、次いで甲高い悲鳴と甲冑の姿の少女がズドン!だったのだ。
危うく吐きそうになったね、夕食を。
「いや、もう良いさ。」
しゅんっとしているジャンヌにカズマはそういった。
訳も分からず召喚されたジャンヌをせめても仕方ないと思ったのだ。
聖杯戦争で召喚されたわけでもないジャンヌはこの召喚を異常と言う。
「だろうな、俺は魔術なんてサッパリだ。聖杯戦争が魔術師七人と七騎のサーヴァントによる殺し合いなら俺は魔術師って事になる。」
「そうです。所であそこで見ているのはご家族ですか?」
ジャンヌが指すところは玄関、顔を覗かせているのは両親。
面倒が尽きる事はないらしい。
藤宮カズマの経歴は、一言で言えば異質だ。
齢25で傭兵派遣会社・PMCで三ヶ月、実地トレーニングを積み、日本の民間人でありながら実弾の発砲経験があり、戦場と言う地獄を知っている。
そして、PMCの教官が目をつけたのは思いっきりの良さ。
勝てない、だとしても逃げながら何かしらしていく。
敵地のど真ん中に一人残しても、まるで忍者のように消えて脱出するその隠密行動能力も高く評価した。
そう、カズマは普通ではない。
ついでに言うとその両親も若干ずれている。
「そう、ジャンヌちゃんは家にいていいのよ」
「ですが、私がここに居たら皆さんに危険が」
「大丈夫、その
「可笑しいよね!?どうして受け入れてるのさ!あんた等は!!」
聖杯戦争の説明を受けても輝かしい笑顔を崩さない両親に思わずツッコミをいれるカズマ、ジャンヌはさっそく両親の心配までしている。
流石は救国の聖女と言うところか。
「ま、行く当てが無いのなら居ても良いということですよ。」
と親父が優しく言う。
これがジャンヌが藤宮家に来た時の一幕である。
「ところで、“見慣れている”と言いましたが何を見慣れているのか教えていただけますか?」
急に部屋が用意できない、そんな理由でカズマが自室として使用する離れに仮住まいすると言う話で収まった。と
言うよりは両親はこのままはぐらかす気満々だろう。
ジャンヌはどうやら、普通に受け入れられた事に驚きと困惑。そして、カズマの見慣れていると言う“者”を知りたいらしい。
「・・・・てか、ある程度現代の知識あるのね」
「あ、はい。と言うかはぐらかしましたね?」
と言うジャンヌを殆ど見ずにテレビをつけると心霊番組がやっていた。
カズマは丁度良いといわんばかりに画面を指差す。
「
「ひぅっ!」
テレビ画面では投降映像の肝ともなる「お分かりいただけただろうか?」の部分である。
見た途端に短い悲鳴を上げるジャンヌ。
「そっか、ジャンヌは怖いの苦手なんだな」
「はい、サーヴァントなのですが・・・・」
テレビを消すカズマは微笑する。
サーヴァントなんて言ってもやっぱり中身は女の子のようだ。
神の声を聞いたとされる救国の聖女、そんな伝承に残るジャンヌ・ダルクと目の前の少女は同一人物といわれてもピンと来ない。
「別に良いんじゃないか?サーヴァントだとしても女の子に変わりないし、疲れたろ?今日はもうゆっくり・・・・」
と言ってカズマは言葉をつまらせた。
よくよく考えれば、ジャンヌのような高レベルの美少女と同じ部屋で生活するなんて経験がない。
寝れる訳がない。
カズマは心底そう思った。
あの時も思った。
この瞬間、目の前に広がる光景が夢であって欲しいと。
この、累々と横たわった死体と硝煙に見た空間が。
「あ、おはようございます。マスター」
すっきりとした表情でジャンヌは机に突っ伏すカズマにそう言った。
結局、ジャンヌはベッドで寝ていた。
離れには客用の布団などない、突然の事で両親もそう言った気遣いも回らなかったようでカズマはジャンヌに譲ったのだ。
「あ、おはよぅ・・・・取り合えず、マスターっての止めようか?」
「あ、はい。カズマ・・・・起きてたんですか?」
「まぁ・・・・ね、キミの記録についてみていた。」
カズマはジャンヌ・ダルクについてよく知らなかった。
行き成り現れた少女が、ジャンヌ本人ですと言われてもピンと来ないのは勿論サーヴァントとして自分と契約したなんて夢のようだ。
いや、夢だろう。
それも悪夢の類だ。
「・・・・実際に見た印象はどうですか?」
「神の声を聞く事ができた少女、なんて記事ばっかりだったけどそうは見えない。何処にでもいる可愛い女性って所かな」
「ぷっ!何ですか、ソレ」
噴出すジャンヌを見て思わず頬をかいてあさっての方向を向くカズマ。
「でも、カズマも普通の男性です。特別な力なんてないんだ」
「さんきゅ、でも聖杯戦争が関係ないんなら殺しの判断はしなくて良いんだよな?」
「恐らく、私以外にもサーヴァントが召喚されているなら魔力を確保する為にマスターを探すでしょう。それか、何かしらの事件を起します。」
「そっか、直ぐに関係なら今は良い」
それでも、関係してしまった。
サーヴァントが起した事件なら、記録どおりなら正義感の強いジャンヌは解決しようと動くだろう。
(・・・・コレが俺の日常になるのか)
カズマは内心呟いた。
新たな日常に、未知に対する好奇心と“また”命のやり取りに関わるのかと言う後悔を抱きながら。
Fate/GOやってて脳内で出来上がった光景、でもジャンヌ居ません。
いつも借りてます。
ジャンヌ欲しい!