誰しも魂には魔力を灯している。
ソレが微量であれ、大勢の人間が一度に集まる墓所で魔力を採取する事で多くの魔力を
補う事ができるわけだ。
そして、子供は純粋で大人より魔力の質が段違い。
スーパーで売っている豚のばら肉とA5和牛くらいに。
「どうだ?
カズマとジャンヌが校舎内に足を踏み入れた同時刻、一階の東側にある教室に問題を越しているサーヴァントと
久坂真二郎、二年前小学生連続殺害の容疑で指名手配されている殺人犯だ。
久坂の右手の甲には令呪がうっすらと見て取れる。
「キヒッ!マスター・・・ネズミが入り込んだみたいだ。一人はサーヴァントだよ!」
ピエロのような風体で、悪魔と呼ばれたソイツはサーヴァント。
クラスはキャスター、久坂のサーヴァントで殺戮と言う一点で共感して今に至る。
久坂が再び犯罪に手を出す居城をキャスターは作り上げる為の魔力を必要している。
それが、久坂が最初に令呪を持って命じた事。
「そうか・・・
「マスター、良いデスヨネェ!?私、交戦主義なんです!!」
両者は互いに興奮する。
キャスターは獲物の鋏を鈍く光らせ、久坂は元陸上自衛隊員である。
その訓練された屈強な肉体は素人には凶悪な武器となる。
久坂の手にはバタフライナイフが一本。
「怖いのね、ジャンヌ?」
カズマはペンライトとソーコムを構えがら、階段をクリアリングして左袖を掴んでいるジャンヌへ肩越しに振り返る。
「と、当然です!何で夜の学校ってこんなに不気味なんですか!?」
「俺が知るか。けど、おおぴらに電気をつけるわけにも行くまいよ。コレでも不法侵入なんだぜ?」
「この静けさが余計です!今にも何かでてきそうと言うか・・・・」
「自分で呷ってどうするよ?」
泣きそうな声で抗議するジャンヌにカズマは苦笑する。
草子の言う高位の英霊も所詮は単なる少女だ。
「昼間でも日の当たらないトイレとか薄暗くて怖かった記憶あるな・・・でも、ここもそう言うのばかりじゃない。思い出も詰まってるんだ」
少しでもジャンヌの気を紛らわそうと思い出を漁る。
カズマはこの小学校出身でもある。
そう言った意味ではカズマは不気味と言うより、懐かしみも覚えていた。
「そうなんですか?」
「そう、俺はここの卒業生でもあるからね。昔もこうやって忍び込んだもんさ・・・で、肝心のサーヴァントの気配は?」
「はい、一体は確実に
ジャンヌの言葉に思わず頭を掻き毟るカズマ。
「ってぇ事は?」
「・・・・・陣地だ!キャスターは魔力を集めて蓄えているんです。」
顎に手をあてて考えるジャンヌは答えに行き着いたようでハッとしたように言った。
簡単な話、この校舎に入る異物は直ぐにキャスターへ感知されてしまうという事だろう。
赤外線センサー、なんて生易しい物ではない。
「じゃ、俺らが居る事は把握されているなぁ。こりゃ、因みにジャンヌ?」
「何ですか?」
「相手がサーヴァントで尚且つ今の状態のキミは何処まで戦える?この不利な状況下で。」
カズマの頭の中では仮想の戦闘が何十パターンも形成され、決着がついては消えていく。
ジャンヌの答えを待つ間も仮想の戦闘に没頭するカズマ。
「正直、言いますと逃げの一手なら何とかなるかもしれませんが撃破となると難しい。キャスターがこうしているという事は相手にもマスターが居るはずですし」
ジャンヌの一言でカズマの頭の中でスイッチが入る。
それは、PMCで身につけた
平和ボケしていた自分が、戦場で生き残る為に非常に徹するスイッチでもある。が、今回は事情が違う。
「可能な限り、
「それ、相手が殺意を持って向かってきた時だけにしてください。私はカズマに殺人の汚名を着せたくない。」
「ジャンヌは優しいね。俺は当の昔に汚名を着ている・・・・だからこそっ!」
バスッ!
「殺意を持って向かってくる者を容赦なく殺せる」
ジャンヌが背を向けている壁はコンクリート製。幾ら内装を施しようとも壁の中を移動する事は敵わない。
出来る筈がない。
壁に穿たれた弾痕は、確かにソレを貫いた筈だった。
「おやぁ、良いですネェ!一切迷いのない銃撃!楽しくなっちゃいますねぇ!!」
壁から抜け出るように身体を捩るピエロ、その風体は見ているものに恐怖を与える。手にした断ち切りバサミには血糊が着いているのが、窓から入る月明かりで見て取れる。
「貴方は何故こんな事を!?」
ジャンヌが、フラッグ・ロッドを槍のように構えて抜け落ちる男に問うた。
「・・・・何故?これまた可笑しなことを言う人だ。楽しいからに決まっているじゃないですか!!」
「チッ、狂ってるな」
「そぉれはお互い様でしょう!?マスターさん!」
ねちっこい言い回しで、鋏の刃を舐めながら言うキャスター。
「今回の召喚は聖杯戦争ではない。何か異常な力が働いた結果だ!私達が戦う意味はないんです!」
「だとしてもぉ?私、交戦主義者なんですよぉ!?それに私、反英霊って奴デェ!」
「っ!?」
ゆらりとキャスターが動いた。
まるで陽炎のように、それでいて瞬間移動したように間合いがゼロになる。
階段の踊り場の左と右の橋に居た両者は一瞬で影を重ねる事になる。
ドスッ
「
「いつ・・・っ!?」
「ジャンヌ!!」
ジャンヌの右脇腹に徐に突き刺さった断ち切り鋏、カズマは弾かれるようにキャスターへ発砲する。
「なぁるほど!異常な召喚で弱っているとは言ぇ実に殺り甲斐のあるお嬢さんだぁ、ジャンヌ・ダルク?」
「このっ!」
銃撃とロッドの打撃が、キャスター・メフィストを捉える事はない。
軽快にバックステップを踏み、壁に再び溶け込んでしまう。
「この校舎はぁ!私たちの陣地なのでぇ、死にたくなければ必死に逃げてくださぁい!!勿論、今夜に貴方方が死に、昼間には数百人の子供が追うことになりますがネェ!!?」
メフィストは腹を抱えて笑ったような、ソレでいて纏わりつくような口調で深夜の校舎に声を響かせる。
「くぅっ!」
ジャンヌが膝を折る。
並の人間なら内臓を傷つけられた時点で助かる見込みは薄い。サーヴァントだからこそ、と言ったところだろう。
甲冑の隙間から大量の血が滴っている。
「ジャンヌ、動けるか?」
「はい・・・サーヴァントの身でなければ、危ない一撃でした。何とか」
「掴まって。
ジャンヌはカズマの肩に手を回して、移動を始める。
不思議と今まで聞いていた様な気味の悪さとは感じなかった。
カズマとジャンヌが三階を移動している時、一階・職員室前の廊下に久坂の姿はあった。
手にしたバタフライナイフをぱきんぱきんと展開しては閉じを繰り返しながら、獲物を待つ。
「早く来ないかなぁ」
恋焦がれる少女のように、思い人を待つ恋人のように、思う存分殺しあえる相手を待っている。
「マァスター、女のほうは貰うよぉ?」
「良いぞ、メフィスト。マスターは出来るんだろうな?」
「そりゃあもう、警官なぶるよりよっぽど楽しいこと請け合いさぁ」
久坂はメフィストと互いの獲物を確認する。
互いに歪んだ笑みを見せ合い、殺し快感すら覚えている変態犯罪者が二人。
ピクリッ
けらけらと笑うメフィストが眉を跳ね上がらせ、陣地を結ぶ点=魔法陣をセットしていた教室のほうを見る。
「どうした?」
「やるネェ。ジャンヌ・ダルクとそのマスター・・・じゃ、行くからぁマスタァーも急いだほうが良いよぉ!?」
廊下に溶け込むメフィストを久坂は傍観する。
「来たか、ジャンヌ・ダルクのマスター」
実に15メートル離れた角から、カズマは姿を現した。
「・・・・見た顔だな。それに隠れるならもっと殺気を消した方が良いぞ、気配に敏感な奴なら感づく」
「成る程、素人という訳じゃないらしい!」
豪!と久坂が廊下を蹴ると爆発でもしたような衝撃が、カズマの髪を揺らす。
キャスター・メフィストの身体強化で、訓練された久坂の身体はサーヴァントに近いスペックとなっている。
「思い出した。二年前のニュースで騒がれてた顔だ・・・」
迫る凶刃を前にしてもカズマは揺るがない。
想いっきり後ろに飛びながら二発発砲し、階段に背を打ち付ける。
「バカが!」
久坂は、確信を持った。
次の一手でこの生意気な坊主を殺せる。
仰向け状態から直ぐに体制を立て直せるわけがないからだ。
「ガキばかり狙っているから、足元をすくわれる」
「なッ!?」
突き出し、伸びきった久坂の左腕を弾丸が貫いた。
左腕だけじゃない、右太股にも銃弾が牙を剥いていた。
「ガイドがなかったら、危なかったな」
起き上がるカズマ。その視界には半透明の少年とおかっぱ頭の赤いワンピースと言うどの学校にも居るであろう少女が映っている。
相手に見えない部分がアドバンテージ。
キャスターの作り出した空間は、肉体なき彼らにとって酷く居心地が悪いものだったようだ。
「たっ!助けてくれ!!」
懇願する殺人鬼は、一体どうしてキャスターのマスターになったか?疑問は尽きないが、カズマは銃口を向けた。
そして、酷く冷たい口調ではっきりと言い放つ。
「・・・・お前は、子供たちの命乞いを聞かなかったろ?」
暗闇の廊下にマルズフラッシュが瞬く。
キャラ紹介
・久坂真二郎
元自衛隊員、弱い者をいたぶるのが大好きという救いようのない奴。
小学生ばかりを狙った殺人犯で、指名手配されている。
二年間身を潜めて逃亡生活を送っていたが、追い詰められたところでキャスターと偶発的な契約を果たす。
キャスター・メフィスト・フィリスと共感したのは殺人で快楽感じると言う一点。
メフィストの陣地に付き合い、交戦=敗北し戦闘不能となる。