「良いのですか?可奈」
純白のプレートドレスを身に纏った少女が、自身のマスターである少女に尋ねる。
「良いのよ、今からじゃ遅いってさっきの魔術師さんも言ってたでしょ?」
セミロングの髪を揺らし、篠宮可奈は礼装を脱ぐ。
教育施設セイント・カルデア。
私立校であるこの学院は世間に走られていない魔術師育成校と言う側面も持っている。
勿論、建前上は別の研究をしているが魔術に関する研究をしていて、カルデアの制服にはいずれ訪れるであろう事態に備え、魔術礼装としての側面も持たせている。
篠宮可奈は、システム・フェイトの暴走時に騎士王の未熟な状態、セイバー・リリィと契約を果たす事になった。
魔術研究に関わっていた後輩からは憧れの視線を向けられた。
そして、荒谷草子からジャンヌとカズマの存在を知らされ、サーヴァントの起している事件の解決に出向けば、必ず遭遇するだろうと言ったのだ。
草子はこう言い残して、可奈とリリィの前から消えた。
「今、アイツラは敵の目論見を壊そうと暴れているよ。今から行ってもは遅いがね」
体の節々が痛んでカズマは目を覚ました。
「目が覚めましたか?カズマ」
脇にはジャンヌがいた。未だに慣れないのか、ドキッとしてしまう自分に呆れてしまう。
「あ、ああ。」
微妙な返事を返しながら首筋に走る痛みに顔を顰める。
あの後、気を失ってしまったのは失敗だった。
恐らく、陣地さえ消してしまえばジャンヌは間違いなくキャスターには負けは無いと思う。が、事もあろうかカズマが荷物になってしまった。
「ジャンヌ、キャスターは?」
「陣地の消滅と供に戦闘音が外に漏れていました。サイレンが聞こえたら直ぐに引いてしまった。それよりも」
「あ~・・・・ジャンヌの言いたいことは分かるよ?すまん。」
「なら良いのです。カズマもサーヴァントを相手にするなんて無茶は、二度としないでください。貴方は私が守りますから」
カズマは正直言ってサーヴァントを侮っていた。
だから、あんな作戦を取った。
例え、クラスが戦闘に向いていなくとも・・・キャスターでさえ、あの突進力だ。
セイバーやバーサーカークラスなんて考えたくもない。
「でもさ、ジャンヌ。俺はとことん前に出るしか知らない、殺られる前に殺れ。そう叩き込まれたからね。」
「なら、私にも考えがあります。」
身体に染み付いた呪詛とも言える教訓は、簡単には離れない。
僅かに頬を膨らませるジャンヌは、見ていて可愛いのだがソレは口に出さないで置こう。
「で、俺は何で母屋に?そして親父達は?」
「世界旅行のチケットが抽選したって言って出かけられました。何でも半年は戻らないそうですよ」
さらりと凄い事を言ってのけたジャンヌ。
つまるところ、アレか?
このだだっ広い日本家屋の実家にジャンヌと二人っきり?
無駄に緊張しても仕方ないとカズマは諦める。
どうして世界一周旅行など(何故に親父達だけ)行ったのか。せめて、一言あってもいいようなものだが過ぎた事だ。
「さて、問題は飯だな・・・・・」
台所に立ち、徐にそう呟くカズマ。
カズマも最低限の料理は出来る。一日三食野菜炒めやカップうどん(ないしはカップラーメン)などのインスタント食品でもいけるのだが、ジャンヌには酷だろう。
何分、ジャンヌを見ていて思ったが一々食事で目を輝かせるのはどこぞの騎士王と同じだ。
「大丈夫です、カズマ。私は料理も出来ますよ?」
「なんで疑問視なのか、買い置きのカップ麺シリーズが全滅しているのかはさて置き・・・」
ジト目でジャンヌを見てみると苦笑している。
あ、犯人はジャンヌか。
そう思わずには居られないカズマだった。
と言っても、丸二日爆睡しいていたカズマも悪いのだが、サーヴァントとて腹くらい空くだろう。
「カズマは病み上がりなんですから、休んでいてください。私が作りますから」
と言ってジャンヌはエプロンをしている。
どうでも良いんだが、ジャンヌの私服はカズマの半袖Tシャツとジーンズを代用している。
それでも、元の質が言いだけに何を着てもジャンヌは似合うのではないかと思えてしまう。
「出来たら呼びますから、覗かないでくださいよ?」
「何で?」「何でもです!」
と言ってジャンヌは台所からカズマを締め出した。
改めて言おう、篠宮可奈は魔術師ではない。
魔術も扱えない、戦闘は素人のソレ。魔力量は素人に毛が生えた程度・・・・・お世辞にも魔術師とはいえない。
あくまで、教育(魔術)研究機関に就職した程度の何処にでもいる女性である。
「草子さんの話だと、敵はここに陣地を張ってたみたいだ。」
供に校門前まで来たリリィに言う。
「小学校・・・・子供たちを生贄に多くの力を得ようとしたのでしょうか?」
「そんな事可能なの?」
「はい、キャスターのクラスならなおさらそう言った手段を用いて力を高めるはずです。」
「でも、それはもう一組の活躍で失敗した・・・か。」
可奈の視線の先で簡易の休憩所がある。
ニュースでも公開されていた情報にもあったが、凶悪犯の血痕が発見された他に爆発物が使われたのか、窓ガラスが割れて校舎壁面も大きく抉れていると報道されている。
校舎内には弾痕と思われる痕跡も発見されたと。
「もう一組は凄い過激なのか、久坂が銃を所持していた・・・か。どっちにしろ私はリリィに任せるしかないんだけど」
「お任せください!」
肩をすくめ、考えるのをやめた可奈は騎士姫に視線を投げる。
リリィも力強く返答し、満足げに頷いた可奈はアクセルを踏んだ。
カズマは一つ、ジャンヌのことを知れてよかったと思った。
彼女に料理をさせてはならない。(外見上)
味は良かったのだが、見た目が何故か黒いドロッとしたヘドロのような状態になってしまっていた。
「すみません・・・・」
「気にする事じゃないって。ほら、見た目に反して味は良かった」
落ち込んだジャンヌをフォローしつつ、カズマは思う。
最も、口にするのには些か勇気がいるが。
「カズマ、何処に向かっているんですか?」
「ここらでキャスターが陣地或いは力を補給しようとする・・・・何だっけ?」
「結界です」
「そう、それ。その候補地になりそうな所を少し回ってみようと思ってな。ジャンヌの服も買わないといけない、いい加減きついだろ?」
「・・・・言い難いですが、正直」
「幸い、何件か店舗も混ざってる。見て回るのも息抜きになるだろ」
そう言ってカズマはハンドルを切る。
先ずは、先日の小学校が母体で分離した三件の学校。
結界が仕込まれているなら、違和感を感じるというので校門を潜ってみたがなんとも無い。
次に二件の中学校、こちらも上に同じ。
最後は、
「カズマ、ここって」
「そう、試射に使った林の向かいだ。アウトレットショッピングモールになってて、セールとかそう言った時は渋滞が酷い。後、特別に安く・・・という訳でもないがブランド品が比較的安く手に入る」
駐車場に車を止め、降りた二人は歩を進める。
カズマはソーコムを所持していない。車内に置いてきた。
モデルガンにしか見えないが、こんなアウトレットモールでモデルガンを所持しているなんて奇異に見られるだろう。
無駄に注目を集めるのはどうかと思う。
「ジャンヌは見たこともない物があるだろうし、息抜きのつもりで見て回ろう」
「分かりまた。行きましょう、カズマ」
ジャンヌの方が足早なのは仕方ない。カズマは先日のダメージが抜け切っていないのだから。
「わぁ!凄いお店ですね。」
ジャンヌは左右に並んで、客足の切れることの無い店舗に驚き、そう言った。
「まぁ、ブランド物が安く手に入るんだ。皆飛びつくだろうから・・・っと洋服はこっちか」
カズマはおのぼりさん状態のジャンヌを見守りつつ、案内板を見て道を確認する。
アウトレットモールは広い、老若男女が溢れている。
キャスターにとっては最高の餌場だろう。しかし、相方である久坂は指名手配犯だ。
迂闊に監視カメラにうつろう物なら直ぐに通報されてしまう。
加えて言えば、キャスターも幾ら一般人を装うとあの嘗め回すような視線、ピエロを思わせるような口調は隠せるものじゃない。
(ココが一番だと睨んだけど・・・)
ハズレか、そう思った。
「カズマ、ココは何のお店ですか?」
ジャンヌがとある店の前で立ち止まり、店内を眺めていた。
ソレが微笑ましいとさえ、カズマは思う。
傷つき、戦うだけが
歳相応の反応をしているジャンヌと歩いていると周囲の視線が突き刺さった。
(あ~・・・・世辞抜きでジャンヌは高レベルの美少女だった)
おのぼりさんよろしく高テンションの
この組み合わせでどう見えるか?
聞くまでもないよね、コレ。
初老の夫婦は温かい目で見守り、同年代だろうカップルは笑っている。
(目立ちたくないんだけどなぁ~)
その希望が叶う事はないだろうとカズマは思った。
今作中のジャンヌは料理が下手と言う設定です。
まぁ、肝心な年齢中は戦時中だったわけですし仕方ないよね。
そして、ぐだ子こと篠宮可奈視点もこれから触れていきます。
ぐだ子の元にはセイバー・リリィが現界済み、ゲームで言えば先行登録した感じですね。
マシュの出番はまだ無い。
早く出したい、きっと良いツッコミ役になる(確信)