電に初潮が来てから…更に10日が過ぎた頃。
なんだか、如月の様子がおかしくなった、電はそう感じていた。
電が如月に声をかけたら、何かよそよそしく感じる。
だが電が何かする度、なんだかうっとりした如月の視線を感じる時がある。
…そして、如月の態度が何か媚びと言うか…天然で今までやっていた上目使いやしなを作ったような態度を、わざと見せるようになっていた。
何なのです?と言う疑問で電はいっぱいになる、いつもの如月ではないみたいだ。
だが、如月が急に変わった態度を取るような事をしだしたのは…どうも自分相手の時ばかり。
なんだか気持ち悪い…と言うか、どうしろと言うのだ、これは。
電はそんな思いで頭がいっぱいになる。
とりあえず友人に相談するが、時雨は爆笑しだし、ヴェールヌイは呆れ、睦月に至ってはあんたに答えたくないにゃしい!と怒られてしまう。
「…うん、まあ、電でもなんとなくは状況は理解はできたのですが…」
流石に、そこまで露骨なら電も良くこの状況を理解できた訳だが。
如月に自分は好かれているようだ、と。
そして…全く悪い気はしない自分が居る、と。
しかし…コレはまずいかも知れない、電はそう感じていた。
大体、それは姉と時津風や舞風と野分のせいではあった。
『好き』が行き過ぎる者を、電はなんやかんやで良く見ていたのだった…。
そして、ふいに、電は己の胸に手を当ててみる。
…如月ちゃん、私も確かに大好きなのですよ
…好きだって言われたら、電は絶対に断れないのです
…とは言っても、その、お姉ちゃんや舞風ちゃん以上に確実に深みにハマる気がするのです
…貴女は、自覚は無いけど本物の『魔性』ってやつなのです
…愛らしすぎてこんなに壊したくなる、そんな子は如月ちゃん以外にいないのです
こんな事をぽつりぽつりと、考えながら。
そう、電にだって黒い…とまではいかないが、ドロドロした感情ぐらいある。
そして、如月はあらゆる意味で、電にとってそれをぶつけやすい位置にいた。
好意に乗せて、怒りに乗せて、ぶつけやすい位置に居る。
それこそ、いつでも電が好きな時に壊せるぐらいの位置で…如月は、壊されるまで黙って受けるだろうと言う性質で。
…でも、電は絶対、如月ちゃんが泣いちゃうのは嫌なのです
…一番の友達だし、付き合いの濃いリンガの家族だし
…ライバルだと思ってくれたのですから
電は、しかし…そう言った部分が嫌であり、余計に頭を悩ましてしまった。
どうしたらそんな如月の綺麗な気持ちに、汚い自分が答えられるのです、と。
まして、電にとっても『一番の相手』、に。
そのうち、ふらふらと電は寮の廊下を歩いていた。
思考がまとまらず、頭が痛くなる。
そうして、ぼんやりしていたら、何かにぶつかった
否、『誰か』だった。
「この私にぶつかるのは、運命かね?」
…深雪である。
電は何度も何度も頭を下げるが、深雪はどうどうと電をおさえると一言いった。
ちょっと、悩みが有るならサシで話しようぜ、と。
「…まあ、何かぐちゃぐちゃ電が考えてたのは理解したよ」
深雪は天を仰ぎながら、電の話を黙って聞き、そして聞き終われば一言だけ言った。
そして、実につまらないような口調で言った。
…それが何だよ?と。
電はたまらず深雪に叫ぶ。
自分はこんなに悩んでいる、そして…下手したら如月が、傷ついてしまう、と。
しかし、深雪はつまんねえな、と前置きして冷徹な口調で話を続けた。
「ぐだぐだ言ってるが…それは電、お前の中の結論であって、別に如月の答えじゃねえよな」
あ、と電は目を丸くした。
深雪が言うとおりだったからだ。
そして、深雪は更に続けた。
「前に『ぶつからないと気持ち悪い』って言ったのはてめーだ電、だから私はギクシャクしてた私らもぶつかったら友達になれた…まさか、友達相手にはぶつからないなんて言わないよな?」
電は無言になる。
そうだ、自分は…自分だけで考えていたら駄目な方に深みにハマるタイプだった…電は思いおこす。
如月や飛鷹の手を、ひいては非戦的なみんなの手を汚したくないなんて考えていた時も、羽黒にでも相談したらもっと穏当なやり口で上手に出来ただろう…変に、悪い方に悪い方に、考え過ぎてしまうからおかしな手筈を考えて羽黒達に大怪我させてしまった事もあった。
それは、電の気性が他人想いで本当に優しいからでは有るが…確かに、深みにハマると自力で抜けれ無いと言う証左でもあった。
そして、電の場合なら…変に考えこむ前にちゃんと相手に向き合った方が、きちんとした結論が出るだろうと言う事も。
電は深呼吸すると、深雪に対してありがとう、と一言言って…そしてその場を飛び出した。
深雪は、せわしない方が電らしいぜ、とぼやいた。
そして…
「電、私に何かようかしらぁ?」
寮の如月の部屋から如月を連れ出して、人気の無い…学校の屋上へと連れ出した。
如月は不安そうな、そして、僅かに何かに期待する様な表情であたりをキョロキョロと見回す。
電はそんな如月に向かって一言聞いた。
…如月ちゃんは私の事好きなのですか、と。
如月は一瞬涙目になりオロオロするが…そんな如月を無視して、電は続けた。
…電は、如月ちゃんの事、如月ちゃんが思ってる以上に好きなのです、と。
如月は顔を真っ赤にして、俯き…そして、トロンとした瞳でそれに答えた。
…私もよぉ、電、と。
そして、2人は語り合う。
…電は、如月ちゃんに釣り合わないぐらい、本当は汚いドロドロした艦娘なのです
…そうだとしても、電は電…素敵な優しくて頼りになって、ちょっと間抜けな大親友よ
…もしかしたら、電は如月ちゃんの事、傷つけてしまうかも知れないのです
…それは、もうお互い様じゃないのぉ、今更過ぎるわぁ
…これから、何時も通りの関係にはならないのです
…時雨には悪い事するわぁ、でも、きっと私たち変わらないと思うわよ、これからも
…いや、電は気づいたのですが、多分お姉ちゃんに似てるタイプなのですよ
…あんまり、痛そうなのは嫌だから、優しくしなさい
…善処するのです
…不安になる答えねぇ
…あのですね、それから…
…それから?
…私で良かったのです?
…そっちこそ私で良かったのかしらぁ?
…案外、面倒くさい馬鹿なのですよ?
…意外と暴走しやすいプチプチジャンキーよぉ?
2人は…そしてゲラゲラ笑いあう、こんなん自分達じゃないとずっと一緒にいれねぇよ、と。
そして、2人はハグしあい…少しだけ、泣いた。
不安で物影から時雨とヴェールヌイが実はそんな2人の姿を覗き見していたが…ちょっとだけ、甘い空間に耐えきれず砂糖を吐いたとか吐かなかった、とか。
…そして…
「電の馬鹿はどこだぁぁぁぁぁ!!」
その甘い空間を切り裂くように、亜空間から睦月が現れた。
しかもただの睦月ではない。
睦月は…どうやって装備したのだろう。
天山に彗星、46糎3連装砲に甲標的と、伝説のスーパー駆逐艦とばかりに、フルアーマーで電に突貫する。
…って、いや待て!どうやって装備したお前!!
「妹は、渡さないにゃしいぃぃぃぃ!!」
「何この疑似レ級なのですぅぅぅぅ!?」
「姉さん落ち着いてぇぇぇぇ!?」
ラブコメ時空だった屋上はまさかの睦月の武力介入により阿鼻叫喚になる。
「これヤバいヤツだよね!?」
「ハラショー言ってる場合じゃぬぇ!!妹助けるよ時雨ぇ!」
屋上で出歯亀していた二人も慌てて救出に入りに行く。
電と如月の仲は非常に親密になって行ったが…まだまだ前途多難というレベルではないようだった。
「誰か睦月ちゃんを止めるのですぅぅぅ!?」