いならぐれオーバードライブ!   作:たんぺい

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第十一話:山城さん気になるのです!

「で、付き合ってる…って認識で合ってるんだよね」

 

時雨は…あの伝説のスーパー睦月人が暴れたりした日から3日後の昼休み。

時雨は如月に質問してみる。

電は毎日あっけらかんとしているばかりだし、如月は暇さえあれば一人で本を読むかプチプチを潰すか、そんな感じである。

 

…何にも変わって無いじゃないか、時雨は一言突っ込むが、電は笑って返す。

 

…私たちはきっとこれで正解なのです、と。

そして、如月がフォローするように続ける。

…あれから話し合ったけど、変に意識しあうときっと加減がわからずこじれちゃうからゆっくりのペースで良いのよぉ、と。

 

 

「のんびりした熟年夫婦、そう言う繋がりも、何だか凄いね」

 

時雨は二人に聞こえない程度にボヤく。

そして、まあ睦月に気を付けてね、と一言だけ言って時雨は忍者のようにその場を去る。

私も如月ちゃんとまったりイチャイチャしたいにゃしいぃぃ!と叫びながら電に突貫する睦月が後から現れたとか現れなかった、とか。

 

 

そして、二人だけの空間も大事にしてやろうと言う親切心と、どうせ弾けるだろう睦月や煽りにいきそうなヴェールヌイの行動に巻き込まれたくないと言う避難措置で、時雨は何気なしに中庭へと移動する。

 

本当に特に行くところも見る物は無いがまあ軽く昼寝でもして時間を潰すか、と考えていたら…何か妙にオロオロしている艦娘が居た。

あの体躯…重巡より大きい、正規空母か戦艦…と言うか空母と戦艦の両方の雰囲気がある。

まるで日向隊長みたいな…と言うか、胸の奥から記憶の鍵がずんずんするような…と、時雨が考えて居たが、あっと一言声を上げる。

 

「君は…もしかして、西村艦隊の…扶桑型…?扶桑はこっちに来ず行方知れずだし、山城かい?」

「あんた!!飛び降りの時雨でしょ、早く何とかして!!」

 

そう、時雨が艦の時代、かつて『西村艦隊』と言う艦隊を組んでいた時の時雨の護衛対象であった間柄の戦艦であり…

艦娘としてはラバウル出身の航空戦艦…

扶桑型の戦艦、山城であった。

 

 

その山城が何だか様子がえらくおかしい。

上を…何か、植え込みの木の上を山城は真っ青な顔で睨んであたふたしている。

…『飛び降りの時雨』ってなんだよ、とぼやきつつ時雨が山城が見ていた場所に視線を送ると…絶句した。

 

小鳥の巣がそこにあり、今にも大きな蛇が雛を食おうとせんとシュルシュルととぐろを巻きながら木を登っていく。

…恐らく、山城は木に登れないか或いは蛇を触れないか、いずれにしても小鳥たちを助けようにもどうにもできない、そんな所だろうか。

 

時雨は、本当はルール違反だよね…蛇さんごめん、と内心で呟くと、隣の木と木の間を斜め上に蹴りまくり、バッタのように跳び上がり…一気に蛇の所まで飛び付くと、そのまま素手で蛇の首根っこを掴む。

そして、ゆっくりと枝から蛇を離して完全に捕まえると、するすると木から降りる。

 

そのまま遠くまで走り、ごめんねと言って蛇を解放して逃がした後で山城の元へ返って、時雨は一言言った。

…こういう事だったのかい?と。

 

 

「あ、あの…そうよ小鳥を、じゃなくて!何で蛇まで逃がしちゃうの!!」

 

山城は、時雨の忍者みたいな行動に一瞬目を白黒したが…気を取り直した彼女は時雨にかんかんに怒り出した。

山城の中では、小鳥の雛を狙った蛇は『悪』なのだろう、何でその悪まで逃がしたのか、と。

 

時雨は、はぁ…と一言だけ溜め息をつき、山城にこう返した。

…蛇さんだって生きたいだけだ、別に悪い事をした訳じゃないよね、だから…『ルール違反』と言う介入をするのなら殺したらだめだ、と。

 

「…山城の気持ち自体は凄い尊いし僕も雛が食われるの見たくないから、まあ、とりあえずそっちは一番に優先したけどね…友人がそんなスタイルの生き方をしてるし、僕なりに真似ただけだけだよ」

 

そう、付け加えながら時雨は苦笑いしつつ、己の腕時計を見る。

…やっばい、次の時間体育だ!

そんな事をのたまいながら、時雨は学校の壁をスパイダーマンがごとくよじ登って駆け上がったのだった…。

 

 

「…だから、何で普通にできないのあの子は!」

 

…それからしばらく、山城はずっと時雨の事を思い出しては何だかイライラするかのような口調で独り言を言っていた。

忍者みたいにスタイリッシュに現れては去った事も、何だかしたり顔で…しかもタメ口で戦艦たる自分に説教じみた事を言ったのも、山城には全て時雨の行動全てが理解の外だ。

…そして、少しだけカッコ良くて、凄く嬉しい解決を見せた事も、山城には頭からは離れない。

 

そんな事を考えて…山城は首をぶんぶん振った。

…自分には扶桑姉様が書いた本が有るじゃないか、いつか扶桑姉様に本当に出会うその日までは、心の支えはこれだけだ、と。

 

 

そんな姿を高等部のクラスメートの面々は遠巻きに見ていた。

 

大本営で同僚だった長門や陸奥、舞鶴の大和に横須賀の霧島と、そうそうたる面々が彼女の『覚醒』を楽しみに待っていたのだ。

 

「アレは我々も見ていたが…あの良さが、ようやくわかりだしたか」

「そう…そうね、もしかしたら山城は私たちと同じステージに立つかも知れないわ」

「ええ…我々…最強の戦艦の為のチームに、また新しい1ページが開かれます!」

「この、『駆逐艦を愛でる会』に、山城も抱き込みましょう!」

 

…ながもん共、と言うか、戦艦は何気に拗らせたロリコンが多かったと言う…

山城はNT並の勘を働かせて、36糎砲を彼女達にぶち込んだとかぶち込まなかった、とか。

 

そして、時雨はそんなんじゃ無い、私には扶桑姉様だけなのよ!と言う叫びがどこかで響いたとか言う

 

 

「ぶえっくし!?」

「汚いのです!…って、風邪なのです?」

 

時雨はそんな叫びが聞こえたのか聞こえなかったのか知らないが、体育の授業中に大きなくしゃみを一つする。

みんなが軽く心配するが、鼻がムズムズしただけだ、と軽く時雨はかわした。

 

そして、皆を宥める中で、内心一言だけ思ったとか。

…山城、なんかピリピリしてるわりに、いい匂いしてるし『かわいい』タイプだったよな、と。

 

ちょっと今日の時雨の顔がキモい、と曙が一言突っ込んだと言う

 

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