Case1:『電の姉達』
電には、『お姉ちゃん』と呼ぶ相手はヴェールヌイ1人だ。
だが、暁型の艦娘は4人、学校に存在している。
…どういう事かと言えば…
「電、ちょっと良いかしら!」
「あ、雷ちゃん、どうしたのです?」
電は三女…隣のクラスの姉の雷の事を『雷ちゃん』と呼んでいる。
気さくな雷の性格と、子供っぽい性格が…何か『姉妹』より『友人』と言う雰囲気が、雷にはしっくりくるからだ。
雷は、姉扱いしろよ~、と毎度『雷ちゃん』と電に言われる度に突っ込みながら、軽く笑う。
電は…でも雷ちゃんのが、なんかしっくりくるのです、と苦笑いでごまかす。
それがいつもの雷と電のやりとりで、二人の自然な距離感だった。
そして…
「また、『アレ』が迷子になったのよ…約束の時間に何時まで経っても来やしねえ…」
「…おっふ、『あの馬鹿』…どうせ、長門さんか大和さん辺りに保護されているのです…ちょっとおーばーどらい部で手分けして探すので、雷ちゃん待ってるのです…」
…もう1人は、それ以下だった。
で、肝心のもう1人はと言えば…
「…んも~、雷ったら、また学校で迷子になってるのよね!ぷんすか!!」
やたらニヤニヤしてる長門の膝の上に件の下手人は乗りながら、ぷりぷり怒っている。
何時まで経っても雷が来ないと、彼女は怒っているのだ。
…迷子になったのは、雷では無くてそっちの方なのだが。
長門はそんな彼女をめちゃくちゃ良い笑顔でなでなでしつつ、そうか~大変だな~、などと適当に宥めつつ鼻血をだらだら流している。
そこに…電が、ものすごい怒気を込めた表情でいきなり現れた。
「やっぱり高等部で保護されているのです!この自称レディ!!」
そんな感じで、雷は件の下手人にぶちきれた。
…いきなりどうしたの電!びっくしするじゃない!、と彼女は言うが、電は無視する。
そして、電はキレながら続けた。
「うるせえのです!雷ちゃんが二時間近く約束の場所に待ってるのに一向に来ないとか意味わかんないのです!」
「だ、だって…十分前に来て待ってるのに雷が来ないから、迷ってるんじゃないかって思って…探し回ってたのよ!私悪くないわよ!」
「アホかぁぁぁ!それこそ十分ぐらいじっと待てなのです!!おら、ついていってあげるから、雷ちゃんに一緒に謝るのです!」
…こんな具合で喧嘩になった後、件の下手人は電に曳航されて連れて行かれる。
長門は…怒っている電ちゃん可愛いけど、あの子もってかれるの残念過ぎるぅぅ!と絶叫する。
下手人…彼女…
暁の扱いは、なんか電にとって、手のかかる妹みたいな感じだった。
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Case2:『初春ちゃん』
おーばーどらい部の面々が今日も走る。
文字通り、壁を蹴り、屋根を走り…まるで、忍者だ。
そんな彼女達を、陰ながら応援する艦娘は、少なくない。
電達のクラスメートの初春、彼女もそんな艦娘の1人だった。
「…ふむ、また…時雨が、何か気持ち悪いぐらい駆け回っておるの」
初春は何気なく呟いた。
そして、メモ帳に何かを書き出して、呟いた。
「…『風超える 願いを乗せた 時雨なり』…あかんの、季語が無いわ」
そう…こんな感じで、五七五で感想を述べた様に、初春は俳句が趣味の一つだったのだ。
そして、毎日せわしないおーばーどらい部の連中が、俳句のインスピレーション元としても愛おしくて仕方ない。
…妾の『あいであ』の為にも、頑張るのじゃ
初春は、内心…時雨を応援していた、とか。
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Case3:『如月ちゃんとキサラギちゃん』
「どっちがどっちだ!」
二人の『如月』が、挑戦するかのような表情で睦月にせまる。
その内、キサラギの方は、ヘアゴムや伊達眼鏡は外している…
つまり、二人の『如月』を外見から判断するポイントはどこにも無い。
その二人の内、きちんとどっちがどっちの『如月』か、判断付くか。
二人は睦月に挑戦しているのだ。
一方、とうの睦月はと言えば…少しだけ、考えこんだ後、こう言った。
…私から見て右が如月ちゃんで左がキサラギちゃんにゃし、と。
凄い、大正解!と、二人が驚く中で…睦月は自慢げに続ける。
そして、こう続けた。
「そりゃ…見た目同じでも、匂いと味が全然違うから当然判断つくのだよ!」
匂いと味って何だ!と二人からつっこまれた、とか。
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Case4:『深雪ちゃんと夕立ちゃん』
「…ぽい~」
夕立は、こんな事を呟きつつ1人でお昼休みを過ごしていた。
そして、天を仰ぐ…普通の友だち欲しいなあ、と思いながら。
時津風もヴェールヌイもおーばーどらい部の連中も大事な友だちだが…『変』な連中だった。
大好きだ、夕立にとっては大好きなのだ…が、正直、疲れる。
特にヴェールヌイは。
だが、『普通』の友だちはなかなかできないだろう。
色々自分がやらかしてしまったせいで、みんなから怖がられてしまった。
…また、夕立は間違えちゃった、ぽい
夕立は泣きそうな声で呟いた。
そんな時…いきなり、夕立に向かって缶コーヒーが顔面に飛んできた。
不意打ちでぶつけられ、夕立はおでこにスティール缶が当たった衝撃で、当たったところが真っ赤に腫れる。
…いきなり何するっぽい!と、夕立は怒るが、それに対して謝罪したのは…深雪だった。
お前さんだったらキャッチ出来ると思ってた、と深雪は謝りつつ、こう続けた。
「電から話は聞いたが…夕立って凄い優しいのに、友だち作りの方法がわかんないらしいからさ、この深雪様が手本を見せてやったのさ!」
…手本?と夕立は首を傾げるが、深雪は構わず話を続けた。
「…缶コーヒーを奢るでも何でも良いのさ、何かきっかけを作って話せば、きっと夕立の事をみんなわかってくれるハズだぜ!深雪様が見せてやれる、手本ってヤツだ!」
夕立は、そんな深雪のセリフに感激し…私の友だちになって欲しい、と続けた。
…当たり前だぜ、と深雪は握手を求め、夕立は必死にぎゅっとその手を掴んだ、とか。
…それから…
「…振りかぶって、とりゃぁぁぁぁあ!」
夕立は深雪に習って、友だち作りをするため…缶コーヒーを投げ出した。
それも、全力投球で。
夕立の腕力でスティール缶の缶コーヒーが投げられる…
つまり、鉄の固まりが時速150キロ以上と言うプロ野球選手並の投擲スピードで飛んでくる。
…一種の、殺意満点のテロだった。
先生に超厳重注意され、反省文を何枚も書かされるまで、夕立の殺人缶コーヒーピッチングは続いたと言う…
「そういう意味で言ったんじゃねえよ、夕立!」
深雪のツッコミが、どこかで響いたとか。