睦月の『考え』…
それを聞いたおーばーどらい部のメンバーは、それは良い!と一斉に納得した。
そして…かのおーばーどらい部のメンバーは、自分にできる事を、率先して行った…
…まず、電の場合…
「曙ちゃん…歌って欲しいのです!」
開口一番、電は曙に向かって話を始める。
自分達の『目的』の為に、ステージを開いてくれないか、と。
曙は最初は顔を真っ赤にしてその電の提案を拒否するが…電の続く言に、曙は真顔になる。
そして、意を決した様に言った、まぁどうしてもって言うなら仕方ないわね、と。
その言葉を聞き、電はぱっと顔を明るくした。
…ボーカルがちゃんと決まって助かったのです!と。
「ボーカル…?」
「ああ、舞風ちゃんに先にダンスしてもらえる様に頼んでいたのです!だから、曙ちゃん無しならボーカル無しで無音でダンスする舞風ちゃんとか、恐ろしく侘しい絵面を拝む事になったのです!」
電の言に、曙は後先考えてから行動しろや、と顔面にしこたまグーを叩き込んだと言う。
その様を、舞風と、ついでに先に電が色々声をかけて居た夕立と浜風と深雪が、何してんの馬鹿…と、頭を抱えたとか。
…一方、如月…
「…予算が足りないわぁ、どこから削ろうかしらぁ…」
如月は、渡された初期案の予算案と、担任の教師から渡された使用可能な予算案との差異を比べ頭を抱える。
どこから、削るべきなのか、と。
実は睦月のアイデアを聞いたおーばーどらい部の連中は、担任の先生に相談した。
その教師はアイデア自体は応援したが…予算案について、わりと厳しく審査した。
…本来の学校の予算案に無いことをするのに、無理して出せる予算は少ないぞ、と言って。
別に、担任は意地悪をしている訳ではない。
そう言う事に無制限に予算を使えば、それこそ学校の経営が成り立たなくなる。
むしろ…予算を出してくれただけ、しかも色を付けてくれただけありがたいと言う話だった。
それをわかっているだけに、如月は頭を悩ませる。
どう、みんなの願いを崩さずに、予算案を先生が提示したラインに合わせるか。
最悪…ポケットマネーからも補填するとはいえ、その辺のすり合わせはなかなかどうして、難しい。
如月は頭を悩ませるが…その姿は、どこか楽しそうだったと言う。
…時雨の場合…
「…確保、完了!」
時雨は、激安スーパーを探しては、街から街へパルクールしつつ、できるだけ『安くて良い』材料や資材を買いに走る。
時にはタイムセールを狙い、時には広告を片っ端からあさり…とにかく時雨は走る。
電と如月…自分の友だちの為に、そして、キサラギと駆逐棲姫の為に。
そうして、如月の負担をできるだけ減らす為…それが、自分にできる事だと、時雨は確信しながら。
そして、門限ギリギリまで時雨は走りまくった…来る『Xデー』の為に。
時雨は、実に真剣な表情で街を駆け回ったと言う。
まるで…黒い、嵐の様に…
そして、それから…数日後、『Xデー』にて。
その日、担任の教師の呼び出しで、キサラギと駆逐棲姫は、同じ部屋に集められていた。
2人は何事かと、とても不安だったと言う。
相性が悪いと自他共にわかっているだろう2人を無理やり同じ部屋に集められ
そして、一歩も動くなと教師に言われ。
しかも、キサラギと駆逐棲姫の2人は…目隠しされていた。
そんな2人は、突然ら何をされるのか全くわからない中で一つの声を聞いた。
…もう、目を開けて良いにゃしい、と。
「な、何よ…睦月ちゃん…って、ええ!?」
「何ですかコレ!」
2人が見た光景、それは…パーティー会場だった。
オードブルやらケーキやらと言ったご馳走が、所狭しと並んで居る。
そのパーティー会場には、電飾やら紙飾りの様な物が、華やかに彩りを添えている。
そして…大きな文字で、会場のど真ん中にある垂れ幕にかかれていた。
『キサラギちゃんと駆逐棲姫ちゃん、編入おめでとう』、と。
そう、睦月が出したアイデア…それは、有り体に言ってしまえば無礼講だった。
2人が胸襟を開いて話し合える場を作るのは、難しいだろう。
ならば、みんなが楽しめる場に2人を放り込めば良いと言った、逆転の発想だったのだ。
そして、その睦月の考えに…クラスのみんなが乗った。
否、睦月のクラスメートだけではない。
夕立や磯風や浜風と言った、隣のクラスの連中も集まっていた。
2人の愛すべきエトランゼの為に。
そして、集まったメンバーは一様に…様々なプレゼントを抱えていた。
花束だったり、お菓子だったり、本だったり…その内容こそ様々だったが、そのプレゼントを二つずつ抱えていた。
そして、そのパーティーに参加していたメンバーは一斉に言った…出逢ってくれて、ありがとう!と。
キョトンとするキサラギと駆逐棲姫を尻目に…口を開いて話を始めるのは、電だった。
そして、電はこう言ったのだった。
「睦月ちゃんが、言ったのです…2人は無理やり仲良くならなくてもいいって、仲良くできないなら仕方ないって…でも、それならそれで話し合える場を作るべきだって…そして、その2人との出会いをみんなが感謝する場をって!」
2人のうち、駆逐棲姫はストレート過ぎる電の言に顔を真っ赤にするばかりであり、相変わらず時雨は風の妖精白露型は~などと茶化し曙と如月から時雨はクロスボンバーくらったりしてたが…
一方のキサラギは…顔を俯かせるばかりだった。
何かヤバい事言ってるっけ、と電と睦月が慌ててオロオロする中、キサラギは…一言だけ言った。
…わかってるの、本当は…とだけ。
キサラギの事情が事情だけに、皆がそれ以上突っ込めず全体的に暗い空気で満たされる。
「ヘイヘイ、何がわかっているのだ!もう1人の如月とやら!」
「ぐいぐい行くな磯風ぇ!?」
…平常運転の磯風以外。
浜風と夕立が別な意味で胃に穴が開きかけるが、磯風は構わず続ける。
曰わく、ここできちんと吐き出せなかったらそもそも会を開いた意味ないだろう、と。
全員が…そりゃそうなんだけど空気読め、と内心突っ込みを入れたが。
とうのキサラギと言うと、変な事言わせてごめん磯風ちゃん、と謝るばかりだ。
そして、それから…
…磯風が私に謝っても仕方ないだろうホレ、とか言い出してそろそろ夕立がキレかけた中で、キサラギが、ゆっくりと話を始める。
曰わく、こんな感じだった。
「本当は…わかってる、わかってるのよ…私が馬鹿だから、割り切れなくてみんなを傷つけてるだけだって…それでも納得できなかった、深海棲艦が笑ってるのが、仮に何も悪い事してなくても…それでみんなをここまでさせて…ごめんなさい…みんな…」
キサラギの言に、KYの磯風すら無言になり、全員がお通夜ムードになるが…
そこに駆逐棲姫が口を挟む。
…なら、納得するまで撃ってください、と。
全員がキョトンとする中で、こう続けた。
「キサラギさんが、どうしても嫌なら…なら、好きなだけ主砲を撃って、魚雷ぶつけても構いませんよ…深海棲艦ってそんな存在なのは自覚してますから、怪我しても…最悪轟沈させられても、それなら仕方ないです、だから好きなだけ、後でやってください!」
そして、だから…私は人生最期の宴になるかもしれないので、今は頭空っぽにして、パーティーだけ楽しみましょうよ、と。
駆逐棲姫の言に全員はものすごいオロオロする中…キサラギは、苦笑いで返すだけだった。
そして一言、深海のヤツはどこのヤツらもずるいなぁ、と言う。
更に一拍置いて…こう言った。
「…こんなの、撃てば撃つだけ、馬鹿なだけじゃない…今までごめんなさいね」
そう言うと、嫌っていた駆逐棲姫にキサラギは頭を下げ、そしてそのまま抱きついた。
睦月だけは、キサラギちゃんとハグ良いなあなどとのたまい如月の方に殴られるが、皆は安堵したと言う。
…ようやく、本当の意味で『キサラギ』が仲間になったな、と。
そして、宴が始まった…。
…時雨と夕立がやたら完成度高いアクロバット披露したり
…暁型4姉妹で、何故か漫才を披露したり
…磯風が料理を作ろうとして浜風が全力で止めに行ったり
…曙の歌をバックに舞風がやたらキレっキレなダンスをしたり
…深雪が、素人芸でごめんとか言いながら、人体切断マジックをして電から悲鳴が上がったり
なんだかんだ、ゲストよりホストがやたら楽しんでいただけのパーティーだったりしたのだが。
それでも…2人、キサラギと駆逐棲姫も楽しんで過ごせた会になったと言う。
本当に、2人はみんなの仲間として、壁がなくなった…そんな気がして。
夕立は…持ち芸じゃないけど、素敵なパーティーよね、と不意に一言漏らす。
皆はそれに、うん、と頷いた…如月と時雨以外が。
「…予算、結局凄い足がついちゃってねぇ…」
「…ポケットマネーから、万単位でこっちから出して財布が寒い…」
宴会中にしょっぱいこと言うんじゃねえよ、と全員から如月と時雨は半殺しにされかけた、とか。