キサラギと駆逐棲姫がクラスに馴染んでから数日。
その日は、休日だった。
そんな休日の過ごし方は皆それぞれだった。
外出許可を取り街へ向かう者、勉学に励む者、自己鍛錬に励む者…
あるいは、そう…
「まったりごろごろするのです」
「そうねぇ…」
電と如月のように、まったり過ごす者も、当然居た。
…暇なのです…
…予定、立てて無いしねえ…
2人は、大きな欠伸をしながら、休憩室のソファーに腰掛けて、窓の外を眺めつつたわいない会話を繰り広げている。
だが、本当に何もない為に、話題がすぐ尽きてしまった。
そこで電は、何か面白い事あったっけ?と促してみる。
しかし、如月が答えた回答は、最近の睦月の挙動が面白いっちゃ面白いぐらいとしか返さない。
…そりゃあ、私もよく知っているのです、と電は返した。
如月はそんな電に向けて逆に質問した、お前こそ何か面白い事知っているか、と。
電は、まあ如月も知っている通り、山城への時雨の態度が面白いってレベルじゃない、と返す。
…何で、こう、時雨は山城さん相手だとああなのかしらぁ、と如月は頭を抱える。
そして、2人は一様に顔を見合わせて、ため息をつく。
…下手したら悪口合戦になるだけだから、もう止めよう、と。
それから…如月の方が、暇に耐えられなかったのだろう。
こてんと、いきなり如月が目を閉じて顔を俯かせる。
電が回り込んでその様子を見て…呟いた。
…改めて見たら、如月ちゃんの寝顔がかわいいです、と。
そして、何だかいけない欲望がムラムラと電の内心から湧いてくる。
幼い体躯に見合わぬ妖艶さ、幼い姿に見合った可愛らしさ。
思春期特有のソレを…如月は先天的に持っている少女である。
それが、無防備に晒されて…まるで、一輪挿しの花のように佇んでいる。
…何だか、手折りたいのです
キスから先も知らない癖に、電はいけない感情に流されそうになる。
そう…今なら、如月に何だってできるだろう。
それに、電自身に深い知識が無いのでまとまった答えが頭に出てこないが…なんとなくわかる。
以前言った、『痛いのは嫌』と言うのは、嘘なのだ、と
そう、如月やその師の羽黒は…わりと、本質的にはMっ気の強い気性ではあった。
と言うか、本当に自分が限界になるまで痛みから目を背けて、ちょっと自分に優しくされるところっと許してしまう…
下手したらDV男にひっかかりやすいタイプだったのかも知れない。
付き合いが長いだけに、電は如月のそう言う駄目な部分も知ってはいたのだ。
それだけに…ふつふつと、如月へのいたずら心が湧いてきてしまった。
そして、ついに電は…意を決したような表情をしながら周囲を見渡す。
キョロキョロと、万引き犯か何かの様な挙動を取り…そして、ついに動く。
そして、電は如月にくっつく様に座り、如月を…
「…良く、眠れますか?如月ちゃん…」
「…すぅ……」
膝枕、させていた。
そして、電は如月の体を優しく撫でながら、彼女の安眠を邪魔しない程度の小さな声で言った。
…やっぱり、手折ったらいけない花もあるのです、と。
それから…電も眠気に勝てなくなった。
ふわぁ、と欠伸を小さくし、如月を膝枕しながら、自分も眠りだす。
そして、如月は起きてるのだか寝言だかわからない、小さな声をあげた。
…ありがとう、電ぁ、と。
それから、半刻程が経ち…如月がふと目を覚ます。
何か横になってる…と言うか、柔らかい……
なんて、寝ぼけた思考で自分の現状を確認すると、不意に思考が覚醒した。
何で電に膝枕されるのか?と。
慌てて飛び起きようとするが…何だか電の膝が心地好すぎる。
柔らかいしあったかい、頭を乗っけるのに最高だ。
それから…何より、電を肌で感じれる距離だった。
…今回だけなんだから馬鹿ぁ…
如月は内心言い訳しながら、黙って膝枕されつづける事に決めた。
その如月の顔は、なかなか嬉しそうだったと言う。
そんな2人だけの時間、2人だけの世界。
平和な海を掴んだ2人の艦娘の、何気ない宝物だったと言う。
…一方、同時刻、東京湾某所…
「…ついに、追いつめたよ!」
時雨が、ある艦娘を睨みつける。
時雨だけではない…夕立やヴェールヌイ、磯風と言った武闘派の艦娘達が、その艦娘を睨みつけていた。
その視線の先には…
「な、何故私の居場所が…!?」
何故か扶桑が、立っていた。
怯えるような表情で時雨達を睨む扶桑に対し、実に時雨は呆れた表情で言った。
…連絡先を妹の方の携帯番号で担当さんに教えて、逃げるのはずっこいよ、と。
「…な、なんでなの?完璧な作戦が…山城、さては話を合わられなかったわね!?」
扶桑はこんな具合で、まだ直に会った事すらない妹へとキレつつオロオロするか…
時雨達は、実に呆れた顔で扶桑をみていた。
そして、一斉に突っ込んだ。
「いや、妹のせいにしちゃだめだよね!?」
「全部、扶桑さんのせいっぽい!!」
「締め切りは…きちんと守るものだ」
「海に逃げたのが運の付きだ、我々なら海の探索は実に容易いからな…観念して、原稿を書け!!」
…そう、扶桑は…作家の卵をやっていた。
そして、一本、新連載をさる新聞小説と言う形で勝ち取ったのだ。
だが、締め切りまでに話が纏まらず…逃避行に走っていた。
ご丁寧に、艦娘学校に通っていると聞く、妹の連絡先を渡して周到に高飛びの準備までして。
しかし…妹はおろか電や如月や阿賀野の元同僚の3人が通っていた学校を利用したと言った事もあり、学園長が直々にキレたと言う。
…草の根かき分けてでも探し出して、その扶桑とやらを探し出して突き出したまえ、と。
賞金もかかったそれを一部艦娘達は全力で行って…
「か、カンヅメは嫌ぁぁぁあ!!」
「だったら最初から締め切りは守れ!この西村艦隊の恥め!!」
…発見した時雨達が、4人で扶桑を曳航しに行った、とか。
「…って、扶桑さん何してるんです!?時雨ちゃん達も何してるんですか!?」
「…本当に、綺麗に締まらないわねぇ、この話」
電と如月が、その様を亜空間から突っ込んだ、とか。