問題児たちが異世界から来るそうですよ? 〜 一般人の問題児 〜   作:not Give

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遅くなりました!
すみません。

ようやくガルドのゲームが終わりました!
次のペルセウスも少しずつ頑張りたいです。


14話 ゲームの終わり

「っ、あの馬鹿耀!」

 

黒ウサギによって伝えられる3人の状況は凛の冷静さを失わせるには十分なものだった。

唯一ガルドに対抗出来ると思われた耀は単騎特攻により重症、指定武具はあるものの飛鳥やジンではガルドと対峙するには力不足なはずだ。

 

「黒ウサギ!今すぐ飛鳥たちにゲームを降りるように伝えてくれ!」

 

「…それは出来ません。これは飛鳥さんたちのゲーム、私たちが口を挟んでいいものではないのでございますよ…」

 

「そういうことだ。前にも言ったがこれはあいつらが売ってガルドが買ったケンカだ。俺らが何かするってのは野暮だろうよ」

 

「何でだよ!お前らはあいつらのこと心配じゃないのかよ…!」

 

「しかし…駄目なものは駄目なのですよ…」

 

黒ウサギがウサ耳を萎れさせて言う。じっと堪えるように口を結んでいる表情からはこれが黒ウサギの本意ではないことが容易に窺えた。しかし“審判権限(ジャッジマスター)”としての立場がそれを許さないのだろう。

 

「……っ!いい!じゃあ勝手に行かせてもらう…」

 

まるで子供の駄々のようだったが、それでも凛は冷静ではいられなかった。この箱庭で出来た仲間を失いたくはない。そんな気持ちで閉じていた居住区の門を開こうとする。

 

「待てよ」

 

それは静かに発せられた十六夜の声だった。

 

「…なんだよ」

 

凛も不機嫌さを隠そうともしない声で返した。

 

「お前が助けに行ったとしてどうにかなる問題なのか?

具体的な案はあるのか?」

 

「まだ決めてねえけど俺だって盾くらいにはなる」

 

「盾になってどうする?またこの前の二の舞になるだけだ。それにガルドは怪物になってるんだろ。死ぬぞ、お前」

 

「うるせえよ……じゃあどうすりゃいいって言うんだ!死んじまうかもしれない仲間を放っておくのか!?」

 

自然と語気が強くなる凛に対し、あくまで十六夜は冷静に返した。

 

「かも、だろ?お前は心配のし過ぎだ。あのお嬢様や春日部ならそう簡単にくたばったりしねえよ。だからお前も仲間って言うんなら信頼してやれ」

 

「……そんなこと言ったってよ」

 

冷静な十六夜の言葉に多少落ち着きを取り戻した凛だったが、その表情は不満気だ。理解はしているが納得は出来ないといった感じだろう。

 

「大丈夫でございます!ジン坊ちゃんだってギフトを持っていますし、飛鳥さんのギフトにだってちゃんと秘策がありますから!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「秘策…ですか?」

 

飛鳥が言った言葉にジンは疑問符を浮かべた。

 

耀が意識を失い、ジンが降参を提案したときだった。

飛鳥は出血している耀の右腕をリボンを巻いて止血し、こう言った。

 

まだ秘策がある、と

 

「大丈夫。どんなに強くても知性のない獣には負けないわ」

 

飛鳥はゲームの決着をつけるため、再びガルドの館へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

どうしてこうなってしまったのか。

 

ガルド=ガスパーは自室の床に蹲り、斬り付けられた腕を舐めていた。

出血が止まらないのはあれが銀製だからか。

そもそも十字剣を守っていたのもそれが自分に害を為すものだと本能的に恐怖していたからだった。

悪魔にギフトを授けられてから銀や十字架などの破魔の力を宿すものには一切触れてこなかった。

 

思えば純なる虎だった頃が一番良かったのかもしれない。小さな森の王者、例えそれが井の中の蛙だったとしても井戸の外、この世界は知らないほうが幸せだった。

 

自分はなんと愚かだろうか。

 

人と()ったことで力を恐れ

 

力を求めて悪魔に縋り

 

悪魔と()ったたことで破魔を恐れた。

 

そして……

 

悪魔の所業ともいえる行いをしてきたことで、今こうして追い詰められている。

 

事の発端ともいえる人のギフトさえ鬼と成り果てて。

 

 

そんな時、鋭敏となったガルドの嗅覚を刺激する異臭があった。

昔、何処かで嗅いだことのある臭い。何処で嗅いだのか、或いはいつ嗅いだのかさえ思い出せなかったが、それは本能が危険だと訴えていた。

 

堪らず屋敷を飛び出したガルドは理解する。

 

(屋敷が………燃えている……?)

 

己の権力を誇示するために取り入れた数々の調度は燃え盛る炎に呑まれ、贅を凝らした屋敷の装飾も熱によって無残に剥がれ落ちている。

 

(俺自身も…とうにメッキが剥がれていたわけか)

 

ならば残ったのは鬼としての食人衝動と獣としての本能だけだ。

怪物となったこの躰で奴らを喰い殺す。

 

血の臭いを辿り、まるで導くように左右に分かれた木々を抜け、獲物を見つける。

 

「待っていたわ……思ったより早かったのね」

 

虎は足を止めた。それは警戒心からではない。

飛鳥の片手には木の枝に灯した炎、片手には白銀の十字剣。その2つへの恐怖心からだった。

 

「今更尻込み?森の王者ならば勇ましく襲いかかってくるべきではないのかしら?」

 

飛鳥の挑発に対しても虎は無反応だ。否、最早虎には言語を理解する知性さえも残ってはいなかった。

 

だから気づくことができなかった。ここに来るまでの道も飛鳥がいる場所へも一本道であることに。

 

 

「さあ!一対一です。来なさい!」

 

飛鳥はそう叫ぶと片手の松明を傍に捨て、十字剣を正眼に構えた。その瞬間ガルドは一本道を駆けだした。

 

「GYAAAaaaaaaaaa!!」

 

飛鳥の元へたどり着き柔らかな喉を噛み千切るまでに3秒も要らないはずだった。

 

刹那の時間、飛鳥は己のギフトの可能性について思案する。

曰く自分のギフトは“支配する”という方向に傾いているということ。そしてそれは人間、動物、植物、物質など多岐にわたること。

 

(人の心はそう簡単に変えて良いものじゃない…!)

 

(私は十六夜君、春日部さん…それに凛君と友達でいたい。言葉による支配なんかではなく、言葉での対話がしたい…)

 

だからこそ自分は、今ある才能を受け入れる。

 

(そして、私の…私だけに出来ることをっ!!)

 

 

「今よ、拘束なさい(・・・・・)!!」

 

一喝。すると鬼種となった木々は瞬く間に枝を伸ばし、虎を動きを鈍らせた。契約によって守られているとはいえ、左右から木々に圧迫されればそうもいかない。

 

これが飛鳥の可能性ーーー“ギフトを支配するギフト”だった。

 

「GYAAAAaaaaaaaa!!!」

 

枝を振り払うためもがく虎の怪物。飛鳥は己の力によって破魔の力を増幅させた十字剣を正眼に構え、

 

渾身の力で額を貫いた。

 

 

虎の怪物は地面に臥し、小さく呻く。それが最期だった。

 

飛鳥は息絶えた虎の怪物に歩み寄り、苦笑混じりに呟いた。

 

「今更と言ってはアレだけど…貴方、虎の姿の方が素敵だったわ」

 

 

その瞬間一帯を覆っていた木々は一斉に霧散し、ギフトゲームは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 




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