笑顔を絶やさないのは間違っているだろうか?   作:紫柳

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ついつい書いてしまいました。
こっちは一応サブ的な感じで書きましたので投稿は安定しないかもです。
長さ的に最低一週間以上はかかりそうかな?
とりあえずプロローグ最後まで読んでみてください。


プロローグ

「おかえり!お兄ちゃん!」

 

「おう!元気にしていたか!」

 

お兄ちゃんはそう言ってボクの黒髪に手を置きなでてくれます。

ボクはお兄ちゃんが大好きだ。

物心ついた時から何もなかったボクにはお兄ちゃんしかいませんでした。

お兄ちゃんはボクをどう思っていてくれるのだろうか?

大好きだと思ってくれればいいんだけどボクはいっつもお兄ちゃんに迷惑をかけてばかりです…。

今でもお兄ちゃんはボクのためにこうして帰ってきてくれています。

少し年の離れたお兄ちゃんは迷宮都市オラリオで冒険者として働きに出ています。

お兄ちゃんは冒険者になることが夢でした。

どこかの【ファミリア】に入ってもう数年がたちます。

どこにあるのかよくわからないけどこの前買い物ついでに少しついて行ったらとても遠かったことを覚えています。

普通はその【ファミリア】のホームに泊ってもいいのですがいつもお兄ちゃんは帰ってきてくれます。

朝早くからダンジョンに出かけているから中々遠くにあるのでしょうか?

けど、どんなに遅くても、とても疲れていてもいつも帰ってきてこういいます

「ただいま」

と言ってくれます。

そんなお兄ちゃんがボクは大好きだ。

だからこうやって帰ってきたときにはボクがお兄ちゃんの世話をしてあげます。

お兄ちゃんから汚れものを受け取り水場に付けた後台所へ向かう。

席に着いたお兄ちゃんに魔石装置で温めておいたスープを差し出す。

それを一口口に入れると

 

「おいしいぞー!また腕を上げたか?」

 

お兄ちゃんはボクの出した料理をおいしそうに食しています。

ボクは先に食べていたのでテーブルをはさんでお兄ちゃんの目の前に座ります。

お兄ちゃんが食べ終わるのを待ちます。

そのあとに待っていることが楽しみだからだ。

お兄ちゃんが食べ終わるとスプーンを机に置き軽く咳払いをすると喋り出します

 

「今日はやっとレベルが上がったからさらに下の階層に行ったんだ………」

 

そう、お兄ちゃんが今日起きたことを語ってくれるこの時間が楽しみだからです。

今までもいろんな話を聞きました。

ダンジョンにはたくさんのモンスターが存在していてそれを【ファミリア】の仲間と協力しモンスターを倒す話やダンジョンにはかわいい女の子もいるから沢山の出会いもあることも聞きました。

楽しそうに話すお兄ちゃんはいつも笑っています。

ボクはそのお兄ちゃんがうらやましいです。

そんな笑っていられる場所があるなんてとてもすごいと思いました。

ボクはそんなお兄ちゃんの話を聞いて夢ができました。

ボクも将来お兄ちゃんみたいに冒険者に…

 

「………だったんだよ。ってどうかしたのか?元気ないじゃないか」

 

「っ!い、いや何でもないよ」

 

お兄ちゃんには元気がないように見えたのかな?

心配するお兄ちゃんを止めます。

するとお兄ちゃんはテーブルをはさみ両腕を伸ばしてきました。

ボクは驚きギュッと両目をつぶりましたが叩かれたような痛みはしませんでした。

代わりに来た感覚は両頬をつねられる感覚。

恐る恐る目を上げると目に映ったのはお兄ちゃんの両腕。

その手を触ると頬の筋肉を持ち上げらているみたいです。

 

「何か悩んでいることがあるんだろ?」

 

「…」

 

どうやらお兄ちゃんはボクが何か悩んでいるように見えたようです。

ボクが少しちがうんだよなぁと考えていたので返答が遅れてしまい黙ってしまいました。

するとお兄ちゃんはボクの頬が少し痛いくらいに持ち上げて言いました。

 

「いいか?そういうときは…笑え」

 

「…笑う?」

 

お兄ちゃんはニッと笑うと言葉を続ける

 

「笑いって言うのはな、全てを楽しくさせるんだ。人、動物、神様だって楽しくさせる。人が楽しいって思った時にはどんな奇跡だって起きるんだ。だから、笑っていろ。楽しく思えばどんな願いだって叶うんだ。それがお前の力となって希望になる。」

 

そうやってまた俺の頬を持ち上げる。

そう言えばお兄ちゃんはいつも笑いかけてくれた。

だからお兄ちゃんは自分の夢である冒険者になれたのだろうか?

笑うだけで夢が叶うならいつだって笑っていたいな。

 

「うん!ありがとうお兄ちゃん!」

 

そうやってボクはお兄ちゃんに笑いかけた。

ボクの笑いを見たお兄ちゃんは優しく笑いかけてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー。すごいねお兄ちゃん」

 

「このくらいファミリアで鍛えられている俺にはどうってことないぞ」

 

爽秋深まるこの季節ボクとお兄ちゃんは二人で森に木を取りに来ました。

お兄ちゃんの前では絶対に言えないけど決して贅沢ではないこの暮らしは労働力が必要とされます。

冬場は家の隙間風が酷いのでこうやって暖炉の薪を取りに来なくてはなりません。

そうなるとどうしても多大な労働力が必要とされますのでお兄ちゃんにもついてきてもらいました。

まあ、本当は一人で来る予定だったんだけどお兄ちゃんが

 

「一人で森に行くだと!…危ないから俺もついて行くからな!」

 

そう言って勢いよく家を飛び出したお兄ちゃんは神様の恩恵を行使しほんの少しの間でファミリアに休みの連絡を入れて帰ってきました。

正直過保護すぎるのですが本当に心配してくれていることはしっかりと感じているのでボクは特に何も言いません。

けど、本当に助かりました。

正直これほどの量を全て自分一人で運ぶには日が落ちるまでかかっていたかもしれません。

お兄ちゃんは背中に大量の薪を背負っています。

お兄ちゃんの体格はほとんど普通でこれほどの薪をもてる筋肉があるとは思えません。

しかし、お兄ちゃんは教えてくれないけどある神の【ファミリア】と眷属の関係を結んでいます。

その契約を結ぶと【ステイタス】と呼ばれる力が働き常人には計り知れない力が働くと聞きました。

【ステイタス】は迷宮都市オラリオ、そのダンジョンで訓練していくらしいです。

お兄ちゃんは毎日オラリオに潜っているそうです。

どうもレベルアップがもうすぐだとかあの人にまた近づいたとかの話を聞きますがよくわからないのでそこら辺は大体で聞いていました。

けど、将来のボクの夢のために覚えないといけないのかなと思う今日この頃です。

その帰り道はお兄ちゃんと【ファミリア】の話をしながら帰りました。

冒険の話をするお兄ちゃんは、本当に楽しそうに見えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん…遅いなぁ…」

 

ボクは椅子につきテーブルに頬杖をついて待っていました。

月が昇りいつもなら少し遅れてもこのくらいには帰ってくるのですが帰ってくる気配すらありません。

冒険者は予定が組みづらい。

何が起こるかわからないダンジョンで予定が組めるはずがないことは分かっていますがこれではさすがに遅すぎます。

お兄ちゃんの性格からしてモンスターを倒すのに時間がかかるのなら次の日にモンスターを倒し急いで今日は帰ってくるものなのですが…

組んだ腕をテーブルに乗せその上に頭を載せる。

暖炉にはこの前刈り取ってきた薪が爛々と燃えている。

秋も中旬ですがさすがに夜は冷えます。燃え盛る炎を見ていたらだんだんと瞼が落ちてきました。

起きなければならない意思に反して瞼は完全に閉じてしまった。

 

 

 

 

 

「…う、うーん…」

 

目が覚めた。

自然に目が覚めたわけではない。外が少し騒がしく感じたからだ。

暖炉にある薪は最初ほどの勢いをなくし弱々しく燃えている。

少し寝すぎたかな。そう思い目をこすっていると扉が開く音がした。

ボクが急いで扉の方を振り向いた。この時間に家の扉を開ける人物は一人しかいない。

だが、ボクは少し疑ってしまった。

お兄ちゃんの姿は濡れていた。まるで川にそのまま飛び込んだかのような濡れ方だ。

よく見てみると所々が赤く染まっている。

あれは…一体…。

ふらふらと家に入ってくるお兄ちゃんにボクは少し唖然としたがすぐに気を取り直し駆け寄る。

 

「ど、どうしたの?!お兄ちゃん!」

 

「………ああ…」

 

ポタポタと水を滴らせ返答をするお兄ちゃん。

けど、その声は姿と同様に低く疲労感を伴っている。

ボクは心配になりひたすら声をかける。

 

「本当にどうしたのお兄ちゃん。こんなびしょぬれになって」

 

「…」

 

「な、何?今日とても強い敵と戦ったりしたとか?」

 

「…」

 

「大丈夫?疲れているならご飯食べてすぐに眠ったら…」

 

「うるさいな!少し黙っていろ!!!」

 

「………え?」

 

ボクは理解が遅れました。

いつも優しく笑っていたお兄ちゃんがボクに初めて怒鳴りました。

 

何で?どうして?

 

その思考がボクの頭の中を駆け巡る。

これまでになかった反応が返ってきたため対応ができませんでした。

お兄ちゃんは顔を俯かせています。

前髪が顔を覆い表情が見えません。

その間もピタピタと水滴が地面に流れ落ちる。

 

「…お兄ちゃん?」

 

ボクがまた声をかけます。

するとお兄ちゃんは一拍開けハッと顔をあげました。

その表情は驚いた表情と怒鳴ってしまったことへの困惑の表情だった。

しかしその表情も一瞬でそのあとまたすぐ微笑みボクに声をかけた。

 

「ご…ごめん。怒鳴ってしまって…。ちょっと今疲れているんだ。明日も速いし今日はもう寝るからお前も早く寝ろよ?」

 

そう言ってお兄ちゃんは濡れた服を脱ぎかごに入れ武器であるひと振りの片手剣を持ち奥の部屋の扉を開け入って行く。

ボクは未だ呆然として反応できませんでした。

静寂が取り巻くこの部屋にボクは一人佇む。

その静寂を破ったのは暖炉で燃えていた薪が燃え尽き二つに割れた音でボクは正気を取り戻した。

お兄ちゃんどうしたのだろう?

今朝まではいつも通りのお兄ちゃんだったが帰ってきたときには豹変していました。

まあ、だれが考えても【ファミリア】に出かけてから変わったと思われます。

それにお兄ちゃんは「明日も速い」って言っていました。これは【ファミリア】に何かあったことを示していると思われます。

…これはボクも行った方がいいかもしれません。

お兄ちゃんからは絶対に俺のホームの【ファミリア】に来るなよと昔言われましたがボクは言いつけ以上に気になる事態を解決したいと思いました。

お兄ちゃんが変わった実態を知りたい。

お兄ちゃんに見つからずにファミリアのホームへと向かう、しかしボクはお兄ちゃんの【ファミリア】のホームがある場所を知らない。

それから解決できる策は一つ。

お兄ちゃんを尾行するしかない。

明日も早くに家を出ると言っていたからいつも以上に早く起きなければならないでしょう。

それなら早く休まないといけないので先にやるべきことをやる。

お兄ちゃんが脱いだ服のかごを持ち水場へ進む。

その服を手に持つとボクは気になったことを調べることにした。

すでに水で濡れ切った服に所々ついている赤い紋様。

その部分を軽く匂いを嗅いでみると

 

「鉄臭い?」

 

少々鉄臭い香り。この匂いは…血?

ダンジョンには色々なモンスターがいると知っていますがそこからついたものなのでしょうか?

よく怪我をする冒険者ならあるえることかもしれませんのでそのまま気にも留めず洗濯を終わらせ外に干す。

さすがに一晩では乾かないでしょうと思いボクも床に就こうと自分の部屋に入り寝床に付く。

早く起きるために気を尖らせながらも寝るために少しずつ睡魔に身を委ねるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサガサと音が聞こえボクは目が覚めました。

隙窓からは夜の特有の湿った隙間風が流れてくるのがわかる。

 

(まだ夜明け前だ…)

 

寝ていた時間もほんの少しくらいじゃないのだろうか?

ボクは音を立てないようにぬき足で扉の前にたち少しだけ扉を開ける。

お兄ちゃんは予備の戦闘服に着替え昨晩の夕食をかきこんでいた。

食べ終えると傍らに置いていた一本の片手剣を手に持ち少々の装備品を身につけ外へと出る扉の方へと歩みを進める。

そのままお兄ちゃんは外へと乗り出した。

ボクは少し間を開けると自室の扉を開ける。

テーブルにはお兄ちゃんが食べていた食器がそのままある。

…それほど急いでいるのだろう。

ボクはその食器を水につけ急いで身支度をし、外へと出てお兄ちゃんが向かった方向オラリオへと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空は多分もうそろそろ夜明けと行ったところでしょう。

多分と言ったのは今現在空は黒々とした雲に覆われているからだ。

もうそろそろ雨でも降ってくるかもしれません。

目標であるお兄ちゃんはすぐに見つけることが出来た。

お兄ちゃんは早足でオラリオへの道を進んでいます。

気付かれないようにかなりの距離を開けて進んでいますが夜明け近くということなのでほとんど人もおらずついて行くにはもってこいの環境でした。

お兄ちゃんは早足なのでボクが少しスピードを出さなければなりませんが追いつけないほどではありません。

木々に隠れながら走る走る走る。

少しの間そうした行動をとっていると目の前に町が見えました。

そのままその町に入って行くお兄ちゃんを追っていきます。

多分ここがオラリオなのでしょう。多分もう朝日が出始めているころだろう。

冒険者がぽつぽつとオラリオを歩いているのが見えた。

ボクは田舎に住んでいて周りには親戚などは一切いない環境である。

数人しかいない冒険者たちでもボクにとっては夢のような憧れのような光景でした。

しかし、今は足を止めるわけにはいきません。

お兄ちゃんは町に入ってからも早足で道を歩き進めています。

木々が無くなった今物陰に隠れながら移動しています。

するとお兄ちゃんはある路地裏にへと入って行きました。

ボクは見失わないように急ぎ足でその路地裏へと入って行きます。

路地裏に入った瞬間お兄ちゃんはT時路を右に曲がったところが見えました。

急いでその角を右に曲がるとお兄ちゃんはさらに曲がります。

曲がりくねった路地裏は追跡するのに少し手間がかかりましたがなんとかついて行っていました。

しかし、そこで予想外の事態に陥ってしまいました。

 

「わっ?!」

 

「おっと」

 

曲がり角を曲がった時にちょうど反対方向から人が出てきたのだ。

ボクは反応ができずぶつかってしまいそのまま倒れそうになってしまいましたがその人は倒れそうになるボクを支えてくれました。

その人が支えてくれたおかげで倒れずに済んだボクは崩れた体制を戻し相手をしっかりと見る。

そこでボクは唖然とした。

緑と白のエプロンを着て何らかのものが入った紙袋を持っている女性である。

しかしその女性は薄い緑色の肩口まである髪と空色の瞳をもちその耳は10Cほどの長さである。

お兄ちゃんから聞いたことがある。

長い耳に常人とはかけ離れた美貌を持つのはエルフだと。

エルフは初めて見ましたが確かに冷静と感じられる美貌を持ち合わせていると思います。

ボクが頬けているとエルフの女性から声がかかる

 

「大丈夫ですか?」

 

「…っ!えっ!あ、いや…あ、だ、大丈夫です…」

 

ボクはまともに話すことができませんでした。

これまでお兄ちゃんくらいしか話したことないのにいきなりこんな大人のエルフの人とちゃんとお話することはいささか経験が足らないのです。

返答もおざなり気味になる。

が、そのエルフの女性はこちらを心配しているようだ。

お兄ちゃんから聞いたことがある。

女性には優しくする。特に優しくされたなら紳士な対応で返さねばならないと。

正直紳士な対応がよくわからないがなんとなく真摯な対応で返しました。

 

「あ、あの!助けてくださってありがとうございました!このご恩は…」

 

そこでまた予想外の事態が起きました。

クー…

音が鳴りました。

その鳴り先はボクのお腹から。

 

とても恥ずかしい。

ボクは自分でもわかるほど赤面していると感じてしまった。

そう言えば今朝から何も食べずに追跡していたからお腹がすくのも仕方のないことだろう。

エルフの女性は少し驚いた表情をするとクスリと一つ笑うと手に持っていた紙袋からリンゴを一つ取り出すと

 

「どうぞ」

 

手渡してきた。

ボクは逡巡しました。

さすがに悪いと思い拒否しようとしたが、エルフの女性がせっかくの善意でボクに食べ物を与えてくれるのだ。ここで拒否したら逆に相手に失礼になるのかもしれない。

ボクはそう考えつきそのリンゴを受け取りました。

一つボクはそれをかじると果汁と共に甘い味がボクの口の中に広がる。

これは本当にいいところから買い付けているものだとボクは思いました。

 

「おいしいです!」

 

ボクのその声を聞くとエルフの女性は満足したように「そうですか」と答える。

また一口齧ろうとするとボクは思い出した。本来の役割を

 

「あっ…!」

 

お兄ちゃんを追わなくてはならない。

しかし、このエルフの女性とぶつかりさらにはこのようなごちそうまで受け取ってしまったのだ。

さすがにこれから追うのは厳しいかもしれない。

けど、ボクはこのまま帰ろうとは思わなかった。

気になるのだ。お兄ちゃんが何故ああいう風に変わったのか。

ボクは考えました。

どうすればお兄ちゃんの居場所が分かるのか。

そこでボクはエルフの女性を見た。多分この女性はこの近くに住んでいるかこのあたりに詳しいだろう。そうでなければこのような入り組んだ路地裏に入ろうとはしないはずです。それならこのあたりに精通する人物ならお兄ちゃんがここを通った時に何らかの記憶が残っているはずだろう。

だからボクは聞いてみた。

 

「あの…さっきこのあたりでこのくらいの身長の男が通りませんでしたか?」

 

そう言ってボクはお兄ちゃんの身長くらいに手を伸ばし問うてみた。

 

「…それなら少し前にここを通りましたが…彼に何か用があるのですか?」

 

「…えっと…、その人に少し用事があるんです」

 

ボクは少し返答に戸惑いを示してしまった。

何となくお兄ちゃんとの兄弟関係を伝えたくなかったのだ。

するとエルフの女性は何らかの思うところがあったのか少し苦い表情をした。

ボクは少し疑問に思ったがすぐに返答が返ってきたために一考することをしませんでした。

 

「その人なら多分【ファミリア】のホームにいるでしょう。ここの近くにあるので場所なら知っていますよ」

 

ボクはその返答に満足した。

よかった。なんとか道は確保できたと。

それからエルフの女性に場所を聞き頭の中に叩き込みます。

ちょっと複雑だがいけない場所ではないことが分かりました。

頭の中に情報を叩き込むとボクは一歩下がり頭を下げ

 

「教えていただきありがとうございました。このリンゴもご恩も忘れません」

 

そう声を出しました

 

「いえ。これくらいはどうってことないですよ。それより…」

 

ボクが頭を上げるとまた苦い顔をするエルフの人。

この人は何を伝えたいのだろうと考えましたが

 

「…いいえ。なんでもありません。けど、あの【ファミリア】とあまり関わらない方がいいですよ」

 

「えっ?どうしてですか?」

 

「それは…まあ、あまり関わらなければいいでしょう。それよりも急いで行かなければならないのじゃありませんか?」

 

「あっ!そうでした。すいません、色々と」

 

そう言ってまた頭を下げると振りかえり走りだす。

頭の中に入れた地図を頼りに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…行ってしまいましたか」

 

エルフの女性、名をリュー・リオンは後悔をしていた。

本当にあの【ファミリア】のホームを教えてよかったのか。

あの【ファミリア】は最近発覚したある出来事でここら辺の最近の話題となっているのだ。正直教えるのは憚れたがどうしても教えてほしいとのことで仕方なく教えてしまったのである。

最初は本気で心配をしてしまい後から尾行しようかと思ったがミアからの買い出しがこの手にありこれ以上遅れるとさすがに叱られることが分かっていて尾行を諦めたのだ。

リューはその手を見る。

ぶつかってしまいその手を掴んで助けた少年。

エルフの女性は他人にみだらに触れない種族である。

たとえ触れられるとしてもとても親しみを持った特定の人物しか無理なのだ。

しかしリューは嫌悪感を覚えなかったのである。

確かに年若い少年であるが初めての相手それも男性に触れて嫌悪感を抱かなかったのは初めてだった。

 

「不思議な少年だ。…名前くらい聞いておけばよかったか」

 

だから今になって後悔した。

あの少年はこのオラリオに蔓延る闇を多分知らない。

だからその闇の中心である例の【ファミリア】の場所を教えても不審がらなかったのだ。

 

「…何もなければいいのだけれど…」

 

そしてリューは職場である『豊穣の女主人亭』へと歩みを進める。

リューは後悔をする。

それがいつかは分からないがその時何故あの少年について行ってやらなかったのか深く後悔をすることになる。

何故、あの少年を助けてやれなかったのかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな角を曲がると少し開けた場所に出ました。

 

「多分もう少しのはずなんだけど…」

 

周りには誰もいないため先ほどの女性の教えてくれた情報を頼りに進んでいます。

その情報を頼りにすればもう少しでつくはずだけど…

するとボクの進んでいる先から集団がやってきた。

女性に男性、よく見ればエルフだったり小さい子供や小さい老人これもお兄ちゃんから聞きましたが犬のような耳の人種は狼人というらしいがその青年、もちろんただの人などもいるがそう言った集団でした。

ただの集団ではないのは見てわかるがその人たちはみんながみんな何かの武器を持っているということはこの人たちは

 

(冒険者なんだ!)

 

進む方向から逆にその冒険者の集団が歩いてくるため必然的に近づいていく。

近づいてみてわかったのだが彼らの体には多少の傷や血が見られ、まるで、さっきまで戦っていたような姿でした。

ダンジョンに潜ってきたのかな?まあ、冒険者なら夜型の集団もいるかもしれないし。

少し開けたと言っても目の前の冒険者の集団は中々の人数です。

邪魔にならないように端っこに寄って冒険者の方々の邪魔にならないようにしました。

ダンジョンに潜ってきたのなら疲れているだろうしボクが道の真ん中に陣取っていたら迷惑をかけるだろうと思ったからだ。

ボクが道の端に寄った後冒険者集団が横を通り過ぎて行った。

この人たちは全員同じ【ファミリア】の団員なのかな?少し疲れたように歩いて行く冒険者の方たち。

目の前を通り過ぎていく冒険者を見ていると褐色で双子の冒険者の方が「ごめんね」とボクの目の前で言ってくれました。

その方々は二人とも結構際どい服装だったのでちょっと動揺してしまいましたが「あ、いいえ。大丈夫です」と言ってしまいました。

何が大丈夫か自分で言っていてわかりませんでしたがボクの返答を聞いた双子はまた集団の中に入って行こうとするとまた集団の中から一人の女性が出てきました。

その人を見たとたんボクは見惚れてしまいました。

長い金髪に空色の瞳、まるで人形のように端正な顔立ちで腰に一本の細剣を携え白い戦闘服を纏ったその女性はこちらを見ると軽くペコっと頭を下ました。

多分謝ったのかな?ボクもペコリと頭を下げると「ありがとう」と声をかけられました。そのあとは、褐色の双子と一緒に集団へと戻って行きました。

冒険者ってあんなに美人な人たちもいるんだなぁ…。

いつかはあんな人たちと一緒に冒険してみたいなと思いながら集団が流れていくのを見ていた。

ほとんどの冒険者の方たちは武器などを持っていましたが後ろの方にいた冒険者は旗を持っていました。

その旗を見てみると人を小馬鹿にするような道化師のマークが縫い付けられていてその下に文字が書かれてある。

昔お兄ちゃんに文字の読み書きを教えてくれたので読めることには読むことができます。

その文字を読んでみると【ロキ・ファミリア】と書かれてありました。

これがこの【ファミリア】の名前なのかなと思い、ボクもこういった【ファミリア】に将来入りたいなと考えたりしていました。

けど、今は目先のことだけで精一杯です。

【ロキ・ファミリア】の集団が抜けた瞬間ボクは走り出す。

少し足止めを食らいましたので急いで目的地へと走り出しました。

遅くなりすぎたらお兄ちゃんはダンジョンなどに出かけているかと思ったからです。

 

「目的地までもうすぐだ!」

 

ボクが来たらお兄ちゃんどう思うかなぁと思いつつ心の中でクスリと笑いながらボクは走り続けました。

 

「あの角を曲がれば!」

 

お兄ちゃんに会える!

ボクの目標であり夢である冒険者のホームに!

そんな面持ちのままボクは最後の角を曲がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――えっ…」

 

そこはボクの夢の場所とは全く違う光景。

そこにあったであろう石造りの建物はほとんど全壊していた。

所々から火が上がっているのも見える。

ボクは理解できませんでした。

ここが、お兄ちゃんのホーム?

重い足取りで歩きだす。

かつては客人や冒険者を招き入れた扉はただの木片となっていた。

その正門から入りこむ。

黒い夜空からぽつぽつと雨が降ってくる。それを防ぐための天井は完全に破壊されていてそれはもう室内とは呼べない状況だった。

ボクの足元にはガラガラと瓦礫がありボクはその上をおぼつかない足取りで歩いて行く。

目的もなくホームであった場所を歩きまわる。

するとぴちゃぴちゃと足元から音が聞こえた。

雨は降っているが水たまりができるほどは降ってはいない。

では一体何を踏んだのだろう?

ボクは足元に目線を送った。

映ったのは赤。少し粘液質のその液体はある場所から流れ出していた。

血の気のない肌。それは誰が見てもきっと同じ感想を抱いていただろう。

 

「う、うわぁああ!!」

 

ボクは腰が抜けた。

もちろん人が死んでいるのを見るのは初めてだったのだ。

現実を見たことで視界が広がる。

周りにはたくさん同じようなものが転がっていた。

刺し切られていたり燃やされていたりしたのもあった。

人は非現実的なものを見た時起こす行動は錯乱し暴れまわることか冷静になり何も考えられなくなることだ。

ボクの場合は完全に後者だった。

目の前の事態が完全に理解しがたいこと理解することが難しいことだったからだ。

呆然と周りを見る。

降る雨がだんだんと強くなっていることが分かる。

決して動くことが無い生き物。

その中でボクは一つの動かないそれが目に入った。

それは今朝家で扉の隙間から見かけた背中と同じだった。

ボクは一つごくりと息をのむとその背中へと歩みを進める。

自分が見た光景を否定したかったからだ。

けど、現実は突きつけられる

 

「あ…」

 

それはボクのただ一人の家族だった。

お腹から血があふれだし肌には血の気が無い。

たとえどんなに声をかけても起きることが無いことはボクでも理解できた。

声はでない。

出るのは涙だけだった。

お兄ちゃんであったものの背中に顔を伏せただ涙を流す。

雨はどんどん勢いを増しボクの体を冷やしていく。

ボクの心の中にはある感情があふれてきた。

それは憎しみ。

ボクのお兄ちゃんをお兄ちゃんの仲間を殺した奴が憎かった。

大切な家族を奪われた悲しみを一人背負わなくてはならない。

そんなことはボクには耐えられなかった。

だから復讐という形でその悲しみを逃がさなければならないぐらい彼の心は壊れかかっていた。

ボクは考えた。

一体誰がこの事態を起こしたのか。

お兄ちゃんたちの流血は今現在でも流れ出している。

お兄ちゃんの首元に手をあてるとかすかなぬくもりもある。

それはつまり殺されてからまだそう時間は経過していないということだ。

それにこの人数を全員殺すということは相手もかなりの人数だということ。

そして冒険者であるお兄ちゃんたちを殺せる可能性があるのは冒険者しかいない。

それなりの人数でありさっきまで戦っていていた冒険者は…

 

 

 

 

 

ボクは呆然としてしまった。

先ほどあった冒険者の集団。

さっきまで戦っていたような傷、そこまで遠くに行っていないはずであろう犯人、集団であろう冒険者集団。

ボクは分かった。理解してしまった。

先ほどまで憧れ、目標としていた冒険者に裏切られた気がした。

呆然と同時ボクは絶望をした。

冒険者は強い、それは分かっていた。

けど復讐ができそうにない。ボクは考え付かなかったのだ。

普通にやっても返り討ちになるだけ。

やり返すこともできない、実力が足らない、強さが足りない。

ボクはなんて弱いんだろう。

 

雨がさらに強くなる。

ざあざあと音が聞こえ数十メートル先も見えないほどだ。

ボクは地面に思いっきり頭を打ち付ける。

おでこから熱を感じどくどくと血があふれだしていくのが感じる。

あふれだす血と共に何かが流れ出していく気がした。

叶うことのない願い。

 

 

 

 

しかし、ボクの頭の中に一句の言葉がよぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑え。笑えばどんな願いだって叶うんだ。それがお前の力になって希望になるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉でボクに一つの光がさした。

わかった。

わかってしまった。

 

「―――は―!」

 

いつでも笑っていたお兄ちゃん。

だからお兄ちゃんは夢である冒険者になることができたのだ。

お兄ちゃんの言っていたことは間違いではなかったのだ。

 

「―――ははは――!」

 

ならボクも笑うのだ。

ボクも今新たに夢ができた。

確かに叶うことは難しいかもしれない。

でもお兄ちゃんだってどんな願いでも叶うって言ったんだ。

 

「―はははははは!!」

 

だからボクは笑うことにした。

新たなる夢を叶えるために。

ボクは果たすんだ。

あの【ファミリア】を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】を殺すために。

 

ボクは笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はははははははハハハハハハははハはははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハははははははははははハハハハはははははははははははははハハハハはははははハはははははははははははハはははははははハハハははは――!!!」

 

 

 

 

 

彼の声は雨の中に木霊した。

その心は本当に壊れていないと言えただろうか?

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】が帰還して数時間後、実況見分に訪れたギルドの職員が尋ねた時にはもう子供の影すらなかったという。

雨はすでに止み青空が空に広がっていた。

 

 

 




プロローグ終わりました。
主人公の名前は次回から公表されます。
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