主人公も艦娘もまだこの話では登場しません。
ある時代、ある世界。世界をも巻き込む、人間同士の悲しい戦争があった。
それから6年間。ある国は降伏し、戦争は終結した。
だが――――――それでは終わらなかった。
世界が残した傷痕は深く、物を直すのには時間がかかり、者の心を治すことはほとんどなかった。
――――――それから数年、数十年と時が過ぎ、平和と言える時間が過ぎていた。
忘れてはいけない。その戦争の残した傷痕は永久に残るモノと。
そして、いつしかその傷痕は具現化されていく。
深海棲艦……。いつしか海から襲来し、人を脅かす存在と化していた。
誰が言ったのかは分からない。だが―――その人はこういった。
「まるで、海戦で沈んだ『艦船』の怨念が具現化した存在だ」と。
世界を巻き込んだ戦争から数十年。世界が協力して倒すべき存在に立ち向かう。
だが……敵は増え続けている。だが、それを調べる筋はない。
今はそれを抗うべき。そう。「艦船」の名を模した武器を携える「艦娘」と共に―――
一体どれだけの年月が経過したのだろうか。それは「私」には分からない。
そんな中、「本部」はとある基地の次の提督について相談し合っていた。
今現在、深海棲艦の脅威から守る存在の「本部」。いわゆる、心臓部分に値するだろう。
「―――ですが現在、北西側の敵艦に手いっぱいです。今はこの基地は放置してもよろしいのでは?」
「否。この基地はヤツらに目をつけられている。……前の提督がそうしたからな」
会議室と言えるべき場所にて、十数名の人物が話し合っていた。決められたようにその人物たちは黒の制服を身にまとい、上官であることをアピールしているかのようだ。
「……でしたら、この案はどうでしょうか?」
どことなく痩せ、顔色も薄い人物が席を立ち、意見を告げる。
「現在、少数ながらも有能な候補生が多数存在すると見受けられます。そのため、それらの実地訓練として、派遣する意味でも、将来につなげられるかと思います」
「……ふむ。だが、その方法で戦力になりうる存在はあるのですか?」
老人がその人物に向かって告げる。黙って首を振り、こう答えた。
「残念ながら、そういった有力な候補生は存在しません。ですので……一人一人、その基地に送って―――」
「その必要なないでしょう」
大柄で筋肉質な隣の人物がそう答える。「なぜですか?」と、痩せた人物。大柄の人物は答える。
「あぁ、うちのほうで非常に有効な即戦力になりうる候補生が一人いる。名前等は……失礼、今送る」
そう言ってタブレットを操作して、全員の手元のタブレット一つ一つに情報を送る。痩せた男もしぶしぶ情報を見る。
しばしの沈黙の間。ときおり、「ふむ」などといった小さな声が出る以外はほとんど音はしなかった。
やがて、恐らくはここの最高責任者らしき、外見は年老いても現役を思い出させるような老人が席を立つ。全員の注目はその老人に向かう。
「……では、この候補生を基地に送るべきか、否か、諸君。賛成ならば、立ちたまえ」
「………」
次々と立ちあがる。数秒と、半数が立ち上がり、賛同の意思を見せていた。
「座ってくれ」
老人は声をかける。
「―――半数以上とみなした。よって―――彼を候補生から外し、『提督』としてこの鎮守府に就かせることにする」
途端に、ざわめきが起こる。無理もない。候補生からいきなり提督、という無謀すぎる昇進を宣言したのだから。
確かに、現在の状況が厳しいものだから、就かせるのも無理はない。だが、十分な知識もないはずなのに、提督という大層な役にしようとしている。
だがそれよりも早く、老人は答える。
「……候補生、それも有力、さらに彼が進んで推薦するような存在なのだから、それに値するとは思わんか?」
「……ですが」
「えぇ。彼なら、十分に司令官に値する能力をお持ちかと。能力等は保証します。それに―――」
大柄の男は一息置いた後、こう告げた。
「彼なら――――――彼女たちの深い