今日から鎮守府を平和にします。   作:エマーコール

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サボらず頑張りたい。
この時間帯にやっていたテレビを見てそう思った。


3話

 

「よいしょっと」

 

 食堂を見つけ、そこに一旦荷物を置く提督。そこからタブレットを取り出し、まずはメールの確認を行う。ないことを確認し、今度はあるアプリを起動しながら、さらにある物を取り出す。将棋盤だ。しかも、起動したアプリも将棋系。

 と、言うのもこの提督、結構日本文化が好きであり、一部からは「オタクの域」とも言われているほど。

 将棋もその一環とも言え、だが、一緒に指してくれる相手もいないので仕方ないのでコンピュータを使って、さらには実際のモノを使って指すと言う、どうも分からない変な趣味を持っている。

 コンピュータをいじり、将棋を指し、それの繰り返し。静かで、尚且つ、駒の置かれる音が静まり返っている食堂に広がる。

 数分しただろうか。ガララ、と、扉が開く音を聞き、一度手を止める。振り返ると、女性が四人。服装も全く似通ってない彼女たちとご対面し、一瞬慌てふためくも、心を落ち着ける。

 

「……初めまして。本日付でこの鎮守府に就くことになりました―――」

「迷子?」

「ですよね……。最初はそう思われますけど……でも、一応、提督です」

 

 癖なのか、後ろ手で頭をかく提督。提督の言葉に四人は思わず顔を見合わせる。

 

「……あ! 今日だったのですね! すみません、何の迎えもなくて……」

「気にしてませんよ。僕だって今でも驚いていますから」

 

 メガネで巫女服っぽい、大人の女性に大丈夫と示すように提督は言う。

 

「あ、自己紹介を忘れてました。私は霧島と呼ばれています。それと……」

「うふふ。龍田、よ。よろしくね? 提督さん?」

「は、はい……」

 

 女性に対する耐性がないのか、それとも、龍田の言い方が少し怖かったのか、提督は目をそらす。

 

「そして、後二人は……」

「加古ってんだ。よろしくな。提督」

「……山城、です」

「うん。よろしくお願いします。……えっと、山城さん、大丈夫ですか?」

 

 どことなく暗い山城に提督は声をかける。山城はコクコクとうなずいただけで、それ以上は言わなかった。

 

「……え、えっと……霧島さん。……もしかして、遠征ですか?」

「えぇ。今日は2グループに分けての遠征を行ってました。成果をお見せしましょうか?」

「……ううん。みんな休んでからでいいよ」

「え?」

 

 驚いたのは山城だ。目をぱちくりさせて提督を見る。気づいた提督は、後ろ手で頭に回し、言う。

 

「いや……普通そうなんじゃないのかな……。だから、休んでいいですよ。僕はここにいますし、もしいなかったら提督室にいると思います。多分」

「……了解しました。……ありがとうございます提督」

 

 そう言って、霧島、山城、加古の3人は食堂を後にする。残ったのは龍田だ。

 

「龍田さんも、戻っていいんですよ?」

「……うふふ。ありがと。……優しいのね?」

「ふえ? ……い、いえ……そんなことない……です」

 

 恥ずかしそうにまた目を逸らし、頭をかく提督。クスクス笑いながら龍田は近づき、少々小柄な提督を、弟をしつけるようにこういった。

 

「……貴方は、亡くならないでね?」

「え……だ、大丈夫ですよ。……むしろ、龍田さんたちが心配です。でも、今の言葉……」

 

 質問しようとした提督だが、それより早く龍田も「じゃあ、休んでいるわね」と言って後にする。あ、と声を出したときにはもう、提督は一人になっていた。

 

「………なんだったんだろう……さっきの山城さんと言い、龍田さんと言い……この鎮守府、何かあったのかな……」

 

 大鳳さんや天龍さんに相談しようかな、と思ったが、踏み込んではいけないと思い、知りたい気持ちを抑えて、もう一度辺りを見渡す。食堂、だけあってアレはあるのかもしれないと思い、一度タブレットを閉じ、キッチンに立って冷蔵庫を開ける。

 

「………よし」

 

 

*****

 

 

「……提督?」

 

 大鳳が食堂に入り、鍋を使って料理をしている提督を見つけ、近づく。足音が聞こえて提督は大鳳のほうへ向く。

 

「ん……? あ、大鳳さん。すみません、勝手に台所借りちゃって…」

「そんな……提督の手を煩わせるわけには……」

「いいよいいよ。いきなりなのに僕の……あぁ、前の提督の部屋を掃除してたみたいだし、霧島さんたちは遠征に行ってたみたいだし、だったら僕が……ね」

「いえ……提督もわざわざ遠くから来たらしいので疲れてるのでは……」

「だから、大丈夫だから。……掃除終わったんだよね? ずいぶん時間かかってたみたいだけど……」

「あ、え! ……えっと、怒らないで聞いてくれますか?」

「うん」

 

 提督は、どうしたんだろうか。と思いながら大鳳を見る。大鳳は目線を逸らしつつも、提督をみて、逸らして、を繰り返し、やがてじっと提督を見つめ、こういった。

 

「……すみません! バケツの水をひっくり返して提督の荷物に直撃してしまって!!」

「え?」

 

 一瞬、頭が真っ白になった提督。

 だが、あはは、と笑って許した。

 

「大丈夫だよ。あれ、ノートとかしか入ってないし、着替えもすぐ乾くだろうし、何より大切なものはあっちのバックに入れてたから」

「そ、そうなのですか……よ、よかった……」

 

 ほっと胸をなでおろす大鳳。でも、提督は、はぁ、とため息をついた。

 

「でも、ノートや教科書への直撃はちょっとショックだな……。まぁ、もう一度書けばいいし、大丈夫、かな」

「……お、怒って……ますか?」

「え?」

 

 おずおずとした表情の大鳳に、提督は一瞬不安になるが、すぐに首を横に振った。

 

「いや、あれロクなものは書いてないから。大丈夫だよ。教科書は……乾かせば使えるはずだし」

「……よ、よかった……」

「……でもちょっと異常じゃないかな? いくらなんでも、直撃程度でそんなに怖がることはないし……。ねぇ……大鳳さん……」

 

 一瞬、どうしてなのか訊きたくなった提督だが、口をぎゅっと閉じて横に振る。いくらなんでも、聞くのはダメかもしれない。そう思ったからだ。

 代わりに、提督はこういった。

 

「……ちょっと手伝ってくれる? 実は米を炊くのを忘れちゃって……」

 

 あはは、と自嘲するように笑って大鳳に手伝ってくれるか聞いてみる。大鳳は元気よく「はい!」と答え、提督と共に夕飯を作ることになった。

 西の山へと沈む夕日が、彼女と提督を祝福してるように明るかった。

 




ちなみに、前回と今回の艦娘は全員改にすらもなってないので大鳳はノーマルカラーです。
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