今日から鎮守府を平和にします。   作:エマーコール

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今日はもう更新するもんか! と思ったらいつの間にか手が動いていた。
そしてさまざまな方の艦これ小説見て、こう思います。

やっぱり、いろんな方に愛されているなぁ、と。


8話

 特にやることがないので提督はみんなに「自由行動」と告げる。どうやら嬉しかったらしく、みんなの顔に光がともっているように思えた。その光景に、提督は内心ほっとしており、それがどこまで彼女たちの酷な運命を物語っていたか、ある程度は察せる。けれど、異常な捜索はやめたほうがいいと、提督はそう感じていた。

 そんな提督は、やはり初日に来たようにタブレットで将棋のアプリを起動、さらには実物を使って将棋を始める。やはりと言うべきか、どこか異様な光景だ。将棋をやっているのに将棋をやる。どことなく異様な光景だ。大事な事なので2回言いました。

 

「………ん?」

 

 と、執務室の窓から山城が見え、どことなく海を眺めているように思え、気になった提督は一旦手を止めて外に出ることに。

 玄関先まで来たとき、一旦立ち止まり、振り返る。

 

「……アレ、あるかな?」

 

 

*****

 

 

「……姉さま……」

 

 山城は港の端っこの防波堤に腰掛け、海を眺めていた。そして脳裏に思い浮かぶは、姉の姿。今は、この鎮守府にはいない。

 

「……はぁ」

 

 ため息をついて、頬に手を当て、遠く海を眺める。

 ……その後ろに、釣竿二つとバケツ、そして、小さな箱を持っている提督がいたが、山城は気づかない。と、言うか声をかけにくい。どうしよう。というか、ここまで深刻とは思えなかった。

 やはり、前の提督の指示が原因なのだろう。……いわゆる、黒。禁断で、危険を超えた危険。そう思うと、本当に僕が来てよかったのかな、と提督は思っていた。

 

「―――提督?」

「わっ? あ、た、大鳳さん……」

「え? 提督……?」

 

 そこに偶然やってきた大鳳の機転(?)により、山城が提督のほうを振り向いた。あ、と声を出して提督も山城の方へ振り向く。

 どうしよう。何を言おうか。迂闊に声をかけられず、口をモゴモゴさせて何か言おうとはしたが、どうも発せられず、ついつい山城から視線を逸らしてしまう。

 それを思ったのか、大鳳は提督の持っているアイテムを見て、ポンと手を叩いて代わりに言った。

 

「……提督。もしかして釣りをしに?」

「あ、え、あ、う、うん。その……いい天気、だからね」

「ふふっ……やっぱり、優しいのね」

「だ、だからそんなことないって……」

 

 山城からも大鳳からも目を逸らして恥ずかしそうにうつむく提督。クスクスと笑って大鳳は一旦踵を返して本館へ向かおうとする。

 

「あ、大鳳さん?」

「私も釣竿取りに行こうと思います。それまで、山城さんと、ね?」

「……ありがとう。大鳳さん」

「ふふ。礼には及ばないわ」

 

 そう言ってランニングするように一度この場を立ち去る大鳳。その背を見送った後、山城の方へ振り向く提督。じっと見て、微笑むように言った。

 

「……どうですか? 僕と、あと、大鳳さんと一緒に釣りしません?」

「………いいのでしょうか?」

「うん」

 

 コクリとうなずく提督。そんな提督を見て、また海の方へ向く山城。ダメだったかな? と提督は思ったが、山城はこういった。

 

「……やり方は分かりませんし、私は不幸ですが……それでもいいのなら、隣で、お願いします」

 

 

*****

 

 

「……釣れませんね」

「うん……。久しぶりにやってみたけど、難しいね」

 

 一体何分したのか、2人は防波堤に腰掛けて釣竿を持っていて、だが、釣れない。……そもそも、大鳳は一体何をやっているのか。釣竿1本にそこまで時間かかるかなぁ、と提督は思っていた。

 ちなみに餌は提督が取り付けていた。山城が「きゃっ」と悲鳴を上げたので提督があわてて自分で取り付けることになった。この提督にはそう言ったかわいさも伝わらないのか、100%焦りでいた。

 

「……そうね、私が不幸だから……」

「そんなことないですよ。魚は気まぐれですから、そこまで我慢できるか……あ、なんか来た」

 

 提督の釣竿がぐにっと曲がり、ヒットした合図を示し、ゆっくりと引き上げていく。久しぶり、と言う割にはそこそこの手さばきで魚を釣った。

 

「あ、シロギスだ。山城さん。シロギスですよ」

「あら。おめでとう。……はぁ、いいわね。提督……は」

「たまたまですよ」

 

 そう言いながら提督はバケツに魚を入れ、またエサを取り付けて海へとひょいと入れる。

 遠くの海と自分の竿を交互に見ながら、提督は大鳳がいないことを気にかけていた。どうしたんだろうか。

 

「……あの、提督さん」

「あ、あの山城さん……あ、どうぞお先に」

「……提督……ごめんなさい。私はどうしてもその名前を聞くだけで前の提督の顔を思い出すの」

「あ……その、ごめんなさい」

 

 辛いことを思い出させてしまった。提督は地面に眼を落とし、気を落としてしまう。

 それを見たのか、山城は首を横に振って、「あなたのせいではないわ」と気遣った。

 

「……その、でも、あなたの事を『提督』とは呼べないの。……ごめんなさい」

「……大丈夫ですよ。僕だってまだ新米、いや、見習い提督ですからね。それに、まだその呼び方に馴れてないので……」

 

 あはは、と癖のように頭をかく提督。山城にも、少し笑顔がやってくる。

 そしてそれを見計らってか、山城の釣竿もグイッと引っ張られる。

 

「え?」

「あ、当たりですよ山城さん。手伝います」

 

 提督は自分の竿を片手で持ちながら、山城の手伝いをする。ゆっくり、丁寧に引き上げ、また魚を釣った。黒魚が飛び出す。

 

「わっ、クロダイですよ。しかも大物ですよ」

「え、そ、そうなの。……うふふ。ありがとう」

 

 山城が心から喜んでいるようで、提督も無意識に笑顔を作る。そして山城は魚を見て、そして提督を見て、提督の方に視線を向ける。

 

「……あ、あの、もう1つ、あ、2つ、お願いが……」

「え? 何ですか?」

 

 

*****

 

 

「……ふふ。よかったですね」

「え、た、大鳳さん? もしかして、見てました?」

「えぇ」

 

 釣り終えた提督と山城は並び、歩いていて、大鳳に出会う。どうやら嘘だったらしく、大鳳は手ぶら、どうやらランニングをしていたようだ。

 

「あ、釣れました? 提督」

「あ、あはは。山城さんが逃がしてあげて、って言うからね。釣ったけど、釣らなかったよ」

 

 そう。提督の片手のバケツは何も入っていなかった。こくこくと大鳳はうなずいて、提督の横に並ぶ。

 

「……あ、もしかして昼食かな?」

「はい。折角提督が釣ってくると思ったのであまり副食はなかったので……」

「あー……ごめん大鳳さん……」

「あ、あの、そんなに気を落とさないでくださいね。『若』……」

「え?」

 

 大鳳は驚いた目で山城を見た。提督もあはは、と言って笑った。

 

「なんか、そう呼ばれちゃっててさ……。名前や苗字で話すのもまだ恥ずかしいから、若、と呼んでいいですか、って」

「……うふふ。若、ね。私もそう呼んでみようかしら?」

「や、やめてよ大鳳さん……」

「「……ふふっ」」

 

 慌てふためく提督に2人は顔を見合わせて笑った。

 だが、提督も苦笑しながらも内心では、「まぁ、いいかな」と思った。

 さて、昼食はどうしようかな、と提督は雲がポツポツと残った空を眺めながらそう思うのであった。

 




フラグを2つも立てる提督。

くっ、これは新たに艦爆を発射しなくてはいけない予感………。
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