「乗り物でも藍が手助けしてくれるわけでもないってか」
ここまでの赤を纏めるとそういうことになるのか、と罪袋は言う。
「ええ、そうよ。彼女は乗り物で移動したわけじゃないわ」
「復唱要求、「ゲーム終了時橙の足は汚れていた」」
「汚れてね、割と難しいわ。答えないでおきましょう」
「「橙は何も道具を使っていない」復唱要求です」
「それだと服も着ていないことになるわね、だから駄目」
チルノ、文と続けて復唱拒否をする。とはいえその理由は若干異なるようだが。
「『濡れるを通り越して泥でぐちゃぐちゃだった』」
「罪袋さんのそれは…」
「わかっている、こんなわけはない」
笑いながら罪袋はそう言うが、赤を行使しなければならない霊夢は若干困り顔だ。
「何か答えづらいわね、赤が切りにくい。【いかに泥にまみれようと、雨をその身で受けたのならそれは雨に濡れたとみなす】」
「「服以外の道具を使っていない」復唱要求です」
「復唱要求、「橙の歩いた道は地点Aから地点Bである」」
「これはどうでしょう。復唱要求「地点Aに立っている橙には雨がかかる」
「……どうしましょうか」
改めての文、チルノ、そして大妖精の復唱要求に霊夢はしばし考え込む。
「…」
「全部拒否よ、なかなか良い線いっているわ」
チルノが固唾を飲んで見守る中、霊夢は首を振りながらそう答えた。拒否され赤を引き出すことこそ出来なかったが、その反応は今の彼女たちの推理がなかなかに良い線をついているのであろうと推測できる。
「復唱要求、「地点Aから地点Bは平たい道である」」
「この日本、坂くらいはあるでしょうね」
そう言ってチルノの要求に惚ける霊夢、復唱する気は無いということだろう。
「私の考えだと…『濡れない場所である地点Aと地点Bは同じ場所であった。橙は移動などしていなかった』どうでしょうか?」
「【地点Aと地点Bは確かに離れている】【同位置ではない】【これは水平方向、垂直方向、両方でである】」
「移動しなかったら濡れないと思ったんだけどなぁ」
「『移動距離は一歩や二歩の狭い範囲である』」
「それでも濡れると思うけれどね、【地点Aと地点Bは十メートル以上離れている】」
「ふむ、奇策でいったけれど流石に駄目だったか」
続いての大妖精、罪袋の推理を霊夢は赤を以ってスッパリと切る。見事に推理切られてしまった二人はがっくりと肩を落とす。
「『地点Aから地点Bは建物内であり橙は階段を使って地点Bまで行った』」
「チルノ、それは先の赤で切れるわ」
建物の中で無い、それは先の赤で既に証明済みだ。
「『服を脱いで服を傘代わりにして移動した』
「また全裸ね」
「いや、訂正します。『何らかの道具を傘代わりにして移動した』」
「【橙は雨具の代わりになりそうな道具を所持していない】ついでに、【橙は全裸ではない】」
ふむ、と自分の青を切られた文はしばし考え込む。しかしこれだけでは終わらないとさらに青を提示していく。
「『雨が降っていない道を選んで移動した』」
「【地点Bを中心として十メートル以上の範囲で雨が降っていた】まあ実際はもっと広いでしょうけど」
これも駄目、と。ならばと次なる推理を披露しようとする文よりも一瞬早くチルノが自身の青を示す。
「『橙は飛行機の中に居た』」
「おっと」
「『地点Aと地点Bは雲の上だった』
「良いわ、チルノ、そして文」
二人の青き真実を聞いた霊夢は軽く肩をおとし、諦めたように口を開く。
「私はリザ…」
ごくり、と探偵達はつばを飲み込む。これで終わりかと皆が思った、その時だ。霊夢はその諦めたような空気を霧散させ、にやりと笑う。
「なんてするわけないでしょう!」
「えええええ!!! そこはリザインで良いじゃないですかー」
大妖精の反応にさらに笑みを深める霊夢。そうだ、これこそが魔女の求めていた反応なのだ!
「【本ゲームにおいて、乗り物の類は一切登場しない!!】【橙は確かに雨雲よりも下の地点に居た!!】【つまり、山の上が舞台などでは無い!!!】」
「うーん、難しいなあ…」
「むむむ…、潰されちゃったよ」
「いいわ、二人とも。私の筋書き通りの答えをくれて」
余談ではあるが霊夢が最初にこの謎を考えた時その二つが真相の候補であった、山の上だから雨は降らない、あくまで飛行機の中を歩いているだけ、などの真相にするつもりであったのである。しかし調べてみたところ雨雲の下端というものは冬場で五千から一万メートル、夏場ともなると一万五千メートルの高さになるとのこと。そうであるならばこの二つは真相としては少々問題があるか、と判断した霊夢によって変更されたのである。
つまりこの二つはもとより予想できた推理であり、それをチルノと文がまんまと出してくれたことに内心霊夢はとても満足していた。
「復唱要求、「橙が居たのは紛れも無く地上である」」
「…さすがね、復唱拒否よ!」
「おお!」
我がことのように喜ぶ大妖精、彼女自身の推理もすごいがチルノの推理もなかなかに良い。これはチルノが当てるか? などと霊夢は対峙しながらそう思った。
「『橙は雨雲より上空から落下して移動した』」
「【雨雲の中を通った場合、それは雨に濡れたとみなす!】」
「「地点A、地点Bは地上である」、復唱要求です」
「拒否!」
文からの青き真実、そして復唱要求に全力で対応する霊夢。これは文かチルノか、どちらが本命となるかわからなくなってきた。さらにチルノも続いて青を提示してくる。
「『橙は宇宙にいた』」
「【橙はオゾンよりも下にいた!】」
「「橙は怪我をしていない」復唱要求です」
「?」
「???」
霊夢、ついでにチルノも文の復唱要求に首を傾げる。とはいえ答えるか、と霊夢は口を開く。
「【橙は外傷を負っていない】」
「いや、何かしらの方法で高速で移動したら怪我するかなーって」
ああ、とその文の返答に納得する。そういうことなら分からないでもない推理だ、ただまあ今回に限ってはまったく違うのであるが。
「そろそろヒントを出しましょうか」
良いところまで行っているがそこから先にすぐにいけるかどうか少々微妙、そう判断した霊夢はヒントを出すことに決める。時間が良い頃合になってきたというのもおそらくは理由の一つであろう。
「雨には濡れていない、よ。正直な話、罪袋の泥云々は悪くなかったわ」
ラッキーヒットだか何だか知らないが、ふざけているように見えて実際良いところをついているあの推理は実に困った。ある意味でああいう推理が一番魔女にとって厄介かもしれない。
「つまり全……」
「チルノちゃんそっちじゃないわ!」
たぶんふざけているのだろうが、こういうところは実に妖精らしいと思う。しかしこれでかなり良い推理をするのだからこの妖精達は侮れないものだ。
「服は着ているわよ」
まあ何時ぞやの赤で既に否定済みなのだが、そもそもそんな赤がある時点で霊夢もちょっとおかしい。
「『泥で屋根を作った』」
「屋根は無いわよ」
これもまた既にある赤で斬ってある。と言うかそれは今発言した文当人が引き出した赤だ。
「霊夢、橙は一切濡れていない、だったよね?」
「ん? 雨では濡れていない、そんな風に言わなかったかしら?」
「なるほど」
「『橙は水中を移動した』」
「あ」
先に言われた、そんな風にチルノが声を漏らす。そして
「どうですか?」
「文」
名を呼び文の目をじっと見る霊夢、そしてフッと苦笑をもらした後パチパチと拍手を鳴らす。
「リザインを認めるわ、おめでとう」
「やりましたー!」
「そら、皆拍手なさい」
パチパチと拍手をしながら罪袋たちは今回の真相について感想を漏らしていく。
「なるほど、その手があったか」
「辿り着いたけど文に先に言われちゃった」
「海水には濡れた、でも雨には濡れていない。これぞ屁理屈。悪く無いと思ってくれるかしら?」
海を泳いでいれば海水には濡れるだろう、しかし潜っていればその上で降る雨に濡れることは無い。それが今回の謎の真相、濡れているのに濡れていない、そんな屁理屈な謎であった。
さて、実は今回、この謎を最後にお開きとなっている。理由としては単純だ、予想より時間がかかってしまいそれ以上ゲームを続ける時間がなくなってしまったからだ。こうして新たなゲームは日を変えて行われることとなったのであった。
はい、解答編です。大変お待たせしてしまい申し訳ありません。地の文を除きこのお話はかなり元ログに忠実に書いているのですがもう少し順番を入れ替えたりしてもよかったかもしれませんね、その方がテンポが良かったかも。まあ次回からはちょっとその辺も考えて書くこととします。…どうでもいいですが私が途中でオゾンって言ったのは私がデュエリストだからです、分かる人にだけ分かってください。
さて、本編でも書いていますが元のセッションでは一旦ここで終了しています、その後日を改めて次の屁理屈を繰り広げていました。そしてこれも既に書いていますがその次回セッションからメンバーが一人追加、そして一人キャラを変更しております。なので次回から探偵として天子の追加、そして罪袋の人が命蓮の人にクラスチェンジしております。命蓮の設定については当人が考えてくれているのでそれを本文にて語らせてもらいます、もしかしたら納得がいかないかもしれませんがその辺はご勘弁を。また次回のリプレイはその命蓮が魔女役をやっています、私とは違う発想で生まれた屁理屈となるのでお楽しみに。
ちょいとおまけとして、私の各探偵の評価として、チルノは鋭い、大妖精は鋭いけど押しが弱い、文も要所要所で鋭かった、罪袋は変なラッキーヒットがあった、と言った感じでした。皆さんはどう思われましたでしょうか? ちなみに新メンバーの天子はガンガン行こうぜ、のタイプだとあらかじめ言っておきます。ではまた。