――さて、そろそろ再開しましょうか。
「だな」
「そうね」
一応、ここでこれまで出した赤をまとめておくわね。
【萃香は即死】
【凶器はナイフ】
【ゲーム開始時から終了時まで、ドアは開けられていない】
【ゲーム終了時、部屋には生きている人物は存在しない】
【萃香は他殺】
【ゲームの登場人物は、萃香と萃香を殺した犯人のみ】
【このゲームにおいて、萃香と犯人以外の生物は一切存在しない】
【部屋の出入り口はドアのみ】
【ゲーム終了時、犯人は生存している】
【犯人は自らの手で萃香を刺した】
【ゲーム終了時、犯人の肉体に損傷はない】
【萃香はゲーム中に死亡した】
【室内に、ドア以外に外部と接触可能な場所はない】
【ゲーム開始時から終了時まで、ドアは確かに閉まっている】
はい、じゃあ推理を始めてちょうだい。
「……んあ?」
どうしたの?
「何よ、急に。馬鹿みたいな声を出して」
「馬鹿みたいは余計だろ。じゃなくて、紫、ちょっと確認したいんだが」
何かしら?
「萃香が死んだのは部屋の中だよな?」
え? ……ああ、成る程。そう言えば赤で言っていなかったわね。【萃香は部屋の中で死亡した】わ。宣言しておくのを忘れていたわ。
「ああ、そっか。普通に部屋で死んだことを前提として話していたわ。注意力が落ちたかしら、やあねえ」
「いやまあ、どっちかと言うと慣れじゃないか? 紫ってそういう引っ掛けはあんまりやらないから」
そうね。私が密室を出すときは基本的にはそこ以外をだすことはないものね。……しかし、そうね。そういうのもありね。
「やべえ、余計な知恵をつけさせた」
「そのぐらいのほうがいいと思うけれど。屁理屈推理合戦でこういう思考をするのはある意味当然のことだし」
と言うより、まるで私が子供か何かのような言い方はやめてくださる? 余計な知恵って。
「ああ、悪い悪い」
まったく……。
「ま、それはそれとして、よ。推理を始める前に、状況を整理しておきましょうか」
「だな。どういう方向で推理をしていくか、それを決めてから青を考えていこうぜ」
「そうね。――まず、舞台は密室。被害者の死因は刺殺」
「それも犯人が直接殺していて、トラップの類ではないらしい。で、肝心の密室はと言うと」
「出入り口はドアしかなく、そのドアはずっと閉まっていた。……こうなると本気で難しいわね」
うーん、そんなに難しくしたつもりはなかったのだけれど……。
「となるとあれか? あることに気付けば、ってタイプか?」
ええ、そのつもりよ。
「何かを見落としているってわけね、一体何かしら」
「ま、とりあえず推理を続けるか。前提として、私達は何を考えるべきだ?」
「おそらくは、密室の破り方でしょうね。たぶんだけど、殺し方からでは解決しないと思うわ」
「同意だな。なら、続いては、どうやって密室を破るか、ってことになる」
「出入り可能な場所がドアしかない以上、考えるべきはドアの突破方法かしら?」
「いや、一応確認しておいた方がいいな。紫、青を使うぜ。『部屋の壁を破壊して、犯人は室内に入った』」
【ゲーム開始から終了時まで、部屋の天井、床、壁に損傷はない】そこじゃないわ。
「駄目か。となると、やっぱりドアだな」
「ドアがずっと閉まっていた、というのが問題なのよね。これは、鍵が閉まっていた、という意味でいいの?」
別に、そのままの意味よ。ゲーム中、ドアは閉まったままだった、というだけ。
「鍵がかかっていたから閉まっていた、じゃないのか?」
……そうね、言っておきましょうか。【このゲームにおいて、ドアの鍵が開いていたかどうかは関係がない】
「は?」
「どういう意味だ?」
つまり、ドアは閉まっていたけれど、ドアの鍵が閉まっていたかどうかはどうでもいいって事よ。重要なのは、ドアが閉まっていた、ということだけ。
「えーっと……、鍵は開いていたけどドアは閉まっていた、とかそういうことか?」
その可能性もあるってだけね。
「……要は、ドアが閉まっていた理由はどうでもいいって事ね。鍵が開いていようといなかろうと、密室だったことには変わりない。このゲームにおける遊びの部分ね」
そういうこと。別にずっと閉まっていたことにしてもいいのだけど、どっちでもいいからこういう風に赤を切っただけよ。
「それに意味があるのか?」
「まあ、なくもないわね。少なくとも、鍵を使ったトリックというわけではないのは分かったし。ま、閉まったままのドアをどうやって鍵で開けるのか、って話だけど」
正直意味はないわね。分かり難いなら、今から鍵は閉まっていたに赤を変えましょうか?
「いや、別にそのままでいいぜ。関係ないなら別にいい。……しっかし、どうするかな。どうやればドアを閉めたまま中に入れるのかね」
「…………ああ」
「何か思いついたか?」
「一つね。紫、犯人は室内に全身を入れたの?」
……つまり? せっかくだから青で頼むわ。
「そうね……、『ドアにはのぞき窓、あるいは手紙の入れ口のようなものが取り付けられており、犯人はそこから腕を入れ萃香を刺した』ってところかしら」
【ドアは一枚板で、物を通すことの出来るような穴は存在しないタイプだった】と言っておきましょう。
「――タイプ? ちょっと回りくどい言い方ね」
……そうかしら?
「素直に言うなら、ドアに手を通せる穴は空いていない、で済むじゃないの。それなのに、アンタは妙に回りくどく言った。さっきの鍵の件とはまた違うタイプの切り方、そこには理由があるんじゃないの?」
「――私も一つ思い出したことがある。さっき、お前は壁を壊したという青に対してこう言ったな? そこじゃない、と」
言ったわね。それが?
「そこじゃないということは、逆に言えば何処かは壊したってことになる」
「そして、アンタはドアに身体を通すことについて、妙な切り方をした。――この二つを踏まえると、思いつく推理が一つある」
聞きましょうか。
「つまり、こういうことだな。『犯人はドアを、何らかの方法で破壊し、身体が通るだけの穴を開けた!』」
「『おそらくはその際、ドアの枠を残すような穴の開け方をしたのよ。そうすればドアを通りつつも、ドアそのものは閉まったままと言える。さらに、ドア以外に出入り口はないという赤にも違反しない!』これが、私達の青き真実よ!」
「どうだ!!」
…………お見事、リザインを宣言するわ。
「よっしゃあ!! やったな、霊夢!」
「そうね、久々に頭を使った感じだわ。中々悪くない謎だったわよ」
ありがとう。しかし流石ね、あの言い回しに気付くなんて。
「ああ、じゃあそこじゃないってのはわざと言ったのか」
ええ、そう言えば気付くと思ったから。もっとも、霊夢は別から気付いたようだったけれど。
「アンタがああいう言い回しをするときは、そこが確信をついているってことだと思っただけよ。しかし成る程、ドアの穴という可能性に気付けばすぐに解決できたわね、これは」
「だな。そうすれば一応、ドアは閉まったままだってことになるし」
「ドアを一枚板と表現していたのも、壊しやすくする為ってことでしょ?」
そういうことよ。想定では、チェーンソーなりで四角に切った、というもの考えていたから。
「蝶番を切るのとどっちが楽なんだろうな、それ」
「どちらかというと、中に閉じこもっていたのであろう萃香を怖がらせたかったんじゃない? ドアからチェーンソーが出入りすれば怖いでしょうし」
「ああ、そういう可能性もあるのか」
その辺りは好きに補完して頂戴な。……ふう、久しぶりに魔女をやると疲れるわね。すこし、ゆっくりさせてもらうわ。
「いつでもそうしているでしょうに。ま、いいけど」
「私もそうするかな。ついでに、久しぶりに謎でも考えることにするぜ」
あら、じゃあ纏ったら言って頂戴。探偵役に立候補するから。
「私も」
「あんまり期待されても困るんだがなあ……」
ふふっ、期待して待っているわよ、魔理沙。
はい、ちょっと遅れましたが解答です。今回はこういう屁理屈でしたが、いかがだったでしょうか。次回はまた、謎を思いついた時にでも投稿させてもらいます。ではまた。