当ゲームにおける基本ルール
1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。
2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。
ただし、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。
3. 魔女は提示された青字に対して、赤字を使って反論する義務を持つ。
青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、探偵の勝利となる。
なお、赤字での反論が有効かどうか、探偵はよく検証する必要がある。
4. 人間側は「」で囲われた文章を提示することで、
魔女に対しその文章を復唱することを要求できる。
ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。
5.探偵は、復唱要求や青き真実を使うまでもない疑問、質問を魔女に問うてもよい。
ただし、魔女側はそれに答える義務を負わない。
以上
「――さあ、屁理屈推理を始めましょうか」
「それ、私の台詞なのだけれど」
堂々と、開始の宣言をしたレミリアに、パチュリーがやる気なくツッコミを入れる。
「いいじゃないの。こういうことは館の主たる私が宣言するものでしょう?」
「まあ、確かに主催者はレミィみたいなものだけれど、今回魔女をやるのは私なのだから、言うなら私だと思うのだけれどね」
「どっちでもいいから、早く始めようよ」
「そうおっしゃらずに。こういうことは、何かと雰囲気が大事なのですから」
じれったい、と肘をつき、手の甲に顔を乗せながらぼやくフランを、その隣に座る咲夜が苦笑と共に宥める。
まあ、そもそもとして、今回のゲーム自体予定を前倒しで始めているのだから、待てないというのはある意味自然な流れであるのだが。もっとも、その所為で参加予定であった美鈴と小悪魔は仕事がまだ終わっておらず、後から参加することになってしまっているのもまた事実である。
「まあいいわ。それじゃパチェ、よろしくね」
「はいはい。二人も、準備は良いわね?」
話がついたようで、開始の確認を取ってきたパチュリーに対し、フランと咲夜は頷きを返す。それに自身もまた一つ頷いて、パチュリーは口を開いた。
「それじゃあ、これより屁理屈推理合戦を始めるわ。魔女はこの私、パチュリー・ノレッジが、探偵はレミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、十六夜咲夜の三名が担当すると。では、これより事件の概要を説明するわ」
――目の前にあるのは、美味しそうな無数の料理。パーティーの参加者達はそれぞれ思い思いに料理を選び、その味に舌鼓を打っている。
そんな中、一人の男が料理を選ぶ。他のものにも負けず劣らず美味しそうなその料理を、男は口へと運ぶ。しかし、その至福の味に男が満足を覚えたのは一瞬。
うめき声と共に、男が地に伏す。そのまま、男は何が起こったのかも分からぬままに、その命の鼓動を止めた。
男の死にざわめく他の招待客達は、ふと魔女の高笑いのような声が何処かから聞こえたような気がしたのであった…………
ふう、と語り終えたパチュリーは一つ息を吐き、そして再び三人を見やりながら述べる。
「では、これより赤の宣言を始めるわね。【パーティー会場にて、男が死亡した】【死因は毒殺】【毒は会場に準備された料理の中にあった】【男以外に毒で死亡した者はいない】【男が食べた料理は誰しもが食べる事が出来る状況にあった】」
さて、とパチュリーは不敵に微笑む。
「何故、男のみがその毒の料理を食べてしまったのか。これを私は『魔女が男以外には料理を見えなくしていたから』と主張するわ。さて、貴女達はこれをどのように人間のトリックによるものだと推理してくれるのかしら、ね」
屁理屈推理合戦、その開幕である。
そうね、とまず口を開いたのはレミリアだ。彼女は咲夜を見ながら言う。
「咲夜、この場合まずはどのような事を聞くべきだと思う?」
「そうですね、まずは状況の把握でしょうか。例えば……復唱要求、「食事の形式は立食形式である」」
「復唱を認めるわ。【食事の形式は立食形式である】」
「分かりました。これで、毒の入った料理がフルコースの一品であった、などという可能性は消えたということです」
「成る程ね。フルコースであるならば、意地汚い話ではあるけれど、他人の料理を勝手に食べてしまうことは可能だから、誰でも食べられる状況にあったという赤に抵触しない、と」
「はい、ですが今の赤によってその可能性はほぼなくなったということです」
ふむふむ、とレミリアとついでにフランが幾度か頷く。初めての屁理屈推理合戦、いくら事前知識があるとはいえ、吸血鬼姉妹からすればまだ何もかもが手探りの状態であった。
しかし、何だかんだといって二人とも頭の回転は速いほうであるので、すぐさまのその姉のほうが魔女に対し口を開いた。
「じゃあ、私も復唱を要求するわ。復唱要求、「男以外に毒の入った料理を食べた者はいない」」
「復唱を認めるわ。【男以外に、毒の入った料理を食べた者はいない】」
「分かったわ。そうなると私達は基本的に料理を隠す、あるいは男のみに見せる方法のみを考えればいいということになるのね」
「……どういうこと?」
首を傾げるフランに、レミリアが説明をする。
「この赤で男以外が料理を食べた可能性が無くなった。つまり、全員に食べさせた後で解毒剤なりを男以外に飲ませた、みたいな可能性も同時になくなったということよ。だから、どうやって男だけにピンポイントで料理を食べさせたのか、その方法だけを考えれば良いわけ」
「ふーん……」
でもさ、と説明を聞いたフランは頬杖を崩さずに口を開く。
「偶々その男が料理を食べちゃっただけって可能性はないの? 犯人からすれば誰でもよかったってやつ」
「それじゃゲームにならないでしょうに」
「でも成り立つじゃない」
「まあまあ、そう言い合わずに。妹様の意見を纏めると、『本来犯人は無差別殺人を狙っており、男だけが死んだのは偶然の産物である』ということですか?」
姉妹を宥めながら、咲夜がフランの推理を纏めて青にする。その青に対し、パチュリーは特に動じることなく首を横に振る。
「残念ながら、【犯人は意図して男を殺そうとした】【犯人は男以外の参加者に対し、特に殺意を持ってはいなかった】わ」
「んー、そうなんだ」
「……それ、無差別殺人を許容していた可能性は否定していないと思うのだけれど、違うかしら? 結果的に男が死ぬなら、他の人が死んでも構わないと思っていた可能性はあるんじゃない?」
「ふむ、じゃあ【犯人に無差別殺人を行うつもりはなかった】【犯人は男のみがその毒の入った料理を口にするだろうと考えていた】とも付け加えておくわ」
「ふむ…………そこまで言うなら、他を巻き込むつもりはなかったと考えて良いのかしら……」
腕を組み、レミリアは考え込み始める。代わりと言わんばかりに、今度は咲夜が口を開いた。
「では今度は私が。パチュリー様、誰でも食べられる状況にあった、というのはゲーム中を通してのことでしょうか?」
「というと?」
「『毒入りの料理はゲームが終了する間際に男の目の前に運びこまれたものであり、結果誰よりも早く男が料理を口にし、そのまま死亡してしまった』という可能性があるのではないかと」
成る程ね、とパチュリーは咲夜の青に対し、頷いてみせる。
「だけれど、その可能性は無いわ。【ゲーム開始時から終了時まで、毒入りの料理は会場内にあった】【ゲーム開始時から終了時まで、毒入りの料理は誰しもが食べる事が出来る状況にあった】のだから」
「そうでしたか」
「本当に誰でも食べられる状況にあって、だけど何故か他の人は食べなかったんだね」
うーん、とフランは天井を見上げながら考え込む。その後、ポンと手を叩いてパチュリーへと視線を戻す。
「こんなのはどう? 『事前に男以外の全員に、その毒の入った料理を食べないようにという指示が出ていた。結果、その指示を知らなかった男だけが料理を食べてしまい、死んでしまった』」
「いい青だけれど、【特定の料理を食べるな、という指示は参加者に出されていない】ついでに【特定の料理を食べろ、という指示は参加者には出されていない】」
「うーん、そっかー……」
違うのかあ、と呟いてフランは再び考え込み始める。それは他の二人も同様であり、そんな三人の様子を見ながら、パチュリーは紅茶を一口味わうのであった。
今回出た赤字纏め
【パーティー会場にて、男が死亡した】
【死因は毒殺】
【毒は会場に準備された料理の中にあった】
【男以外に毒で死亡した者はいない】
【男が食べた料理は誰しもが食べる事が出来る状況にあった】
【男以外に毒の入った料理を食べた者はいない】
【食事の形式は立食形式である】
【犯人は意図して男を殺そうとした】
【犯人は男以外の参加者に対し、特に殺意を持ってはいなかった】
【犯人に無差別殺人を行うつもりはなかった】
【犯人は男のみがその毒の入った料理を口にするだろうと考えていた】
【ゲーム開始時から終了時まで、毒入りの料理は会場内にあった】
【ゲーム開始時から終了時まで、毒入りの料理は誰しもが食べる事が出来る状況にあった】
【特定の料理を食べるな、という指示は参加者に出されていない】
【特定の料理を食べろ、という指示は参加者には出されていない】
以上
はい、久しぶりの屁理屈推理です。結局、思いついた謎の都合上、今回は紅魔館編で行かせて貰います。それと、今回は地の文の形式を通常の物に戻しました。このまま次回以降の盤面でもそうなるかはまだちょっと分かりませんが、やっぱりこういう形式の方がしっくりはきますかね。
次回は一週間後を目処に、状況次第で前後させたいと思います。何か推理等があればご自由に。基本的には何かしらの答えを返しますし、物によっては本編に参考にさせてもらうので。ではまた。