当ゲームにおける基本ルール
1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。
2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。
ただし、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。
3. 魔女は提示された青字に対して、赤字を使って反論する義務を持つ。
青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、探偵の勝利となる。
なお、赤字での反論が有効かどうか、探偵はよく検証する必要がある。
4. 人間側は「」で囲われた文章を提示することで、
魔女に対しその文章を復唱することを要求できる。
ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。
5.探偵は、復唱要求や青き真実を使うまでもない疑問、質問を魔女に問うてもよい。
ただし、魔女側はそれに答える義務を負わない。
当ゲーム盤における追加ルール
一.《》で囲われたものを証言とする。証言はゲーム盤の登場人物から得る事が出来る。
証言の内容は、その証人にとって主観的な事実である。
ただし、証人にとって主観的な事実が現実の事実と同一であるという保証はない。
二.証言は赤字と同様の働きを持つものとする。魔女側は探偵の青き真実に対し、
証言を用いて反論しても構わないものとする。
三.証人が証言に主観的な偽りを述べることはない。
ただし、犯人のみ証言に嘘を混ぜる可能性がある。
以上
「……とりあえず、本当に相互での証明が成されているかどうか、それを確認しましょうか」
まず、そう口火を切ったのはレミリアだ。
「前提として、殺害時間は十三時から十四時。その間のアリバイを、証言者達は三十分区切りで証言している。それに関して、修理工を除いた登場人物達は、相互で証明をしている、ようには見えるわね」
「そうですね。ただ、まだこの時点では相互での証明が出来ているものはいません。あくまで片方が、誰々と一緒にいたと証言しているだけですから」
「じゃあまずは、そこを一つずつ確認していけばいいわけですね。えーっと、となると、青き真実を一つずつに出していけば良いんですか?」
「パチュリーのおまけを期待しないのであればそうなるね。んじゃ、前半は探偵によって証明されている執事からいってみよっか。『執事の証言は嘘で、本当は十三時半から十四時までの間に犯行を行っていた』」
「《客人:十三時半から十四時まで、確かに執事さんは私と一緒に客間にいたよ》」
「あっさり証明されたね。まあ、ここで拒否されるとかは思っていなかったけど」
「次は私が客人に対して行くわ。『客人の証言は嘘で、本当は十三時から十三時半の間に犯行を行っていた』」
「《主人:十三時から十三時半まで、確かに客人は私と執務室で会話をしていた》」
「でしょうね」
フラン、レミリアと順に青を述べ、それを小悪魔が証言で斬る。それに姉妹は、当然だろうと悔しがる素振りも見せずに頷く。
「順番からすると、今度は主人ですかね。あ、でも主人に関してはメイドも証言していましたか」
「いいえ、メイドの証言はあくまで執務室にいたとしか言っていないわ。主の居ない部屋にただ立っていたという可能性があるわよ」
「ああ、言われてみればそうですね。じゃあ、『主人の証言は嘘で、本当は十三時半から十四時までの間に犯行を行っていた。その際、メイドは誰もいない執務室に待機していた』」
「《メイド:十三時半から十四時まで、確かに御主人様と打ち合わせをしておりました》」
「ちょっと期待しましたけど、やはり違いましたか」
「では、メイドを。『メイドの証言は嘘で、本当は十三時から十三時半の間に犯行を行っていた』」
「《掃除婦:十三時から三十分間、確かにメイドは私と掃除をしていたよ》」
「ふむ」
美鈴、咲夜とさらに青き真実を提示したが、やはりそのどちらもが小悪魔の出す証言によって斬られる。
「で、その掃除婦に関しては、残りの三十分を証明しているのは探偵なのよね。小悪魔、面倒だからもう探偵の証言を出してくれない? どうせ斬れるんでしょう?」
「よろしいですか?」
「問題ないわよ」
「では、《探偵:確かに、私は十三時半から十四時まで、掃除婦さんと話していたな》」
「ありがとう」
礼を言って、レミリアは腕を組む。
「犯人が一人であるという前提がある以上、これで相互でのそれぞれのアリバイは証明されたということになるわね」
「とはいえ、残った修理工も、掃除婦の証言から犯人とするには難しい」
「そうなのよね……」
ううむ、と四人は難しい顔をしながら考え込む。うーん、とそれぞれに唸り声を上げながら、思いついたものを片っ端から述べていく。
「『実は被害者は自殺』とか?」
「【被害者は第三者によって殺害された】」
「『実は修理工が犯人で、変装をして部屋から出たから、掃除婦から気付かれなかった』というのはどうでしょうか?」
「【登場人物たちは他の登場人物がどのような変装をしようとも、その正体を誤認することはない】」
「『被害者は十三時以前に襲われたがその場ではまだ生きており、その後十三時から十四時までの間に死亡してしまった』というのはどうかしら」
「【被害者は即死】よ」
「『実は死亡時刻と証言の時刻で別日を指している』というのは、ないですかね?」
「【各証言者は被害者が死亡した日と同日の出来事について証言している】」
むう、と困ったような声が誰かの喉から漏れ出るのが聞こえる。それぞれに青を飛ばしてみたものの全てを斬られ、しかもそのうちの一つでもかすっているという手ごたえすらない。どうしたものか、と四人の内心が一つになったところで、
「悩んでいるのなら、少しヒントでも上げましょうか」
四人を眺めていたパチュリーが、ふと口を開いた。
「ヒント?」
「ええ。このままだと状況が動きそうにないもの。建前上、魔女は探偵のリザインを欲するということになっているけれど、かといって謎を解かれないというのも面白くないものなのよ。屁理屈は好むけど、不条理を好まないのが魔女なのだから」
「パチェの魔女定義もそれはそれで面白いけれど、貴女が出そうとしているヒントというのは、結局なんなのかしら?」
「そうね。レミィ、誰か適当に三人、登場人物を挙げてみてくれないかしら?」
うん? とレミリアはパチュリーの言葉に眉をひそめた後、
「じゃあ、主人、メイド、客人の三人を」
「では、【主人、メイド、客人は犯人ではない】」
『……?!』
パチュリーの赤に、探偵たち四人はぎょっとした目を向ける。わざわざ断った上でのヒントだったので、それなりに構えてはいたつもりだったのだが、流石にこうも直接的な赤が出てくるとは思っていなかったということだろう。
「ちょっと、パチュリー。そんな直接的な奴、ここで言ってよかったの?」
「これぐらいしたほうが皆の思考も動くでしょう? 待ちっぱなしはつまらないわ」
「かもしれないけどさあ……」
いいのかなあ、とフランが呆れたようにパチュリーを見るが、パチュリーはどこ吹く風といった風に紅茶を飲んでいる。それに、まあいいかと結論をつけて、探偵達はまた考え始める。
「とりあえず……これで容疑者が半分になりましたね」
「残った容疑者は執事、掃除婦、修理工の三人のみだもんね。これ、お姉さまが犯人を選択肢に含まなかったのは良かったのかな?」
「おそらくですが、変わらないのではないでしょうか。その場合は、お嬢様が選んだ三人以外を犯人ではないと言えば良いだけですから」
「確定でシロの探偵を選ばない限り、どっちにしろって感じになるわけですか。マジシャンのトリックみたいなですね」
「そういうわけだから、私の選択を元に推理を進めても意味無いでしょうね。だから、素直に執事、掃除婦、修理工の誰が犯人なのかを考えてみましょうか」
とはいっても、と美鈴が渋い顔をする。
「執事、掃除婦は共に三十分は探偵にアリバイを証明されています。残り三十分にしたって、客人とメイドからそれぞれに保証されていますからねえ。修理工にしたって、部屋から出られないんじゃどうしようもないですし」
「そこなのよね……」
「一人二役をしているものがいる、という可能性は無いでしょうか? 例えば、執事と客人が同一人物で、十三時半から十四時までの間に被害者を殺しに行った、とか」
「でも十三時から十三時半まで、執事は探偵と、客人は主人とそれぞれ話していたんでしょ?」
「そこは、三人が一緒にいたのでは? 別に一対一で話したとは言われていませんし」
「でもその場合は人数の都合がつかないわよ。このゲームの登場人物は被害者を含めて八名と、赤で証明されているもの」
「……被害者が二人いた、というのはどうでしょうか?」
二人? とレミリアと咲夜が首を傾げる。
「ええ、被害者が二人いて、その他の登場人物は実は六名だった。あぶれた客人を執事が兼任すれば、咲夜さんの推理が通りそうな気もしますが」
「やってみましょうか。『実は被害者は二人おり、執事と客人は同一の人物であった』という青ですが、パチュリー様?」
「面白い発想だとは思うけれど、【被害者は一人だけ】よ。そうね、おまけに言ってあげるわ。【主人、メイド、執事、客人、修理工、掃除婦、探偵はそれぞれ一人ずつ存在している】」
「んー、違いました、か」
「割と良い線行ったと思ったんですけどね」
「ふうむ……」
じゃあ他に何か、と考え始める三人だったのが、
「え? もっとシンプルに考えればよくない?」
というフランの言葉に、素早く視線を向ける。
「何か思いついたの?」
「思いついたって言うか、単純な話じゃん。咲夜は誰かが名前を兼任しているって思ったんでしょ?」
「ええ」
「で、美鈴はそれに被害者が二人いるって発想になったんだよね?」
「はい。そうしないと、登場人物の人数が合いませんから」
「いや、何でそこでそうなるのさ。もっと普通に、もう一人誰か知られていない登場人物、犯人がいるって考えれば良いと思うんだけど」
「……え? いや、しかし、それは……」
「妹様、登場人物は八名いて、それは主人、執事、メイド、客人、修理工、掃除婦、探偵、被害者の八名で埋まっているじゃないですか」
「だーかーらー! 確かにパチュリーは登場人物として主人たちがいるっては言ったけど、それだけしかいないとは言っていないんだってば! 八名にしても、被害者を含めて八名なんだから、その被害者を誰かが兼任すればもう一人スペースが出来るでしょ?」
フランの言葉に、当初は怪訝な表情を浮かべていたレミリアたちであったが、その説明を聞くにつれ、段々とその表情は理解から来る驚きに満ちていき、最終的には納得の色へと変化しきっている。
「確かに……その考えならもう一人、犯人を登場させる事が出来るわね。――そういうこと。だから、修理工の証言があの一つしか出なかったのね」
「どういうことですか?」
「おそらくだけれど、あの証言は探偵が、事件発生以前に得たものだと思うわ。師辻や掃除婦にも話を聞いていたみたいだし、その前に修理工にも話を聞こうとしていたんでしょう。でもそれは断られてしまい、結局聞けずじまいで終わってしまったんでしょう」
「そういうことですか……」
「他の証言にしたって、嘘を言っていなくとも、本当の事を黙っておくことは出来ますからね。おそらく、犯人は堂々と犯行を行ったのでしょう。ただ、証人達がそれを証言しなかっただけで」
「あの幻想も、いつも通りとはいえトラップであったと。よっぽど犯人が上手い言い訳をしない限り、悩むことなく犯人を特定できるわね」
「……あ、そういえば、ボイラー室と客室は別って赤がなかったっけ?」
「そこは問題ないでしょう。確かに修理工は部屋を出るところを見られていないけれど、そのパーツを隠して持ち出すことは出来るでしょうし。適当にバラバラにして、必要であれば往復すればいいわ」
「ああ、それもそうだね。というわけでパチュリー、私達は『実は修理工が被害者であり、事前に述べられていない八人目がそれを殺した』っていう青を出すけれど、どう?」
フランの期待のこもった視線と、レミリアたちの自信に満ちた視線。それぞれの視線を受けたパチュリーはそっと息を吐いた後、
「――お見事。ここにリザインを宣言するわ」
と、探偵たちに対し、敗北を宣言するのであった。
「……まあ、おおよそはそっちの推理通りよ」
自身の推理からの勝利ということで、喜びの声を上げていたフランが落ち着いた所で、パチュリーは今回の謎についての補足を始める。
「皆の言ったとおり、実際は主人たち以外に犯人が存在したの。で、その犯人が修理工を殺し、適当にばらした後客室まで持って行った、と。まあ、そういうことね。犯行動機とかは、まあどうでもいいことだわ」
「これ、ゲームの登場人物の視線で見ると、犯人はあまりに堂々としすぎね。最初からメタ的な目線で見る事を想定した謎だった、と」
「登場人物目線でも、一部の隙もないゲーム盤って、案外珍しい気もするけれどね。ところで、今回の新ルールはどうだったかしら?」
「結構面白かったわ。ただ、これって魔女からすると結構な手間よね?」
「ええ、そのとおりよ。試しにやってはみたけれど、正直そう何度もやりたくはないわ」
「魔女と補佐とで、意識のすり合わせを完璧にやっておかないといけませんからね。かといって一人でどっちもやろうとすると、管理が大変だと思います」
疲れた、とパチュリーと小悪魔が態度で示す。結論から言って、この証言という新ルールは、そう易々と追加することは出来ないようである。
「まあ、これはこれで面白かったのも事実だから、いつかまたやってみるのもいいかもしれないわね。ただ、本音で言うと、今度は私も探偵側で証言に挑みたいわ」
「私も同意見です。ああ、でもパチュリー様、後で今回の反省会と、今後の為に証言ルールの推古を行うべきかと」
「ええ、そうね。上手いこと煮詰めて、烏天狗の新聞に載せさせましょうか」
そうすれば、今度は私達も探偵側に回れるものね。そう、パチュリーはしみじみと呟くのであった。
はい、予定を繰り上げての解答編でした。今回はこのような真相でしたが、如何だったでしょうか? この真相に対しどう思うか、是非皆様のご感想を聞いてみたいところです。
証言という新ルールを追加しておきながら、証言の嘘を暴くという形式ではなかった今回のゲーム盤。中々に卑怯であったかもしれないと投稿後に思ったりしましたが、まあそういうのもありということで一つ。
次回は、まあまた適当に思いついたときにでも。メンバーも、紅魔館組は一旦お休みになるかもしれません。ああ、証言ルールはもう当分やらないと思います。本文でも述べましたが、これってかなり面倒なんですよね。いつもほど適当に出来ないというのが大変でした。まあ、そんなことはどうでもいいことでしょうかね。ではまた。