当ゲームにおける基本ルール
1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。
2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。
ただし、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。
3. 魔女は提示された青字に対して、赤字を使って反論する義務を持つ。
青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、探偵の勝利となる。
なお、赤字での反論が有効かどうか、探偵はよく検証する必要がある。
4. 人間側は「」で囲われた文章を提示することで、
魔女に対しその文章を復唱することを要求できる。
ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。
5.探偵は、復唱要求や青き真実を使うまでもない疑問、質問を魔女に問うてもよい。
ただし、魔女側にそれに答える義務を負わない。
以上
「――では、屁理屈推理合戦を開始しましょうか」
そう、永琳が何処となく嬉しそうに告げたところ、スッと彼女に示すように手が上がった。
「とりあえず、異議があるのだけれど」
と、手を上げた妹紅が永琳に言うと、永琳は小首を傾げる。
「あら、何かしら」
「もしかして、私と慧音は屁理屈推理合戦の頭数をそろえるために呼ばれたのかしら?」
「ええ、そうよ」
妹紅の問いかけに、永琳は平然とした様子で頷いてみせる。すると、妹紅はちらりと横を見て、
「いや、人選ミスでしょ。というか、どうして私が、輝夜と一緒に推理ゲームをやらなくちゃいけないんだ」
「あら、どうせやるなら、ライバルがいるほうが張り合いも出るじゃない」
「大人しくそれにしたがってアンタ達と遊ぶ理由もないんだけど」
納得がいかない、と妹紅が苦言を呈する中、あらあらと、輝夜は対称的に乗り気な様子で口を開く。
「いいじゃないの、妹紅。暇つぶしになるし、なによりたまにはこういう勝負も面白いというものよ。いつもいつも、戦いで決着をつけるというのも雅じゃないし、時には頭脳勝負としゃれ込むのもいいと思うのだけれど」
「それで勝ったところでさして嬉しくないんだけど」
「でも、負けたら悔しいでしょ? このまま永琳の提案を飲まずに帰った場合も、同じことだと思うけれど」
そう輝夜が諭すと、むうと妹紅は黙りこくる。やや気に入らないところはあれど、輝夜の言葉に一定の納得がいったようだ。
そんな妹紅の様子を見て、宥めるように慧音が口を開く。
「まあいいじゃないか、妹紅。初めてのゲームを姫と一緒にやりたくない、というのも分かるが、むしろ初戦で姫に勝てるように頑張ってみるのもいいんじゃないか?」
「…………慧音がそういうなら、今回ばかりは乗ってあげるわ。手加減はしないよ、輝夜」
「望む所よ」
と、ようやく妹紅が乗り気になったところで、しかし、と慧音が呟く。
「そういうことなら、私が抜けるか、あるいは姫側に誰か一人を追加した方が良いんじゃないか? このままだと二対一の状況になるが」
「それぐらい、姫にとってはちょうどいいハンデよ。アウェイってところで納得しときなさいな」
「そうそう。このぐらいのほうが面白いわ」
「そちらがいいならいいが、まあそれもそうだな」
どっちにしろ、別にこの勝敗如何で決定的何かが決まるわけでもない。遊びの範疇なら別にいいかと、慧音も慧音で本腰を入れることに決める。
「さて、じゃあ全員が納得できたところで、早速始めて行きましょうか。まずは皆様、此度の幻想をお聞きください……」
とうとう狂ったのかな、とドアを見ながらてゐは呟く。そう思う対象は、先ほどまで会話をしていた鈴仙だ。
『私、魔法が使えるようになったのよ!』
今から一時間ほど前、唐突にそんな事を言い出した彼女に、てゐは今まで彼女にやり続けていたイタズラが、彼女の頭に悪影響を与えてしまったではないかと思った。それぐらい、非常に馬鹿げた妄言としか取れなかったからだ。
そんなてゐの胸のうちの気付いたのであろう。鈴仙は軽く頬を膨らませて、
『気になるなら証明してあげる! 今から私がそこの部屋の中にドアを使わずに入って見せるから、てゐはそこで見張っていて!』
そう言い残し、鈴仙は何処かへと走り去ってしまった。それから小一時間ほど、てゐは何となくドアを見張り続けているのである。
正直、何をやっているのだろうという思いは、てゐの中に確かにある。だが、自分の所為で狂ってしまったのではないかという考えも僅かばかりあったので、ある意味においての責任感のようなものから、こうして言うとおりドアを見張り続けているのである。
とはいえ、それももう飽きてきた。これ以上付き合うのはいい加減に面倒だと、てゐが見張りを始めてから、一度も開かなかったドアを開けると、そこには何故か、鈴仙の姿があった。
『あ、やっほー。これで私の魔法、信じてもらえた?』
馬鹿な、とてゐは混乱しながら思う。ここのドアはずっと自分が見張り続けていて、今開けるまで一度も開いていない。だというのに、どうやって鈴仙は部屋の中に入ったのだろうか。
『――これが、魔法だよ』
そんな、鈴仙の勝ち誇ったような声が、混乱するてゐの頭に、毒のように入り込んでいくのであった…………
……以上、と幻想を語り終え、永琳は一呼吸を空けた後に続ける。
「では、これを元に赤を述べるわね。まず、【ゲーム開始時において、鈴仙は部屋の外にいた】【ゲーム終了時において、鈴仙は部屋の中にいる】そして、【ゲーム開始時からてゐがドアを開けるまで、てゐはドアの開閉を目撃していない】【ゲーム開始時からてゐがドアを開けるまで、てゐはドアを確かに見張っていた】」
さて、と一先ずの赤を述べた後、永琳は三人の顔を見ながら言う。
「では探偵の皆様。魔女の主張する魔法を、どうか人間のトリックであると見破ってみてくださいな」
屁理屈推理合戦、その開幕だ。
「まずは部屋の確認が必要、というところか」
一番初めに口を開いたのは、やや意外なことに、慧音であった。
「いくつか復唱を要求したい。復唱要求、「部屋に窓はない」「部屋に通風孔の類はない」「部屋に人が通れるような穴は空いていない」」
「応じましょう。【部屋に窓は存在しない】【部屋に通風孔の類はない】【部屋に人が通れるような穴は空いていない】」
「……なるほど、非常に素直に考えるのであれば、ドア以外に部屋に入る手段はなさそうだが……」
「そんなに素直な物とは思えないけれどね。というわけで率直に復唱要求、「ドアを通る以外に部屋を出入りする手段は無い」」
「残念ながら、拒否させてもらうわ。そのあたりの穴埋めも頑張ってちょうだいな」
「あらあら」
復唱を拒否されたことに対し、要求した当人である輝夜は、しかし何処か嬉しそうな表情を浮かべる。あまりスムーズに行き過ぎても面白くないし、というような雰囲気だ。
「じゃあ今度は私のターンだな。とりあえず復唱要求として、「鈴仙はドアを通って部屋に入った」」
「うーん……拒否、かしら。それを答えてしまうと、姫のそれにも影響が出るだろうから」
「それならそれでいい。青を提示する、『てゐは何らかの外的要因で鈴仙がドアを開けるのを見逃した』」
「斬るわ、【ゲーム中に誰かがドアを開閉した場合、必ずてゐはそのことに気付く】」
「じゃあ開閉しなければいい話だ。『鈴仙はドアを壊して無理やり部屋に入った』」
「それは……そうね、【ゲーム中、てゐは誰かがドアの周囲に来るのを見ていない】と斬りましょうか」
「……また、誰か? 鈴仙じゃなくて、か?」
再び出てきた、誰か、という言葉。しかし、一度目の時と違い、二度目のこれは妹紅たちに引っかかる物を覚えさせる。
「随分と範囲が広まるわね。それだと、鈴仙以外の不特定の人間もドアに近づけなくなるわ」
「その方がそちらにとっても都合が良いんじゃかしら? サービスよ、サービス」
ふうん、と永琳の挑発的な返答に、輝夜と妹紅はスッと目を細める。どうやら本腰を入れて推理を始めるつもりになったらしい。その様子を、横で見ていた慧音もまた、二人に触発されるように、より深く考え込み始めた素振りを見せる。
「……ふふ」
そんな三人の様子を見て、永琳もまた楽しそうに笑みをこぼすのであった。
今回出た赤字纏め
【ゲーム開始時において、鈴仙は部屋の外にいた】
【ゲーム終了時において、鈴仙は部屋の中にいる】
【ゲーム開始時からてゐがドアを開けるまで、てゐはドアの開閉を目撃していない】
【ゲーム開始時からてゐがドアを開けるまで、てゐはドアを確かに見張っていた】
【部屋に窓は存在しない】
【部屋に通風孔の類はない】
【部屋に人が通れるような穴は空いていない】
【ゲーム中に誰かがドアを開閉した場合、必ずてゐはそのことに気付く】
【ゲーム中、てゐは誰かがドアの周囲に来るのを見ていない】
以上
最近の執筆速度の低下の払拭を願い、久しぶりに投稿してみました。今回の謎はそれほど難しい物ではない、と思います。何か毎回言っている気もしますが、筆者がそれほど頭の回る人間ではない為、こればかりは致し方ありません。
次回投稿に関しては、どうなるでしょうかね。皆様の反応と、自身の執筆意欲次第で投稿します。出来ればあまり間を空けたくはないですが、最近は本当に駄目なので、はてさて。それと、次回はそれほど長くなりそうな気がしないので、場合によっては解決編だけではなく出題編までやるかもしれません。まあ、今の段階では何とも言えないことなので、どうなることやらですが。ではまた。