東方屁理屈録   作:kokohm

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第十七盤、出題編

 当ゲームにおける基本ルール

 

 

1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。

 

 

2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。

  ただし、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。

 

 

3. 魔女は提示された青字に対して、赤字を使って反論する義務を持つ。

  青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、探偵の勝利となる。

  なお、赤字での反論が有効かどうか、探偵はよく検証する必要がある。

 

 

4. 人間側は「」で囲われた文章を提示することで、

  魔女に対しその文章を復唱することを要求できる。

  ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。

 

5.探偵は、復唱要求や青き真実を使うまでもない疑問、質問を魔女に問うてもよい。

  ただし、魔女側はそれに答える義務を負わない。

 

 

 以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、ちょっとやってみましょうか」

 

 命蓮寺の縁側、昼下がりの陽気が心地よいその場所で、ふと聖白蓮はそのようなことを呟いた。これを聞きとがめたのは、彼女と一緒に食後のお茶を楽しんでいた寅丸星であった。

 

「やってみようとは、何のことです?」

「これです。屁理屈推理合戦、と呼ぶようですが」

 

 そう言って聖が差し出したのは、射命丸文なる天狗から受け取った、『文々。新聞』なる紙束であった。試供品に、と一方的に置いて行かれたものだったが、一度は目を通すのが礼儀であると、聖によって読み進められていたものである。

 

 そのうちの一か所を、聖が指し示す。受け取り、軽く一読すれば、屁理屈推理合戦なる推理ゲームの類について書かれているのが分かった。どうやら、幻想郷の一部で流行っている遊びらしい。基本ルールや実際に行われた例などもあり、きちんと読み込めばすぐにでもやってみることも出来なくはないだろう。

 

「しかし、何故これを? 屁理屈で話をすり替える、というのは聖にとってはあまり好ましくないものだと思っていましたが」

「それはそうなのですが、屁理屈というのはつまり、解釈の幅を広げるという風にも考えられることです。仏教に限らず、様々なことは受け手の解釈を必要とすることが多い。その力を鍛えるという意味で、これもまた役立つのではないかと」

「はあ、なるほど」

 

 そうだろうか、と思った星だったが、まあいいかとすぐさまにその疑問を投げ捨てる。合っているようで合っていない気もするが、聖がこういうことに乗り気というのも珍しいので、たまにはいいだろうと考え直したのである。

 

「しかし、そうなると人が必要ですね。どうします?」

「提案した私が魔女をやるのは当然として、そうですね、探偵も二名は欲しいですね」

「では、一人は私がやりましょう。後は適当に、手の空いている者でも探してきましょうか」

「お願いしますね。その間に、私は問題を考えますので」

 

 聖に見送られ、星は命蓮寺内を適当にうろつき始める。誰を誘うか、と悩んでいた星であったが、十分と経たずにそれは解決した。廊下の一角で暇そうにしている村紗水蜜の姿を発見したからだ。

 

 事情を話したところ、村紗はあっさりと探偵役になることを快諾してくれた。元々、屁理屈推理合戦に興味があったらしい。なんでも、前に人里で呑んでいた時に、近くの若者が酒の肴としてやっていたのを小耳に挟んで以来、一度はやってみたいと思っていたそうだ。きっかけはともかく、関心があるのは都合がいい。

 

「聖、連れてきましたよ」

「おや、早かったですね」

「屁理屈推理合戦をやると聞いたので、急いで来たんだ」

「ふふ、愉しみにしていただけたようでなによりです」

 

 村紗を引き連れ、星は聖の元に戻る。あれから三十分弱しか経っていないが、聖の表情を見るに、どうやら問題は完成しているらしい。一先ずの前置きなどを挟みつつ、聖を挟むようにして星たちは縁側に座る。

 

「では、始めましょうか」

 

 どことなく楽しそうに、聖はパンと手を合わせる。

 

「まずは幻想。魔女が繰る魔法でもって、探偵たちを惑わすとしましょう――」

 

 ノリノリだ、とつられて微笑む星の前で、朗々と聖は幻想を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もういいかい。私の声が周囲に響く。それを物陰で聞くのは、顔を曇らせた一輪。周囲を見渡す一輪に、ふと声がかけられた。

 

「どうしたんだぜ?」

 

 少女の声に振り向けば、そこにいたのは黒き魔女。にやにや笑う魔女に対し、一輪は慌てながら答える。

 

「かくれんぼをしているんだけど、隠れる場所が見つからないんだ。このままだと姐さんに見つかってしまう」

「ほう、ほう。そりゃ確かに、ちょいと困ったことになるな。ふむ、なるほど。だったら手を貸してやるぜ」

 

 首を傾げた一輪が、すぐにその顔を青ざめさせる。彼女を探す私の気配が、彼女の近くにまで来ていたからです。

 

「時間がないなあ。どうする? 私の力を借りるか否か。私はどっちでもいいぜ」

「……お願い」

「ははっ、承知した!」

 

 口角を上げ、愉快そうに笑いながら、魔女が一度指を鳴らす。同時、一輪の視界の端にこちらへ迫る私の姿が映る。身を強張らせた一輪だったが、しかし、そのすぐ隣を私は歩き去る。えっ、と振り向く一輪でしたが、私はやはり気づく素振りもなく、一輪の名を呼びながら遠くへ歩いていく。

 

「どうだ、私の魔法は? 良かったな、鬼は何処かに行くようだぜ」

「凄い……まるで私の姿が見えなくなったよう」

「そうだな。そう、見えなくしたのさ」

「魔法ってすごいのね。それで、この魔法っていつまでかかっているの?」

 

 興奮しながら一輪が問いかける。それを聞いて、にやり、と魔女の口が大きくゆがむ。

 

「一生さ」

「え?」

「お前はもう、誰にも観測されない。ずっと、ずっと、永遠に一人ぼっちになるのさ。くはははははっ!」

 

 高笑いを残し、魔女の姿が忽然と消え去る。呆然と佇んでいた一輪の隣を、再び私が通り過ぎる。

 

「姐さん!」

 

 一輪が叫ぶ。しかし、その声は私には届きません。すがる一輪を無視して、私は周囲に呼びかけます。

 

 一輪、何処に隠れたのですか、と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――以上です」

 

 語り終えた聖が、ふうと息を一つ吐く。湯呑を傾け、喉を潤している彼女に、しかし、と星は声をかける。

 

「やや、奇妙な幻想でしたね。視点が妙で、聖の視点と客観的な視点が混じっていましたが」

「そうですね。あえて、そういう風にしました。その理由は、このゲームが過去に私が体験した話を基にしているからです」

「体験? ということは、これは一般的な現象から大きく乖離しないってことなの?」

「はい、【このゲームでの現象は、現実世界においても起こりえる】ということになりますね」

「そういう赤から始めるゲームとは、やはり珍しい。おおよその謎は把握したつもりですが、謎を成すための赤を提示してもらえますか?」

 

 星が問いかけると、聖は大きく頷く。

 

「はい、まず前提として【このゲームにおいて、私とは聖白蓮のことを指す】ということにします。これは私の視点でゲームを見る、という体で話を考えたからです」

「面白いね。普通であれば魔女になるはずの聖が、魔法の影響を受けた人物になるのか」

「それは何か不都合が出るのですか?」

「出ないんじゃない? そりゃ、厳密に言えば変なんだろうけど、別にロジックエラーが起きるってわけでもないんだし」

 

 ふうむ、と村紗の説明を聞いた星はなんとなく腕を組む。こういう意見が出る時点で、このゲームに対する星と村紗の知識の差は大きい。この差が果たして、後々の推理の差になるのだろうか。どうせなら先に正解を当てたい、などと思いつつ、話を再開させるために、聖に視線で続きを促す。

 

「続けますね。今回のゲームをまとめると、このような謎になります。【ゲーム中、私は一度以上一輪を視界に収めました】しかし、【私は一輪に対し、声をかけなかった】のです。【声をかけるのをためらわれる作業をしていたわけではない】ですし、【一輪から私にそういう指示があったわけでもない】です。【一輪を認識した場合、私は必ず声をかける】はずであったのに、何故私は一輪に声をかけなかったのか。それは『私が魔女に騙され、一輪を認識できなくなっていた』からにほかなりません」

 

 さて、と聖はこちらを改めて見やる。

 

「探偵の皆様、どうかこの謎を解き、一輪にかけられた魔法を取り除いてください。それが、私の願いです」

 

 魔女らしからぬ言葉で締めて、聖は一度口を閉ざす。

 

「では、考えてみましょうか」

「一輪には悪いけれど、この謎は私たちだけで楽しむとしよう」

 

 一応、修行という名目なのですが。そんな言葉はあえて飲み込み、星もまた楽しむために、推理を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回出た赤字纏め

 

【このゲームにおいて、私とは聖白蓮のことを指す】

【ゲーム中、私は一度以上一輪を視界に収めました】

【私は一輪に対し、声をかけなかった】

【声をかけるのをためらわれる作業をしていたわけではない】

【一輪から私にそういう指示があったわけでもない】

【一輪を認識した場合、私は必ず声をかける】

 

 

 以上

 

 




 なんとなく気まぐれに投稿。どうにも全体的な執筆意欲がガタ落ちしているので、気分転換になればと簡単ですが書いてみました。毎度のことですが、魔女の立場からすると問題の難易度が全く図れません。そんなに難しすぎも簡単すぎもしない、と思っているのですが、どうなるやら。まあそもそも、今回はあえて赤を少なくしているので、そういう意味では難易度高めになるのかもしれませんが。

 今回は命蓮寺の面々にしましたが、正直一輪と村紗の口調が分からないという。私の中での軸がないんですよね、この二人。かといって流れ的に小傘やらナズーリンやらが出るのも変なので、まあなんとなく。とりあえず村紗は聖に対しての星と口調を区別するために、ややフランク気味に書きます。

 で、また別の話ですが、改めてこの作品の最初の方とか読むと、もうなんか全部消去したくなるんですよね、文章のクオリティ的な意味で。いっそこっちは完全に閉めて、新しく別作品で屁理屈推理合戦をやろうかなあ、とかも考えています。最近の東方キャラの把握とかも厳しくなってきたので、艦これ辺りに舞台を移しちゃおうか、でもこういうのを許容できるのは東方ならではないか、などとグダグダ考え中です。まあ、改めて始めるほど謎のストックもないので、もう少しうだうだと考えようかなあ、とか。とりあえず、続きに関しては適当なタイミングで書いて投稿します。正直、最近の意欲を考えると次が何時になるか分からないですが。ではまた。
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