当ゲームにおける基本ルール
1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。
2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。
ただし、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。
3. 魔女は提示された青字に対して、赤字を使って反論する義務を持つ。
青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、探偵の勝利となる。
なお、赤字での反論が有効かどうか、探偵はよく検証する必要がある。
4. 人間側は「」で囲われた文章を提示することで、
魔女に対しその文章を復唱することを要求できる。
ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。
5.探偵は、復唱要求や青き真実を使うまでもない疑問、質問を魔女に問うてもよい。
ただし、魔女側はそれに答える義務を負わない。
以上
「さて、最初はまずどのように動いていくべきだと思いますか?」
「まずは前提の確認とかか、別にいいと思うなら青や復唱要求で可能性を潰していこう。最短でのクリアを目指しているんじゃない限り、基本的には数撃ちゃ当たるの精神でいいんじゃないかな」
「なるほど」
例えば、と村紗は少し考えた後に口を開く。
「青をちょっと出してみようか。『聖は喉に怪我をしており、声を出すことが出来なかった』とか」
「【私は声を出せないような怪我や障害を負っていない】とします」
「じゃあ、『水中で声が出せなかった』というのはどうかな」
「【私と一輪がいたのは水中ではありません】ついでに【私と一輪がいたのは真空中ではない】というのも提示しておきましょう」
「ふむ、なるほど」
「これで声を出せなかった可能性は消えた、ということになるんですかね?」
「今のところは、たぶんね。まあ今は思いついていないだけで、実際は違うかもしれないけれど」
こういう流れか、と星が数度頷く。
「では、今度は私が。『距離が遠かったので、声が届かなかった』というのはどうでしょうか」
「【意識的に発声した時点で、声をかけたと定義する】とします。いえ、【距離に関係なく、聖は一輪に声をかけられる状態にあった】ともしておきましょうか」
「駄目ですか」
「それ、テレビとか電話の画面越しで見たってパターンもないってことでいいの?」
「はい、そうでないと声をかけられませんからね。付け加えるならば【私は確かに肉眼で直接一輪を視界に収めた】となるのでしょうか」
「そうなると、声をかけられなかった可能性も消えましたかね?」
「いや、『どちらかが乗り物に乗っており、声をかける前にその場を去ってしまった』というパターンがある。出たばっかりの赤に抵触する可能性もあるけれど……」
「そうですね。微妙ですが、新しい赤で切りましょう。【私も一輪も、声をかける暇がないほどに高速で移動していない】とします」
「じゃあ……そうだ、『声をかける前にゲームが終わった』というのはどうだろう。ゲーム終了時とかの赤はまだなかったはずだし」
「今回のゲームではあまり関係ないと思っていましたからね。【ゲーム中、私は二度以上一輪を視界に収めた】としましょう。不足ならば【私が一輪を視界に収めてからゲームが終了するまで、十分な時間があった】とも提示しておきましょうか」
やっぱり駄目か、と村紗と聖は同時に唸る。そのまま数秒ほど思案し、改めて村紗は口を開く。
「ちょっと声が出せなかったパターンを思いついたから二つほど。『二人がいたのは発声が禁止されていた場所だった』あるいは『聖が声をかけるのにためらうような作業を一輪は行っていた』というのはどうかな」
「手術室か何処かにいた、みたいなシチュエーションですね」
「うーん、別にそういう場所ではないんですけどね。【私たちがいたのは発声を禁止された場所ではない】ですし、【一輪は特に声をかけるのをためらうような作業をしていない】です」
「ううん、やっぱりこっち方面はないのかな」
「どうも、声をかける動作を妨げるのは難しいようですね」
そうなると、と村紗は自身の顎を軽くなでる。
「一輪を認識させない方向で考えるのがいいのかな。えーっと、『一輪は変装していた』で」
「【一輪は変装していない】です」
「では、『一輪は顔に大きな傷を負っていた』というのはどうでしょう。いや、『一輪は整形をしていた』の方がいいですかね?」
「【一輪は怪我をしていないし、顔に何らかの傷跡もない】【一輪は整形していない】で切りましょう」
「いっそ復唱要求しようか、「一輪の顔は聖が覚えているそれと同じ」」
「【一輪の顔は私が覚えているものと同じ】としましょう。文章的には【私は一輪の現在の顔を完全に記憶している】の方が正しいかもしれませんが」
「あっさり切るのか」
「まあ、別に意地悪をしたいわけでもないので」
魔女としてはやや怪しい発言だが、聖ならばその方が自然か。彼女の返答にそう納得しつつ、村紗は更に可能性を探りに行く。
「じゃあ、一輪の服装が原因だったのはどうかな。例えば『一輪は着ぐるみを着ていた』とか」
「【一輪の恰好は通常衣服としておかしくないもの】でした」
「ふむ、中々ピンときませんね。視界に収めている以上、声をかけるのを妨害するよりもそもそも視界に収めたうえで認識させない方が早いとは思うのですが」
「同感。だから、今の方向性で行ってみたいところだけれど……」
なんだろうか、と村紗は提示すべき青について思考を巡らせる。
「視界に収めたうえで認識させないってどうやればいいんだろう。姿を見せないってのはどうにも出来なさそうなんだけど」
「言い換えれば、どうやって誤解させるかということになりますか。どうすれば一輪を一輪以外と誤解させられるか。試しに、『何らかの手段で一輪は聖を誤解させた』あるいは『何らかの理由で聖は一輪を、一輪以外の人物であると誤解した』と提示した場合どうなりますか?」
「あ、星、それはちょっとまずいかも」
「え?」
怪訝そうな星と共に、村紗は聖の顔を見る。すると、彼女は非常に困った表情を浮かべ、うーんと悩みの声を漏らしていた。
「あれ? 案外クリーンヒットですか?」
「いや、私のにわか知識も混じるけれど、屁理屈で「何らかの手段」とか「何らかの方法」って形で青を出されると、魔女も赤で切れなくなるんだよ」
「ええ、実際困っています。ちょっと返答の赤が思いつきません」
「それは……申し訳ありません、聖」
「いえ、返答できない以上、魔女の敗北に変わりありませんから。今回はきっちりかっちりした謎でもないですし、そもそもそれが今回の謎の根幹ですらかね」
「どういうことです?」
「今回のゲームで、【私は一輪を視認したが、とある理由から彼女を別人だと誤解したため、声をかけなかった】ということですよ。改めて考えてみると、そういう風に青を出されたら一発で終わりの欠陥でしたね」
「いや、そこはまあどこにでもそういうのはあるし」
「そもそも即興でしたしね、まあ青を出した私が言う台詞でもないですが。ちなみに誤解した原因は何だったと思います?」
「そうだなあ……厚化粧、とか? これは変装に入らない気がする」
「何かしらの、らしくないことをしていた、とかでしょうか」
「ああ、近いですね。ヒントは仏門に帰依したものは避けた方がいいものです」
「んー、なんだろ……」
思わず、村紗の言葉が止まった。ゆっくりと視界を動かせば、同じく固まっている星と、不自然なほどにニコニコしている聖の姿が見受けられる。
これは自分が答えないといけないのだろうか。謎の緊張感を覚えながら、村紗は恐る恐る口を開く。
「あの……えーっと…………飲酒、だったりする?」
「ええ、正解です! 本来ならあり得ない光景ですし、場所が人里の食事処だったためか服装も常と違う。その結果としてあれは一輪では『ありえない』と誤認したという『設定』ですね」
「な、なるほど。そうだったのですね……」
重苦しい沈黙が、一瞬その場を支配する。一瞬であったのは、ちょうど玄関の方から、一輪が帰宅を知らせる声が聞こえたからだ。それを聞いた村紗と星が固まる中、聖がゆっくりと立ち上がる。
「どうやら、一輪は帰ってきたようですね。私は少し彼女に話があるので、席を外します」
微笑を称えながらそう言い残し、聖は玄関の方へと歩いていく。彼女の背を思わず見送り、その姿が完全に見えなくなったところで、ふと星が口を開く。
「……どうしましょうか、村紗」
「どうって……祈るしかないんじゃないかな」
主に、一輪の無事を。そんなことを考えながら、村紗は玄関の方に合掌した。
はい、解答編です。こういう解答でしたが、納得してもらえるだろうかと不安です。ちょっと尻すぼみ的にもなってしまったので、併せて少々反省しております。
前回の後書きに続きますが、結局この作品自体は処理として完結扱いにしようと思います。前にもやった覚えがありますが、まあこっちを続けようと思ったらまた連載中に変更するつもりです。こちらを続けるか、別の作品を題材にするかはもうしばらく考え、また謎を思いつき、それを基に何かを書こうと思った時に判断しようと思います。確認が面倒になるでしょうが、どちらになってもまた目を通して頂ければ幸いです。