東方屁理屈録   作:kokohm

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第二盤、推理編、其の壱

「と、格好つけたところ悪いのだけど、ルール説明をしてもいいかしら?」

 

 ガクッ、と魔理沙がずっこける。

 

「おいおい、このタイミングかよ」

「ルール説明って、さっきやっていなかった?」

「いえ、あれは前回霊夢と魔理沙した説明まで。赤と青についての基本ルールをきちんとしておかないとこれから先面倒だから」

「今更基本ルールって、また忘れていたのか」

「それもありますけど、前回はお試しのようなものでしたから細かいところは省いたのよ。あまりきちんと説明しすぎると霊夢が投げそうだったし」

「ああ、それはまあ納得できるな」

 

 確かに、魔理沙はともかく霊夢は面倒くさがって参加しなかったかもしれない。一度参加したので以降は面倒くさがることは無いだろうが。

 

「それで? その基本ルールとやらは何なの?」

「ええ、それは」

 

 と、紫が基本ルールについて魔理沙たちに説明していった。以下、紫が説明した基本ルールを纏めたものである。

 

 

1.【】で囲われたものを赤き真実とする。赤字の内容は絶対の真実である。

 

2.『』で囲われたものを青き真実とする。探偵が己の推理を提示する際に用いる。

  なお、探偵の提示する青は魔法を否定する内容でなければならない。

 

3.魔女は提示された青字に対して赤字を使って反論する義務を持つ。

  青字を否定できない場合魔女側はリザインを宣言し、人間側の勝利となる。

  なお、赤字での反論が有効かどうか、人間はよく検証する必要がある。

 

4.人間側は、「」で囲われた文章を赤字で復唱することを魔女側に要求できる。

  ただし、魔女側はそれを行う義務を負わない。

 

「とりあえずの基本ルールをこう纏めておきますわ、以降何か不都合があれば訂正することとします」

 

 ルール説明が終わった後、アリスが軽く手を上げる。

 

「ちょっと質問、2の青は魔法を否定する内容でなければならないというのは具体的にどういうこと?」

「一つは魔法や超常現象ありきの推理は駄目ということ。例えば『怨霊が四人を殺した』というのは不可ですわね。もう一つ、青はトリックを説明していないといけない、ということ。『AがBを殺した』とだけ青で言われてもそれは魔法を否定していないから不可、『Aが~~というトリックを用いてBを殺した』といった風に宣言して頂戴」

 

 その説明にアリスが納得したところで次はパチュリーが手を上げる。

 

「私も一ついいかしら、3の赤字の検証とは何かしら?」

「そうですわね、こちらはちょっと説明が面倒なのだけれど…。要はその赤が本当に青を切れているのか確認なさいな、ということよ。かなり適当な例になるけれど、Bが刺殺されたという謎において、AがBを殺したと青で言われたとする。それに対し魔女は、Aはナイフを所持していないと赤で宣言したとすると?」

「…なるほど、確かにその赤は青を斬っていないわね。別にナイフが無いと刺殺できないわけじゃないもの」

「そういうことですわ、他に質問は?」

 

 パチュリーへの説明も終えたところで紫は三人の顔を見る、…どうやら現時点で質問は無いらしい。

 

「無いのなら、改めて始めましょうか」

「ってもな、調子が狂っちゃったよ。どうすっか」

「とりあえず私達は何を解明すればいいの?」

「犯人とトリック、その程度かしら。動機やらは気にしないでいいわよ」

「分かったわ」

 

 基本的にこのゲームではハウダニットとフーダニットが重要視されることが多い、ワイダニットを当てさせるゲームはそう多くない。まあ魔女は星の数ほどいるので中にはワイダニットを重要視している魔女もいるだろうが、少なくとも紫がそれを問題にすることは基本的にない。

 

「とりあえず、頭から順々に考えていく?」

「一先ずそれでいいか、最初はミスティアだな」

「午前十時三十分に悲鳴が聞こえて向かうとミスティアは死んでいた、しかし悲鳴が聞こえた時点で他の三人は行動を共にしていた、だったわよね?」

「普通に考えると三人以外の誰かが殺したってことになるわね、話の描写的に大妖精かしら」

「そう考えると謎でも何でもないのだけれど、そこのところどうなの?」

「さあ? 何とも言えませんわ」

 

 アリスの質問に紫は肩をすくめて答える、まあ当然といえば当然の反応だ。

 

「…まあとりあえず先に進むか、次はリグルだな」

「部屋の一室で死んでいるのをチルノとルーミアが発見したのよね」

「そしてリグルが死亡した時刻である午前十一時から午前十一時三十分までの間、チルノとルーミアは行動を共にしていた」

「となるとやっぱりチルノとルーミア以外の誰かの仕業になるな」

「そうですわね」

「…で、次はルーミアか」

 

 素知らぬ顔で相槌を打ってくる紫を無視して魔理沙は話を進める。

 

「これもチルノがルーミアに追いつかれるまでの間に誰かに殺されたかもしれないわね、どうして錯乱したのかが気になるけれど」

「どうしてでしょうね」

「最後はチルノか、これだけ密室なんだよな」

 

 もう紫の相槌など気にも留めていない。

 

「別にチルノ以外誰もいなかったとも言われていないのだから一緒に部屋の中にいたんじゃないの? 鍵は中からなら普通に閉められるでしょう」

「まあ成り立ちはするわね」

「まとめると、『チルノたち以外の犯人Xがそれぞれを殺してまわった、最後の密室は部屋の中に居続けているだけ』ってことになるのか」

「こうなるとそちらには赤での反論の義務が生じるのよね?」

「ええ、ですからこう返させて貰いますわ。【登場人物はミスティア、リグル、ルーミア、チルノの四人のみ】【それ以外の生物の干渉は無い】」

 

 こうなると、四人以外の犯人Xの存在が完全に否定されたことになる。

 

「…そうなると四人の中に犯人がいることになるのか」

「復唱要求、「死亡した順番は、ミスティア、リグル、ルーミア、チルノ、の順番である」」

「【死亡した順番は、ミスティア、リグル、ルーミア、チルノ、の順番である】これぐらいは認めてあげますわ」

「そうなると必然的にミスティアは白ね、そしてチルノが黒濃厚になるわね」

「どうかしら、死んだ後も大丈夫な仕掛けをしていたのかもしれないわよ?」

「そんなもん考えていたら話が進まないぜ、とりあえずはチルノ犯人説で推理していっていいだろうさ」

「そうね、だから確かめさせてもらうわ。復唱要求、「犯人は一人である」」

「【犯人は一人である】付け加えると、【共犯者は存在しない】」

「ついでにもう一つ復唱要求よ、「共に行動していた、という記述は、片時も離れなかった、ということと同義であり、この時間中は直接的な殺害は不可能だった」」

「…前半だけ応えましょう、【共に行動していた、という記述は、片時も離れなかったということと同義である】後半は拒否、理由は秘密よ」

 

 眉をひそめながらそう応えた紫に対し、パチュリーは興味深そうな表情を浮かべる。

 

「へえ、後半は拒否するのね」

「下手に要求に応えていると変なロジックエラーを起こしかねないもの、慎重にもなりますわ」

 

 ロジックエラー、魔女が絶対に生じさせてはいけない禁忌。物語の表裏があわなくなり、決定的な矛盾が生じてしまうこと。例えばAがBを殺した、と赤で宣言したにもかかわらずAは誰も殺していないと赤で宣言してしまうとそれは矛盾している。これは極端な例だがこのように物語が成立しなくなることがロジックエラーであり、これが生じてしまうとゲーム版は即破綻、魔女の反則負けとなってしまう。だから魔女は何が何でもこれが起きないように物語を紡がないといけない。

 

「ただこうは言っておきましょう、【同行者の目を盗んで殺人を行うことはできない】」

「うん? パチュリーのそれとどう違うんだ?」

「私からすればかなり違うわ、正直かなり微妙な赤なのだけれど」

「微妙、ね。つまりその赤は出したくなかったと」

「そうね、正直に言うとさっきの復唱要求はかなりきついわ。今の赤だって下手をすればロジックエラーものよ」

「えらくペラペラと内心を話すんだな」

「私は気前がいいのよ、それにそれが分かっても推理に上手くつながるとは限らないでしょう?」

「まあそうだな、結局同行者がいる状況で殺人は無理ってことか」

「そうなるとミスティアはまだともかくリグル死亡時の謎が解けないわね」

「うーん、どうしたものかな」

「…」

 

 そのように魔理沙とアリスが話している中、パチュリーは黙ったまま何かを考え込んでいる。

 

「どうしたの、パチュリー?」

「ちょっとね、もう少し考えが纏ってから言うわ」

「そう?」

「んじゃ改めてミスティアの奴から解いていくか。復唱要求、「午前十時三十分、リグル、ルーミア、チルノは確かにミスティアの悲鳴を聞いた」」

「そうね、【午前十時三十分、リグル、ルーミア、チルノは確かにミスティアの悲鳴を聞いた】」

「やっぱり悲鳴を上げたタイミングで三人ともそろっているのか。復唱要求、「悲鳴を聞いてからミスティアの遺体を発見するまで三人は行動を共にしていた」」

「【悲鳴を聞いてからミスティアの遺体を発見するまで三人は行動を共にしていた】」

「ううん、どうしたもんか」

「次は私よ。復唱要求、「ミスティアの死亡時刻は午前十時三十分である」」

「…拒否よ、理由は無いわ」

「あれ、悲鳴を上げたときに死んだんじゃないのか?」

「やっぱり違うのね。じゃあこう推理するわ、『悲鳴は録音されたものであり、午前十時三十分の時点でミスティアは既に死亡していた』」

 

 アリスの青き真実を聞いた紫は一瞬悩むそぶりを見せた後、軽くため息をついた。

 

「…なるほど、さすがですわね」

「お? ということは」

「ええ、アリスの言う通りよ。【悲鳴は事前に録音されたものである】【犯人はそれをタイマーで流した】それを認めましょう」

「そうなるともうミスティアの死に疑問は無いな、『犯人は一人で行動している間にミスティアを殺し、録音を流すことで死亡時刻を誤魔化した』これでチェックだ」

アリスの推理から最終的な青き真実を述べ、うんうんと頷く魔理沙であったが。

「【ミスティアが死亡したのは午前九時二十分から午前九時三十分の間】」

「…んん?」

 

 淡々と赤き真実を告げる紫とその内容に怪訝な顔をする。

 

「【ミスティアの悲鳴を再生する機械の操作がなされたのは午前九時五十分から午前十時の間】」

「…え?」

「もう一度言っておきましょう、【犯人は一人である】【共犯者は存在しない】【共に行動していた、という記述は、片時も離れなかったということと同義である】【同行者の目を盗んで殺人を行うことはできない】」

「…つまり、チルノとリグルにミスティアは殺せない。リグルとルーミアに悲鳴の準備は出来ない。共犯者がいない以上両方とも可能な者で無いと犯人足り得ない」

「おいおい、嘘だろ?」

「【赤は真実のみ語る】ですわ」

 

 驚いた表情を浮かべる三人に対し紫は微笑み、お茶を一口飲んだ。

 

「さあ、この赤をどう返すかしら?」

 

 

 

今回追加された赤字まとめ。

 

【登場人物はミスティア、リグル、ルーミア、チルノの四人のみ】

【それ以外の生物の干渉は無い】

【死亡した順番は、ミスティア、リグル、ルーミア、チルノ、の順番である】

【犯人は一人である】【共犯者は存在しない】

【共に行動していた、という記述は、片時も離れなかったということと同義である】

【同行者の目を盗んで殺人を行うことはできない】

【午前十時三十分、リグル、ルーミア、チルノは確かにミスティアの悲鳴を聞いた】

【悲鳴を聞いてからミスティアの遺体を発見するまで三人は行動を共にしていた】

【悲鳴は事前に録音されたものである】【犯人はそれをタイマーで流した】

【ミスティアが死亡したのは午前九時二十分から午前九時三十分の間】

【ミスティアの悲鳴を再生する機械の操作がなされたのは午前九時五十分から午前十時の間】

 

以上。

 




 はい、推理編壱です。少々長くなりそうだったので分けて投稿することにしました。おそらく推理編弐を投稿した後、解決編を投稿する流れになるかと。他にも色々とあるので投稿は少し遅れるかもしれません。ただ今回の切りどころがあまりよろしく無いので弐は早めに投稿できるようにがんばります。

 今回の復唱要求等について、東方幻草子@烏さん、銀羽織さん、箱男さんのコメントを参考にさせてもらいました。ご参加ありがとうございます。ではまた。
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