「どうしたもんか……」
頭をかきながら魔理沙がそう言う、てっきりこれで終わるものだと思っていたのに見事に覆されてしまった。
「一気に推理が崩れたわね、どちらの条件もクリアできる人が居ないなんて」
「『知らず知らずのうちに機械を操作していた』ってことはないの?」
「【機械の操作は意図的に行われた】【操作を行ったのは犯人自身】、知らないうちに片棒を担いでいたってことは無いわ」「これも駄目、か。こうなると同じ人間が二人でも居ないと無理じゃないかしら?」
「もしくは時間を巻き戻してでもしているのか、どっちにしろ無いわね」
「それだ!!」
どうしたものか、ため息をつくパチュリーとアリスの会話を聞いていた魔理沙がパチンと指を鳴らす。
「え? どれよ?」
「時間だよ、時間!」
「何を思いついたの?」
アリスの問いかけに魔理沙はニヤリと笑みを見せる。
「今から教えてやるよ。復唱要求、「ミスティアの死体が発見されたのは死亡後二時間以内のことである!」」
「……ふふっ、復唱は拒否するわ」
「よっしゃ!」
紫の返答にがガッツポーズをとる魔理沙、それを見ていたパチュリーも納得の表情を浮かべる。
「……なるほどね。なら復唱要求、「一連の犯行が行われたのは二十四時間以内のことである」」
「それも拒否するわ、どうやら貴方も気付いたようね?」
「ええ、でもここは魔理沙に譲るとするわ」
見せ場を譲ってくれるパチュリーに頷き、魔理沙は自信たっぷりに紫に指を突きつける。
「それじゃいくぜ、これが私の青き真実だ!『ミスティアは他の三人が館を訪れるより前に死亡していた! 悲鳴の録音や機械の操作はその時に行われたものである! これにより三人のアリバイはミスティアの死亡に一切関係ない!』」
「あら? 【チルノが館に到着したとき、チルノ、ルーミア、リグル、ミスティアは生存している】のよ?」
「それはこう返すぜ、『チルノが館に到着したときというのはリグル、ルーミアが訪れた時より前のことである!』実はチルノは二回館を訪れていて、その赤は一回目のものを指しているんだろう?」
「……お見事、正解よ」
「よし!」
紫のリザインに魔理沙は全身で喜びを表現する、ようやく探偵として魔女の謎を打ち破れた喜びはひとしおだ。
「赤字で宣言した時間が違う日の事を指していたってこと?」
「そうよ、具体的に言うと【午前九時、チルノは館へと到着した】【チルノが館に到着したとき、チルノ、ルーミア、リグル、ミスティアは生存している】【ミスティアが死亡したのは午前九時二十分から午前九時三十分の間】【ミスティアの悲鳴を再生する機械の操作がなされたのは午前九時五十分から午前十時の間】これらは事件前日の赤よ、面倒だから新しく赤は出さないけれど本当のことだと信じていいわ」
「まあ確かに同じ日の、とは言っていないけれど、いいの?」
「正直微妙なところね、個人的にはぎりぎり問題ないと判断したのだけれど人によってはアウトかもしれないわ」
「そう思うのなら出さなければいいのに」
「最初はそうしようと思ったのよ? でも何となく癪に障ったのよねえ」
それらアリスの質問に微笑みながら返す紫、悪あがきと言うかなんというか、何となく素直に負けを認めるのが気に入らなかったらしい。大人げの無い妖怪の賢者である・
「素直に負けろよ……」
「まあまあ、解けたんだからいいじゃない。ミスティアの謎はこれだけでいいのね?」
「ええ、ミスティアの謎についてはリザインするわ。残りは三つよ」
「なら次はリグルの謎についてリザインしてもらうわよ」
魔理沙に代わり今度はパチュリーが前に出る、先ほどから考えていたことに決着がついたようだ。
「あら、考えは纏ったのかしら?」
「一応ね、でもまずは下準備をしないといけないわ。復唱要求、「リグルは刺殺された」」
「【リグルは刺殺された】ナイフか何かをグサリしたのだと思ってくれればいいわ」
「つってもなあ、二人一緒に行動しているんじゃその暇が無い」
「こっちの赤は同日のことなのよね?」
「ええ、それは確かよ。あえてもう一度言うなら【リグル死亡時、チルノとルーミアは行動を共にしていた】」
「じゃあやっぱり無理じゃないか?」
どちらが犯人にしろ殺しに行くことが出来ない、これではどうしようもないように魔理沙には思えるのだが、パチュリーの推理は揺らいでいないようだ。
「そうね、でも手はあるわ。復唱要求、『チルノとルーミアはリグルのいる部屋の扉を壊して入った』」
「【チルノとルーミアはリグルのいる部屋の扉を壊して入った】」
「それは扉に体当たりしたイメージでいいのよね?」
「ええ、そのイメージでいいわ」
「じゃあ多分大丈夫ね。復唱要求、「犯人はリグルを“直接”刺し殺した」」
「直接?」
「……拒否よ、そう聞くのなら分かっているようね」
「?」
「どういうこと?」
どうやらこれもリザインせざるを得ないらしい、そう観念する紫と対照的に魔理沙とアリスの頭の上には疑問符が浮かんでいる。
「こういうことよ、『扉の裏かリグルの胸部にナイフが固定されており、扉を壊した時にそれが刺さった』違うかしら?」
「……おめでとう、リグルの謎のリザインを宣言するわ」
またもや拍手をする紫、この謎に関しては余計な悪あがきをしないらしい。
「うん? どういうことだ?」
「ドミノ倒しをイメージしなさい、あの要領よ」
「…………ああ、扉ごと倒れこんだのね。私は鍵だけ壊したイメージだったから扉が倒れこんでいるなんて考えてもいなかったわ」
「あ、なるほど。それでようやく分かったぜ、そういうことだったのか。つまり、リグルは発見されるのと同時に死んだわけだな」
「そういうことよ」
扉を破ったと同時にリグルは死亡した、これなら死亡時刻に二人が行動を共にしていようと関係ないということだ。
「だから同行時に直接的な殺害は不可能と言わなかったね、その殺し方ならあの復唱要求は言えないと」
「あれはだいぶ困ったわね、その後の赤も同行者の目を盗んで殺したわけじゃないから大丈夫だとは判断したのだけれど、まあ割とぎりぎりですわね」
「そう、そこについても聞きたいのだけれど。この場合同行者は共犯扱いにはならないの? 一応リグルを殺したといえば殺しているのだけれど」
確かに、二人で扉を破ったのなら二人でリグルを殺したことになりそうなものなのだが。
「ご心配なく、【扉を破ったのはチルノである】のだから」
その紫の赤に三人が怪訝な顔をする、確かに一人で破ったのなら共犯者は生まれないだろうが、その赤では犯人を言っているようなものだ。
「え? ここでそれを認めるということは」
「ええ、そういうことよ。いい加減分かっているでしょうから背中を押してあげるわ、【犯人はチルノである】」
「……ちょっとびっくりしたわ、まさか自分から認めるなんて」
「さあ、その前提で残り二つの謎を解いてくださいな」
どういう意図なのか知らないが紫は探偵たちに重要な赤を渡した、これは先ほどの詫びのつもりなのかそれともただ単に飽きただけなのか。どちらにしろこれは大きなヒントだろう。
「じゃあルーミアの謎を解くか、というか死因は何だ?」
「さあ? それも当ててくださいな」
「まあそれもそうか。復唱要求、「ルーミアは刺殺された」」
「【ルーミアの身体に外傷は無い】」
「ふむ、撲殺やらも纏めて否定されたわね。復唱要求、「ルーミアは他殺」」
「【ルーミアは他殺】」
「なら病気や寿命の線もないと考えていいわね」
「後何があるかな?」
「復唱要求、「ルーミアは毒殺された」」
「【ルーミアは毒殺された】これで死因は特定されましたわね」
「毒殺だったか、なら『チルノはルーミアに無理やり毒を飲ませた』」
「【ゲーム開始時からゲーム終了時までチルノはルーミアに一切触れていない】」
「押さえつけて飲ませたとかは無いのか、じゃあ『チルノはルーミアに毒の入った飲み物を渡して飲ませた』」
「【毒は摂取後十分以内に死亡する】【死亡一時間前からルーミアは一切飲食物を口にしていない】【飲食物とは日常生活において食事として摂取するものを指す】だから毒は飲食物には含まないと思って頂戴」
つまりパンやらお茶やらは食べていないということ、こうなると何かに毒を混ぜてそれを食べさせるというのは実質不可能なように思える。
「そうなると……」
「毒単体を摂取させないといけないのか……あれ? 普通に飲ませればいいだけじゃないのか?」
「【ゲーム中に使用された毒は液体であり極少量】ペットボトルのキャップ一杯以下って所かしらね、友人が二人死んだ状況でその程度の量の飲み物を渡して飲んでくれるかしら?」
「まあ私なら飲まないけど、ルーミアがそうだって言い切れないんじゃないか?」
赤で言われない限り何でもあり、そう思っての問いかけであったのだが。
「じゃあ【友人の死によりルーミアは非常に神経質になっていた】【その状況で他者から受け取ったものを口にすることは無い】」
「マジか」
どうやらルーミアはそう単純ではないらしい。
「カプセルか何かを飲ませておいたというのは?」
「【カプセル等は使用されていない】ならびに【ルーミアは毒を摂取して十分以内に死亡している】」
「これも駄目? どういうこと?」
うーんと三人は考え込む、その隙に紫はつかの間の休憩としてお茶を一口味わうのであった。
今回追加された赤字まとめ。
【機械の操作は意図的に行われた】【操作を行ったのは犯人自身】
【リグルは刺殺された】
【リグル死亡時、チルノとルーミアは行動を共にしていた】
【チルノとルーミアはリグルのいる部屋の扉を壊して入った】
【扉を破ったのはチルノである】【犯人はチルノである】
【ルーミアの身体に外傷は無い】【ルーミアは他殺】【ルーミアは毒殺された】
【ゲーム開始時からゲーム終了時までチルノはルーミアに一切触れていない】
【毒は摂取後十分以内に死亡する】
【死亡一時間前からルーミアは一切飲食物を口にしていない】
【飲食物とは日常生活において食事として摂取するものを指す】
【ゲーム中に使用された毒は液体であり極少量】
【友人の死によりルーミアは非常に神経質になっていた】
【その状況で他者から受け取ったものを口にすることは無い】
【カプセル等は使用されていない】
【ルーミアは毒を摂取して十分以内に死亡している】
以上。
はい、遅くなり本当に申し訳ありません。そしてテンポが悪くて申し訳ありません、チルノの謎の説明を入れるスペースがなかったです。またゲーム盤を書くことがあれば次はもう少しスリムな物語にします。前回と今回で分かりましたが謎は大きなひとつと小さな謎が少しあれば十分ですね、今回で言えばミスティアの謎だけでよかったと思う。それだけであれば紫の無駄な悪あがきもそんなに違和感なかったのになあ、失敗した。
次回はいよいよ解決編です、ルーミアの謎とチルノの謎の解明、それと物語の真相を書きます。…やっぱり段取り悪いですね、次からは気をつけます。ではまた。