幻想郷、博麗神社。そこに五人の人物? が存在していた。
「さて」
その一人、今回の主催者である八雲紫が改めてその場にいる面々に目をやる。
「探偵の皆様方、今回はお集まり頂きありがとうございます。今回私が準備した謎、華麗に解決されることを望みますわ」
「あやややや、楽しませてもらいますよ」
参加者、探偵役を担うのはかねてより参加を決めていた射命丸文、それと偶々この場に神社を訪れていたチルノ、大妖精の妖精組、それと。
「それは良いんだが、一ついいかね?」
「何かしら?」
「このマスクは何? あと服を返してください、お願いします」
紫が適当にスキマからフィッシングした男、罪と書かれたマスクを被り…何故か股間にバラを供えた男性であった。何故男性だと分かるのか? 見れば分かる、何しろ全裸に近い半裸なのだから。はっきり言おう、変態にしか見えない。ちなみに罪袋と言うそうだ、本名は不明。
「だ・め」
「…シューン」
「ま、貴方が正解したら考えてあげるわ。では、改めて」
バッと手に持った扇を広げて、ニヤリと笑った口元を隠す。
「魔法を始めましょうか」
*******
「これは…、あまりよろしくないわね」
紫の魔女の見つめる先、そこには吸血鬼の姉妹の死体が存在しました。
両者の胸からは真っ赤な血がどくどくと流れており、両者の手には血に濡れたナイフが握られています。
そう、吸血鬼の姉妹が互いにナイフを刺し合い死んでいたのです。
「…彼女達の死を汚すわけにはいかないわね」
原因が何かは分かりませんが友人とその妹が互いに殺しあってしまった、他の者はこぞってそのことを噂することでしょう。
魔女は友人の誇りを守る為に魔法をかけることにします。
何事かを呟きながら彼女が手をかざすと友人の妹の遺体はその場から消え去りました。
「これでよし、後は私に任せて頂戴」
そして、友人の誇りを守る為に魔女は手を尽くしたのでした。
*******
と、紫が熱演しながら物語を語ったのであるが。
「面白そうなネタですね」
「いやん、撮るな!」
と、文は罪袋の写真を撮っているし。
「ねえねえ、何でバラが生えているの?」
「チルノちゃん、これはね、紫さんが俺にはバラが似合うからって準備してくれたのよ」
「へー、そうなんだ。さすが紫だね」
チルノもまた罪袋の格好について話をしているし。この参加者達は魔女の言葉を聞いているのであろうか?
「ちゃんと聞きなさいな、貴方たち」
「こーら、もう魔女さんが話しているでしょ」
注意の声が被った、どうやら大妖精だけはきちんと話を聞く姿勢であったようだ。そのことに紫は若干感動してしまうが冷静に考えて欲しい、それが普通なのだ。
「皆さん自由ですねえ」
「わかったよ、大ちゃん」
お前もな、素直なのはよろしい。そんなことを思いつつ、場の面々の視線がこちらに集ったことを紫は確認する。
「…いいかしら? 赤を宣言するわよ。【レミリアは死亡している】【レミリアの遺体は部屋Aに存在している】【フランは死亡している】【フランの遺体は部屋Bに存在している】【レミリアは即死した】【レミリアがフランを殺した】【フランは即死した】【フランがレミリアを殺した】【部屋Aと部屋Bは10メートル以上離れている】」
提示された赤、それを文などはメモしながらふんふんと頷いている。他の面々も大体反応は同じだ、ここからどう推理しようかと考えている。
「さあ、探偵の皆様。その明晰な頭脳から導き出された推理を私に示してくださるかしら?」
とうとう始まった屁理屈推理合戦、最初に手をあげたのは罪袋であった。
「紫さんの今日のパンツは何色ですか?」
…手を上げてそれか、と全員が思った。
「何を言っているんですか、この変態は」
文などはこの通り、口にまで出してしまっている。…のだが。
「安心なさい、はいてないわ」
まさかの紫の返しにまたもや全員固まる、本当かどうかはさておきその返しは予想外が過ぎるというのもだ。
「ふむ、よろしい。大事な選択回数を削った価値はある」
質問者である罪袋はキリッという効果音がつきそうな感じでそう言ったが、削れたのは皆からの僅かばかりの敬意の精神だろう。
まあ、それはともかく、改めて屁理屈推理合戦はチルノから始まった。
「それじゃ復唱要求、「凶器は刃物である」」
「【凶器は刃物である】」
続いては文だ。
「それでは「レミリアは部屋Aで死んだ」「フランは部屋Bで死んだ」」
「【レミリアは部屋Aで死亡した】【フランは部屋Bで死亡した】その調子で頑張んなさいな、私は気前のいい魔女だからね」
「復唱要求、「第三者Cが存在していた」」
「第三者ねえ」
チルノからの復唱要求に紫は僅かばかり考え込む、とはいえそれは答えにくいというよりは。
「チルノちゃん、それは青字じゃないかな?」
「あ、そうなのか。ごめんね大ちゃん」
ちょっとずれている、と言った方が正しいか。
「復唱要求でも通らないことは無いと思うけれどね、まあ「第三者は存在しない」の方がいいのは確かだけれど。とりあえずそれで答えるわね、【登場人物はレミリア、フランの二名のみ】」
「では復唱要求を、「部屋Aと部屋Bは最初から10m以上離れていた」」
「【部屋Aと部屋Bは最初から10m以上離れていた】」
「『凶器の刃渡りが10m以上あり、お互いを刺殺できた』」
「【凶器はナイフ、長さは柄を含めて三十センチ】」
「じゃあこんなのは?『レミリアとフランの部屋は一つだった』」
「【部屋Aと部屋Bは独立している】」
文、大妖精、チルノと順々に考えを述べていく。それに答えつつも罪袋はどうしたのか、と紫が目を向けてみるとちょうど彼が口を開く。
「刺した後どちらかは移動できる状態だったりします?」
「罪袋、それを聞きたいのならきちんと復唱要求しなさいな」
「罪袋それはおかしいよ 二人は「即死」なんだよ?」
「ああ、即死か…。なら…」
そう考え込む罪袋を見て、ちょっと慣れていないようねと紫は思う。まあこの屁理屈推理合戦は前回の文の仕事のおかげで多少は広まったがまだまだ細かいルールまで浸透しきっているとは言いがたい状況だ、今回逸りながら慣れてもらうしか無いだろう。…そもそも罪袋は何処出身なのだろうか? ……まあ、ゲームが出来るのならそこはどうでも良いか。
「『レミリア達が、刃物を10m投擲した』」
「【レミリアとフランの体格は一般的な少女のもの】【一般的な少女に刃物を10m投擲することは不可能】」
「復唱要求、「凶器は二人が持っていたナイフ」」
「【死因はナイフによるものよ】ついでに言っておくと【凶器、犯行に使われたナイフは二つよ】」
「むむむ…、難しいね」
大妖精、チルノの妖精組が頑張っている。妖精はあまり頭がよろしく無いなどと言われる事もあるが存外そうでも無いらしい。
「復唱要求、「部屋は水平に10m離れている」」
「…復唱拒否よ」
ということは垂直方向に10m離れているということ? などと質問者である大妖精は考えるのだが。
「でも、それだと下の階から上を殺せないんですよね…。うむむ」
それはそれで推理が繋がらない、難しいものである。
「大妖精のが復唱拒否されたのが気になるな…」
「そうね、そういったものも踏まえて考えなさいな」
ボソリと呟やかれた罪袋の言葉を紫は肯定する。屁理屈推理合戦の特徴の一つである拒否、これもまたゲームを面白くする為のギミックの一つであるのだから。
「復唱要求です、「レミリア、フランは一人ずつである」」
「ん…? ああ、同姓同名とか二重人格とか?」
「ですね」
「【今回のゲームの登場人物は、レミリアという一人の少女と、フランという一人の少女である】【名前、肉体を共有しているものはいない】」
「フランが四人に増えるからってそれはないよ、文」
まあフォーオブアカインドはないが、きちんと魔法以外の方法で説明さえ出来れば問題ないと言えなくも無い。とはいえ、今回はそういうことではないのであるが。
「それじゃ…、「レミリアとフランは血を流した」」
「うん?」
「いや、これが通らなければレミリア、フランって名前の人形が刺されたという可能性もあるかなって」
「あ、なるほど。そういう考えもあるね…」
チルノの説明に罪袋は軽く頷く、こういった自分に無い発想を聞くことでさらに推理を進めることができる。そしてそれから導かれた推理がさらに別に推理を生じさせる。だからこのゲームはある程度の人数がいる状態でやった方が良いと思う。
「【レミリアとフランは確かに血を流した】残念だったわね、人形じゃないわよ」
「『ナイフを何か棒のようなものを使って長くして刺した』」
「【二人はナイフを直接握って相手を刺した】これは結構重要な赤よ」
「普段二人はナイフより怖いもの振り回している気がするけど…」
「ナイフも十分怖いわよ」
「大丈夫、あたい達は一回休みになるだけだよ」
そうチルノは笑っているが、微妙に笑えないのは人間だけであろうか。
「それでやり合ったら本人より周りが危険だけどね」
「罪袋はね、私達は平気よ」
訂正、人間だけであるようだ。
「復唱要求、「ナイフに何か仕掛けがあった」」
「仕掛けが無い、の方が良いわよ。でも答えてあげる【ナイフに仕掛けは無い】」
「んー、そうなのか。じゃあスペツナズナイフとかの可能性は消えたのか」
「ないわねえ、断言してあげるわ」
現状、一番発言しているのはチルノであろうか。紫には彼女が一番積極的に屁理屈推理に参加しているように見えた。
「大ちゃんもどんどん質問しないと」
「うん…」
と、チルノに促されるものの大妖精は若干生返事な様子。どうやら既に何某かの推理を持っており、今はそれを固めている最中なようだ。
「さてさて…、少し考えてみるか」
「そうですね、しかし中々いいものが出ないですねえ」
「何か赤がいるかしらねえ」
罪袋と文の発言に紫は赤の追加を検討する、とそのタイミングで大妖精が口を開いた。
「では復唱要求、「2つの部屋はそれぞれの部屋に一番近い壁が10m以上離れている」分かりづらいでしょうか?」
「いえ、意味は分かったわ。でもどうしましょうか…、あえての復唱拒否でいくわ。…それにしても、大妖精のばかり拒否しているように思えるわね、でもそれだけ良い線いっていると思いなさいな」
「ふむむ」
「ふむ」
紫の発言に大妖精と文はさらに考え込む。その推理が良い線ならどうなるのか、それを考えているのであろう。
「復唱要求、「レミリアとフランが死んだ時刻はほぼ同時である」」
「【レミリアとフランは同時に死亡した】」
「事故死、とかの可能性はあったりする?」
「事故じゃないわね、【二人には明確な殺意があった】」
「復唱要求です、「二人のどちらにもナイフでの傷以外なかった」」
「【レミリア、フラン両名にナイフでの刺し傷以外の外傷は存在しない】」
「ふむ、どちらかが落下して離れたかもと思ったのですが」
「復唱要求、「レミリアとフランにナイフが刺さったのは同時である」」
「【レミリアとフランにナイフが刺さったのは同時である】、普通なら同時などありえないけどね。まあ解答だって普通じゃないしいいわね」
「『ナイフには、遅効性の毒が塗られていた。お互いに死なない程度に傷つけ合った後、2人は部屋に戻り、死亡した』どうでしょう」
「それ、即死ではなくなってしまうんじゃないでしょうか?」
「あちゃ、そうでしたね…」
文の指摘に大妖精は顔をしかめる、どうも考えすぎて赤を見落としてしまったようだ。
「そこまで悪くないと思うけれどね、毒で即死。でもまあ、【毒物は用いられていないのだけれど】」
「では「二人はナイフによって死亡した」、を復唱要求しておきます」
「【二人はナイフによって死亡した】死亡、即死ね」
「二人のパンツは何色か。柄も求む」
ここまで真面目な雰囲気が続いていたのにこの罪袋は、等といった感じの視線が集まる。
「だから推理なさいな、…二人のパンツ? 面倒だから全裸で良いわ」
「雑ですね…」
「くそ…妄想の手間をはぶかれちまった」
大妖精のちょっとずれた感想にもツッコミを入れたいが、何よりも阿呆なことを言っている罪袋の方が先であろうか。どっちにしろ、全員がスルーを選択したためにこの話題はここで終わってくれたのだが。
はい、今回は9/21に行われたセッションの一部をリプレイ化したものとなります。この謎自体は大体一時間ほどで解かれたはずです。さて、今回罪袋がだいぶはっちゃけていますが実際に言っていました。私、紫の返答も実際にやりました。最初罪袋は別のキャラに置き換えようかと思っていたんですけどね、気が変わりました、その所為でレミリアたちが謎の被害にあっていますがね。
今回、あまりテンポが良いとは思っておりません。ルールや質問の仕方など実際に行った会話を含めているからです。省いたり改変したりしようかとも考えたのですが、こういった会話もあった方が読者の皆さんに対して何かの参考になるかと思ったからです。まあ、実際はそういった会話も削ってはいるのですけどね。入れすぎてもいけないのが難しいところです。
で、これからの投稿について。これからは一話の構成として前半で前回の解答、後半で新たな出題、の流れにしようと思っています。多分その方が良い感じの流れになると思うんですよね。それと以降はリプレイが中心になるかもしれません、まあその辺はセッション次第ですがね。あとその都合上皆さんから復唱要求等を募集しても生かすことが出来ません、なので募集はしませんが推理を思いついたという方がいらしたら私にメッセージにて連絡ください、その際は私が一対一でお付き合いさせてもらいます。少々長くなってしまいましたね、ここまでにしましょうか。ではまた。