その妙な空気を最初に払ったのはここまでガンガンきているチルノの青き真実であった。
「『二人は自分の死をお互いになすりつけるように 自殺した』」
「既に赤で言っているわ、でもまあ改めて【二人は他殺】よ、自殺なんてしてしないわ」
「あー、そうだったね。ごめんね」
「あ、これはどうでしょう? 『片方が死んだあと、窓から落下して、10m下の部屋に入った』」
チルノに続く大妖精の青き真実、それに紫は少しばかり考え込む。
「…どうしようかしら……、【どちらの遺体も落下していない】
「むう…」
「落下していない、ね……」
紫の返しにチルノが反応する、紫の言い回しに何か引っかかるものでも感じたのであろうか。
「うーん、落下していたら外傷があるでしょうしねえ」
「下にクッションがあったかもしれないと思ったので」
「ふむ、なるほど」
「ああ、そういう可能性もあったわね」
文と大妖精の談義に紫はその手もあったかと紫は手を叩く、魔女からしてみれば探偵たちの推理は次の謎のヒントともなりえるので実に楽しいものである。とはいえ探偵たちからしてみれば、紫の反応は今回に関しては違うということを指しているも同然であるので悲喜交々ではあるのだが。
「つまりどっちかが上に昇った可能性があるかもってことだね」
ボソリとチルノが呟いた言葉に紫はピクリと反応していたのだが、誰もそれに気づくことなかった。
「復唱要求、「レミリア、フランの部屋は互いに鍵がかかっていた」」
「鍵? 別にこれは密室殺人じゃないわよ、だからそこは気にしないで良いわ」
「密室殺人じゃないって事は…、部屋自体は関係ないんだね」
「関係ないというか…、何というか…」
チルノの感想に紫は悩んだような顔を見せつつ言い淀む、その紫の様子を見た文はここに何かあると追求してみることにする。
「復唱要求です、「部屋は一般的な部屋である」」
「…拒否よ」
「ふむ」
やはり何かある、とすると…。と文が考えているとそれを聞いていたチルノがハッとして口を開く。
「『二人のどちらかがエレベーターにいた』」
「…ふふ、グッドよ」
チルノの青き真実を聞いて紫は満足げな笑みを浮かべる、そして広げていた扇を畳みチルノに向ける。
「リザインするわ。皆、チルノに拍手を」
魔女によるリザイン、つまりは探偵側の勝利である。それを魔女に宣言させたチルノに全員がパチパチと拍手を鳴らす。
「ありがとう~」
「ああ、なるほど」
「さすがにチルノちゃん!」
「射命丸の要求のおかげだよ~」
大妖精の賞賛にチルノはそう返す、他者の推理を聞いて更なる推理につなげることが出来るのが多人数の強みである。
「説明をしておくわね。ゲーム中どちらか、まあフランにしましょうか。フランの乗ったエレベーターが移動したのよ。そして扉が開いた瞬間に互いにナイフを突き立てる、その後二人は後ろに倒れこみ遺体はそのまま移動したと。ゲーム開始時と終了時は確かに10m離れていたから赤もクリアできるわ」
特にそれ以上の説明は要らないだろう、これが今回の謎の答えである。
「さて、次の謎は霊夢ね。ちょっと呼んで来るからそれまで少し休憩で」
今日の集まりだがGM、つまり魔女は持ち回りだ。紫のほかに霊夢、魔理沙が奥で控えており各々が魔女として謎を出すことになっている。魔理沙はともかくあの霊夢がよくやるな、などと思われるかもしれないが何だかんだ彼女もまた屁理屈推理合戦にはまった一人なのである。
しばしの休憩、そして紫に代わって霊夢が探偵たちの前に現れる。
「じゃあ私の謎を出すわよ、いいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
「どんとこい」
「OK」
探偵たちのやる気は十分、それを確認した霊夢が口を開いた。
「これは紫から聞いた話よ」
*******
あら、どうやら今度は殺人じゃないようね。…たまにはこういうものも良い? まあ、そうかもしれないわね。
あるところに橙って名前の女の子がいたようね、どこかで聞いたことのある名前だわ。彼女は水に濡れるのが嫌いで、雨を防ぐ為に常に傘を持ち歩いていたそうよ。
ただついうっかり傘を忘れて外出した時があったの、しかもその日に限って雨が降るという不運が彼女を襲ったわ。
どうしようかと悩む橙の元に一人の魔女が現れたそうよ、多分藍とかいう名前なのでしょうね。
魔女が杖を一振りすると橙の周りに結界が張られたわ、そのおかげで無事橙は雨に濡れずに目的地まで辿り着けたというお話ね。
さて、赤を宣言させてもらうわ。
【ゲーム開始時、橙は地点Aにいた】
【ゲーム終了時、橙は地点Bにいた】
【地点Aと地点Bの周囲には確かに雨が降っていた】
【橙は雨具の類を所持していない】
【橙は雨で身体を濡らすようなことにはなっていない】
とりあえずはこんなところね、貴方たちの推理を聞かせてもらうわ。
*******
「私を退屈させないでね、そんなに難しい謎じゃないわ」
「周囲に雨が降っていたんだね…」
「そうよ、式には天敵ね」
そんな雑談を挟みつつ、探偵達は早速思いついた推理を披露していく。
「『藍が橙にカッパを貸してくれた』」
「【橙は雨具の類を持っていなかった】」
まずは罪袋、しかしばっさりと切られる。
「『AとBの間は建物の中だった』」
「【地点Aと地点Bは建物の中では無い】」
「復唱要求、「A地点とB地点に屋根になりそうな所はない」」
「【地点Aと地点Bに屋根になりそうなものは無い】」
「ん~、そうなのか。分かった、『藍は橙に折りたたみ傘を渡した』橙はもってなくても藍は持っていた」
「【ゲーム開始時から終了時まで、橙は雨具を持っていない】」
次いでチルノの連続推理、しかしこれまたばっさりと切られる。
「『地点Aから地点Bまでは地下だった』」
「【地点Aと地点Bは地下で繋がっていたりしない】」
再びの罪袋の推理、先ほどまではふざけている面が多く見えたがどうやらスイッチを入れたようだ。
「復唱要求です!「橙は地点Aから地点Bまで歩いて移動した」」
「ふむ…」
と、ここで大妖精が放った復唱要求に霊夢はしばし考え込む。
「拒否よ。本当に優秀、と言っておこうかしら」
「復唱要求、「橙は何かの中に居た」」
「………チルノ、拒否してあげるわ」
「妖精組は核心をつくね」
罪袋の呟きにまったくだと霊夢は頷く。先ほどの紫のゲームも裏で聞いていたから分かるが、本当にチルノと大妖精は筋が良い。
「これで砕く、『車で移動した』」
「………」
しばしの無言、もしやリザインかと全員が注目する。
「…ふふっ」
だが、そんなに甘い問題ではない。
「【このゲームにおいて、車の類は存在しない!】残念ね」
「むむむ…」
悔しそうなチルノに霊夢はニヤリと笑う。そう、これこそが魔女の醍醐味なのだ。
「チルノちゃん、惜しいと思ったんだけどなあ」
「それでは、『何らかの乗り物で移動した』」
「何らかの乗り物、ねえ」
「『藍が傘をさしてくれて、一緒に地点Bまで行った』」
文の推理に霊夢が何かを考え込む中罪袋も重ねて推理を放つ、だがそのどちらも霊夢を倒すには至らないようだ。
「じゃあ答えてあげるわ。【橙は地点Aから地点Bまで、乗り物によって移動などしていない!】【彼女自身の力で彼女は移動したのよ!】【登場人物は橙一人!】」
「これなら橙が傘をさしてなくてもって…違うか」
「ふふ、紫とはまた違った魔女、楽しんでくれているかしら?」
まだまだ、この魔女を倒すには推理が足りないようだ。だが、ならばさらに推理を重ねていけば良いだけだ。そう探偵達は改めて謎に向き合ったのであった。
はい、前回の続きと次の謎です、今回は短めでしたね。なお今回紫の謎を解いたのはチルノとなっていますが正確にはこれに一人、私達のセッションを見学されていた方も追加されます。ちなみにその見学さんは第六盤から天子として参加されますのでお楽しみに。
さて、今回から解答と次回の出題を一話に纏めていますが次回は第五盤解答編だけになるかもしれません。理由としてそこで一度日が変わっていること、それとメンバーの変更があるからです。先ほど言った天子の参加が大きいのですが、罪袋の人がキャラを変えているというのもあります、具体的には命蓮になりました。正直命蓮とかどういう設定でこの世界に放り込めば良いのかと思っていたのですが、そこは中の人が設定を考えてくれたのでそれを流用します。ではまた。