プロローグ「槍殼都市グレンダン」
武芸の本場、槍殼都市グレンダン。
時刻は深夜。
街は完全に寝静まり、猫一匹さえも見当たらない。
そんなグレンダンの外縁部。月明かりに照らされ、二人の人間の影が外縁部に伸びていた。
目の前でレイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフが自らの錬金鋼である天剣を復元し、構える。その構えには一種荘厳と言ってもいい雰囲気が感じられる。
(相変わらずおっかない雰囲気だな)
キルファ・アンゼルムはその雰囲気に飲まれないようにしながら自らの錬金鋼《ダイト》を手に持った。
そして、
「レストレーション」
起動言語と共に、しっかりとした重量感と共にキルファが愛用している銃剣が手の中で復元される。
「レイフォン、加減はいらねえぞ。ヴォルフシュテイン獲った力を惜しまず見せてくれ」
キルファにそう言われて、困ったような笑みを浮かべながらレイフォンは無言で武器を構えなおす。
始まりは唐突だった。
レイフォンがキルファに斬り掛かる。
(内力系活剄の変化、水鏡渡り・・・か)
キルファは冷静に技を見極めレイフォンの剣を受け止める。水鏡渡りは攻撃手段よりも高速移動に主きが置かれているのだ。それくらいなら受けることは特に難しくはない。
キルファは剣を受けたままの状態から反撃に転じた。軽く息を吸い込み一気に吐き出す。
外力系衝剄の変化、ルッケンス秘奥、咆剄殺。何故そのような奥義をキルファが使えるのかは今は割愛する。
「ちっ」
レイフォンが軽い舌打ちと共にキルファから距離を取る。どうやら咆剄殺は回避されたようだ。その証拠に傷一つ、ついていない。
「く~。あの至近距離で咆剄殺を避わすのか・・・つくづく規格外だな天剣授受者様はよ」
キルファはお手上げとばかりに手を振りながら正面に立つ友人《レイフォン》へと声を掛けた。
「良く言いますよ。自分だって咆剄殺なんかまで会得しちゃって・・・剄技を盗むなんて教えなければ良かった」
レイフォンが呆れ顔でキルファに言い返す。そして、二人共はそれ以上何も言わず、第二ラウンドが始まった。
まず動いたのはキルファ。旋剄で間合を詰めつつ、弾丸で牽制する。
(このまま斬り結ぶ。でも斬り掛かるだけじゃ勝てない・・・なら)
キルファはその勢いのまま自分で考案した技を武器に乗せて放つ。
「外力系衝剄 轟弾」
剄の力で何百倍にも膨れ上がった無数の弾丸がレイフォンに降り掛かる。そしてその直撃の余波で巨大な爆炎が巻き起こった。
「どうだっ!?」
キルファはその瞬間勝利を確信する。いくら天剣授受者と言えどこれだけの攻撃を食って無事なはずがない。
しかし、キルファは間違っていた。相手は天剣授受者。人類の敵である汚染獣をその身一つで討伐しうる化け物なのだ。いくらキルファが技を叩き込もうと汚染獣のそれには敵わないのだ。
「天剣技 霞楼」
辺りの爆炎が一瞬にして灰塵に帰す。そして、無傷のままのレイフォンが先程まで火に包まれていた場所の中心に立っていた。
そしてそこでキルファの記憶は途切れたのだった。