俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
「ジャニーズ!! 負けないでぇ!!!」
妹ちゃんの谷本君の勝利を願う叫びが、今にも涙を流しそうな空に木霊した。
だけど、それも虚しく谷本君は仰向けに倒れ―――
―――る、と思った瞬間、後ろに倒れるままにその身をグルリと後転させる。そしてそのまま間合いを取るとズワァと起き上がり両手を広げた。
通背拳独特の構え。だけど、その手刀の指先がゆらゆらと揺れていた。息が荒い。目が定まっていない。
ここまで谷本くんを追い詰めるなんてロキ自身も含め、ロキの【俺の考えた最強武術】もやるもんだ。
そんなふうにロキの評価を更新していると、谷本君が突然ブルブルッと頭を振って大きく息を吸い込み―――
「フンッ!」
と、息を一気に吐き出すとともに彼の目に力が戻る。
まさか……無理やり、練り上げた気を体に通した? よく言われる気力だけで戦うって奴だ。
そりゃ、戦えるなら体は動くだろうさ。だけど、その後、気を抜いた瞬間ぶっ倒れるぞ。間違いなく。
「ちっ、大人しく終わればいいものを」
相対するロキが面白く無さそうに吐き捨てた。
それが言い終わるか終わらないかの
一瞬遅くロキが後退する。だけど、それは悪手だ。それでは攻撃の圏内から逃げられないぞ、と僕は彼を鼻で笑った―――そして、その瞬間、目を見張り驚いた。
上手い!
谷本君の目の前には投げつけられるスタンロッド。バチバチと音を立て放電を起こすソレを彼は無視できない。
そりゃそうだろう、今の今存分に痛めつけられ威力を嫌というほど味わったんだ。その脅威度が格段に低いとは言え、気を取られるのが当たり前だ。
「っく」
咄嗟の反応のせいで谷本君の手刀が捉えたのはロキ本人じゃなく、スタンロッド。
そして、谷本君の手刀がスタンロッドを撃ち落としている隙に体勢を立て直したロキが攻撃に転じた。
「どりゃ!」
「っが」
一撃を受け、よろめきながら後退する谷本君。
今の一打。谷本君は見えていなかったな、たぶん。
遠山の目付、観見の目付という教えがある。
人の視野は上下左右に120度くらいでだけど、普段はその中心部分だけを見ていて、その他の部分は見えているけど頭に入っていない。
この視点の外側に意識を持っていくこと。遠くの山を見るように全体を見ること。そうすることで相手の動きを察する。これを観の目という。逆に一部分を注視し、それを追うのを見の目という。
相手に対する時、この観の目を多く働かせ、見の目はほどほどに、というのが教えの意味するところなんだけれど、ロキはスタンロッドという小道具を用いて、そこに谷本君の意識を惹きつけた。すなわち彼の観の目を弱め、見の目を強めた。そして、その瞬間を狙ってロキは攻撃に出たわけだ。
「もう一発!」
体の
いや、僕が傲慢だったんだな。増上慢な上に増長していた。お相手がどんなでも真摯に見て学ばなきゃいけないのに。僕は印象が悪いからと、それに引きずられて君を侮って小馬鹿にしていた。ごめんね、自称戦う参謀ロキ君。
でも、それでもやっぱり―――
「終わりだぁ!!」
よろめきをこらえた谷本君に、ここで最後とばかりに放たれた貫手(つまり5なんちゃらパンチの起点である手刀)が迫る。
――それでも谷本君には及ばない。
ロキの貫手が谷本君の左腕に弾かれる。瞬間、一歩踏み出し、体ごと打ち当てるかのように突き出された拳がロキの胸を打った。
「ぐぁっ」
自分が前に出てきた分と、突き出された拳の衝撃を喰らい、今度は逆にロキがよろめく。
流れるように半歩間合いを詰める谷本君。ロキとの距離は殆どゼロ。そして重心を沈めるようにして放たれた肘打ちがロキの鳩尾を貫いた。
「がっ! ぐぅうう」
数歩よろめき、鳩尾辺りを手で抑えロキは膝を着いた。そのまま苦悶の呻きを上げながら蹲るロキ。
「あれは猛虎硬爬山……その
「あ、それ聞いた事があるぜ!」
僕もある。うんうん、と頷きながら風林寺さんの言葉に声を上げた宇喜田先輩に同意した。
確か、八極拳の必殺技だったと思う。でも、それにしてはパンチと肘打ちの連続技って……。いや、入りって言ってたし、基本の技こそ奥義っていうのはよくあることだ。
それに基本の技であるからこそ、その練磨の具合も、そしてその技に対する己の信頼も半端じゃない。
あれこそ、谷本君が今まで費やしてきた血と汗と意志、そして時間が結実した技。そうに違いない。
「てめぇ、は、いつも下らねぇことに時間を割いて、まるで功夫が足りてねぇ、んだよ」
「ぐっ、が、ハーミットぉ」
息を吐きながら途切れがちに己の敗因を語る谷本君を睨みつけるロキ。
でも、それ以上は何もできないのは、人体の急所の一つを痛打されて未だ動けないからだろう。そんなロキに、谷本君が止めを刺すため両腕を広げて―――
「そこまでだ、ハーミット」
突如、降って湧いた言葉に誰かと思って目を向ける。
そこには
「ちっ!出てきやがったか…第一拳豪!」
谷本君の言葉の通り、第一拳豪オーディーンこと白スーツ君がいた。
前にクレー射撃場で見たのと同じ白スーツとスカーフ姿。……この格好でここまで来たのか、コイツ。す、凄い男だ。
「第一拳豪だ! 拙いぞ!」
「何がですの?」
「あいつ、おっそろしく強ぇんだよ」
「しかもラグナレク本隊が来てるって、かなり拙いんじゃな~い」
僕が白スーツの男気に恐れ慄いていると新島と先輩達が騒ぎ出す。
たしかに白スーツ君は強いと思うけど、本隊ってのは来てないと思う。人がたくさんで来てればそれなりに分かるし、どうもの彼は一人でここに来たっぽい。
「ロキが拳聖様の名を使っていると聞いて来てみれば……」
「チー、フ……ハーミット、の野郎が、裏切りや、がった」
「ふん?」
「ハーミット、の奴、ラグナレクを抜けて、白浜、味方しやがった」
ようやく復活してきたロキの言葉に白スーツは谷本君を見て、僕らの方を見た。
「ハー、ミットの始末を―――」
「少し黙れ、ロキ」
「!?」
白スーツが、重い声音でそう告げるとロキは言葉を失った。
そんな奴に構うこと無く、白スーツがこちらにやってくる。その視線はどうにも白浜君に固定されているようだ。やっぱり、白浜君と何か因縁があるみたい?
そして僕ら、と言うより白浜君の前に立つとその顔をジッと見つめ、ややあって笑顔を浮かべた。
「ああ、やっぱり兼ちゃんだ。久しぶり。その子はもしかして、ほのかちゃん?」
「え?」
「フッ、分かんないか。もう十年だものな」
その言葉の裏にどんな感情があるのか、メガネを直すようにして隠した表情からは読み取れない。
「まあいい…あの日の約束を果たそう。近いうちにね」
というと、白スーツは白浜君から意識を外し、谷本君へと視線を向けた。
「ハーミット、脱会というのは本気か?
ロキがどう言ったかは分からないが、拳聖様が何をどうしろと直接命じることはない。決してな。
飽くまで我々があの方の目に止まらんがために集い、行動しているに過ぎん」
「……」
「今からでも遅くはない。脱会を取り消さないかい? 拳聖様と繋ぎを手放すのは得策じゃあないだろう」
「断る!……拳聖様には「己の道を行く」と伝えろ」
「そうか……なら、次に会うときはまた敵同士というわけだ。残念だ」
背を向けて未だ這いつくばるロキのところまで歩いて行く白スーツ。
ロキを見下ろすその目は冷たい。
「ロキ、いつまで這いつくばっている? 撤収しろ」
「ぐっ、チーフ!」
その命令に不満を露わにするロキだったが、白スーツは有無を言わせぬ雰囲気を醸し出して睨む。
そしてそのままロキを連れて教会の敷地から出ていこうと背を向けた。
そこに、
「まて! ほのかを人質にしておいて謝りもしないのか! 許さないぞ!!」
白浜君がそれにストップを掛けた。
でも、白スーツはそれを取り合う風でもなく、それどころか無視してロキに顔を向けた。
「人質? そんな策まで弄して君は負けたのか?」
「それは!」
何事か言い訳を言おうとしたロキの顔面に一瞬ノイズが走る。
第一拳豪の左手が結構な速度で繰り出されて、そのせいでブレたんだろうけど本人はそのことに気がついていない。
「こんなゴーグルをつけて遊んでいるから、そんな失態をやらかすんだ。そんなことじゃあ到底拳聖様のお目に適うことはない」
「!!?」
白スーツが見せた左手にはロキがさっきまでしていたセンスを疑う超絶格好悪い網々ゴーグル。
そのことに気がついた彼は手で顔を覆った。
「うぉおおお、いつの間に!?」
なんか、凄い叫びを上げてる。
そんなに大事なのか? あのダサいゴーグル。親の形見とか?
「よ、容赦ねぇ~、悪の美学心得その1“正体をバラすな”をあっさり破らせやがった」
「なんじゃそら? お前はいいのかよ」
「例外第10項に“悪魔顔の場合はよし”とある」
え?そんなことであんな嘆くの?
いや、ダークヒーローとか闇のなんとかとか厨二病全開の集団の戦う参謀とか言っちゃってる子だもんな、あいつにとっちゃ一大事なんだろうけど……
楽しそうだね、ははっ。
「く、くそっ! 20号撤収だ!バイクを回せ! 20号! 20号ぉ!」
「ふん……」
顔を隠したまま逃げていくロキ。
そんな見られない顔じゃねぇ、っていうかイケメンじゃん。嫌味か。滅べよ、ホント。いつか使い物にならなくしてやりたい。マジで。そうしたら20号ちゃんに恨まれるかも。けけッ。
そういや20号ちゃんそろそろ起きたかな? まぁ、他人の女なんてどうでもいいけど。
「待て、ロキ!」
「兼ちゃん……僕らに頭を下げさせたいなら、力尽くでそうすることだ」
「ッ―――」
ブワッ、と中々の威勢をもって殺気の風が吹き抜ける。
それを真正面から浴びた白浜君は言葉をつまらせた。どうにも白浜君はまだ殺気を受け流したり、呑み込んだりは苦手な様子。ガキの喧嘩で殺気云々も無いし、稽古で殺す気で技を放ってくる狂った師匠もそうそういないだろうし。
動きが止まった白浜君をジッと見ていた白スーツに、ちょうどいいやと代わって僕が声を掛けた。まぁ、空気読まないのは愛嬌というものだよ。
「君らの話によく出るケンセイ様ってのは何者?」
「何?」
僕の言葉に白スーツが少しばかり気色ばむ。
僕を睨んでくる、っていうか殺気を向けてくるけど、この程度かわいいもんだ。気にも留めず話を続けた。
「君らのボス? 後ろ盾? そのケンセイ様ってのは、もしかして馬 剣星さんのこと?」
前々から聞きたかった。
彼らの背後なのか、トップなのかは分からないけれど見え隠れするケンセイという人物。
谷本君や南條先輩のように真っ当な武術に関連する人なのか? ジークフリートやロキのような不良を集めてるその筋の人なのか? 白スーツはそのどちらとも取れる言動だったし、それならそれで子供の喧嘩で終わるような問題じゃあない。
もし、
それを黙認しているのか追認しているのか知らないけれど、どういう奴が糸を引いているか知らなくちゃならない。
「……いや、君の言うバ ケンセイという人は知らないが?
こっちの態度に気を落ち着かせて白スーツが答えてくれた。
鬱陶しいことにこの間の射撃場での勧誘の事を口に出してさり気なく離間の計を仕掛けて来る辺り、自称戦う参謀よりよっぽど戦術に長けていると思う。
「はぐらかさないでくれる?
君らは誘拐監禁すら辞さない集団なんだ。その黒幕が一体どういう立場の人間か僕らは知るべきだろ?
大人。つまり保護者&公的権力、警察だ。
「そうだね、ロキのやらかしたことは少々悪巫山戯が過ぎたと認めよう。君の懸念はよく分かる。
だが、拳聖様をそこらの暴力団やヤクザと一緒にしてもらっては困るな。ラグナレクの本質は、あの方の考えはもっと崇高なものだ」
「……ふーん」
「確かに僕らとしても
飽くまで彼としては
それがどこまで本気かわからないので、ジーッとオーディーンの顔を眺めていたけれど、不意に彼はメガネをクイッと上げた。
「じゃあそういうわけで僕は行くよ。
またね、兼ちゃん。……次に戦う時までにせいぜい強くなっててくれよ」
と、最後に白浜君にそう告げて今度こそ本当に去っていく。
そうして第一拳豪、
「はぁ! 新白連合大勝利!!
敵の大将、第一拳豪を追っ払ったぞ!!」
まぁ、確かに敵の大将を追い払ったけれど、まだなにか忘れてないか?
そう、まだ、終わってない―――
「さ、て……仕切り直しと行こうぜ、白浜」
脇腹を片手で抑えながら、ゆらりと谷本君が白浜君の前に立った。
しかし、そのボロボロの姿に白浜君がそれに同意するはずもなく、
「待ってよ、谷本君。その体じゃ……」
「あ゛? 自惚れんな、間抜け。打たれ強いのがてめぇだけと思うな」
谷本君のその目は冗談を言っている目じゃない。頑張るなぁ。いいね、それでこそだよ。
新島達が「がびーん」「おいおい」「まだやる気か」とか口々に驚き、風林寺さんまで「ちょっと二人とも、無茶ですわ」とか、なんとか言う。
始めた喧嘩は、白黒つけて終わらなきゃ。
「オレはお前が気に入らねぇんだ。決着を着けるぞ」
ジッと谷本君を見つめていた白浜君が不意に吹き出した。
「プフッ、君って人は。
ふふ……ああ、決着をつけよう、谷本君!」
谷本君は、いつもの両腕を広げた構えでも八卦掌の宅槍掌の構えでもなく、ズンと腰を落として拳を握って前に、もう片方も拳を握って腰に添える。
放長撃遠の通背拳よりも接近短打の八極拳を選んでいる辺り、谷本君のダメージはかなりなんだろう。
対する白浜君はいつもの片手を手刀にして前に、もう片方は拳を握って後ろにするオーソドックスな構え。
じり、じりと二人の距離が縮まっていく。
「ぉおおお!」
先に仕掛けたのは白浜君。一歩踏み込んで放たれた
谷本君は、それをこするように腕に当て弾き飛ばし、半歩前進、残った拳を白浜君の顔面に突き入れべく放った。
「くっ」
その突き手を対角に掴みぐるりと体を回転させて肘打ちも、谷本君のグッと内に入れ込まれた足によって体勢を崩されてしまっては意味は無い。
それどころか拘束していた手をグリッと回転させて引き抜かれ焦った白浜君へ谷本くんの肘が飛ぶ。
「ぐぅッ」
なんとか腕を回して防御するも体当たりのように繰り出されたそれに白浜君の体がよろめいた。
「喰らえ!!」
大きく回わして得た遠心力で威力を増した拳槌が落とされる。
「ひゅっ」
頭上で両腕を交差させてそれを受けた白浜君は近づいた谷本君の頭を掴んで膝頭にその頭を叩きつけんと跳び上がった。
その一瞬、振りほどくのが不可能と見たのか谷本君が前に出る。
ゴキャ、と彼の肩が鈍く鳴った。
「ぐぅぁ!!」
勢いのままによろよろと後ろに下がっていく谷本君の右腕がダランと力なく垂れていた。肩が外れてしまったんだろう。
「た、谷本君……」
「ぐっ、来い! 白浜ぁ!!」
白浜君の言葉にゼーゼーと荒い息を吐きながら答える谷本君のその目は決して諦めてはいない。
だからだろうか? 白浜君もまたグッと目に力が宿った。
「……行くぞ」
「ハァ、ハァ、来い! ハァ、ハァ、これが最後だ!!」
二人の距離は既に一歩踏み出し拳を突き出せば、十分打てる距離。
もう、ここまで来ると技巧も何もへったくれもないだろう。これから放たれる一打は一撃必殺。正にそれだ。
ピリピリとした緊張が辺りを支配していく。戦いの熱が空気に充満していく。その熱気を冷ますかのようにポツ、ポツポツと空がとうとう泣き出し始めた。
ゴクリ、誰かが唾を飲み込んだ。その瞬間―――
「
「ぅおおおおお!!」
「ぉおおおおお!!」
妹ちゃんの叫びと二人の雄叫びが重なり、繰り出された拳は渾身の一撃。
それが例え満身創痍からのものであっても十分に威力を持ったまま防御も何も無い互いの鳩尾を打ち抜いた!
「ぐあ!」
「ガッ!」
「お兄ちゃん! ジャニーズ!!」
共に気力も体力も既に底を突き、意地だけで立っているような状態だ。
そこにダメ押しの一打を受けてしまってはどうしようもない。二人はそのまま崩れるように膝を着いてぶっ倒れた。
「兼一さん!」
「谷本君!!」
「兼一君! 」
「兼一!!」
「兼一ぃ! よく
崩れ落ちた二人を助けるため駆け寄ろうとすれば、白浜君が呻き起き上がろうとする。
そして、それに呼応するかのように谷本君もまた立ち上がると、グッと拳を握り突き出した。
「オ、レは、負、けん……」
負けじと白浜君もまた立ち上がり拳を握った。が、その途端膝がカクンと抜け、尻餅をついた。
「くっ、しま―――」
致命的な隙に焦リを隠せなかった白浜君だったけれど、彼の心配は杞憂に終わった。
なぜなら谷本君はその場を動いていなかったから。
「そこまで! なかなか良い勝負だったぞ!!」
頭上からそんな声が聞こえた。
と、次の瞬間大木の上にいた梁山泊の達人二人、お髭着物氏と無天拳独流空手の酒鬼至緒さんが降ってきた。そして、
「両者引き分け!」
谷本君も白浜君も戦闘不能だものな、これでまた決着は次回に持ち越しか。
「お二人共、いつからそこにいたんですの!?」
「「最初っから」」
以外なことに風林寺さんは二人が大木の上でノホホンと観戦していたのに気がついていなかったのか。
そんな二人はプリプリ怒る風林寺さんタジタジの御様子。
「あー、お酒まで飲んでますの!?」
「いや、これは」
「うっうん……さ、早く二人を私の診療所へ」
「あ、はい。岬越寺大先生!」
お髭着物氏こと岬越寺さんの言葉に武田先輩が白浜君に肩を貸す。
僕が谷本君を背負っていこうとしたら、「おう、コイツは俺に任せな」と風林寺さんの追求から逃げてきた酒鬼さんがヒョイと軽く谷本君を肩に担いだ。
「チッ、たくよー。思った以上にこのフードやりやがんのな」
「良いライバルが出来て良いことじゃないか。次は負けないように我らの弟子一号をみっちり鍛え直さなくては」
「違ぇねぇ」
二人のそんな密談?を聞いて、僕は理解してしまった。白浜君にさらなる地獄に落とされることを。
……白浜君の助けになるためにやってきた僕だったけど、とても彼の力になれそうもないや。泉さん、姫野さん。僕じゃあ無理だった。
ゴメン、不甲斐ない僕を許してくれ。