俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
僕の通う荒涼高校は、どこにも行けない馬鹿の受け皿的な意味合いもあってか、マンモス校。偏差値が低いだけ合って結構荒れてる。不良の巣窟。
ここら一帯には不良のチーム? グループ?があって、そこの幹部とかが在籍してるとかなんとか。先生も見て見ぬふりの荒っぽい奴がいて、真面目で気の弱い生徒は身を縮こまらせてる。
僕? 僕も目をつけられないようにコソコソしてる。だって僕の名前は風牙 北斗なんて痛い名前なんだもの。絶対絡まれる。学校でまで殺伐とした日常なんか送りたくないもの。
「
ひらひらと足元に落ちてきたチラシを拾う。
え?あのフヌケンくんが!? とビックラこく。確か、元々空手部にいたけれど一ヶ月くらい前に辞めて園芸部に入ったとかなんとか本人が教室で言ってた記憶があるけれど。人づてに聞いた辞めた理由はいじめとか、なんとか。
筑波って先輩は空手部でも1,2を争う強さで、不良グループの一員って聞いてたけれど、フヌケン君って強いんだな。
「キィイイイイイイイイ! 見るなー! 読むなーっ!!」
僕の持つチラシを奪わんとする手が伸びる。フシャーッ!と奇声を上げてるのは件の人物、フヌケンこと白浜兼一君。
おっと、そのまま呆気としてたら彼の指の爪で怪我しちゃうな。スイ、と腕を曲げて位置調整。
バシッとひったくられた。おお、恐い。触らぬ神に祟りなし、だ。
◇
日曜日。
本家への重い足取りの中、白浜君を見かけた。何故か、大きく腕を振って腰を回して歩いてる。しかも隣に女の子……風林寺さんか? 同じことをしてる。
あれって――――首里手の練習、かな? 空手部辞めたって言ってたけど他の道場にでも通ってるのか。風林寺さんらしき女の子と一緒に!
……うるおってんなぁ。いいなぁ、うらやましい。
「あっ」
「なんですの、ケンイチさん」
目があった。それにこの声、やっぱり風林寺さんだ。彼女もこっちを見た。「やあ」と手を上げる。
「あら。えーっと……」
「ふ、
しどろもどろしてるフヌケン君。恥ずかしいんだろうな。彼が今やってたたのって、知らない人が見たら変な踊りだもん。噂とかされたら恥ずかしいし、ね?
それより風林寺さんは僕のこと分からないっぽいね。一応クラスメイトなんだよ、僕。
「デート?」
「ち、違います!ケンイチさんとはお友達です!!」
風林寺さん……
フヌケン君がちょっとショックを受けてるよ。なんだ、そうか、うるおってないのか。ちょっと安心。
「そうなんだ―――じゃ、えっーっと、何やってたの? 変な歩き方してたけど」
「あー、えっとこれは」
「武術の練習ですわ」
「武術? へぇ、空手部辞めたって聞いてたけど、そっかどっかの道場に行ってるんだ」
「うん、そうなんだ」
「(お互い)大変だね。頑張って」
そう告げて別れようとしたら、丁度空き地のバラックの方から声が聞こえた。
「あー、ホントだー。白浜兼一じゃーん」
「ヘヘッ、古賀さん言ったとおりっしょ」
「やるじゃんお前」
見れば、10人くらいの不良がこっちに来る。まずい。逃げよ―――としてる間に囲まれた。
あちゃあ、巻き込まれちゃったな。
「ボク、古賀太一っていうんだけど、白浜兼一君、ちょっと付き合ってくれない?」
「なっ?」
「あっ! そっちのおでこちゃんおっぱい大きいねー!! 彼女?」
「ふぇ?!」
あー……それは僕も思ってた。
うちのクラス、健康的な可愛さなら水泳部の林さん、おっとり系なら園芸部の泉さん、勝ち気系なら薙刀部の姫野さんと美少女揃ってるけど、おっぱいの大きさはダントツだからなぁ、風林寺さんは。
たぶんだけど、学年の中でも一番大きいんじゃないかなぁ? 今なんて体の線バッチリの薄手の着てるし、超眼福。転校してきてくれてほんと嬉しい。
「だから!彼女違います!! お友達です!!」
そんな力一杯否定してあげなくても。しかも二度目。フヌケン君、ちょっと可哀想。
「ふーんじゃあ白浜君はぶっ潰して、君は僕の彼女にしようっと!」
「何を勝手な!!」
「武田さんにはズタボロになった白浜君を届ければいいでしょ」
フヌケン君、震えてキョロキョロしてる。多対一というか多勢に対するのは初めてなのかな?
目があった。そして古賀先輩に向き直る。
「ふ、風牙君は関係ない! 彼には手を出すな」
「フヌケン君……」
―――いや、ゴメン。君は、フヌケじゃないわ。
自分だって大変だろうに、僕のことを気にするなんて。君ってやつは……
「あー、そうだね。そいつをボコられたくなかったら、抵抗しちゃ駄目だよ。白浜君?」
「なんて卑怯な」
「あー、大丈夫だよ。おでこちゃんは痛くしないから」
うぅわぁ、流石我が校でも有名な不良の一人、古賀先輩。聞きしに勝るクズっぷりだわ。
うーん、でも、どうしよっかなぁ。一応、他人の喧嘩だし手を出すのは憚られるし、僕が囲みを突破して逃げれば、足枷の無くなった彼らも動きやす―――否。
フヌケ……じゃなかったね、兼一君は僕を庇おうとしてくれた。自分だって震えてるのに。
そんな男気を見せられたら、ねぇ。
男、一度門を出れば七生滅敵。武門の実子が敵意を向けられ背を向けるなんてあっちゃ駄目だよね。
ぞわっ
構えようとした瞬間、得体の知れない悪寒に襲われた。 なんだ? と視線を彷徨わせて―――ッ! 息を呑む。
「なーんか、どたばたやってると思って来てみりゃ」
な、なん、だ?
なんで、こんな、うそだろ?
「いい雰囲気じゃねぇか、兼一!!」
「さ、逆鬼先生!!」
白浜君が
いきなり現れた、30手前のその男の持つ気勢に僕は、正直おしっこちびりそうだった。気を抜いたら、じょびじょばー!!って決壊しそう。
なんだこれ、こんな人に師事してんの? 兼一君、君、馬鹿じゃない? これ、アレだよ。
外見がどーとかじゃない。この抑えてるけど重く圧するような馬鹿でかい気勢は間違いなく、うちの武彦さんとか龍真さんとか千住老みたいな達人クラスじゃねぇかよ!
「んだてめぇ!死にな!!―――――いひゃあああああがぉあおあああ!!」
あ、馬鹿。ほら、言わんこっちゃない。馬鹿が一人、酒鬼さんに突っかかって威勢に飲まれてぶっ倒れた。
あんな重い気当たり食らったら、そうなるよ。
「兼一」
「はひぃ!」
「股を閉じる! これが手刀構え! うん、よし!と」
「え?」
「アパチャイが探してたぞ。早く帰れよ」
兼一君に構えを取らせるだけ取らせると、酒将軍のビニール袋担いで酒鬼さんは去っていく。
弟子の喧嘩に師は出ない、ってやつだろうか? 兼一君ならこの程度の不良どもに遅れは取らないってことかな?
「は、ははは、ふはははははー!!」
あ、緊張解けたんだね。古賀さん。わかる、わかるよ、その気持ち。
「死ねー!!」
「!!」
「兼一さん!?」
古賀さんが兼一君の顎を蹴りあげると同時に、他の奴らも僕らに襲いかかってきた。鉄パイプやらチェーン、特殊警棒にナックルダスター(メリケンサック)で武装してる。
止めてよね。当たったら痛いじゃすまないんだよ。
クルン。と体に拳が当たった瞬間、体を回転させてパンチを避ける。「おらぁ!」と振り下ろされる鉄パイプが体に触れた瞬間、再びクルンと体を回転させて避ける。
これ、
「にょわー!?」
すごい声に、見れば風林寺さんがおっぱい揉まれてる。裏山けしからん。
兼一君も頑張ってるけど、古賀さんの動きのほうが早い。喧嘩慣れしてる。人に危害を加える事に慣れてるって感じ。
このままの流れじゃ間違いなく兼一君は負ける。地力で負けてるんだもの。とにかく一度、仕切り直せれば――――
「ちょっと待った!!」
「え?」「へ?」
僕と古賀さんが同時に鳩が豆鉄砲食らったマヌケな声を出した。
だって、兼一君、手を掲げて、ストップッて言うんだもの。喧嘩の最中にそりゃないでしょ。喧嘩慣れしてる古賀さんだって面食らうよ。
「どこみてんだ、おらぁ」
――と、余所見してる時じゃなかった。
振り下ろされた特殊警棒をクルリと避けて、トンと背中を押してやる。すると相手はなんか竜巻のように暴れまわっている風林寺さんの間合いにのこのこ入ってっちゃう。
そして、
「ひっ」「あがっ」「ゴッ」
とか言いながら、伸されていく。
ドサ。
「あれ?」
見れば古賀さんが尻もちついてる。
「あはは、転んじゃったよ」
って立ち上がるも、直ぐに尻もちついた。あー、脳を揺さぶられたね。
兼一君大金星。
「わぁあああああああああああああああ! みんなやっちまえーっ! こいつら殺せぇえ!!」
と喚くけどさ、古賀先輩。
「ガッ!」
今最後の一人が風林寺さんの餌食になったよ。
「あ、いけない。兼一さんの分を残すの忘れてましたわ」
……おやつみたいに言うのね、風林寺さん。
「うわぁあああああああああああああああ、妖怪だぁ! たぁすけてぇ!!」
ワタワタと逃げる古賀先輩。まぁ、分からなくもないですよ、強く生きて。
「ふぇえん、妖怪って言われましたわぁ」
そして泣く風林寺さん。
なんだ、これ?
「よ、妖精ですよ、ほら、軽やかに舞っていたから。ね、風牙君」
「え?あー、うん。そうだね」
「ううん、妖怪ですわー」
泣き続ける風林寺さん。さっきと今でギャップありすぎ。ギャップ萌え狙ってんのかと言いたくなるね。
「と、とにかく帰りましょう」
「ふえぇえん」
「風牙くん、それじゃ、その」
「ああ、うん……そのお大事に?」
「ハ、ハハハ」
白浜君の乾いた笑いが何とも言えず、とりあえず僕は彼らを見送った。