俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
白浜君がここ数日学校に来ないので、風林寺さんに聞いたら第一拳豪に負けたらから山籠りだって。
……負けると特訓。他人事じゃないので、何処か遠くの空の下、地獄を見ているだろう白浜君の無事を祈っておいた。
「別に病気とかじゃないらしいよ。ジムの合宿みたい」
「学校サボってまでかよ」
「大丈夫かなぁ、白浜君」
泉さんの心配に気を揉んだ姫野さんに何か知らないかと訊かれたので情報を流出させておく。
まぁ、さすがにオブラートには包んだけれど。
放課後、新島なら更に何か知ってるというか、連絡取り合ってるかもしれないので新たな情報がないか聞くため、物理部の部室改め新白連合本部に向かった。
すると、どうだろう。いつもとは違う騒がしさが聞こえてくるじゃないか。
バン♪バン♪ シャン♪シャン♪
これは……タンバリン?
妙にリズミカルで、洗練されたメロディを持ってタンバリンの音が聞こえてくる。吹奏楽部の練習でも近くでしてるだろうか?
と、思ったのも束の間、明らかに目指す場所がその発生源。
「新島ぁ、いるー?」
恐る恐る中を覗けば、
「ジークフリート!?」
思いもよらなかった人物の存在にびっくら魂消てしまった。
「おー、風牙の。よく来た。そしてよく
「な、なんでここにジークフリートが?」
僕に気がついた新島だけど、それよりも、いやだからこそ驚きを隠せない。
でも僕の驚きは何番煎じかだったらしく、そこに居た武田先輩や宇喜田先輩が説明してくれようとした。
けれど、それを圧してジークフリートが話を聞かせてくれることになった。それも無駄に良い声で歌いながら!
その
「そ、そうか…
によってジークフリートが洗脳されたからだ!! とね。
「おおぉ! 正に総督の奏でるメロディは大宇宙ともいえる壮大にて荘厳な旋律でした。それがわかるとは……
「え? あ、うん。僕は風牙 北斗。よろしく」
なんとなく発音が違う気がするけれど、手を差し出されたので握り返す。なるほど、拳豪って言われてだけあって、握力もかなりあるね。
「九弦院 響と申します。貴方からは時にフェローチェな、時にグランツィオーソなメロディを感じます」
「あ、ありがとう?」
何を言っているのか全く分からないのだけど、多分、きっと褒められたんだろう、と思う。
褒められたらお礼を言う。これ、常識。
「うんうん、新幹部と用心棒の顔合わせも済んだし。よし、行くぞ」
新島の洗脳の
「え? 行くって何処に?」
「これからキサラちゃんのとこに和平交渉に行こうって話になってるのさ」
「で、元部下である俺らも一緒にってな」
なるほど。
南條先輩と新島とじゃ、あまり面識がないからアレだけど、武田先輩と宇喜田先輩達は部下として付き合い長いし、九弦院君も八拳豪として付き合いがあったんだろうからな。
でも、
「あー、なら僕は行かないほうがいいと思う」
「あーん?」
「前に新島がロキに拐われた時あっただろ? その時に情報を提供してもらってて、一応、この間、南條先輩が凹にされそうになってたの助けたから帳消しといえばそうだけど…」
「なるほど。お前がいると、そのことを持ちだされて交渉が面倒くさくなる、と」
「うん。考え過ぎかもしれないけど」
僕の言葉に新島は顎に手を当てて考え、そしてビシリと僕を指差す。
「よし、お前は必要ない。帰れ」
「……」
いや、確かに一緒にいくのは嫌だけど、必要ないッ!て言われるのはちょっと厳しい物があるな……
ハッ、いや違うぞ。これも新島の人心掌握術だ! 正に、「嫌よ嫌よも好きのうち」だな!? くっ、やはり宇宙人め、地球人を操る能力を持っているのか!?
「……それでいいけど。けど、その前に」
「? なんだ?」
「白浜君、いつ頃帰ってくるの?」
「あー、ケンイチね。美羽ちゃんが言うには一週間くらいだからな。ま、そのうちだろ。……そうだな、修行の進捗くらいメール送るよう言っておくか」
新島でも風林寺さん以上の目新しい情報を持っていなかったのでちょっと落胆。けど、それはまぁ仕方ない。
南條先輩のアジトに向かう新島&九弦院君に先輩二人、そして旗持ちの松井くんを見送って僕は物理部の部室を後にした。
さて、先生に分かんない問題を……ああ、今日は
◇
いつもながらにフル凹にされる修行の毎日だけれど、学校をサボってまでフル凹になっているだろう白浜君がいるのだと思うと、地獄を見てるのは僕だけじゃないと勇気づけられる日々が続く。
そんなある日、教室でへたばってた僕に新島が、ンケケケケと笑いながら近づいてきた。
「ほれ」
「……なにこれ?」
「キサラとの一時休戦がうまく行ったんでな。親睦会を開くことになった」
手渡されたのは一枚の紙切れ。紙には「新白連合 集え同志!!」とある。
「タダ飯?」
「おう! ……ま、本来は会費を三千円程徴収したいところだが、今回はジークがスポンサーになってくれてな」
「へぇ?」
一回の食事に三千って高いなぁ。貧乏な僕にはちょっとね……
でもそれにしてもそれをポンと出す九弦院君って金持ちなんだな。たしかにあの着てる服とか既成品ぽくないのに凄くかっちりしてるものなぁ。
オーダーメイドってやつかも。
「皆が集まると良いメロディが浮かぶそうだ」
「……そういや戦う作曲家だったね、九弦院くんって」
「ま、そういうことで。お前は手下どものほうに混ざってくれ」
新島の言い分だと「自分は違う方に行く」と聞こえたので、頭に疑問符を浮かべてやる。
「俺と武田に宇喜田、それにジークは幹部親睦会の方に行く。強情っ張りの
谷本君は、ラグナレクを抜けてからここ最近大人しいけれど、別に新白連合に入ったわけじゃないと思う。
以前も今も南條先輩とも仲良くしてるわけじゃないから、前に戦った時一緒に行動してたのは仲良しこよしだからってわけじゃ無さそうだし。
そう考えると三つ巴。八拳豪の三竦みを狙っていると。
「それに、お前がそっちにいれば喧嘩になっても押さえつけられるだろ?」
昨日の敵が今日の友、と言うけれど昨日まで喧嘩してた
いや、逆に馬鹿ガキだから表面が仲良くなれば打ち解けるのも早い、と見たのか。なら、僕は表面を取り繕わさせる抑止力、ってとこかな。
「……報酬は、このタダ飯ってわけ?」
「話が早くて助かるぜ」
会費三千円の食事が
僕は肩を叩く新島に頷いておいた。
◇
「おお、ここじゃい。ここじゃい」
旗持ちの松井くんに、長ラン姿の木元くんに連れられてやってきたのは以前にも来たことのある南條先輩達の溜まり場。
水谷くんや上岡くん、倉本くんら他の新白連合のメンバーは既に親睦会の準備のために先に来ているらしい。
新島達はレストラン
「あっ、風牙もこっちに来たんだ」
「ああ、古賀先輩。お邪魔します」
何度か気絶させたことのある技の三人衆・蹴りの古賀さんも雑魚親睦会のほうにいた。
「ちっ」
「白鳥ちゃん、南條先輩と一緒じゃないの?」
今日も女を感じさせないユニセックスな出で立ちの白鳥ちゃん。そんな彼女は僕の姿を見るなり舌打ち。
彼女が古賀先輩の側にいると、先輩のチビ助加減が強調されるので口にはしないけど正直可哀想だから止めてあげて。
そんな僕の先輩への気遣いなど知らず、白鳥ちゃんはウェーブのかかった金髪を振り乱して怒ってきた。
「誰が白鳥ちゃんだ!」
「あれ? 違った?」
確か南條先輩からはそう呼ばれていた気がしたが間違えてしまったようだ。
いかんな。
「白鳥 かおる だから、かおるちゃんって呼ばれたいんじゃない?」
「古賀ぁ!」
余計な一言だったのか、ガァ!と怒る白鳥ちゃんに古賀先輩がピューっと逃げ去った。
ギリリ、って歯ぎしりしてる彼女を見てると、フンッと鼻であしらわれて、
「キサラ様にこっちを見張るように言われたんだ」
と、さっきの疑問の答えを教えてくれた。なるほど、僕と同じ役割ってことか。
「そうなんだ。信頼されてるね、白鳥ちゃん」
「だから! ……チッ、キサラ様とはそれなりに長いからな」
「ふーん」
同じテコンドーをやってるから、その繋がりなんだろうなぁ。
「じゃあ、そろそろ始めようぜ!」
不意に、上岡君の一言が聞こえ、
「ほら、白鳥ちゃん。キサラ隊の代表でしょ。乾杯の音頭、取りに行かなきゃ」
「わかってる!」
プリプリ怒りながらの白鳥ちゃんと上岡くんの音頭で、とりあえず親睦会が始まった。
テーブルには唐揚げにトンカツなどの肉系揚げ物、フライドポテトやポテトチップスの芋系揚げ物、果汁100%(濃縮還元)&炭酸系のジュース類、プティガトーと呼ばれるホールケーキを分割したり、それ専用に作ったりしたケーキ類。
皆が皆、取り皿に好きなものを取っては食べ、食べては取りを繰り返す。
そんなこんなで最初はギスギスピリピリしていた空気もだんだんを穏やかになってきてた。ワイワイと言い合い、時折笑顔もこぼれてる。
最初は睨み合ってた旗持ちの松井くんと白鳥ちゃんも何だかんだで打ち解けあっているみたいだ。
でも、十数人の男子高校生(&女子高生)がパクつくんだ。食べ物はいくらあっても直ぐに無くなっちゃう。
「ガハハ、買い出しに行ってくるぞぉ! 皆、欲しいものをこの紙に書くんじゃい」
お金大丈夫なのか?と思ってたらどうやら新島から軍資金は貰ってきているらしい。
会費を徴収しようとか目論んでいた割に、こうやって部下に気風の良い所を見せるってのは流石の新島。抜け目の無さに感心。
買い出し要員の松井くんが出て行って暫く、白鳥ちゃんが側に寄って来た。
「んっ」
レモンジュースのペットボトルを持った手を突き出してくる。意味するところは、
「ありがとう」
と紙コップを差し出せば、とくとくと注いでくれた。一気にくいっと飲み干す。
多分、お酒飲みの礼儀というかマナーなのか良く知らないけれど、注ぎ返すのがベストなんだろう。
手を差し出せば白鳥ちゃんはジュースを渡してくれて、これまた「んっ」と紙コップを差し出してきた。
イケメンがやってるかと思うと問答無用で殴り殺したくなるけれど、女の子がやっていると分かった上で見ると可愛く見える、この不思議。世の中は不思議で満ちているな。
「……」
「……」
「……」
「……」
うーん、参った。会話の種がない。
「容姿が中性的でカッコイイね!」というのは女の子に対してどうなんだ?と思うので振れない。
やはりここはお見合いのテッパンである「ご趣味は?」で様子を見るべきか? はたまた「今日はいい天気ですね?」という全く親しくない相手にも使える万能テンプレを使うべきか?
それともこの間のことを謝るべきだろうか? 僕は多分、彼女がいつもは表に出そうとしてないか弱い女の子の部分を衆目に晒させてしまった。
凹ったことは全く気にならないけれど、そういう何というかデリケートな部分を苛めるようなことになったんじゃないかと、今更ながらに思ってしまう。
なもんで、
「……風牙、あれだ―――」
「ッ!! な、何!? 白鳥ちゃん!」
白鳥ちゃんが急に話しかけてくるもんだからビクッてしまった。
恥ずかしい。女の子に慣れていないみたいじゃないか。慣れてないけど。
「ぐっ―――それだ。お前、キサラ様は先輩付けでどうして私はちゃん付けなんだ? 古賀にだって先輩なのに。一応年上だぞ! 私は!」
「は? だって……」
南條先輩や古賀先輩は先輩だし、白鳥ちゃんは
まぁ、本人が嫌がってるんだから続けるのも良くないか。
「じゃあ白鳥さん?」
「ふん」
そしてまた沈黙。ふー、困った。
別に仲良くする義理も義務は無いんだろうけれど、こう和気相々としてるなかでギスギスした関係ってのもな。
話題、話題と。共通の話題。武術?……無いな、それはない。
なら、どうにも慕っているらしい南條先輩ルートから攻めてみよう。
「しかし、南條先輩はよく新島と手を組むこと承知したね?」
「……第五拳豪ジークフリート様の説得もあったしな。それに……」
「それに?」
「い、いや! そ、そう、あの宇宙人が言っていたが第二拳豪が動くんだそうだ。だからキサラ様は仕方なく
「ふーん」
第二拳豪だって。
確か新島が久賀館さんのことを第三拳豪だって言ってたから。これで全員かな?
危機を前にして群れる。外敵を前にしないと人というのは手を取り合うことが出来ない。人とはなんて悲しい生き物なんだ、とか何とか格好良いことを考える。
でも、まぁ、これで荒涼高校の不良共は一応ひとまとまりになるってことになるのかな? 武田先輩たちも技の三人衆再結成だわ。あー、二人は自称不良じゃないとか言ってるから無理か。
古賀先輩はそこんとこどう思ってるんだろ? 躊躇なく倒れてた武田先輩に蹴り入れたり、楽しそうに宇喜田先輩の腕を折ろうとしたり、と隔意があった記憶があるけれど。
と、思って古賀先輩の姿を見ようと見渡したけれど、その姿が見つからない。
ありゃ、もしかして松井くんと一緒に買い出しに行っちゃったかな? 新白側だけ行かせるのも何だからって。
「白鳥さん? 古賀先輩に松井くんと一緒に買い出しに行くように言った?」
「? いや」
ふーん、自分からか。そう思っていると部屋の外に
買い出し終えて帰ってきたかな? と見れば、ドアが開いた。
「よぉ、楽しそうだな? 俺も混ぜてくれよ」
そうして入ってきたのは、ガムをクチャクチャと食べながら気怠そうに部屋を見渡す大男だった。