俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
「それは梁山泊の居候の一人じゃろう」
そう教えてくれたのは秋野千住老。泰斗流秋野道場の重鎮にして僕を半殺しにする人のうちの一人。
その技は先代泰斗宗家より玄妙と言われ、恐れ尊敬されている達人。武術=風泰流の深奥を得るためなら孫だろうと息子だろうとお構いなしに地獄に叩きこむ爺さん。
数年前に風泰流の秘奥義が復元されてからは大分落ち着いたらしいけど。
「梁山泊? 水滸伝のですか?」
「まぁ、そこから取っておるんじゃろうがな。確か、あの辺りにあったはずよ。元々無敵超人・風林寺隼人の棲家じゃが、何人かの遣い手が居候。共に暮らしておるようじゃの」
「達人…豪傑たちの溜まり場。故に梁山泊ですか?」
「ふん、吠えるものよ」
おおう、千住老言うねぇ。
「無敵超人とはまた凄い異名ですね」
「ふん。戦国の世から生きておるとかまことしやかに言われておるわ。その実力も確かに化け物じみておる」
「へぇ、千住老がそこまで言うなんて」
驚きだ。この妖怪爺さんが認める化け物だなんて、どんだけ化け物だよ。
この人、幻術だって使える妖怪なんだけど。
「あ、だからですか? 泰斗の関東進出の際にそこに道場破りに行かなかったのは? まぁ、行ってたらコテンパンだったと思いますけど」
「ほう、風牙の小倅はよほど死にたいと見える」
ギヌロ。って睨みで睾丸縮み上がる!
「いえ! だって、ほら、あんなの見たらそう思いますよ。道場破りに行っていた人達って無段の人たちばかりだったんでしょう?」
「その中には私もいたがな」
と、口を挟んできたのは秋野の現当主、武彦さん。この人も僕を半殺しにする人。
この人は、武に対する姿勢が真っ直ぐすぎて、真摯すぎて、超怖い。
武の道には友も、家族も、何者も不要。ただ要るは相手のみ。相手と対することこそ武芸者の本分。
それで人死が出ようが、実の父親が半身不随になろうが構いやしねぇ、っていうエキセントリックな武術馬鹿。
「え? ハ、ハハハ……」
「ふん……おそらく、お主が
おおう、千住様。話題を変えてくれてサンキューっすわ。
「空手? ……あー、そういえば手刀構えとか教えてましたね」
「ほう? あの梁山泊が弟子を取ったか」
「え?」
千住老の驚きに俺のほうがビックリ。驚くとこ、そこ?
「あそこに誰も向かわせなかったのはそこよ。
それは武術の流派として、道場として欠陥じゃからな」
「なら、今からカチコミますか?」
「……泰斗宗家から禁止令が出ておるのを忘れたか。それを置いてもようやく仕込み始めたばかりを潰されては叶わんわ」
ふーん……そういうことにしておこう。
「さて、話は済んだようだな。北斗、今日は泰斗の打技を一つ見せておこう。
上手く捌かねば、貴様の臓腑はえぐられ細切れと化すぞ」
「え? え?」
そう言って武彦さんが構えた。すうっ、と両腕が阿修羅王のように広がって――――
「泰斗流 千関戟!!」
目にも留まらぬ早さで二本指の貫手が乱れ飛んだ。
「ッ!」
その多彩な軌道に捌ききれず、腕から血が吹き出る。
「風雅の当代は腕一本捨てても防ぎきったぞ」
「い、一緒にしないで下さい」
「この技はただ単に指を鍛えるだけでは習得できん。気を練り通すことで初めて相手の肉を穿つ。
よくよく覚えておくが良い」
「…はい」
こうして僕の体にまた一つ傷ができた。痛い。