俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
昼休み。
痛む腕を気にしながら焼きそばパンを食べる。牛乳パックを取るために力を入れるだけでも痛い。
動くのも億劫だ。
「おい、白浜兼一はいるか?」
ん? あ、古賀先輩だ。
一緒にいるのはラグナロクの技の三人衆って言われてる武田先輩と宇喜田先輩。
やばいな、あの時兼一君と一緒にいたから友達だと思われるんじゃないか? 島山と田中が吊し上げを食ってる間に、僕は逃げようかな。
「あ、お前っ!」
バレた。
「な、なんです、先輩?」
とか言ってる内に囲まれた。島山と田中には、しっしっ、って手で合図。今のうちに逃げとけ。
ワリィとか合掌しつつ教室から出て行く島山と田中。
「お前、白浜と仲いいんだろ? 何処行ったかしらねーか?」
「べ、別に仲なんて良くありません。ただのクラスメイトなだけで。何処行ったかは、ちょっと」
そう言ったら、グラサンの宇喜田先輩に胸ぐらを掴まれ、睨まれる。
僕、細いけど筋肉質だから重いだろうに、中々腕力あるんだな、先輩。投げの宇喜田だっけ?言われるだけはあるのかも。
「へぇ。庇うんだ?」
「知らないものは、知りません」
「ふん」
武田先輩にそう言われても、本当のことだし僕はそうと答えようがない。
突き飛ばされるように解放されたので襟元を治すと、ひょこっと古賀先輩が僕の顔を覗き込んでくる。
「じゃあさ、あのオッパイ妖怪ちゃんのことは知ってるだろう?」
「……」
オッパイ言うな。女子がいるんだぞ。
「何とか言えよ、白浜と一緒にいた金髪オッパイおでこちゃんだよ!」
「さぁ、ちょっと。白浜君ならクラスの風林寺さんといっしょにいることはありますけど」
「なにーい? 二人も彼女いんのか、あいつ! しかも両方おっぱいちゃんって! 武田さん、やっぱアイツぶっ殺しましょう」
「はいはい」
だからオッパイ言うな。早く帰れ。
じとーッって見てたら、なんか突然ポンッと手を打って良いこと思いついた!って顔をする武田先輩。
そして、
「うーん、じゃあさ、君。明日も来るから白浜君足止めしといてくれないかな」
「な?!」
「出来なかったら、まぁ、分かるよね」
僕の肩に手を置き、耳元でそう言った。おい、止めろ。
「じゃあ、宇喜田、古賀。帰るよ」
て、武田先輩が言うのに、何故か宇喜田先輩が動かない。なんか知らんが掃除道具入れ用ロッカーを見てる。穴が開くくらい見てる。スッゲー見てる。
そして――
「そこかーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ブンッ
宇喜田先輩が担ぎ投げたロッカーが中を舞う。
教室の中央、とばっちりを受けないように見てた姫野の丁度上空。それを見て頭を抱かえて逃げる姫野さん。
「姫野!」
グイッと姫野の腕を取って壁際、泉さんの側に押しやった。
ドッ、ガーンッ
ロッカーが酷い音を出して床にぶつかる。間一髪で姫野に怪我はなかったけど、宇喜田先輩……切れる若人じゃねぇんだからさぁ。
「前にここに隠れてたと聞いてね……」
いやいや、カッコつけてるけど、兼一君はいないと思うよ。重さで判るっしょ?
案の定、というか、面白いというか出てきたのは「けんいちハらグナれくにかつよ!!」って幼稚園児が書いたような文字が貼られた藁人形。
シュール過ぎて笑えないけど、武田先輩は笑ってた。勿論、宇喜田先輩は怒ったけど。
そうして、ツボに入ったのか笑いが収まらない武田先輩を、宇喜田先輩が鬱陶しそうに引きずって帰っていったのは、たしかに少し笑えたかな。
◇
「風牙」
下校前、声をかけてきたのは姫野さん。姫野 真琴さん。同じクラスで薙刀部。腰まである黒髪に赤いカチューシャ。
耳長宇宙人こと新島春男が作ってる学ラン(学生ランキング)の美少女部門で何位かは知らないけれど、僕は可愛いなぁと思う。口調はちょっと乱暴な気もするけど。
「姫野さん、なに? なんか用事?」
「あー、あのさ。」
なんとなく言いづらそう。
「?」
「あー、今日さ。助けてくれて、あんがとな」
「大したことじゃないよ。ホントは何もしなくても良かったかも」
「まぁ、そうかもだけどさ。一応」
「ん、わかった」
で、話は終わり。と思ってたんだが、なんかまだ言いたそう。
なんだ?
「……そういやぁ、明日どうすんの?」
「明日?」
「ほら、あの先輩等来るんだろ」
「あー、ま、上手く逃げるよ」
「そっか」
「何? 心配してくれんの?」
「は?違うし。とばっちりは嫌だなと思って」
「そいつはヒデェ」
「て、割に割りと平気そうじゃん」
「いざとなったら適当に嘘言って時間稼げばいいしね」
「ふーん。白浜を売るのかと思ってたぞ」
「そこまでしないよ」
「でも、あいつら不良だし、危なくね?」
「大丈夫。姫野さんって思ったより心配性なんだな」
「あのねー」
怒ったように言う姫野さんをどうしようかと思ってると、視界にこっちを見る泉さんが入った。
ちょうど良い。
「ホント、大丈夫だよ。ほら、泉さんがこっち見てる。一緒に帰るんだろ」
「え、あ、泉ぃ。あんたも言ってやって」
「そうそう、泉さんからも言ってやって。姫野さんは心配し過ぎだって」
「え? え?」
急に振ったからオロオロしてる。
泉さんって見た目通り、引っ込み思案かつ要領の良いタイプじゃなさそうだし、急に振ったらまずかったかも。
「ふふ…ま、何とかするよ。じゃ、また明日」
「あ、おい、こら待て、風牙」
姫野さんが後ろでまだ僕を呼ぶけれど、逃げるように教室を出て階段を駆け下りる。
女の子に心配されるって初めてだし、嬉しい。けど気恥ずかしい。
実際、僕は武田先輩たちを脅威とも何とも思ってないから大丈夫としか言えないけれど、他の皆からしたら僕は目をつけられた可哀想な人なんだろうな。
ま、明日は上手いことやるさ。
◇
翌日。
一時間目が終わってから、次の授業の準備をしてたら白浜君に話しかけられた。
「風牙くん、新島から聞いたんだけど……」
「?」
「ラグナレクの先輩から僕の足止めを命じられたって」
「ああ、そうだね」
「その……ごめん、巻き込んでしまって」
「こんな学校だもの。仕方ないよ」
「……」
肩を竦めると心底済まなそうにしている。
「で、いつまで時間を稼げばいいの?」
「え?」
そんなことを言えば、白浜君は驚いてみせた。
そんなに意外だっただろうか? どうにも僕には正義感というものが無いように他人に思われてるっぽい。まぁ、あまり無いけれど、それでも人並みにはあるつもりなのに。
「いつまでも逃げまわるつもりも無いんでしょう?」
「で、できるだけ長い方がいい、かなー」
てへっと舌を出しても可愛ないぞ。フヌケン君。
少し呆れ、そして笑う。
「……ま、やってみるけどあんま期待しないでよ」
「恩に着るよ! 風牙くん」
「昨日までは屋上にいたんでしょう?」
「え?なんで?」
「新島に聞いた」
「あの悪魔」
「そう言うなよ。あの宇宙人にも君の居場所を黙っておくように言われたんだから。君を心配してるんだろ、良い友だちじゃん」
「風牙くん、騙されてる。アレはそういうんじゃない」
「まぁ、なんでもいいけど。
今日から別の所に行きなよ。昨日まで屋上に行っていたって聞き出したことにするから」
「うん、わかった!」
ぶんぶん!と僕の手を握って上下に揺する白浜君。
僕が屋上から別のところに潜伏場所を移したと彼らに伝えるとは思わないのかなぁ? お人好しだなぁ。
◇
で、昼休み。僕は教室で技の三人衆に囲まれていた。
「あっれー、足止めしといてって言ったよね?」
「すみません」
「あぁ? すみませんで済むなら警察もいらねーし、俺らも不良やってなーんだよ」
「ねー、使えないんだからボコッていいよねー」
「あ、あ、でも、昨日までは屋上でご飯食べてたって言ってました!」
よし、決まった。
脅されてゲロしました!っていう迫真の演技。これなら騙されるだろう。
「屋上?」
「じゃあ、オッパイちゃんもそこに!? 」
おい、古賀先輩よう。オッパイ言うの止めろよ。
「ハハハ~、そうそう、そうやって友達を売って身の安全をはかるのが賢いやり方だよ」
武田先輩が笑う。
「宇喜田、古賀。早速白浜君を探しに行こうじゃないか」
そう言って去っていく技の三人衆。
ぐぬぅ、武田先輩め。最後の一言で僕が悪人みたいじゃあないか。ぷんすこ。
◇
そんなこんなで、それから都合二度ほど同じような事を繰り返したけど白浜君は未だ捕まってない。
どうやら新島のアドバイス通りに先輩たちに情報を流してる結果なのかもしれないけど、そうするとアイツは策士になれるんじゃないか?
凄いなぁ。
僕ん家の武術、風雅流。その流祖は、
それを思えば、僕は宇宙人のことを見習ったほうが良いのかもしれない。
―――てなことを思ってたら昼休み。
やって来た宇喜田先輩に島山と田中が連れてかれた。白浜君の大親友だぁ!って口外してるんだもの。
あれ、あいつらって彼とそんな仲良かったっけ?
「おまえもさ~、いっつも偽情報ばっかで舐めちゃってるよね、ボクらのこと」
ついでに僕も古賀先輩に連れてかれた。
◇
やっばいなー、やっばいなー
「友人を人質に取られちゃー、来るよりあるまい。完璧な作戦だ!!」
「いや、普通ビビって逃げ出すぜ!」
「ははは、まさかーっ。」
……宇喜田先輩の言うとおりだと思います。武田先輩はちょっとおかしい。
まぁ、強者にありがちな思考回路だと言えばそうだけど。
「ぼ、僕ら白浜の友人じゃないです!」
「どっっちかって言うと、いじめてたほうで……」
「何度もいいますけど、僕はただの知り合いですからぁ」
島山と田中が懺悔?告白?をするに合わせて僕も抗議の声を上げておく。
「まー、白浜が来なくてもさー、コイツらぶっ殺していいじゃん。警告になるし。
それに、コイツの偽情報のお陰でどんだけボクがキサラ様に怒られたか」
キサラ? DQNネームか?
「好きにしろ」
「さっすが武田さん」
まずいなぁ。完全に目をつけられちゃったなぁ。
ふー、こうなったら仕方ない。降りかかる火の粉は払わねば。
ばれないように今までやって来たけれど、ここまでか。……はぁ、平穏な学園生活が、うるおいもないまま崩れていく。
「ぐわ~」
「ひぃい、勘弁してくださぃい」
宇喜田先輩に投げられ、襟を取られ、泣きわめく島山と田中。
「骨の二三本で勘弁してやるからさ、恨むなら白浜を恨みなよ」
ニタリと残忍な笑みを浮かべる古賀先輩。
だけどね、先輩。恨むのは先輩のほうだよ、そっちこそ恨むんなら僕じゃなく白浜くんにしてね。
―――と、思った瞬間、
「止めろ!!」
振り返ったその先には
「僕のクラスメートを放せ!!」
息せき切る白浜くんの姿があった。