俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
「てめぇ、白浜! やっと会えたなぁ!!」
退けぃ、ってな感じで宇喜田先輩は田中を突き飛ばす。
わー、ひー、とか言いながら島山と田中は一目散に屋上から逃げていく。
おいおい、白浜君置いて逃げるの? じゃあ、僕も。
僕は、スッタカタッタターと逃げ出した。
んだけど、
「ハッ、お前まで逃すわけ無いじゃん」
ビュッと足が目の前に伸びてきて道を塞ぐ。古賀先輩だ。
おー、凄い。チビなだけあって身軽なんだな。階段の上から飛び降りてきたよ。
島山と田中は一足先に逃げたおかげで、どうも逃げおおせたっぽいなぁ。
「白浜は、武田と宇喜田に任せてボクはお前で遊ぼうっと」
ニタニタと悪い笑みの古賀先輩。
なので、
「他の二人に顎で使われてるんですね、雑魚の掃除しか任されてないなんて」
「……はぁ?」
煽ってやったら、最初呆気に取られてたけどだんだんと言葉の意味を理解したらしく顔が真っ赤になっていった。
煽り耐性無いなぁ、この人。ってか、不良はだいたい皆そうか。
「ぶ、ぶ、……打っ殺す!!!!」
怒りで威力の増した左蹴りが飛んできた。
僕の脇腹、肋骨を折らんとするそれが体に触れた瞬間、僕の体は自動的回転してその力を受け流す。風雅流にも泰斗流にも伝わる体技。【
だが、今回はそれだけじゃない。そのまま腕を回し、体と腕で足首の関節を決める。
「ぐぁ!」
そして纏の回転のままに体を回すことで古賀先輩の姿勢を崩して、そこに
「――風雅流表芸」
右足を軸に後ろ回し蹴りの要領で後ろ首へと一撃を放つ。これが――――
「龍尾衝!!」
「ガハッ!」
ドサッと倒れる古賀先輩。やべっ、ちょっとやり過ぎたかも? と焦った僕は、完全に白目を剥いてる古賀先輩をおんぶして保健室へ。
誰も居ないので、取り敢えずベッドに放り込んで知らんぷりを決め込むことにした。
しかし、それもあれなので、とりあえず屋上に戻るとそこには誰もおらず、驚いたことにフェンスが盛大に壊れてた。。
ま、まさか、誰か落ちたとか? 恐る恐る下を覗くと壊れたフェンスが散らばっているのみ。血の海とかじゃなくてホッとした。
のも束の間。
騒ぎを聞きつけてきたらしい安永先生に見つかり、第一発見者として事情聴取を受ける羽目になった。
ついでに授業を抜けだしていたことについてもお説教を喰らうことになった。
最悪だ。これもラグナレクとか言う不良共のせいだ。恨んでやる。
◇
「風牙くん、実は話があるんだ」
明くる日、登校してくるとすぐに白浜君が声をかけてきた。
「ああ、白浜君、おはよう。昨日は逃げちゃってごめんね」
「そんな! 僕の方こそ、巻き込んじゃって。君にはだいぶ前から迷惑かけて」
「大したことじゃあ無いよ」
見捨てて逃げたことを謝ると、逆に巻き込んだことを謝られる。
ほんと、白浜君はお人好しだ。
「あの時、古賀さんが追っていったけど……」
ギクリ。
「……この通り、大丈夫だったよ。途中で諦めたんでしょ」
「なら良かった。ホントごめん。」
「いいよ。話って、それ?」
「うん」
「そ、白浜君も不良に目をつけられて大変っぽいけど、その、強く生きてね?」
「あ、あはは~」
乾いた笑いと遠い目をした白浜くんはそれ以上僕を疑うようなこともせず、無事僕が古賀さんを保健室のベッド送りにしたのはバレずにすんだ。
◇
そして幾日か経った後。
コソコソと周りを気にして移動している白浜くんを見つけた。何やってるんだろう?
白浜くんといえば、どうやらラグナレクの幹部にボロ負けしたらしい。そんな噂が流れてるけれど、そのせいかもしれない。
「白浜君」
「うひぃ!!」
大声を上げる白浜君にこっちがビックリ。
「な、なんだ風牙くんか……」
ホッと胸を撫で下ろした白浜君。
「聞いたよ、ラグナレクの幹部に凹凹にされたんだって? 大丈夫?」
「ど、どこでそれを!」
驚いて襟元を取ろうとする白浜くんを避ける。そして、質問に答えるため彼の後ろを指さした。
「いよぉ」
「に、新島、まさか君は…」
「勿論、言いふらした。それはもう、学校中に」
くくく、と楽しげに笑う新島の言葉に白浜君愕然&呆然。
それを見た新島は悪どい顔をした。
「うぉおおおおおおい! 白浜兼一はここだぁあ!! まだ怪我が癒えてないぞおおお」
「やめろ! 冗談でもやめてくれ!」
新島がいきなり大声をあげると、焦った白浜君が新島の口を塞ぐ。
よっぽどラグナレクの幹部に見つかるのが嫌なんだな、と思ってたら、その答えが間違ってるとすぐに分かった。
新島の声を聞きつけたらしい、不良三人組がやってきて白浜君に因縁をつける。逃げる白浜君。追う不良達。なるほど、弱り目に祟り目で雑魚に寄ってくるのが嫌だったわけだ。
そんな風に追い駆けっこを始めた白浜くんを見て高笑いの新島。
……同じクラスの姫野さんと泉さんが気持ち悪いものを見たかのように、そそくさと脇を通り抜けていった。
僕は関係ない。僕はコイツとは関係ないからね。僕はそっとその場を離れるべく背を向けて―――
「そういえばよー、フガフガ」
新島に呼びかけられた。フガフガって、それ僕のアダ名?
「変なアダ名をつけるなよ、新島」
「この間、兼一がラグナレク技の三人衆を倒した時な、確かに突きの武田と投げの宇喜田の二人は兼一がぶっ倒した。
でもな、後一人、蹴りの古賀は兼一が倒したんじゃねぇ」
「……」
「蹴りの古賀は誰に倒されたんだろうな?」
「……さぁ? 古賀先輩本人に聞けばいいだろ?」
鋭い。
「残念だけど、その時のショックか覚えてないらしーぜ」
「へぇ、そう」
「誰なんだろうなぁ? 俺の知らない実力者は?」
「……知ってどうすんのさ? 新聞部の取材?」
疑問を口にする。
そうすると新島はPDAを操作してある画面を見せてきた。
「部活は関係ねぇ。俺様の学ランに必要なデータだからよ」
学ラン。学園ランキング。
新島が独自に集めた情報を精査、解析して生み出されたものらしく色々なジャンルのデータがあるって聞いた事がある。美少女ランキングは僕でも知ってるくらい有名。
しかし、そんなものを作ってどうするんだろ? 情報屋でも開くのか? 確かに世渡り上手は情報に敏いからなぁ。
「…そう、でも僕は何も知らないなぁ」
「怪しいねぇ、俺の“くせものセンサー”がビンビン反応してるぜ」
と、新島の指差した頭頂部付近の髪の毛が逆立って角を作る。コイツ、鬼太郎か何かか? あ、宇宙人だったな。耳尖ってるし。
「ま、今はいいや。兼一のほうがおもしれぇことになってるしな」
「……確か、君らは中学からの付き合いなんだろ。なんでまたあんなこと?」
フッ、と笑うと新島は
「いじめられっ子のアイツが、大門を倒して筑波を倒して技の三人衆までぶっ倒した。
今回ボロ負けしたが、ありえねぇ変化だ。この先どうなんのか? このまま潰れるのか、それとも……」
ニヤリと笑う。
「なにより、見てて面白いからに決まってるだろ」
ウヒャハハハ、と狂ったように笑う新島を見て、こんな悪友を持った白浜君のことを少し不憫に思いながら僕は、今度こそ他人を装うべく足早にそこから離れた。