俺がオレ主を史上最強の弟子ケンイチに突っ込むと凄まじくツマラナイ話になる。悲しい 作:ミスドナルドーワッフ
「誰もが見て見ぬふりをするような……」
昼休みの教室。
みんながお弁当を広げる中、新島と白浜君が始めたじゃれあいで新島が白浜くんに聞いた。なんのために武術をやっているのか?、って。
「悪人を片っ端からやっつける―――
そんな子供みたいな事を臆面もなく白浜君は言い切った。クラスの皆はそれに一瞬言葉を失って、そしてそれからそのことを大絶賛した。
島山と田中は拍手して不良をやっつけてくれと言うし、姫野さんはワザワザ嫌いじゃないって告げた。
そして何より、あの新島が
「貴様のようないじめられっ子がどこまでやれるか……俺だけじゃねぇ、学校中が期待してんだよ!!」
言外に白浜君を認めてるって口にした。
白浜君の言葉はそれだけ衝撃的なものだったんだ。そしてそれは僕にとってもそうだった。
「何のため……か」
僕には、彼のように答えられるものがあるんだろうか?
◇
「と、言うわけなんですよ」
よそってもらった御飯を受け取りながら、僕は白浜君が武を歩む理由を話した。
風雅本家での稽古の後の食事時、聞くのは本家の皆さん。
「春姉ちゃんなら『武門に生まれた以上、武の道を歩むが当然です。そこに理由などありません。』とか言いそうだけど」
春姉ちゃん。風雅本家の一番上の姉長女、春香さんはお嫁に出て今本家にはいない。
「俺も正当伝承者と言っても本格的に武の道を歩みだしたのは泰斗の件があってからだし」
一平さんの言う泰斗の件とは、風雅と泰斗を一つにして風泰流の再興に際して風雅本家が中々協力してくれないことに業を煮やした泰斗本家が実力行使に出た時のこと。
それなりに流血沙汰で、一平さんはそれで家を、と言うより家族や友人を守るために風雅の当代として立った。んで、武彦さん(いつも俺を嬉々として半殺しにする秋野家の若当主ね)と戦り合って口伝のみ伝わっていた風泰流の秘奥義を一つ復元させた。
それが契機というわけでもないけど前後して風雅と泰斗は手打ちになったことは、前にも少し話したような気がする。
「その前にしたって成り行きだっただけで、とてもその子ほど大それた目的があったとは言えないな」
「……そうなんですか」
「昔、武彦が言ってた言葉だけど、『武の道は無限の闇』だって。俺もそれは否定しない。
矛を止めるを武というが、そこではどうしても相手に痛みを強いてしまう。それは武というものが戦いから離れることがないからだけれど」
「……」
「血や苦痛、破壊、そういった負のものが戦いと武には付いて回る。「格闘技をやってる者は品行方正であれ」とよく言われるのは、そういうイメージを
―――だからこその目的が、武には意味が、理由が必要なんだ」
少し考える。
武は相手に痛みを強いるというが、気当たり、威勢を使った脅しなら痛くない。否、それは物理的(=身体的)なだけで怯えや竦み精神的圧迫を強いるわけか。
ううむ、なるほど。だから武彦さんは武の本質はそういった闇なのだ、と言い切ったんだろうし、一平さんも否定しないわけか。
「意味……」
「ああ。例えば
「え? そんなことでいいんですか?」
「いいと思う。その、白浜君だっけ? 彼のように気負わなくともな」
そうか、そんな気負わなくてもいいんだ。
考えてみると、僕が武術をやる理由は結局、春香さんと同じく武門に生まれたから、これしかやってないから、これが僕の生活の一部だからとかそんな程度の理由だもの。
白浜君と比べるとなんか劣っているように思えて、なんとも言いようのない気がしてた。
「ただな、覚えておくといい」
「な、なんです?」
一平さんの顔が酷く真剣なものだから、思わずどもってしまった。知らず背筋が伸びた。
「ただ一手。その突きの一突きが、その蹴りの一蹴りが相手を再起不能にするのだということを。
振るうなら、それを覚悟しろ」
うっ、と言葉に詰まる。握っていた拳に視線が落ちる。
そして古賀さんをぶっ倒した事を思い出し、冷や汗が滝のように流れだした。やばい、あれはやばかった。
「それが武の道を歩むということだ」
「―――は、ハイ。肝に銘じます」
冷や汗を流しながら、僕はこれからは気をつけようと心に誓った。
◇
それから何日か経った。
新聞部の特権を利用して新島がバラ撒いている荒涼新聞では相変わらず白浜君の快進撃がトップ記事になっている。
ラグナレク技の三人衆だった突きの武田先輩がおとなしくなった後、威張っていた同じ三年の木本ナントカっていう挑発アフロを瞬殺したり、ラグナレクの辻新之助って奴が引き連れた仲間30人VS白浜君一人で勝利したり、凄い喧嘩三昧をしているらしい。
そんなふうに白浜君にべったりの、ある意味提灯記事を書いている新島が何故か僕にまとわりついてきていた。
「だーからよう、お前も入れてやるから入れよ、な」
「だから、わけわかんない。その新白連合って何?」
彼はしきりに新白連合ってのに入れと言ってくる。
「オレ様と兼一でつくるチーム。未来の最強のグループに君も
「不良グループなんて白浜君が容認するとは思えないけど?」
「ヒャヒャヒャ、何言ってやがる。俺様と兼一は親友だぞ。俺様がツーといえば、兼一はカーとしか言わねぇんだよ」
まぁ、確かに新島と白浜君は互いに言いたい放題やりたい放題の友人、ある意味親友と言って良い関係だものな。
きっと押し切られる形でなし崩し的に新島の思い通りになるのかも知れない。
「怪しい。なんか隠してるだろ? 白浜君のネームバリューは上がってきてるから、きっと人は集まる。わざわざ僕に声かける理由がない」
「チッ、感付かなくていいことを。まぁ、それでこそ俺が見込んだだけはあるけどよ」
新島は、ちょっとだけ忌々しそうに舌打ち。そして僕を持ち上げる。誰かに認められるということはちょっと嬉しい。それが例え新島でも。
これは、きっと人心掌握術の一つなのだろう。さりげなくそういうことをしてくるなんて、やはり新島には見習ったほうがいいところがあるな、と思う。
「突きの武田の脱会リンチに八拳豪が出張るらしい。しかも二人も」
と、真剣な顔で言われても僕には疑問符しか湧かない。
「えぇっと?」
「八拳豪ってのはスゲェ強え。たった三人で50人を無傷でぶっ倒しやがった」
白浜君は一人で30人倒したらしいけど?
「武田の奴は、不良を抜けて左手の怪我を直してボクシングをまた始めた。そんなときにリンチになったらどうなる? またボクシングの道が閉ざされるかも知れねぇ」
「……」
「いくら武田だって八拳豪+手下どもにゃ多勢に無勢。無事で済むわきゃねぇ。当然、兼一は助けようとするだろうな」
「…白浜くんなら、たぶんね」
「だろ。ならオレ様が一肌脱いでやるってのが親友ってもんだろ」
ニヤリと笑い、僕の肩に手を置く新島。しかし、僕はペシッとその手を払う。
「ふーん、なるほど。戦力不足を見越してるわけか。しかし、見かけによらず友情に厚いんだな、君は。でも、僕には関係ない。そうだろ?」
「ああ、そうだな。でもな、聞いちまった。お前は聞いちまったんだ。それでもし、兼一や武田が病院送りになったと知ったら、お前はどう思うかなぁ? 良心が痛まないかなぁ?」
嫌なところを突いてくる。
「ウヒャハハハ、人間だれしも正義の側に居たいもんだぜ。なぁ、風牙」
「……口が上手い」
「蹴りの古賀を瞬殺したお前が入ってくれるなら願ったり叶ったりだ。何でそれを隠してんのかしらねぇが」
古賀先輩を倒したのが僕だと新島は確信してるようだ。
ホント、情報の分析といい、口の上手さといい、コイツは策士だなぁ。
「……こういうのが鬱陶しいから、だよ。仕方ない。今回だけの用心棒としてなら請け負ってやるさ」
不良グループに入るのは嫌なので、そう言って牽制しておく。
「お、マジか! ヒャヒャヒャ、しっかし用心棒とはねぇ。―――いいぜ、なら報酬は如何程がいいんだ?」
「僕の高校生活には潤いが足りない。 女の子でも紹介してくれ」
白浜君には風林寺さんがいて羨ましいと常々思っていたのだ。
潤いが欲しい。
「そのうち黒髪の美人を紹介してやるよ。ほら、携番よこせ」
こうして僕は新島と携帯番号を交換した。これが女の子なら嬉しいのに。