魔法戦記リリカル00 ~世界を越えた超兵の話~(改定前)   作:かねごんマークII

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今回は今後の為に台本形式にならないよう、セリフの前の名前を消してなるべく誰が喋っているか分かりやすいように文を書き換えてみました(内容は変わってません)


第38話 前に進む為には

カイゼルside

 

 

 

管理局上層部の策略により、アレルヤが捕まって早くも数日が経過した。私はあの場から離れたあと、リースとハルートと合流、保護した後で私の屋敷に連れてくることがきた。

今は自室で椅子に座り、管理局のデータベースにアクセスしてアレルヤに関する情報がないか探している。

かれこれ3時間は調べているだろうか、部屋をノックする音が聞こえ、顔を向けるとリースとハルートが部屋に入ってきた。

 

「カイゼル…マイスターが何処にいるか掴めましたか?」

 

「駄目だ…管理局で情報規制がされているみたいでな、最後に捕まった所からの消息が不明だ」

 

「…アレルヤ、大丈夫かな…」

 

暗い表情を浮かべる二人…いや、二人だけではない。機動六課のメンバーも心配しているだろう。

 

(救いだった事は…アレルヤの思惑通り、私、八神部隊長、高町教導官はおとがめ無しになった事か…)

 

上層部がどうして見逃しているのかは知らないが、今は雌伏の時、たえるしかない。

 

「戻ったぜ、カイゼル」

 

思考を現実に戻して部屋の入口をみるとそこにはニールが立っていた。…その手に二枚のプレートを持って。

 

「…どうだった?何か掴めたか?」

 

「いや、俺の情報網で分かったのはリボンズが正式に管理局の所属になっている事が分かったぐらいだな」

 

「あの機体を見たときから分かっていた事だが、やはり上層部が絡んでいるか…ありがとう。…これはなんだ?」

 

ニールから渡された青と紫の二枚のプレートを受けとる。

 

「アレルヤが開発していたデバイスらしい。それを六課が襲撃を受けた際に知人に頼んで回収してもらったんだ」

 

「セラヴィー、ダブルオー…。無事だったんですね」

 

横にいたリースが驚いた表情でプレートを見ていた。

 

「このデバイスを知っているのか?」

 

「ええ…私とマイスター、シャーリーとマリエルさんが協力して作ったデバイスですから…」

 

ほう…そうだったのか。二枚のプレートにはソレスタルビーイングのマークが描かれていた。

 

「(ソレスタルビーイング、か)……よし、決めた」

 

「なにを?」

 

首を傾げるハルートに私はニヤリ、と笑ってみせる。

 

「ん?少しな…君たちにも見せよう。ついてきてくれ」

 

「アレ……見せるのか?」

 

私が無言で頷くとニールはやれやれ…と肩をすくめた。

 

 

 

リースside

 

 

 

カイゼルが転移魔法を使用して私、ハルート、ニールをある場所へと招いた。

 

「わぁ…広〜い」

 

「ここは一体…?」

 

かなりのスペースがある…何処かの倉庫だろうか?しかし、何も無いな…

 

「ここは私の秘密基地さ…二人とも、こっちに来てくれ」

 

カイゼルに言われて倉庫の角にあった階段をカイゼルを先頭に降りる。そして…

 

「うわ…なに?これ…」

 

「これは…艦か?」

 

「ようこそ、お嬢さん方。我等が部隊の旗艦へ」

 

階段を降りきった所で私達の目に写ったのは、白と黒のツートーンカラーで彩られた巨大な戦艦…

 

「プトレマイオス…なのか?」

 

ソレスタルビーイング・チームトレミーの旗艦によく似た艦だったのだから。

 

「そうだ。だがこの艦は俺の持っていたプトレマイオスのデータに…」

 

「俺の持っていたプトレマイオス2のデータをくっつけたヤツなんだぜ?」

 

ニールの言葉に続くように語られた言葉に、後ろを振り返るとライルとアニューが立っていた。ちなみに二人の服装は黒い執務官の制服だ。

 

「アニューとライル…六課の様子はどうだった?」

 

「あまり良くないわ。ヴィヴィオが連れ去られた上に、アレルヤが捕まった事がかなり響いてるみたい」

 

アニューは六課メンバーしかその存在を知らないので六課に残っていて、ライルはアニューのサポートをしている。

 

「それと…ハルート、アムルタートの事なんだけど…」

 

「アムルタートがどうかしたの?」

 

現在、アムルタートは度重なる戦闘で破損が見られたので修理中なのだが…

 

「シャーリーからの伝言なんだけど…もし、今のままアムルタートを使えば間違いなく、アムルタートは壊れて使えなくなるらしいわ」

 

「…え?」

 

ハルートが困惑するなか、アニューは話を続ける。

 

「シャーリーに今のアムルタートの状態をデータで見てもらったの。アムルタートは性能こそ飛び抜けたデバイスだけど、それをもってしても貴女についていけなくなりつつあるみたいなの」

 

「で、でも、アムルタートは私専用の…それに修理すれば…」

 

「貴女は…、私もなんだけどそれぞれコンセプトの違う新型のユニゾンデバイスなのは分かってるよね?」

 

ハルートは頷く。…私は古きベルカのユニゾンデバイスだが…新型との区別は無いと思うのだがな。

 

「シャーリーの考えはこうよ。私はユニゾンしてケルディムの管制人格とライルのサポートをしているから今は専用デバイスなんてない。けれど、ハルートは単体での戦闘を目的に入れられていたから専用デバイスがあった。しかも脳量子波を利用しての反応速度は人間とは比べ物にならない。そして私達の体の特性、魔力が一定のレベルに安定しない、これを考えての結果だけれど…」

 

アニューは悲しげな表情でハルートを見る。そして…、

 

「貴女の魔力と運動能力はその相乗効果もあって常人どころかエースクラスの魔導師をも逸している。もはや従来…いえ、特別なデバイスでも対応が困難なほどに。それはあなた専用に作られたデバイスであったアムルタートも例外じゃない」

 

「そうなの……まあ、この調子で戦えばアムルタートはじきに使えなくなる。これは想定内だった事よ」

 

口調が変わり、ハルートの瞳が赤く輝く。髪の色こそ変わらないがマルートが出てきたのだろう。

 

「想定内…つまり、君には対策があるのか?マルート」

 

「まあね…その為にも、ある場所へ行かなくちゃいけないけど」

 

「ある場所?そりゃ何処だ?」

 

ニールからの問いかけにマルートは腕を組み、心底いやそうな顔でその場所を告げた。

 

「アタシとハルートの始まりの場所、アレルヤに助けられたあの違法研究施設よ」

 

 

ハルートside

 

 

 

特務隊旗艦、プトレマイオスアルター…アレルヤが仲間と共に過ごした艦を元に作られた戦艦にあるデバイスルームで、私はケースに入って修理されているアムルタートを見ていた。

 

〈…マスター、どうかしたのか?〉

 

「ん?…なんでもないよ、アムルタート」

 

壊れてしまうかもしれないと思うとどうしても気持ちが落ち着かなくて、でも相棒には心配されたくなくて、私はあまり表情に出さないように笑った。

 

〈…私は、貴女達についていけてないのだな〉

 

「そんな事はないよ。アムルタートは十分に私達と一緒に戦えてるよ」

 

デバイスに積載されるAIは高性能だ。だからアムルタートも分かっているんだろう。自分の状態が限界に近い事が。

 

〈…マスター、ロード。今の貴女達は他者……いえ、アレルヤとのユニゾンが可能なのか?〉

 

「可能なはずよ。魔力と魔法を制御するアタシが目を覚ましたから」

 

私がユニゾン出来なかった理由にはマルートが関わっていた。マルートがいないと私だけでは魔法と魔力が制御出来ない、だからユニゾンしようとしても相手との調整が上手く出来ずに失敗していた。

 

〈それはなにより…しかし、何故マスターとロードは二人に別れたのだ?〉

 

「さぁね…馬鹿な奴らがヘマをしたのよ、きっとね」

 

現状では私…ハルートは脳量子波を使った単体での近中遠の戦闘、アタシ…マルートは魔法での戦闘と殲滅に役割が別れている。

本来ならこの二つが同時に1人で出来る戦闘用ユニゾンデバイス…それが私という新型ユニゾンデバイスを創るコンセプトだった。

 

「ソレを何故、ユニゾンデバイスで行ったかと言えば、それは人造魔導師や戦闘機人にアタシ達と同じ事をやらせようとしたら肉体のキャパシティを越えてしまうから」

 

「だから、作った後でも調整が出来るユニゾンデバイスが選ばれた」

 

そして…その素体には特殊なDNAが使われた。恐らくそれが…リボンズ・アルマーク。

 

「でも、科学者達は成果のない私達を処分しようとした」

 

「…さっきから思っていたけど、記憶が戻ったの?」

 

「ある程度だけどね」

 

「ふ〜ん。ま、それはさておき…アムルタート、アナタも気づいてるでしょうけど、アナタはこのままじゃ使い物にならなくなるわ」

 

〈やはりな…〉

 

「だからアナタのデータと機能を分割して新しいデバイスに移すわ。それでアナタの負担は軽くなって、再起不能になるような事は無くなるわ」

 

〈それはありがたいが…それではトライアルもデストロイも使えないのでは?〉

 

「そうでもないわ。なんせアナタは完成されたデバイスだけど、その前には試作機があったんだしね」

 

「あの、初耳なんだけど…」

 

「そりゃそうよ。言わなかったし、使う事になるなんて思わなかったもの」

 

それはそうだけど…私の心配は無駄じゃない…

 

「なるべく早くしないと…スカリエッティもリボンズも、いつ動き出すかわからないし」

 

〈了解した。それで、その試作機は何処に有るのだ?〉

 

「今、ソレがある場所に向かっているわ。この艦、次元戦闘艦プトレマイオスアルターでね」

 

 

 

ニールside

 

 

 

プトレマイオスアルターが出せる最大船速でハルートを保護した次元世界に到着した俺たちは違法研究施設に侵入し、マルートを先頭に施設の廊下を歩いていた。

 

「なぁ、本当にアムルタートに代わるデバイスがあるのか?ここは管理局が調べ終えた場所なんだろう?」

 

「その筈だ…だが管理局員では解らない部屋があったのかもしれない」

 

カイゼルもハルートの事もあり調べてはいたが管轄外の事とハルートの事を他に悟られる訳にはいかず、あまり関与出来なかったらしい。

 

「…ん?アニュー、どうかしたのか?」

 

ライルの声で後ろを振り返ると、アニューさんが息を荒くしながらも歩いていた。

 

「ごめん…なんだか、調子が…」

 

「無茶すんな。ほら、俺が抱えてやるから」

 

そう言ってアニューをお姫様抱っこするライル。ん〜…我が弟ながらやるな…

 

「ありがと、ライル…」

 

「気にすんな、お前は俺の女なんだから」

 

「…いい感じの所を邪魔するけど、着いたわよ」

 

マルートの言葉に前を向くとそこには壁に掲げられた案内図があった。

 

「……何も無いが?」

 

「今からやるわ。確か…コレをこうして…」

 

案内図に書かれている部屋のパネルを順番に押していくマルート…

 

「これで、最後…と」

 

パネルを押し終えたマルート。少しすると彼女の目の高さにある部屋のパネルがスライドしてカメラのようなモノが出てきた。

 

「コレは驚いたな。こんな仕掛けがあったとは…」

 

「ま、アタシ達は研究施設の中でもトップシークレットの扱いだったからね…」

 

マルートがカメラに目を合わせるとカメラから赤い光が出て、右から左へと流れた。

 

『サーチ完了。実験体、No.08を確認。ロックを解除、ゲートを開放します』

 

何処からか音声案内が聞こえ、目の前の壁が左右に別れ、新たな通路が現れた。

 

マ「さ、行きましょ。あと少しで到着だから」

 

また歩きだしたマルート。実験体か…なんか、嫌な気分だ。俺が聞いてこんな感情を抱くんだ、本人はもっと嫌な気分だろう。

 

ライル(No.08……08はおそらく開発された番号。だとするならマルートの他に最低でも7体いる事になるな…)

 

薄暗い通路を進んで行くと前の方に明かりが見えた。…あれが目的地か?

 

「…こりゃあ…ヤベぇな」

 

「…外道が…」

 

「…いつ見ても悪趣味としか言い様のないところよね」

 

ひらけた場所に出た俺たちが見たのは、かなりの数のカプセルの中で眠る…様々な容姿の人間だった。

 

「コレは…まさか…!」

 

「アニュー、どうかし…マジかよ…!」

 

ライルの声にアニューさんを見ると彼女の瞳が金色に輝いていた。

 

「共鳴してるのよ。此処に居るのは私達の同胞だしね…先に進みましょ」

 

その場から少し進むと通路を挟んで左右にガラス貼りの部屋が奥へと続いていた。

 

「ここは観察室。数ある実験の中でも成功に近い者はこの部屋に入れられたわ。…もっとも、ここで成果が見られなければ暫くして廃棄されたけどね」

 

「酷い…」

 

「…コレが、こんなことが、人間のやる事かよ…!」

 

マルートの淡々とした説明に何もない部屋を忌々しげに睨むライル。部屋には簡素なベッドくらいしか置かれていなかった。…此処に居たマルートの同胞は、どんな思いで死んでいったんだろうか…

 

「……そろそろ着くわ」

 

通路の突き当たり、この施設の最深部の扉…マルートがその前に立つと頭上から青い光が照らされる。

 

『実験体、No.08を確認。ゲートを開放します』

 

扉が開くと…そこは円形のホールになっていてさらに扉が三つあった。

 

「右は模擬戦室、真ん中は実験室、左がデバイスルームよ…」

 

マルートは迷う事もなくデバイスルームへ入っていく。俺たちもそれに続いて中に入る。

 

「なかなかの設備だな」

 

カイゼルの言う通り、最新の機材なんかが見受けられる。なかなかいい設備を揃えていたようだ。

 

「…ブロック解除……確か、このパスワードは…」

 

マルートはキーボードを叩いてパスワード解除をしているらしい。俺は邪魔をしないように周りを見渡した。

 

「……ん?コレは…写真か?」

 

俺の目に止まったのは写真立てだった。

…珍しいな、ミッドチルダじゃ写真なんかはデータに残すのが主流なんだが…そう思いながら写真立てを手に取る。

 

「幸せ、だったのかね…この時は」

 

写真に写る少年少女はみんな笑顔だ。ハルートも写っている。…だが彼女以外の子達は、恐らくはもう…

 

「その写真、まだあったのね」

 

後ろを振り返るとマルートが俺が持っている写真立てを見つめていた。

 

「この子達は兄弟姉妹か?」

 

「そうよ。ただ違うのはその頃のアタシはまだハルートとは分離してなかった……ほら、瞳が赤と金でしょ?」

 

写真に視線を戻すと…確かに、ハルートの瞳が赤と金だった。

 

「その写真に写ってる子は全員死んでるわ…いや、ハルートがアレルヤに助けてもらうまで生きていた人は居たけどね」

 

マルートが手を差し出してきたので俺は写真を手渡した。マルートは…優しい笑顔で写真立てを撫でた。

 

「この人よ…真ん中の青い髪の綺麗な人」

 

マルートが指差したのは…やんわりと微笑む女性。言うなれば…姉のような感じの女性だ。

 

「この人は…No.01。最初の試作機、実験体で私達の姉のような人だった。…皆を元気づける為にいつも笑顔でさ、兄弟姉妹や同胞が処分された時は皆を元気付ける為に泣かないようにして、夜中にみんなに分からないように泣いてた…」

 

「……優しい姉さんだったんだな」

 

「ええ…自慢の、…姉さん、だったな…」

 

マルートはうつむいていて表情はわからない…だが写真立てには、幾つもの水滴が落ちた。

 

「この人は、自分の最後が近い事が分かってた。実験で危険なロストロギアを体に組み込まれて、命が、削られていたのに…それでも、笑ってた」

 

俺は黙って話を聞く。…辺りに視線を配るとライルやリース、アニューさんやカイゼルもマルートの話を聞いていた。

 

「…この人は、最後の最後で、処分されそうなアタシを助ける為に、わざと…自分に組み込まれたロストロギアを暴走させた」

 

「なるほど…あの時のジンクスやガジェットはそのロストロギアに反応して集まって来たのか」

 

カイゼルとアレルヤがハルートを保護した時か。

あの時はカイゼルが独断で出ていったからなぁ…俺が事件の事を聞いた時には全て終わった後だった。

 

「…その時かな、あの人のロストロギアの発した衝撃で頭を強く打って…そのショックでハルートが記憶を無くして表になって、私は裏で眠ったの………」

 

シン…と、静まる部屋の中でカチン…と何かが音をたてた。

 

「ロックが解除されたわ…出てくるわよ」

 

部屋の壁の一部が横にスライドして、一つの箱が前に出てきた。

 

「それが新たなデバイスなのか?」

 

「そうよ…アムルタートより以前に作れたものだけど、性能については問題ないはずよ」

 

箱を抜き出し、近くの机に置いて蓋を開けると…そこにはひし形の青いクリスタルが入っていた。

 

「綺麗ね…」

 

「それで、コレをどうするんだ?」

 

「…説明すれば長くなるわ。とりあえず艦に戻りましょ…話はそれからよ」

 

みんなが部屋を出ていく時、俺は机に置かれた写真立てを見た。…置いて行ったのは何か思い入れがあったせいか…?

 

「……デュナメス、この写真を記録しといてくれ」

 

〈了解しました、マイスター〉

 

…コレはマルートとハルートの思い出だし、何かあってこの写真が無くなったら悲しいからな…。

 

「さて、行くとしますか」

 

先に行ったカイゼル達に追い付く為に、俺は駆け出した。

 

 

 

アレルヤside

 

 

 

…暗い…捕まって、どれくらいの時間が過ぎたんだろう?僕は椅子に身体を拘束されていた。

 

(また、なのか…)

 

肝心な時に、僕は何も出来ない…幼かったあの時も、四年前のロックオンの時も…

 

(今回も、ヴィヴィオを連れ去られて…)

 

………後悔、してちゃいけないよね…

 

(カイゼル、ライル、みんな…頼むよ…)

 

友と仲間が来てくれる事を信じて、僕は少しでも体力を持たせるために、睡魔に身をまかせた。




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