【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
「遊星様。マージョリー・アトラスの身柄確保の件ですが、先程のデュエルでのクラッシュで負傷しているとの事です。命に別状は無いようですが、打ち所が良くなかったのか、意識が無いとの事です」
「そうか、分かった。治療が済み次第、此方へと身柄を移すよう話を付けて置く。それまでは引き続き監視に当たれ」
「はっ!」
流石に雪乃の新たなるエース、ダーク・ガイアの一撃必殺攻撃を食らって無事では済まなかったか、話を付けるのは後になりそうだな。
雪乃とのデュエルで敗北したマージョリー・アトラスの保護を命じたセキュリティ担当者からの報告を受け、俺は一先ずこの件を後回しにし、その他の懸案を考える事にした。
これがどう言う事か、詳しく言わずとも分かるだろう。
このシティにおいて、ジャック達デュエリストスターや、シュドナイさん達や徳松さんの様な存在を掘り出すのは、そういった存在をランサーズにスカウトするのは厳しそうだ、と言う事だ。
無論、敗北したデュエリストの中にそんな存在がいない訳じゃ無い。
たった今負傷したという報告を受けたマージョリー・アトラスは勿論だが、他にも実際に対戦した、或いは観客の立場として見ていたランサーズメンバーから、有望だと報告を受けたデュエリストもいる。
それが、この2人。
使用デッキ:『ドラグニティ』
『ドラグニティナイト』シンクロモンスターや『ドラグニティアームズ』モンスターを展開、その効果を用いたハイビートを主戦略としている。その展開力で対戦相手を圧倒、フレンドシップカップで、ランサーズ関係者以外で唯一2回戦進出を決めた。そのプレイングはランサーズメンバーにも見劣りしない。
葛西
使用デッキ:『スクラップ』
葛西月行の双子の弟。各種『スクラップ』カードが持つ蘇生やサルベージ効果を駆使しての粘り強い展開、其処からシンクロ召喚されるモンスターの除去効果で相手をじわじわと追い詰める事を主戦略としている。フレンドシップカップ1回戦ではその持久力を発揮しきれずに敗北するも、その粘り強さは兄にも引けを取らない。
…その、何だ、色々突っ込みたい所はあるだろう。
名前を聞いてピンと来た人もいるだろうが、初代遊戯王こと『遊戯王デュエルモンスターズ』の外伝作品である『遊戯王R』に登場した、ペガサス・J・クロフォードの養子『ペガサスミニオン』の一角である天馬兄弟と顔がそっくりなんだ、2人揃って。
まあ顔が似ているだけでデッキは全くの別物だが、そのデュエルタクティクスは相当な物だそうだ。
ある程度落ち着いたら、スカウトに動いても良いかも知れないな。
その他のデュエリスト?まあちょっとな…
と言っても、どの参加者も各種アドバンテージ、特にアニメとかだと軽視されがちな墓地アドバンテージ(一部では除外アドバンテージも)を重要視していたり、単なるパワー一辺倒では無く効果を駆使した緻密さも見受けられるなど、決して弱くは無い。
一般的なデュエリストのレベルで言えば、俺達の次元よりも上だ。
だが、シンクロ主軸デッキと言えばソリティア、という環境で育って来た俺から見れば何とも物足りない展開しか出来ないデュエリストが多い。
徳松さんの対戦相手だったトニーの様に後攻1ターン目でシンクロ召喚出来るならまだ良い方、大半は素早い展開について行けず、どんなデッキなのか分からずじまいのまま敗れた、というパターンだ。
とは言えこれは、デュエルタクティクス云々でバッサリ斬れるケースでは無い。
今更だが、このシティでは99%の富を占める富裕層である1%のトップスと、残り1%の富を巡って死力を尽くす日々を送る貧困層である99%のコモンズ、という格差が大きな問題と化している。
その格差は経済面、引いては保有できるカードプールにも現れていて、例を挙げれば、
・トップスのデッキはレアリティの高い物ばかり、一方コモンズのデッキは(ごく一部を除いて)ノーマルカードしか無い
・コモンズのデュエリストは基本的にエースモンスターを複数体用意できない
といった感じであり、それがこの格差の続いていた原因だと言われている(徳松さん及びジャック達の活躍でやや薄れてきた感はあるが)。
そんな中でも必死に食らいつこうとしていたデュエリストもいる、そういった存在はカードプールの充実によって化けるかも知れない。
時間はかかるかもしれないが、そういった面にも手を加えて行かないとな。
「遊星様。マージョリー・アトラスの治療、終了したとの事です」
「分かった、報告ありがとう。では、案内を頼む」
「はっ!」
さて、こっちの用件に移るとしよう。
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「ん…?此処は…」
「気が付いたか。流石はアカデミアの関係者、怪我からの立ち直りは早いな」
「っ!(ズキィ!)いたっ…!」
『姐さん、警戒するのは分かるが少し落ち着け。まだ怪我が癒えきってねぇんだから』
怪我の治療が終わったマージョリーを俺が滞在している部屋へ運んでもらい、意識が戻るの見計らって声を掛けたら、いきなり警戒するかの様に身構えられた。
この様子だと、彼女がアカデミアの関係者だと見て間違いは無いだろう。
そんな彼女が此処にいるのは、スパイとしての任務か、或いは…
「アンタ、不動遊星ね。シティで『創世主』だの『伝説の英雄』だのと祭り上げられていた。それならアカデミアの事を知っていても不思議じゃ無いわね」
「察しが良いな、なら話は早い。お前には何個か問わねばならない事がある。偽りなく答えて貰おう」
「アンタもアカデミアがどういう組織か知っている筈よ、そう言われた所ではいそうですかと応じると思っているの?」
『やめとけ姐さん、コイツ相手にどんな抵抗も無駄だ。俺もさっき抵抗を試みたが、コイツが連れているカードの精霊にあっさり抑え込まれちまった。今でもアイツのアイアンクローの傷が、あ痛たた…!』
アカデミア関係者相手に舐められるわけには行かないと高圧的に対応する俺、その俺に反発する様に返した彼女だが、ついていたカードの精霊がそれを諌めた。
それもその筈、彼女の治療がひと段落したタイミングで入って来た俺に対し、お偉いさんを吹っ飛ばせば混乱が生じて隙が生まれるだろうと思ったのだろうか突進して来たソイツ、だがそれを見越していたユベルが足払いで態勢を崩しつつのアイアンクローを決めた事で、その目論見は呆気なく崩れたからな。
尚も『俺様や姐さんに何をする気だ!放しやがれ!』と暴れるソイツに対し『レベル1桁如きの君が、レベル2桁のボクに命令なんて千年早いんだよ!』とユベルが自らの効果で痛めつけた事で折れ、抵抗を止めてくれた。
そんなソイツの様子に彼女も観念したのか、
「フォーゼが其処まで言うなんて…
分かったわ。答えられる範囲でなら」
抵抗する様な構えを解き、応じてくれた。
「そうか。ならば1つ目、といってもこれは確認だが、お前はアカデミアだな?」
「ええ、そうよ。でも先頭に『元』が付くけど」
ん?『元』?
「元、とは?もしやデニス・マックフィールドの様にアカデミアの方針に反感を覚えて離反した、という事か?」
「まあそんな感じかしらね。アカデミアの方針も、それに嬉々として、或いは黙々と従う連中にも嫌気が差してね」
口振りからして何だか直情的だなと思った。
こういうクチは物語が進むと実はスパイでした、というパターンが多いが、感じる気配からして嘘では無さそうだ、コイツは信用しても良さそうだ。
「では2つ目。お前が今持っている『メタルフォーゼ』のデッキだが、それはアカデミアにおいて開発されていた物だという情報を得ている。それを何処で入手した?」
「何処でと言われても、ね…
詳しくはフォーゼに聞いて。私に聞かれても、或る日突然持っていました、としか言えないわ」
『いや俺に振られても困るんだが!俺だって気付いたら姐さんの下に向かっていた、としか言えねぇし!ただ言うなれば、運命って奴か?』
「かも知れないわね。私がアカデミアを出て行ったのも、アンタとなら何処へでも行ける、と何となく思えたからだし」
何だそれは、真面目に答えろ、と普通なら思うだろうが、似た様なシーンに何度となく遭遇している俺はそれを信じても良いと判断した。
虹光の宣告者、スターダスト・ドラゴンやその進化形態、ホープシリーズやZW、そしてオッドアイズ達、そういったカード達との出会いを重ねて来た俺だから、彼女達の出会いを他人事とは思えなかった。
「3つ目。アカデミアに関する重要な情報を、知っている限り教えて貰う」
「重要情報ねぇ…
といっても私はアカデミアでも下っ端だったし、知っている事でアンタが欲しそうな事は無いわ。今だってこのデッキがアカデミアで開発されていた物だった事、初めて知ったし」
まあこの辺りは得られればOK程度にしか思っていなかったし、仕方ないか。
でも、最近知ったばっかりだと考えられるペンデュラム召喚を駆使するテーマデッキで、あそこまで回せる程の技量がありながらアカデミアにおいて下っ端だと?
今までその技量が評価されなかったのか、或いはデッキとの相性が悪くて下っ端に甘んじていたのか…
まあそれは後で判断しよう。
「4つ目。この写真の男に見覚えはあるか?」
「ん?誰よこの男?」
いや、知らないでこのフレンドシップカップに出ていたのかよ、というか何日このシティに滞在しているんだ、ジャックを映像とかで見る機会はこのシティにおいて大いにあった筈なんだが。
「ジャック・アトラス。このシティにおけるデュエリストスターの一角だ」
「アトラス…
成る程、私と同じファミリーネームだから、気になったと言う訳ね?」
「ああ。4つの次元には其々、ドッペルゲンガーと言える位そっくりな存在がいるというケースもある、別々の次元に飛んでいった家族がいても不思議じゃ無い」
というか、アカデミアのトップである赤馬零王がそうだしな。
「へぇ。でも私、この男に見覚えは無いわ」
「そうか。質問は以上だ」
これ以上は有用な情報は無さそうだと判断した俺は、質問を切り上げた。
といっても、彼女への用はまだまだあるんだが。
「それで、これは要望だが、
今話で第6章は終了、次回から第7章となります。
予定では第7章でシンクロ次元編は終了し、エクシーズ次元編に突入します。
それとは別件ですが、活動報告にてとある発表があります。
宜しければそちらにも。