【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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今話で、7章及びシンクロ次元編は終了となります。


100話_自由の翼

「これは、どういう、事だ…!」

 

所変わって融合次元のアカデミア、その一室にて零王は、部下から寄せられる様々な報告に、愕然とした様子で耳を傾けていた。

ランサーズがシンクロ次元に潜入したという報告、その中に自らの計画『アークエリア・プロジェクト』の重要なピースと言える柚子とセレナが加わっているであろうと見定めていた零王は、彼女達を確保すべく数千にも及ぶ部隊を結成、総指揮官にアカデミアでも指折りの実力を持ったユーリを据えてシンクロ次元へと派遣、それとは別に遊矢の抹殺の為として自らの懐刀と言って良い近衛部隊『ホルアクティ・フォース』のリーダーであるキサラを同じく派遣する等、万全の体制を敷いた。

ペンデュラム召喚という概念の登場や、それによって今までそれ程明るみに出ていなかった遊矢の実力の発覚、更には零児と遊矢をトップとしたランサーズの結成等、これまで歯牙にもかけていなかったスタンダード次元の脅威が急激に増し、そのランサーズとシンクロ次元の治安を司るセキュリティが手を組んだという情報もあれど、それでもアカデミアが誇るデュエル戦士、それが数千にも及ぶ部隊の敵では無い、仮に誰かが敗北しそうになっても援軍がリアルファイトをしたり、モンスターを実体化させての破壊工作や奇襲をしたりすれば良い、と当初アカデミア関係者の誰もが成功を疑っていなかった。

デュエル戦士達が用いるカテゴリを『古代の機械』カテゴリデッキにある程度統一し、味方同士で融合素材を融通し合う事で融合モンスターを無駄なく並べ、その融合モンスター達が持つ攻撃時に特定のカードの発動・効果を封じる効果で敵の抵抗を叩き潰す、そんな集団戦を第1に考えられた数の暴力によって、エクシーズ次元での侵攻を難なく進めて来たのだ、今回もまたその様に進めれば相手が誰であろうと問題にならないと考えても無理は無かった。

 

だがその結果はまるで違っていた。

侵攻が始まるや否や、ちょっとした武力衝突(デュエル)を他所に、各地でデュエル戦士達の謀反が多発、突如としてデュエル戦士が仲間だった筈の存在に立ちはだかり、モンスターを実体化させて襲撃したり、或いはデュエルを挑んだりして裏切り、それが1人、また1人と増え、1部隊全てが翻意を見せるケースも発生、驚きや戸惑いが広がる中で容赦なく襲われた末に無抵抗のままカード化されてしまう。

生き残った戦士が気持ちを切り替え、その裏切り者を粛清していきはしたが、ちょっと前までそんな素振りを微塵も見せていなかった存在すらも裏切るという前代未聞の事態に、ひょっとしたら身の回りにいる大事な仲間も裏切るのではないかという疑心暗鬼が広がってしまい、部隊の戦力も士気もがた落ちとなって行った、それら全てが遊矢の発案で実行されたアンドバリの指輪作戦の成果と言えるのだから、正に遊矢の思惑通りと言えよう。

一方の遊矢抹殺を命ぜられたキサラはターゲットである遊矢にデュエルを挑み、互角と言って良い勝負を繰り広げこそしたが、指揮官の任を放り出したユーリの横やりで中断、そのユーリも遊矢とのデュエルの末に奇妙な言葉を残し、遊矢(ZEXALEX)の攻撃によって消息を絶ってしまう。

結局今回の作戦は何の成果も残す事無く失敗、この為に継ぎ込んだ戦力が全滅した事でアカデミアが保有していた戦力の数割が消え去ってしまい、頼みの綱の1人であるユーリも失ってしまった。

ホルアクティ・フォースこそ健在だが、リーダーであるキサラですら遊矢を抹殺できるかどうかは賭け、それも五分五分の正に博打物と、いざという時まで温存せざるを得なくなってしまう。

そして、そんな都合の悪い事はえてして連鎖する(と感じる)物だ。

 

「申し上げます!ランサーズが我々アカデミアに総攻撃を仕掛けると言う情報が入って来ました!今回の作戦失敗による動揺を突いて一気に畳みかける目論見と見られます!」

「申し上げます!アカデミア敷地内の数か所で爆発らしき現象が確認されました!現場の状況から何者かによる故意の爆破と思われ、各地で混乱が広がっています!」

「何?まさか、ランサーズがこのアカデミア内にスパイでも送り込んでいたと言うのか…!?

もしや、開発していた6つのデッキのうち5つが姿を消したのも、そいつらの仕業か…!?」

 

続々と寄せられる、アカデミアの地盤を揺るがしている情報の数々、それを聞いていくうちに零王の表情は一層、焦りの色が浮かんでいく。

 

「キサラ!いるか、キサラ!?」

『はっ!どの様な命でしょう、プロフェッサー?』

「今すぐにホルアクティ・フォースの面々を、手の空いているデュエル戦士と共に、エクシーズ次元から帰還させろ!今すぐにだ!」

『宜しいのでありますか?まだエクシーズ次元には抵抗するデュエリストも少なからず存在するであります、特に『奴』もまだ健在の中「そんな物は後回しだ!今更反攻する力の無いエクシーズ次元に拘って、折角手に入れた『ピース』達を奪還されては意味が無い!そちらの首脳陣やあの姉妹を置きさえすれば、そうそう悪い事態は起きまい!」はっ!直ぐに帰還命令を発令するであります!少々お待ちを!』

 

そうなればこれ以上状況が悪化するのを防ぐために体勢を立て直そうと考えるのが人間として普通の判断、零王もまたキサラを通じて侵攻しているエクシーズ次元のデュエル戦士達を帰還させる命令を下したが、その口調が荒れているのも、彼の焦りを物語っているのかも知れない。

 

「零児、ランサーズ、そして榊遊矢…!

親子そろって我が計画の前に立ちはだかるとは…!」

 

------------

 

フレンドシップカップの開催中、アカデミアがこのシティに侵略を仕掛け、俺達ランサーズがデュエルチェイサー達と共に撃退したあの戦いから数日が経った。

その間に、気絶していた素良は意識を取り戻し、アカデミアの一員であった事、俺達の次元にはスパイとして潜入していた事を改めて打ち明け、今回の件も含めて謝罪して来た。

 

「僕はアカデミアの一員としてエクシーズ次元の侵略に参加し、数えきれない程の人達の命を、笑顔を奪ってきました。師匠と知り合った時にもスタンダードへのスパイとして情報を流していましたし、今回の件も覚えていないとはいえ、師匠に敵意を向けました。今更謝った所で許して貰えるとは思っていません。今更師匠達の様なエンタメデュエリストになれるとも思えません…

 

それでも、それでも僕は、罪を償いたい!皆を、今此処で笑顔に満ち溢れている人達を守りたい!僕も、師匠が掲げる理想の為にこの身を捧げたいんです!」

「良くぞ言った、素良。今お前が言った様に、お前が、アカデミアが犯した罪は並大抵の努力で償える程軽くは無い。お前達を一生恨む存在も少なからずいるだろう。だがお前なら、それをも乗り越えられると信じている。お前は、俺の自慢の弟子なのだからな!」

「はい、師匠!」

 

その謝罪の場で、俺達ランサーズが掲げる理念を何処かから聞いたのか、それに協力する姿勢を、ランサーズに加入する意思を見せたので、零児達と相談して素良をランサーズに加える事にした。

元々素良は舞網チャンピオンシップの際にメンバー候補として挙げていた程の実力者だ、加入に前向きとあらば、俺達の理念に賛同してくれるなら反対する理由は無い、俺達が敵対するアカデミアに所属していた、という存在は既にセレナと一美、そしてマージョリーがいるしな。

と、後はその素良やマージョリーを含めた6人が正式にランサーズ加入を果たした。

各メンバーの所属だが、素良とマージョリー、そしてフレンドシップカップの参加者だった葛西月行は、V-CRANに。

徳松さんは、行方不明となったユートの代理として第3部隊の副隊長に。

月行の弟で、同じくフレンドシップカップの参加者だった葛西夜行は、行方不明となったユーゴの代わりに第1部隊に。

そして、フォースハウンドに所属する事にしたセルゲイだが、彼の加入にはシンクロ次元出身である徳松さんや葛西兄弟等から異論が出た。

が「彼もまた我らが掲げる理想に賛同してくれた同士の1人だ。過去に彼が犯した罪は知っているし、それを踏まえて、彼が信用ならないという気持ちも分かる。もし彼が謀反を企てたのであれば、その時は私が責を負う!」という俺の説得に、一先ずは納得してくれた。

そのセルゲイは今、既にアカデミアに潜入している他のメンバーに合流していて、今此処にはいない。

…まあ、他にも色んな出来事があったんだが、それはまたの機会に話そう。

今日は、ランサーズの最高指揮官となって2回目の記者会見だ。

 

「皆さん、本日はお忙しい中この会見の場にお集まりいただき、或いは画面の先で拝聴していただき、誠にありがとうございます。さて、我々ランサーズがこの世界へと降り立って1ヶ月近くが経過し、アカデミアによる侵略と、それに対抗するべく結成されたランサーズについての発表、そしてフレンドシップカップの開催、様々な出来事がありました。既に情報を手にしている方も少なからずおられるでしょうが、その間にこのシティにて、アカデミアが送り込んだであろう大軍が侵略して来た事もありましたが、それはランサーズと、デュエルチェイサー達の活躍によって鎮圧に成功しました。我らが睨みを利かせている限り、このシティをアカデミアの好きにはさせない、その意思を、アカデミアに示す結果となったのです。皆さん、心配には及びません。アカデミアという存在は確かに脅威ではありますが、ランサーズとデュエルチェイサーが共に立ち向かい、トップスとコモンズの皆さんが共に我らを支えて頂ければ、決して勝てない相手では無いのです。

 

今日、この時より、我らの意思を、我らの強さを、そして、我らのミームを改めてアカデミアに見せ付ける時です!今日より、我らはアカデミアを討つ!」

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『遊星!遊星!遊星!遊星!』

『ランサーズ!ランサーズ!』

 

そう、今日の記者会見は、アカデミアによる侵略に対して裁きを下す、その意思を表明する会見だ。

といっても、いきなりランサーズ総出で融合次元に殴り込むわけでは無い、向こうにはリンや瑠璃が未だに囚われている、アカデミアにおいて彼女達は重要な存在であるとはいえ、下手に動けば危険な目に遭うかも知れない以上、派手な動きは避けるべきだ。

と言っても向こうの足並みが乱れた今こそがアカデミアに入り込む好機でもある、其処でまずは、既に潜入しているフォースハウンドを通じて1部隊を送り込み、2人を救出させる。

その部隊には瑠璃の兄である隼が所属している第4部隊を選んだ、当初よりアカデミアへの殴り込みを望んでいた隼に「お前が待ちに待った、アカデミアへの殴り込みだ。全力で行って来い!」と檄を飛ばすと、隼は何時もの様なそっけない返事ながらも「任せろ!」と言わんばかりの表情を見せてくれた。

一方俺とARC-V、他3つの部隊は、未だ残党狩りと称した侵略を続けているエクシーズ次元に潜入し、アカデミア軍を討伐、生き残った人達を救い出す。

今アカデミアは予想外な大打撃のショックを和らげようと、本拠の体勢を万全にしようとしてエクシーズ次元側が手薄になっている筈、其処にこの2正面作戦を繰り広げれば向こうが大混乱に陥るのは確実だ。

尤も、その間隙をぬって他の次元へ攻め込む事も考えられなくはない、防衛体制を整えた俺達の次元はともかく、まだちょっと足並みに不安があるこのシンクロ次元に攻め込まれるとなると、ランサーズがいなくなるという事態は避けたい。

そこで零児達V-CRANには此処で待機、アカデミアの侵略に備えて貰う事にした。

 

向こうがもたついている今こそ動き、リンと瑠璃を救出する、それが成し遂げられた後、その時こそ、決戦の時だ!

 

「我らの誇りを、我らのデュエルを、我らのミームを胸に、ランサーズは必ずやアカデミアの薄汚い野望を打ち砕く!

 

それでは、行ってまいります!」

『行ってらっしゃいませ!』




次回より、予告していた7.5章『幕間のコラボ祭』を開催します!

詳細は活動報告にて!
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