【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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104話_動き出す運命

「此処が今、俺達の本拠としている場所だ。狭いだろうが、入ってくれ」

「ささ、入るであります」

 

晩年の姿であるカイトとオービタル7と再会した俺達は、そのカイトの案内で、正に瓦礫の下に建てられている隠れ家的な場所へとやって来た。

そんなカイトの姿、前世(遊馬だった頃)で最後に会った時は、初めて会った頃から頭髪が白髪だらけになり、顔にも至る所にしわが出来ているがそれでも体格とかが維持されていたのもあって、一目見ればカイトだと分かる様な風貌ではあり、たった今再会した彼の姿も、少しやつれた様に見える以外はそのままであった。

カイトも俺達と同じく転生して来たのも驚きだが、まさか俺より60年以上も早く転生して来たとはな。

 

「では、俺の事を遊馬からしか聞いていない奴も多いだろうから自己紹介だ。俺は天城カイト、前世でコイツとは色々な場面でしのぎを削り合った間柄だ」

「オイラはそのカイト様の最高傑作こと、オービタル7であります!オイラも前世で鬼畜トンマとは色々やりあった仲であります!」

「オービタル、余り調子に乗るな」

「か、カシコマリぃ!」

 

そしてオービタル7も転生(?)して来たとはな、何でロボットが転生出来るんだ…?

尚、鬼畜トンマというのは、俺のえげつない位のデュエルタクティクスを恐れたオービタル7が、畏怖と悪口を込めて付けた俺のニックネームだ。

あ、一応だがカイトには柚子達に俺の素性を明かしている事は知らせている、故に此処に同席して貰い、自己紹介しているという訳だ。

 

「鬼畜トンマって…

ランサーズ精鋭部隊ARC-Vメンバーの、柊柚子です」

「ARC-Vメンバー、権現坂昇です。まさかシンクロ次元に続き、エクシーズ次元にも遊矢の嘗ての仲間がいたとは、この男権現坂、感動の極みです!」

「お前はまたそれかよ、あ、同じくARC-Vメンバー、冴木当麻です!」

「ARC-Vメンバー、上村一行だァ。しかし本当驚きだぜェ」

「ARC-Vメンバー、エレン・アヴェニールだ!宜しく、カイトじっちゃん!」

「一応俺も。この世界では榊遊矢という名前だ。私兵部隊ランサーズの最高指揮官及びARC-V隊長をしている」

「む?榊?」

 

カイト側の自己紹介に続いて自己紹介を始めた俺達、そんな中この世界での名前を名乗った俺に、というかその名字にカイトが反応を示した。

まさか、ひょっとして…?

 

「遊馬、いや遊矢と呼ぶべきか。もしかしてこの世界でのお前の父親は榊遊勝か?」

「そうだけど、まさかカイト、父さんと会った事があるのか?」

「会ったも何も、アカデミアによる侵略を知らせに来たのはその榊遊勝だ。それにしても、まさかお前が榊遊勝の息子として転生して来て、今こうして次元を超えて再会するとは、運命とは分からないな…」

 

その次にカイトの口から出た言葉に、今度は俺の方が驚いた。

結構前に零児から聞いた話では、3年前のあの日に、零児から4つの次元の事やアカデミアによる侵略の事を聞き、それを止めるべく赤馬零王に直談判しようとLDSにある装置を無断で使い、次元転送したとの事だったが、融合次元じゃなくてエクシーズ次元に来ていたのか。

 

「この世界に来た榊遊勝は、アカデミアによる侵略の脅威と、それにデュエルの真理と笑顔を忘れる事無く立ち向かう事の大切さを伝え歩いた。俺も前世ではお前達と共にバリアン世界の連中と戦った過去があるし、融合召喚も少しは覚えがある、一緒に伝え歩き、融合召喚対策として『融合解除』をデッキに入れて置く様にとアドバイスもした。だがそれを十分に伝えるには時間が無く、アカデミアの侵略は始まった。そして時を同じくして、榊遊勝の姿も忽然と消えていた、という訳だ…」

 

もしかしたら再会出来るかも知れない、という俺の淡い期待は、その後のカイトの言葉で霧散した。

またも行方知れずという訳か、どうした物か…

 

「しかし、これは面倒な事態になったでありますな、カイト様。鬼畜トンマが指揮しているというランサーズが援護に来たとなれば心強いでありますが、それを指揮している鬼畜トンマの父親が榊遊勝、となると…」

「そうだな、オービタル。この非常事態だ、何かしら大事が起こったとしてもおかしくも何ともない、俺は榊遊勝にその大事が起こったが故に失踪したと思っているが、生き残った連中の殆どは、榊遊勝の失踪を『尻尾まいて逃げた』として『耳あたりの良い言葉を言いながら、いざ戦いが始まるという時に逃げ出した臆病者』と彼を見ている。その息子であるお前が率いるランサーズの援護を素直に受け入れるかどうかが問題だ。俺の一声があれば従ってはくれるだろうが、それでも不満は燻るだろう…」

「全くであります、これだからオイラ、脳みそツルツルなガキが嫌いであります!物事の裏が読めない、そんなんでこの非常事態を乗り切れると思っているんでありますかねぇ…」

 

っ、この次元でも父さんは『臆病者』扱いか…!

まああの時の父さんの対応はむしろ『蛮勇』、少しばかり『臆病』になるべきではあったが、それでも『臆病者』と一方的なレッテルを貼られるのは我慢ならないな…!

 

「兎も角、助かる。俺達も腕の立つデュエリストを集め、アカデミアに徹底して抗戦して来たが、今やそれも数える位になってしまった…

そして今も尚、アカデミアによる侵略の魔の手が引く事は無い、此処までかと考えた事も一度や二度では無かったからな…」

「カイト様…」

 

ともかく、その対応は後にしよう。

俺達が来た事に感謝の言葉を言うカイト、だがその口調も表情も、今まで見た中で最高クラスに暗い、余程アカデミアとの戦いの中で疲弊し、大事な存在を亡くして来たという事だろうか…

ん?電話だ。

 

「悪い、カイト。どうやらメンバーから報告が来たみたいだ。少し席を空ける」

 

カイトにそう断りを入れ、外に出つつ電話に出る、発信元は月影か。

 

「もしもし、俺だ。月影、アカデミアの方で何かあったのか?」

『隊長殿、先日フォースハウンドに加入したセルゲイ殿から、驚きの報告が入って来たでござる。

 

先の『アンドバリの指輪』作戦でセルゲイ殿の支配下に置き、結果としてカード化されたアカデミア兵の生存反応を、アカデミアのとある施設内でキャッチしたとの事でござる』

「な、」

 

何!?カード化=魂やら身体やらがカードに封印されるのではないのか!?

 

「何だって、それは本当なのか?」

『どうも本当の様でござる。それとそのアカデミア兵の視覚情報をジャックした所、他にカード化された人達の姿も見つけたとの事でござる。その中には嘗てLDS関係者が行方不明になった件の被害者らしき姿も確認されたそうでござる』

「そうか」

 

然しながら、これは思わぬ僥倖だな。

アカデミア軍による侵略の被害を最小限に食い止めるだけでなく、アカデミア全体に疑心暗鬼を植え付けて攻勢を挫き、他次元への侵略の魔の手を引っ込めさせる事で今後の『計画』の足掛かりにしようと実行したアンドバリの指輪作戦、だがそれによって支配下に置いたアカデミア兵を含め、カード化された人達が同じ施設内に収容されているとなれば…!

 

『それと隊長殿、此処からはセルゲイ殿の提案でござる。

 

そちらからの一声さえあれば、今一度支配下に置いたアカデミア兵を操り、収容された人達を救助させる事、それを阻止するであろう敵の妨害を防ぐ事も出来る、その準備は既に整えてあるが、どうだろうか、との事でござる』

 

おぉ流石はセルゲイ、仕事が早いな。

当初彼をランサーズに加入させる事、無理矢理制御する様な措置無しで従えようとした事に反対や慎重な声が強かったが、やはり彼を加えて良かったな、ならば、

 

「そしたら月影、セルゲイに伝言を頼む。

 

その様にするが良い、アカデミアに囚われた人達を救い出すが良い、と」

『御意!』

 

それに応えるのが最高指揮官としての役目だ。

そう月影に伝えて電話を切り、カイト達がいる隠れ家に戻ろうとした時、俺の視界が人影を捉えた。

生存者か、或いはアカデミアの兵士か、どちらにせよ、此方から出向く必要があるな。

 

「おーい、其処の人。こんな所でどうしたんだ?」

「ん?僕の事を言っているのか?」

『遊矢、そんな不用意に近づいて大丈夫か?周りに誰かが伏兵として忍んでいるかも分からない』

『遊矢なら大丈夫だよ、問題無い。何があっても対処出来るよう覇王の力をスタンバイさせているみたいだし』

 

後ろでどっかのネタの様なやり取りをしている2人は放って置こう。

それにしてもこの声、どっかで聞いたことある様な…?

 

「いや、アンタを置いて誰がいるんだよ。まあそれは良いや。俺は榊遊矢、ランサーズという私兵部隊の最高指揮官だ」

「榊…!?

まさか君はあの榊遊勝の息子か!?」

『あらら、これは地雷を踏んじゃったみたいだね…』

 

何処かで聞いた事のある声音に引っ掛かる物を覚えながらも構わず尋ねたが、俺が名乗ったその時、俺の名字にソイツは食いついて来た。

カイトの時もそうだったが、此処でも父さんは広く知られているのが分かる、良くも悪くもな。

そしてソイツから発せられる憎悪の感情からして、ユベルの言う通り今は悪い方向に転がった、か…!

 

「良い機会だ!君が本当に榊遊勝の息子なら彼をおびき出す餌になって貰う!」

『そのデュエルディスクは、アカデミアの物か…!』

「ちっ!やるしかないか!」

 

ソイツがデュエルディスク、それもアカデミア製らしき物を構えたのに応じ、俺もまたデュエルディスクを構え、

 

「「デュエル!」」

 

先攻 ???? LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

デュエルは始まった。

 

「僕のターン!

まずは『D(デステニー)HERO(ヒーロー)ドリルガイ』を召喚!」

「何!?ディーヒーローだと!?」

『馬鹿な、それは確か遊矢が十代だった頃にアイツが使っていた…!』

「デステニーヒーローだ!」

 

D―HEROドリルガイ

効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1600

 

だが先攻となったソイツが召喚したモンスター、というかそのカテゴリ名に俺とユベルは驚愕した。

ユベルの言う通り、俺が生きていた中でこのカテゴリを使っていたのは1人だけ、

 

「エド・フェニックス…!」

「何、僕の名前を知っているのか?まあ良い、君を倒し、それも含めて吐かせる!」

 

ポツリとこぼしたら案の定と言うべきか、喰いついて来た。

まさかソイツ、いやエドも俺やジャック達の様に転生して来たのか…?

いや安直にそう考えるのは早計だ、ジャック達がそうだからって、エドもそうだとは限らない。

この前、海音に転生者である事を告げた時の反応がそうだったように、それまでがそうだとしても、今そうなるとは限らない、それが既定路線だと決めつけるのは良くないんだ。

 

「召喚したドリルガイのモンスターエフェクト!このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つデステニーヒーローを手札から特殊召喚する!カモン!アナザーワン!」

 

しかし今しがた2体並んだ、関節があるであろう部分からドリルを生やしたディーヒーローは、同名モンスターの特殊召喚も出来る様になっているんだな。

 

「次に魔法『融合』発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「僕はフィールドのドリルガイと、手札の『D―HEROディシジョンガイ』を融合!運命の岩盤を穿つ英雄よ!勝利の宿命を決意し英雄よ!今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!カモン!『D―HEROディストピアガイ』!」

「ディーヒーローの融合モンスター…!」

「何度も言わせるな!デステニーヒーローだ!」

 

D―HEROディストピアガイ

融合・効果モンスター

闇属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そのドリルガイと、手札にあったらしいディーヒーローを用いて融合召喚されたのは、理想郷(ユートピア)の対義語である暗黒郷(ディストピア)の名を冠したディーヒーロー、ディストピアガイ。

 

「融合召喚したディストピアガイのモンスターエフェクト!墓地へ送られたドリルガイの攻撃力分のダメージを君に与える!スクイーズ・パーム!」

「っちい!」

 

Yuya LP 4000→2400

 

「僕はカードをセットしてターンエンド」

 

Edo

LP 4000

手札 0

モンスター D―HEROドリルガイ(守備表示)

      D―HEROディストピアガイ(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに罠『D―フュージョン』発動!」

 

D―フュージョン

通常罠

このカードの効果で融合召喚する場合『D―HERO』モンスターしか融合素材に出来ない。

1:自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

「暗黒に満ちた運命を突き進む英雄よ、運命の岩盤を穿つ英雄を取り込み、再びその力を振るえ!ディストピアガイ!

ディストピアガイのモンスターエフェクト!もう1度ドリルガイの攻撃力分のダメージだ!スクイーズ・パーム!」

「あちっ」

 

Yuya LP 2400→800

 

「これがデステニーヒーローの力だ!この力で、榊遊勝の息子である君を打ち倒すのみ!」

 

ディストピアガイが2連続で放った光弾が共に、俺に直撃して所謂ガンマンラインに到達した事でもう勝つ気でいるのか、そう言い放ったエド。

だが逆だ、このデッキと、今の俺の手札で言えば、今の効果で後攻1ターンキルを決める算段が付いた。

それにしても…

 

「…なんて、なんてディーヒーローを馬鹿にしたデュエルタクティクスだ!それでもディーヒーロー使いかよ!」

「なっ!?」

 

今のデュエルタクティクスで分かった、コイツは俺の知っているエドじゃない!

 

「ディーヒーローの、其々が持つ個性が何も活かされてねぇじゃねぇか!ただ手札にあった同名モンスターを並べて、カテゴリ融合しただけ、そんな事は他のデッキでも出来る!」

 

所謂切り込みロックで知られる『切り込み隊長』や、隼が使っている『RR―バニシング・レイニアス』が前者だし、それは今やペンデュラム召喚で出来る芸当だ。

後者もエレンのシャドールや俺のHERO、真澄のジェムナイトと結構存在する。

 

「だがディーヒーローは違う!俺が嘗てデュエルしたディーヒーロー使いは、その時俺が使っていたデッキと比較してこう言っていた!『君のデッキがモンスター達の絆で様々な融合モンスターを出して戦うのなら、僕のデッキは其々のモンスターが持つ強烈な個性で戦うデッキだ』と!」

 

顕著なのが、運やタイムラグこそ絡むが強力な通常魔法のコストを踏み倒せる『D―HEROダイヤモンドガイ』、相手だけスキルドレインにサクリファイスの様な吸収効果を併せ持った『D―HERO Bloo―D』で、この2体は其々、自らを主軸とし、自らの名を冠したデッキも作られる程だ。

それ以外にも、蘇生カードを『強欲な壺』に変えちゃうという馬鹿げた強さから禁止カードとなった『D―HEROディスクガイ』、生き残っていると相手に追加ドローさせちゃう代わりに下級モンスターはおろか青眼の白龍すらも超える守備力を誇る『D―HEROディフェンドガイ』、墓地の自分を除外する事で同名カードをリクルート出来る効果から様々な召喚方法に応用された事で一時は準制限カードとなった『D―HEROディアボリックガイ』、相手フィールドでサンドバックになる『D―HEROディパーテッドガイ』、キラトマダブルガイというネタ的な意味で有名な『D―HEROダブルガイ』…

そんな、そんな強烈な個性を持った連中の集まりこそが、ディーヒーローで、それを存分に発揮するデュエルタクティクスこそが、俺の知っているエドのそれだったんだ。

それをコイツは…!

 

「今のお前のデュエルタクティクスからはそんな物は微塵も感じられない!所詮お前の使っているディーヒーローは、D(ダミー)―HERO、偽物だ!」

「何だと…!

さっきから黙って聞いていれば言いたい放題、このディストピアガイを下せるとでも言わんばかりの言い草だな!言って置くがD―フュージョンの効果で融合召喚されたディストピアガイはこのターン、破壊出来ない!何をするつもりかは知らないが、次のターンでの僕の勝ちは揺るがない!」

「破壊?そんな事する必要は無い。それにお前に、手札もセットカードも無いお前に次のターンは無い!見せてやる、このデッキに宿りしモンスター達の絆を!」

 

そう言い放ち、俺は動き出す…!

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