【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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21話_さあ、戦え!

『遊矢、今の時間は大丈夫か?』

「零児?はい、大丈夫ですが、どうかしましたか?」

『大事な話をしたい。済まないが、LDSに来てくれないか?受付に話は通しておく』

「分かりました、直ぐに行きます」

 

或る日、零児から突然の呼び出しを受けた。

随分と急な呼び出しだなぁと思ったが、レオ・コーポレーションの社長という立場である筈の零児が自ら電話を掛けて来た事、電話越しに伝わった声音が余りに真剣味があった事から、これは何か重大な事があるんじゃないかと思い、二つ返事で応じる事にした。

LDSと言えばこの前の襲撃事件の件があるし、その犯人である2人を捕縛する際、隼と呼ばれていた奴が口にした「赤馬零児を誘い出す餌になって貰う」という言葉、俺そっくりの奴が口にした「瑠璃を何処へやったか」という言葉、それらが心に引っ掛かっていたから、丁度良い。

 

「塾長。今からちょっと出かけて来るぜ。零児から緊急の呼び出しが掛かってさ」

「零児?ああ、レオ・コーポレーションの社長さんか。分かった、皆にはその事伝えて置く」

「サンキュー。じゃ、行って来るぜ」

 

塾長に一言断ってから、塾を出た。

 

『遊矢、良いのかい?そんな二つ返事で出向くなんて。LDSと言えば、ペンデュラムモンスターに関して色々あったばかりじゃないか。襲撃事件の件があると言っても、少し警戒した方が良いんじゃないかい?』

「其処は大丈夫だろ。少なくとも零児は信頼できるし、他のLDS上層部もあの時のゴタゴタから、俺には下手に手を出さない方が良いと思い知っただろうし」

『そう簡単に、楽観的な結論を下さない方が良いと私は思うが。相手は赤馬零児ら上層部だけじゃない。あの沢渡という男、また遊矢に対して何か仕出かすのではないか?』

「アストラルは少し悲観的過ぎるんじゃないか?まあ一応警戒して置くけどさ、零児からお灸を据えられて大分おとなしくなったって聞いたぜ」

『お灸?遊矢、ユベル、お灸とは何だ?いつ発動する?』

『アストラル、デュエルのカードじゃないから。良いかい?「お灸を据える」と言うのはね…』

 

そんな俺の身を案じたユベルとアストラルが俺を諌めて来て、それに俺が「大丈夫だ、問題無い」と返答して、それが何時の間にか、根本的にデュエル脳なアストラルが(素で)ボケ、ユベルがツッコミという漫才と化している内に、零児が待っているだろうLDSに到着した。

 

「すいません、今日、そちらの社長である赤馬零児様から呼び出しを受けた、榊遊矢と申します」

「榊遊矢様、ですね。社長、榊様がお見えになりました。はい、了解しました。榊様、こちらへご案内致します」

 

普段、殆ど使わない敬語で受付の人に尋ねると、案の定話は通っていた様で、即座に零児がいる部屋へと案内された。

 

「社長、榊様をお連れ致しました」

「分かった。後は私が対応する」

「それでは榊様、こちらです」

 

受付の人に案内されるまま部屋に入ると、やはり其処には零児がいた。

此処は応接室か何かか?結構小さめだな。

 

「急に呼び出して済まないな」

「いえ、火急の用との事ですし、遠慮しないで下さい。それで、話というのは?」

「ああ、その事だが…

今から君に話す事、それらが余りに突拍子も無いと感じるだろうが、最後まで聞いてくれ」

「あ、はい。分かりました」

 

まあ零児は知らないが、俺はその『突拍子も無い』を、枚挙に暇が無い位経験しているから大丈夫だ。

 

「まず、いきなり空想的な話になるが、君は並行世界(パラレルワールド)をご存じかな?」

「並行世界って、確か「もし○○が××だったら」という可能性を分岐点に生まれた、この世界と並行して存在する世界、って事ですよね?」

「そうだ、知っているなら話は早い。それを念頭に置いて、次の話を聞いて欲しい。デュエルモンスターズには今、強力なモンスターを召喚する方法として主に、アドバンス召喚、儀式召喚、融合召喚、シンクロ召喚、エクシーズ召喚、ペンデュラム召喚がある。この内、融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚、そしてペンデュラム召喚に関しては、まず融合召喚が3年前に、次にシンクロ召喚、エクシーズ召喚が導入されていって、そしてつい最近、君がペンデュラム召喚を初めて行った。君は私がペンデュラムモンスターを持っている事に対して、ルールで認められているなら使いたくなるのがデュエリスト、カードを作りたくなるのがカードデザイナーの真理だ、と言って大して驚いていなかったな。その言葉の通り、私達レオ・コーポレーションはペンデュラムモンスターのカード製作に取り組み、私はそれをデッキに導入していっている。それに遊勝塾においてペンデュラムモンスターに関するデモンストレーションを行った所、塾を埋め尽くさんばかりの参加希望者だったそうじゃないか。つまり誰もがデュエリストとして、またはカードデザイナーとして、ペンデュラムモンスターと言う存在を求め、手にして使おうと、作ろうとしている。いずれ、誰もがペンデュラム召喚を使いこなす日が来るだろう」

 

だな、実際OCGではペンデュラム召喚とペンデュラムアドバンスを主体にした『クリフォート』デッキが環境を支配していた時期があった。

環境に残れるのは、流行するのは文字通り『強い』デッキだけのOCGでもペンデュラム召喚に手を出すデュエリストが少なくなかったのだ、「最強のデュエリストのデュエルは必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!」等といったオカルトじみた理論がまかり通るアニメ世界のデュエリストがこれに手を出すのは必然と言えるし、また、第一人者としてはそうなって欲しい思いもある。

 

「だが、融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚に関してはそうはならなかった。融合召喚に関しては梁山泊が昨年から取り入れたという話を聞いたが、残るシンクロ召喚とエクシーズ召喚は、つい最近まで我々LDSしか扱っていないとされて来た。それが何故か分かるか?」

 

確かに、言われてみれば変だ。

融合召喚とシンクロ召喚、エクシーズ召喚は、どれもその導入が大々的に報じられておらず、周囲の認識も「LDSでしか取り扱っていない、レアな召喚方法」という程、浸透していなかった。

俺達遊勝塾も、権現坂道場も、そんな状況下で使うのはフェアじゃないという事で、塾内以外での使用を自粛していた位だし。

普通あんな強力な召喚方法があったら広めようとするのが製造元だし、それに合ったカードを作るのがカードデザイナー、そしてそれらを購入してデュエルで使って行くのがデュエリストだろう。

融合召喚は今や「カップ麺早食いノーデン」だの「ZEROチェンジアシッド」だのといった混沌と化しているOCG環境の、原因の片棒を担っているし、エクシーズ召喚はエクシーズ召喚で「プトレノヴァインフィニティ」だの「クラウンブレード」だのといった、原因のもう片棒を担っている。

シンクロ召喚は上2つと比べてやや下火だが、それでも「サモサモキャットベルンベルンDDB(だれがどうみてもぶっこわれ)」だの「ワンターンクェーサー」だのといった、地獄とも言えるOCG環境を作り出した時があった。

OCGでそうならアニメ世界のデュエリストがこれに手を出すのは必然な筈なんだが…

まさか?

 

「さっきの話を踏まえると、この世界には元々融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターが存在しておらず、また2体以上のモンスターを魔法カードで1つにしたり、チューナーとそれ以外のモンスターのレベルを合わせたり、同じレベルのモンスターを重ねたり等、そういった発想も無かった、それどころかエクストラデッキという概念自体無かったという事でしょうか?」

「そう、融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターはこの世界の物では無い、この世界の並行世界からもたらされた物だ。この世界と同じくデュエルモンスターズが盛んな3つの世界、此処からは『次元』と呼ばせて貰う、其処では独自の召喚方法が発達して行ったんだ。融合召喚が発展していった融合次元、シンクロ召喚が発展していったシンクロ次元、エクシーズ召喚が発展していったエクシーズ次元、という様に。余談だが、私達がいるこの次元はスタンダード次元と呼ばれているらしい」

 

成る程、特殊な召喚方法が無い、普通の(スタンダード)次元って訳か、少しカチンと来るな。

 

「私達がいる次元を含めた4つの次元は、本来はこうして交わる事無く、其々独立した発展を遂げながら、独立した平穏の時を過ごしていく、筈だった。それが崩れたのは3年前の、或る日の事だ。その日、融合次元にある組織『デュエルアカデミア』が、所属しているデュエリスト達を率いてエクシーズ次元へと侵略を始めた」

「デュエルアカデミアだって!?」

「遊矢、どうかしたのか?」

「あ、いえ、続けて下さい」

 

そんな馬鹿な、十代だった頃の俺がいたあのアカデミアが、純粋に『デュエルを学び、デュエリストを鍛え上げる』事を理念としていたアカデミアが、そんな事するはずが…

確かに元はあの影丸理事長による、三幻魔復活の為に設立された学校だとは言え、その三幻魔は今や俺の手の中、そんな邪な面での理由はとうの昔に無くなった筈なのに…!

 

いや、考えすぎかも知れない、少なくとも今の零児の話を踏まえると、シンクロ次元もエクシーズ次元も、遊星だった頃の俺が過ごした世界や、遊馬だった頃の俺が過ごした世界とはまるで違う。

確かに遊星だった頃にはエクシーズモンスターは存在しなかったし、遊馬だった頃は逆にシンクロモンスターやチューナーが存在しなかったが、どっちの時代にも融合モンスターや融合魔法は存在していた。

遊馬だった頃にカイトが『ツイン・フォトン・リザード』を使って来たし、俺自身、遊星だった頃に機皇帝対策としてシンクロ融合モンスター『波動竜騎士ドラゴエクィテス』を使っていた。

零児が言っているシンクロ次元もエクシーズ次元も、俺が知る世界では無いと断定して良い、となれば融合次元もまた違うと思って良いかも知れない。

 

「分かった、ならば話を続けよう。それに対してエクシーズ次元のデュエリスト達も応戦はしたが、それまでデュエルは文字通りの『娯楽』だったエクシーズ次元の住人に成す術は無く、或る者はカードへと変えられ、或る者は殺され、そして戦場となった世界は荒れ果てた。この前起こった、LDS関係者が次々と行方不明になった事件で君が確保した2人の男だが、実はそのエクシーズ次元から移動して来た者達だ」

「エクシーズ次元から、ですか」

 

あの2人の様子から、単に逃亡して来たとは思えない。

一体何が目的でこっちに来て、あんな事件を起こしたのだろうか、隼と呼ばれた男の方は零児に用があるみたいだったし、俺そっくりの奴が言っていた事も、もしかしたら融合次元による侵略と関係があるのかも知れない。

 

「ああ。そして融合次元は4つの次元を統一させようと、シンクロ次元や私達の次元にも攻め込む準備をしている。近い内にこちらにも攻め込んで来るに違いない…

以上が、君が確保した2人から聞き出した情報と、それの裏付けを取る為に我々レオ・コーポレーションが調査した末に導き出した結論だ」

 

成る程、確かに普通の人が聞いたら余りにも突拍子も無い話、だがそれを話す零児の真剣味を帯びた口調と表情からそれが出鱈目では無いのは明らかだし、俺自身、そんな突拍子も無い話、デュエルが関わって来る『世界規模』の厄介事には慣れっこだ。

十代だった頃には三幻魔、破滅の光、ダークネスと、何度も世界の存亡を賭けた戦いをして来たし(え、一部飛ばしている?まあそれについて詳しい話は後な)、遊星だった頃には生まれたばかりの時に起こった『ゼロ・リバース』を起点とした戦いに明け暮れたし、遊馬だった頃にはNo.(ナンバーズ)を巡っての戦いとか、バリアン世界とアストラル世界の存亡を賭けた戦いとかに身を投じて行ったんだ、そんな俺が真っ先に思った事、それは「またかよ」である。

 

『赤馬零児の話を踏まえると、随分と排他的な事だ。アドバンス召喚や儀式召喚、融合召喚やシンクロ召喚、エクシーズ召喚やペンデュラム召喚、どれが優れてどれが劣っているかなど、そもそもの論点が違う。其々の召喚法には其々の利点がある、それらを組み合わせてこそデュエルモンスターズだと言うのに…』

 

そんな零児の話を聞いて、呆れた様な口調でアストラルが話した事に、俺も同感だし、第一、世界征服だけが目的かどうかは知らんが、デュエルをそんなふざけた目的で使って良い訳が無い!

デュエルはデュエリスト同士が敬い合い、全力を出し合って戦い、終わった後にはデュエリスト同士だけではなく、それを見ていた観客が笑い合う、関わった人達を繋ぐ、そんな神聖な物であるべきなんだ!

 

「無論、我々とてそれを聞いて何の対策もしていない訳では無い。その調査と並行して、融合次元からの侵略に対抗する術となる組織の構想を、我々は練っていた」

 

そう憤っていた所に再び話始めた零児の言葉に、俺は再び耳を傾ける。

確かに、俺の想いを叫んだところで聞くような相手では無いのは明らかだ、となれば侵略に対抗する為の戦力は必要となって来る。

が、まだその組織は構想段階、それを俺に話す、という事は、だ。

 

「正式名称『LanceDefenseSoldiers』、まあ『ランサーズ』とでも呼んでくれ。この世界を守る為の槍、その意を込めて、そう命名した組織だ。我々は近々この組織を発足させ、融合次元の侵略に対する迎撃戦力とする積りだ。君の事だ、此処まで聞けば何が目的で此処に呼ばれたか察しが付いているだろうが、敢えて聞かせて貰う。

 

君にはこのランサーズに、最高指揮官として所属して貰いたい」

 

やっぱり、そう来たか。

そして、それに対する答えも決まっている。

 

「分かりました。俺にも守りたい、大事な存在がこの次元にいます、融合次元の好き勝手にさせる積りはありません。

 

 

 

 

 

ですがその前に、この前の決着を付けましょう、零児」

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