【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

26 / 168
今回は遊星編、そして過去編1の鬱話です。


25話_『俺だった者』の物語その2

けれど俺は再び、赤ん坊として目覚めたんだ。

普通、神様転生モノって転生先で生涯を終える物だと思っていたし、十代としての天寿を全うしたからこれで充分だなと思っていたから、これには、十代に転生したばかりの時とは別の意味でびっくりした。

其処でまたユベルに聞いてみると、どうやら俺を十代として転生させた神はその折に『遊戯王(ゆうぎおう)シリーズの主人公として転生し続け、その力を受け継いでいく』という特典を俺にうっかりくっつけちゃったそうで、それによって事故で死のうが、天寿を全うしようが、俺は遊戯王シリーズが変化を続ける限り転生し続ける事になるという運命となったそうだ。

なんじゃそりゃと突っ込んだが、同時に十代だった頃にやり残した事があったから嬉しかった。

OCGで使えていたシンクロ召喚やエクシーズ召喚、ペンデュラム召喚と言った、十代だった頃には無かったギミック、十代だった頃のデュエルも面白かったが、やっぱりそういったギミックの入ったデュエルもやりたいという想いがあったし、パラドックスとの戦いで渡された『虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)』の事もあったから、正に渡りに船、とユベルから聞いた時には思っていたんだ。

 

けど、転生先がアニメ『遊戯王5D's(ファイブディーズ)』そっくりの世界で、言わずもがなではあったが俺が転生したのはその主人公として扱われたデュエリスト『不動(ふどう)遊星(ゆうせい)』だったと気付いた時には、全てが遅かった。

遊星としての『俺』を認識する暇も無く、両親と思しき存在によって俺はカプセルらしき物に入れられ、それが何らかの動力によって何処かへと飛び立ち、一体何だと思って窓らしき部分から外を覗いてみたら、

 

其処に広がっていた光景は、俺の生まれ故郷であろう街がリアルタイムで崩壊して行く光景だった。

街の中心部から発生したであろう衝撃波が瞬く間にドーム状に広がり、街に建造された建物を、其処に住む人たちを飲み込む様、大地がひしゃげ、大地が中心部と郊外とで分断されていく様、それらをまざまざと見せつけられた。

後にそれは、当時実用段階に入ろうとしていた永久エネルギー機関『モーメント』が暴走した事に端を発した大災害『ゼロ・リバース』として(表向きには自然災害として)歴史に刻まれた。

俺自身ゼロ・リバースを、アニメの中で『知識』として知ってはいたんだが、生まれたばかりで認識が遅れたのと、また赤ん坊だったから出来る事が殆ど無かったのも災いして、その光景を、ただ指を加えて見るしか出来なかった。

目の前で繰り広げられた、『地獄』とも言うべき凄惨な光景に、それに何も手を打つ事が出来なかった赤ん坊の自分に、俺は泣き崩れた。

けれど、本当の意味での『地獄』は、此処からが始まりだった。

俺がカプセルによって送られたのは所謂『サテライト』と呼ばれた場所、崩壊して分断された街の郊外部にあたる場所で、中心部の復興が優先された事、その為の工場や廃棄物処理施設が建てられた事等から、其処は『スラム』と言っても良い状態、其処に住む奴も例えば犯罪者、ゼロ・リバースで家財や職を失った失業者、同じくゼロ・リバースによって天涯孤独となった孤児、色々居て、その誰もが今日を生きる為に必死だった。

それなりの価値があるカードを巡っての賭けデュエルや強盗、縄張り争いから来る喧嘩や私刑(リンチ)、時には殺人や放火と、犯罪と言える行為が日常茶飯事で行われていた。

そして其処に流れ着いた俺も例外なく、今日を生きる為にやれる事は何でもやった、「やりたい放題やりやがって」と恨みを買われる程に。

前世から引き継いだ『ユベル』デッキと『E(エレメンタル)・HERO』デッキ、前世で遊星から貰った虹光の宣告者を組み込んで構築した『完全決闘(パーフェクト・デュエル)』デッキ、そして遊星になってから構築した『クジャド・ウォリアー』デッキを駆使して賭けデュエルは連戦連勝、私刑や殺人によって強奪しようと襲い掛かって来た奴は『覇王の力』で逆に捻じ伏せてやった。

前世で出会った遊星が何であのカードを渡してくれたかが今更ながら良く分かった、あの時の遊星は『俺』で、この状況を体感していたが故に生きて欲しいという願いを込めて、俺に渡してくれたんだろう、まあ今更分かった所で、な感じが漂うが。

そんな毎日を過ごしていた俺の心は案の定と言うべきか荒んでいき、当然だが楽しいと思いながらデュエルをするなんて事は無くなり、何時しか俺は笑顔を浮かべる事は無くなった。

そんな俺の歪んでいく姿に耐えられなくなったのだろう、或る日突然ユベルが、俺に謝りながら泣きじゃくった。

 

「ごめん、ごめんなさい、遊星…!

ボクの、ボクの所為で遊星が…!

ボクが、ボクがこうなる事を望んだから、こうなると分かっていながら尚、一緒にいたいと願っちゃったから、だから遊星は、遊星は…!」

 

違う、そんな事は無い、これはユベルの所為でも、誰の所為でも無いんだと、俺は言いたかった。

人ってこうした生きるか死ぬかの瀬戸際、と言わんばかりの極限の状況に追い込まれると、此処に追いやった原因が何なのかを探り、それが極めて偏執的で、逆恨みとかであっても「アイツの所為だ」と恨む事があるが、俺は不思議とそういう気持ちにはならなかった。

けれど、それを声に出して言える程の気力が俺には無かった、生きるのに必死な生活によって気力は大いに削られていたんだ。

それ以来、ユベルは何処か、俺への態度がよそよそしくなっていった。

俺自身が、俺とユベルとの関係が壊れて行く最悪の状態、そんな或る日、俺が8歳の時の事だった。

その日も賭けデュエルや喧嘩に明け暮れた俺だったが、度重なる戦いの日々に気力は限界に達し、俺は倒れた。

こんな状況下で倒れたとあらばもう助からないだろう、俺自身周りから恨みを買われる行いを続けていたし、遅かれ早かれ死ぬ事になるだろうと思っていた。

そんな俺を、『マーサハウス』という孤児院を運営していた女性、マーサが助けてくれた。

俺についての噂を色々聞いていたマーサだったが、にも関わらず俺に親身になって接してくれて、俺をマーサハウスに住まわせてくれた。

このマーサハウスには俺と同じ位の、ゼロ・リバースによって天涯孤独となった子供達が住んでいて、その中には後の親友にしてライバルのジャック・アトラスと、同じく親友となるクロウ・ホーガンもいた。

其処で皆の優しさに触れ、それまでの極限状態な生活に身を置いていた俺の荒んだ心は修復して行き、笑顔を取り戻す事が出来た。

けれど、俺の両親が開発したモーメントが暴走した所為でゼロ・リバースが起こった事、原作知識として知っていながらそれを防ぐことが出来なかった事で、マーサハウスにいる皆は天涯孤独の身になったんだと罪の意識に苛まれ、彼らに何か出来る事は無いかと思い立って、或いはその意識を振り払う様に、「散歩行って来る」と出掛けては賭けデュエルや喧嘩に明け暮れ、日銭を稼いでいった。

それはマーサ達も気付いてはいただろうけど、特に何も言っては来なかった。

そんな日々が続き、ジャックやクロウ、ユベルと共に徒党を組んでサテライトをブイブイ言わせていた頃、1人の男と出会ったんだ。

名を鬼柳(きりゅう)京介(きょうすけ)、後に色々と関わり合いになるその男と意気投合し『チームサティスファクション』を結成、サテライトの勢力統一という満足を追求する為に活動して行き、その勢力を広げて来た。

だが、サテライトの勢力を統一した頃から、鬼柳は何処か満たされない想いを抱いていた様で、セキュリティにテロを企てる等暴走を始め、その罪により捕えようとしたセキュリティから逃がそうと奔走したんだが失敗、逆にその時のセキュリティとの会話の様子が鬼柳に「自分をセキュリティに売った」と誤解を生んでしまい、それが後々の騒動に繋がっていったんだ。

で、更に時が流れ、街の中心部『シティ』で一旗上げようとジャックが考えている事を察知した俺は「シティの最上段へ上がって行け!」と、何枚かのカードを餞別にシティへと送り飛ばし、遅れて2年後、ジャックがどうしているのか気になった俺がシティへ潜入すると、其処には俺に宣言した通り『キング』となったジャックの姿があった。

だが当時のシティは、サテライトからの不法侵入は犯罪、俺も例外なくシティの警察組織『セキュリティ』に追われる身となりながらも奔走、其処で後の仲間になる龍亞(るあ)龍可(るか)の双子の兄妹、そして後に遊星としての『俺』の妻となる十六夜(いざよい)アキと出会い、そして当時のシティで事実上のトップにあたる治安維持局長官だったレクス・ゴドウィンに、当時の仲間を人質に取られた事と、優勝する事でジャックとのデュエルを行えるという誘い文句から、『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』への出場を決め、その際に3000年前の戦乱を治めるべく降臨した『赤き竜』の伝説、その力を受け継いだ『赤き竜の痣』を持った戦士『シグナー』の存在、そして邪悪な神の力を受け継いだ『ダークシグナー』との5000年周期の壮絶な戦いの話を聞いた。

で、フォーチュンカップでも前世、更にはサテライトで実力を付けていた俺は連戦連勝を遂げた末にジャックにも勝利して新たなキングとなったんだが、その際に『赤き竜』のビジョンが出現し、俺、ジャック、アキ、龍可の4人がシグナーとして覚醒した。

その折、デュエルの際のモンスターの攻撃が実体化する力を持った『サイコデュエリスト』だったアキの、その制御出来ない力への苦しみを感じ取り、俺もまた『覇王の力』を解放、制御された『力』の使い方を見せ付け、自らの力や内面に向き合う事の大切さを説いたが、これはまあ蛇足だな。

で、シグナーとして覚醒したのと時を同じくして、ダークシグナーの傀儡となったデュエリストにデュエルを挑まれ、ダークシンクロという新たなシンクロ召喚を見せられはしたけど難なく倒した、はいいのだが、これがきっかけでダークシグナーとの戦いが始まった。

その中にはセキュリティに逮捕されていた筈の鬼柳の姿もいて、その時の誤解から俺への復讐心を前面にデュエルを挑まれ、邪悪な神の力がカードに宿った姿『地縛神』を出される等の苦戦を強いられたが辛勝利を収め、誤解が解けたのもあってやっと和解する事が出来た。

その後もシグナーとなったジャックとアキと龍可、そして旧友だったクロウと龍亞とも合流して戦いを続け、最後はシグナーでありながらダークシグナーでもあるレクス・ゴドウィンとの最終決戦の末、勝利を収め、彼が持っていた『竜の頭』の痣は俺、それによってあぶれる格好となった『竜の尾』の痣はクロウが受け継ぐ事になった。

ダークシグナーとの戦いが終わってからアキと龍亞、龍可はデュエルアカデミアに通う様になり、一方で俺とジャック、クロウは1年後にシティで開かれる『W(ワールド)R(ライディングデュエル)GP(グランプリ)』への出場へ向けて準備を進めていた。

その折に俺は、ゴーストと呼ばれている謎のデュエリストにデュエルを挑まれ、シンクロモンスターの力を吸収する効果を持つ『機皇帝』というモンスターの効果に苦戦しながらも勝利したんだが、そのゴーストの存在から、世界規模で歴史を操作して来たと言われている組織『イリアステル』の存在を察知したんだ。

その不穏な気配が気になる中でWRGPは開催、俺とジャック、クロウとアキ、龍亞と龍可、そしてふとしたきっかけで知り合ったメカニックのブルーノと共に『チーム5D’s』を結成して出場した俺達は連戦連勝で勝ち上がり、その際に俺はシンクロ召喚の更なる先『アクセルシンクロ』を、ジャックはそれとは別の新たなる可能性『ダブルチューニング』を会得したんだが、その度重なるデュエルによって蓄積したエネルギーによって、俺達の街を、引いては世界を崩壊へと誘う巨大都市『アーク・クレイドル』が出現、破滅の運命をたどった未来から来たと言う存在によって結成され、未来世界を救おうとアーク・クレイドルを、世界を破滅させた原因であるモーメントがあるシティへ直撃させようとするイリアステルとの決戦に俺達は臨んでいった。

因みに、さっきの話ででたパラドックスとの戦いで、俺はイリアステルの最高幹部と言える存在だったパラドックスから『スターダスト・ドラゴン』を奪われそうになるも何とか回避し、それを追って過去へと飛び立った際に、過去の俺、十代だった『俺』と出会い、以前俺が貰った様に『虹光の宣告者』を何枚か渡したんだが、まあそれは蛇足だな。

5D’sで共に戦ったブルーノも、実はイリアステルの最高幹部『アンチノミー』で、アーク・クレイドルの中心部へと行こうとする俺達の前に立ちはだかったが、俺はこれも倒して見せ、ジャック達も最高幹部『アポリア』との戦いで勝利し、俺はイリアステルの黒幕であるZ-ONEとの最終決戦に臨んだ。

Z-ONEとの戦いは熾烈を極めたが、最後はアクセルシンクロの更なる可能性『リミットオーバー・アクセルシンクロ』を会得した俺の大逆転で勝利を収め、俺はZ-ONEから未来を託され、アーク・クレイドルはZ-ONEの命がけの働きかけで消滅、シティは救われた。

戦いが終わって俺はアキと結婚、生まれたばかりだった頃のゼロ・リバースや、未来における世界の崩壊要因となったモーメントをより安全・安定した物へとするべく研究に没頭、結果として制御システム『フォーチュン』を完成させ、それからは引き続きモーメント関連の研究を行ったり、アキと共に各地のデュエル大会に出場したりして人生を過ごした末に、遊星だった『俺』もまた、天寿を全うした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。