【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

35 / 168
28話_動かざること山の如し

Side 権現坂

 

今日の俺の相手は、嘗てこの権現坂道場で教えを共にした元兄弟子、暗黒寺(あんこくじ)ゲン。

だが数年前にあの男は、権現坂道場の教えを非難した挙げ句、足蹴にする様に出て行った。

挙げ句、その後に起こった遊矢の父上である榊遊勝殿が失踪した事件をきっかけに起こった遊矢への一方的な中傷、その最前線にあの男は立ち、遊矢を執拗に侮辱した。

尤もそれは、その中傷に腹を立てた遊矢によって袋叩き(無論デュエルで、だが)にされた事で、表立ってする事は無くなったが。

だがそれはあくまで表向きの事、その裏では遊矢のデュエルに関して『インチキ効果をふんだんに使った卑劣な物』やら、『エンタメデュエルとうたっていながら相手に何もさせないパーミッションをする嘘つき』やら、『禁止カードをバンバン使うルール違反モノ』やらと、謂れの無い噂を流したそうだ。

実際、刃が遊矢のファンとなった切っ掛けである舞網チャンピオンシップ・ジュニアクラスのとある試合で起こった観客のブーイング、あれの原因に一枚噛んでいるという情報もある。

その真偽の程はこの際どうでも良いが、それから数年が経ち、遊矢及び、遊矢の指導を受けた遊勝塾生達、そしてこの男権現坂もまた大会で大いに結果を残した事で、遊勝塾がLDSに並ぶ人気を博し、権現坂道場もまたそれに便乗させて貰った今も尚、変わる事は無いらしい。

何ともけしからん話だ、嘗て教えを共にした者として、これ程恥ずかしい事は、嘆かわしい事は無い。

嘗ての同門としての情けの下、その腐りきった心根を、凝り固まった思考を、曇りに満ちた視界を、我が全力を以て打ち砕くしかあるまい。

それが俺の、権現坂道場の跡取りたるこの男権現坂のすべき事。

そして、融合次元との戦が迫る中、ARC-Vメンバーとして名を連ねる俺にとって、今すぐにせねばならぬ事…!

 

「では行くぞ!我が不動の(つわもの)達よ!」

 

そう決意を固め、俺はデュエルディスクに我がデッキをセットし、親父殿から貰った新たなる襷を締め、デュエルフィールドへ歩みを進めた…!

 

------------

 

Side 遊矢

 

『それでは舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス1回戦、第8試合を開始いたします!まずは1人目!前回大会はなんと第3位に輝き、今回第3シードに入った、権現坂道場の跡取り!不動のデュエルが、今宵も発揮される!権現坂昇選手!

続いて2人目!無所属ながら公式戦で6連勝を遂げた新鋭!あのストロング石島のデッキを受け継ぎ、今回、暴れ回るか!暗黒寺ゲン選手!』

 

午後の部の最初のデュエルとなった第8試合に出場する権現坂、とその相手、嘗て権現坂道場で教えを共にしていた、権現坂以上にガタイの良い少年(?)、暗黒寺ゲン。

そういえば父さんが失踪して周囲が俺に対して誹謗中傷してきた時、特に執拗に中傷して来たのがコイツだったっけ、まあ直ぐにデュエルでフルボッコにしてやったら(表向きは)大人しくなったけど。

それにしても暗黒寺が何処かそわそわしているな、顔付きも何処か焦りを浮かべているみたいだし。

 

「どうした?デュエルとはすなわち頭脳の死合、気を落ち着かせねば勝てる物も勝てぬぞ?」

「う、うるせぇ!第3シードだか何だか知らねぇが、結果を残した途端に偉そうにしやがって!」

 

その様子が気に掛かったのだろう、権現坂が(例えが少し物騒だが)忠告するも、暗黒寺にそれを聞き入れる余裕は無いみたいだ。

それもその筈、観客席にいる俺の『前の席』には、暗黒寺の依頼で俺を罠に嵌めようとした連中が手錠を嵌められ、それをユベルに掴まれる形で拘束されているのだから。

恐らく俺を人質に取って権現坂を揺さぶろうとか言う、リアリストにも程がある魂胆だろうが、そうは問屋が卸さないってね。

 

『それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『絶海の孤島』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Gen LP 4000 VS 後攻 Noboru LP 4000

 

「何だって良い、勝ちゃあいいって事だ!俺のターン!

『バーバリアン3号』を召喚!」

 

バーバリアン3号(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1000

 

暗黒寺が最初に出したモンスターは、ストロング石島が使っていたバーバリアンを彷彿とさせる(同じバーバリアンだから当たり前だが)戦士、バーバリアン3号。

レベルやステータスはそれ程高くなく、効果も、

 

「召喚した3号の効果発動!

手札の『バーバリアン4号』を攻撃表示で特殊召喚するぜ!」

 

バーバリアン4号(アニメオリジナルカード)

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1200

 

単体ではそれ程、と疑問符を付けざるを得ない物だ。

これが暗黒寺の後攻で、権現坂の場にモンスターがいたとしたら、『地獄の暴走召喚』で4号を3体並べてショック・ルーラーを出せたりするのだが(そしてモンスター効果を指定され、権現坂は詰んでしまうのだが)、それでもドルべが使っていた『光天使ウィングス』の方が有用だと思う、あっちはレベルや種族、属性が合っているし。

というかあのパターン、数年前に俺がフルボッコにした時に見た様な気がするんだが、リアリスト振りに磨きを掛け過ぎて、肝心のデュエルタクティクスが数年前のままじゃ笑えないぞ…

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

(アイツが本戦シードを取っていたのは予想外だった。その所為でろくに情報が取れなかったが、俺が伏せたカードは『バーバリアン・ハウリング』と『バーバリアンの呪術』!アイツらのデッキに魔法・罠カードが入っている訳が無いから『ブラック・ホール』も『ハーピィの羽根帚』も怖くねぇ!よって俺の場のバーバリアンがこのターンに効果でいなくなる事はねぇし、攻撃して来ても弾き飛ばせる!仮にアイツが融合やシンクロ、エクシーズ召喚に手を出したとしても、どれもフィールドに2体以上モンスターがいなけりゃ使えねぇ、アイツが2体並べた瞬間に奪っちまえばこっちの物だ!そして次のターンでこの『バーバリアン・マッド・シャーマン』を出せれば俺の勝ちだ!)

 

Gen

LP 4000

手札 1(バーバリアン・マッド・シャーマン)

モンスター バーバリアン3号

      バーバリアン4号

魔法・罠カード セット(バーバリアン・ハウリング)

        セット(バーバリアンの呪術)

 

ん?何かフラグが盛大に立ったような気がしたんだが気のせいか?

 

「では行くぞ、俺のターン!ドロー!

まず、『超重武者タマ―C』を召喚!』

 

超重武者タマ―C

効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 2

攻撃力 100

 

権現坂が最初に出したモンスターは、右手に槍を持った球状の機械武者、タマ―C。

レベル2の超重武者チューナー、とこれだけでも有用ではあるのだが、

 

「タマ―Cの効果発動!

コイツは、俺のフィールドに『超重武者』以外存在せず、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、コイツとお前のモンスター1体をシンクロ素材にシンクロ召喚出来る!」

「な、何だと!?」

「俺はレベル4の、お前のフィールドのバーバリアン4号に、レベル2のタマ―Cをチューニング!雄叫び上げよ、神々しき鬼よ!見参せよ、荒波渦巻く戦場に!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル6『超重神鬼シュテンドウ―G』!」

 

超重神鬼シュテンドウ―G

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 6

守備力 2500

 

『おおっと権現坂選手!暗黒寺選手の展開を逆手に取って自らのシンクロ召喚に繋げた!これぞ権現坂道場が掲げる『不動のデュエル』の新たなる可能性、相手の素早い動きを最小限の動きで裁く合気道の如きデュエルタクティクスという事でしょう!』

 

1ターンに1度という制限こそあるが、シンクロ版『超融合』ともいうべき、相手モンスターをシンクロ素材として除去する効果を持っている。

それによるシンクロ召喚の演出と共に出現したのは、深紅の鎧に身を包み、左手に巨大な棍棒を持った機械武者、シュテンドウ―G。

タマ―Cによって暗黒寺のバーバリアンを1体除去しつつ出て来たこのシュテンドウ―Gもまた、無茶苦茶な効果を持っている、それは、

 

「シンクロ召喚したシュテンドウ―Gの効果発動!

俺の墓地に魔法・罠カードが無い状態でコイツをシンクロ召喚した時、お前の魔法・罠カードを全て破壊出来る!やれ、シュテンドウ―G!」

「な、何だと!?ぐぁっ!?」

 

そう、生きた『ハーピィの羽根帚』。

如何にもフルモンスターで使えと言わんばかりの条件こそあるが、これだけ破格な効果を持っていてレベルは6、タマ―Cのレベルが2なのでもう一方のモンスターのレベルは4、つまり下級モンスターで主力と言われるモンスターの大半はパクれるという事になる。

そう考えると、何の考えも無しにレベル4モンスターを出せないな、権現坂相手に。

しかし、破壊されたのは『バーバリアン・ハウリング』と『バーバリアンの呪術』か、権現坂がモンスターを複数並べたら呪術、1体出してそのまま攻撃させようモノならハウリング、と言う腹積もりだったようだが、これでその目論見も潰えたな。

 

「このままバトルフェイズに入る!シュテンドウ―Gでバーバリアン3号を攻撃!」

「ば、バカな、こんな、こんなバカな事があってたまるか「ダメージステップ良いか?」な、無い!」

 

此処でダメステ良いかって聞いて来たという事は…!

 

「シュテンドウ―Gがモンスターと戦闘するダメージステップ開始時、手札の『超重武者装留バスター・ガントレット』を捨てて効果発動!

シュテンドウ―Gの守備力を5000に引き上げる!

これで終わりだ、暗黒寺ゲンよ!オーガトンファー・大破(メガクラッシュ)!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

超重神鬼シュテンドウ―G 守備力 5000 VS バーバリアン3号 攻撃力 1000

 

Gen LP 4000→0 LOSE

 

WINNER Noboru

 

「ふざけんな…!

ふざけんな!こんな事がありえる筈がねぇ!そうだ、お前のカードのインチキ効果で負けたんだ!そうに決まっている!でなきゃチャンピオンたるストロング石島のデッキを持った俺が負ける筈が…!」

 

圧倒的、と言わんばかりのデュエルで勝利した権現坂だったが、その結果を認めようとせず、往生際の悪さを見せる暗黒寺、それを、

 

「な、なんだよその目は…!

何なんだよその、養豚場の豚でも見るかの様な目は!『かわいそうだけど、スーパーの精肉コーナーに並ぶ運命なんだな』と言いたげなその目は!その目をやめろぉ!」

 

権現坂は、無関心さを前面にした様な目で見るだけだった。

 

『き、決まったぁ!第8試合の勝者は、鮮やかな後攻1ターンのジャストキルを決めた、権現坂選手!対戦相手の往生際の悪さにも動じない、正に不動のデュエルを体現した、王者の風格です!』

 

------------

 

Side 権現坂

 

何とも哀れな姿だった、俺の兄弟子だった者の成れの果ては。

自分を中心に世界が動いていると勘違いし、それを否定する論調を認めようとせず、何が何でも叩き潰そうとする、それが出来る筈も無いと理解しようせずに。

デュエルモンスターズは『日進月歩』という言葉そのままに日々進化を遂げる、我ら権現坂道場も『不動のデュエル』という理念を掲げつつも、蛹が成虫へと羽化するが如く進化して来た、そんな中であの男は全く以て変わらなかった、変わろうともせず、変わりゆく周囲を否定しようと無駄にあがき続けた。

何と救い様の無い、哀れなる姿だろうか。

あそこまで堕ちてしまった姿は、デュエルの前にした、あの男を叩きなおすと言う決意を萎えさせるには十分すぎた、あの様な男は一度死んで生まれ変わりでもしない限り、立ち直る事は無いだろう。

そしてそんな男を放って置いた所で、我らには何の影響もあるまい。

とは言え、今まで心の内に引っ掛かっていた物はこれで無くなった。

俺はARC-Vのメンバーに名を連ねる者として、この世界の平和の為に、この身を戦地に投じよう!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。