【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
Side 柚子
不思議な夢を見た。
姿や声は遊矢と似ても似つかない、けど雰囲気は遊矢そっくり、そんな3人の男性が、遊矢の側でずっと一緒にいるモンスターカード『ユベル』の精霊と、其々違う姿の女性と一緒に過ごしていく一生をダイジェストにまとめた様な、そんな夢。
1人目は、クラゲみたいな茶髪、青を基調とした制服の様な服装を身に着けた小柄な男性で、側にはセミロングの金髪に抜群のプロポーションと、日本人離れした姿の女性が居る。
その2人は、デュエルアカデミア(融合次元のそれとは違うみたい)で出会い、共に過ごしていく内に互いの想いに気付き、恋人同士となった。
抜群のデュエルタクティクスで校内でも指折りの実力を誇り『アカデミアの王子』と呼ばれた男性と、同じく『アカデミアの女王』と呼ばれた女性というカップルは、周囲から「これ程お似合いの組み合わせは無い」と、その恋を祝福された。
けど、彼らが歩む道は、決して平たんでは無かった。
2人が恋仲となってから暫くたった或る日、女性の兄が突如として行方知れずとなってしまう。
2人とユベル、更には女性の兄の親友であり、男性のライバルであった、人呼んで『アカデミアの帝王』と呼ばれた存在の捜索も空しく2年が経ち、2人はアカデミアの高等部へと進学。
其処で彼らは女性の兄と再会する、敵同士として。
女性の兄を救うべく、男性はデュエル、それも敗者には死がもたらされると言われている『闇のデュエル』を挑み、激闘の末に勝利を掴んで、彼を解放する事が出来た。
その後も、アカデミアに封印されていた3体のモンスターを巡る戦い、大宇宙に存在する強大な『破滅の光』と男性の身体に宿りし『正しき闇』との戦い、カードの裏側に潜む邪悪な意志との戦い、そして未来からデュエルモンスターズを消し去るべく襲撃して来た侵略者との戦いなど、彼らの行く先々で戦乱が待ち受けていたけど、男性はその戦乱にも真っ向から立ち向かい、そして解決して行き、そんな中で女性と結婚、幸せな家庭を築き、人生を全うした。
2人目は、何と言うか、カニっぽい黒髪の男性で、側には赤みがかった髪にこれまた抜群のプロポーションの女性がいる。
その2人には、人とは違った力を持っている事、幼き頃から互いが出会うまでに数奇な運命に振り回され続けて来た事といった共通点があった。
男性は生まれたばかりの時に起こった災害、その魔の手から避ける為に、最早スラム街だと言うしかない場所に放り込まれるという不幸に見舞われながらも、生きる為にその力を振るい続けた。
女性はその力の存在が、それまで親しかった存在を突き離す要因となった事から力を嫌悪しつつも、やり場のない怒りのままに力を振るい続けた。
そんな2人はやがて大人になり、或る日行われたデュエルの大会で対峙する事となった。
女性は今まで通り怒りのままに、一方で男性はそんな女性に喝を入れるべく、互いに力を振るい、更に男性は女性の力を難なく捌いていき、力の在り方を説いて行った結果、男性は勝利、女性の頑なな心を開かせるきっかけとなった。
その後も2人やユベル、2人を取り巻く仲間達には様々な困難が待ち受けていた。
2人や仲間達は『シグナー』と呼ばれる選ばれしデュエリスト達、その運命に導かれるまま騒乱の渦に巻き込まれていったけど、彼らは全力でそれに立ち向かい、その最中に2人は想いを通じ合わせ、恋人同士となった。
5000年周期で繰り広げられるシグナーと『ダークシグナー』との宿命の戦い、破滅の運命を変える為に過去を変えようと暗躍して来た組織との戦い、そして『未来の自分』との死闘、男性は己の運命とも重大な関わりのあるそれらの戦乱に立ち向かい、解決して行った。
そして男性は女性と結婚、『未来の自分』との約束を、破滅の運命を変えると言う約束を守るべく奔走、その波乱に満ちた人生を、最後は幸せな形で人生を全うした。
3人目は、前髪にエビみたいなメッシュが入った男性で、側には横から見ると鳥みたいなシルエットの緑髪の女性(プロポーションは…うん)がいる。
その2人やユベル、彼らを取り巻く仲間達は幼馴染で、小さい頃からデュエルに明け暮れていた。
その中でも男性は抜群の実力を有していたけど、デュエルの楽しさを忘れたくないという想いから、大会に出る事、プロデュエリストを目指す事に関しては消極的だった。
だけど『かっとビング』という言葉に出会った事で少年は何事にも積極的になり、大会に出ては結果を残して行った事で周囲から『天才少年デュエリスト』と称される様になった。
けどそんな中でも、女性や仲間達との絆、デュエルの楽しさを忘れた事は一時も無く、むしろその想いは一段と強まり、大会で対峙した事を切っ掛けとして新たなる絆も生まれて行った。
その男性が或る日、とある『存在』との出会いを遂げた事で、そんな楽しい日常は変化を迎える事になる。
その存在『アストラル』との出会いの際に飛び散ってしまった、『No.』と呼ばれるカテゴリのカード達。
アストラルにとってNo.は自らの記憶の欠片、それを集めるべく男性と仲間達は力を合わせて収集にあたった。
だけどNo.は多大なる力を有しており、手にした物はその力に呑まれ、欲望のままに力を振るって行く事になるとの事、彼らの前に沢山の騒乱が待ち受けているのは火を見るより明らかだった。
時にNo.の力を狙う組織同士の戦いに巻き込まれる事もあった。
時に仲間だった存在との悲しい別れもあった。
そして最後は、アストラルが生まれ育った世界と、仲間だった存在が生まれ育った世界の、存亡の運命が天秤に掛けられ、男性は仲間だった存在との悲しいデュエルに臨まざるを得なかった。
結果として男性が勝利、仲間だった存在は、生まれ育った世界と運命を共にした。
大事な仲間を失った悲しみに暮れる男性、けどそんな男性を支えたのも、女性を始めとした仲間達だった。
女性の告白や、仲間達の励ましもあり男性は立ち直り、新たなる敵との戦いにも全力で立ち向かい、その後に女性と結婚、幸せな家庭を築いて、人生を全うした。
これ、以前遊矢が言っていた『遊矢の前世』の話にどれも似ている…
という事は、1人目の男性が『遊戯王GXの世界での遊矢』こと『遊城十代』で、2人目の男性が『遊戯王5D’sの世界での遊矢』こと『不動遊星』、3人目の男性が『遊戯王ZEXALの世界での遊矢』こと『九十九遊馬』、で、其々の側に居た女性が各世界で遊矢と恋仲を結んだ人達、って事になるわね。
何となく想像していたけど、遊矢って物凄い人生を歩んでいるわね…
「どうだったかな、遊矢のこれまでの人生は?」
「ユベル!?其処にいるのは、まさか…」
遊矢の前世での人生、そのダイジェスト映像を見ていた私の背後に突如として聞こえたユベルの声、それに驚いて振り向くと其処にはユベルの他に、さっきまで見ていたダイジェスト映像で見ていた、其々の世界での遊矢の側にいた女性たちがいた。
あ、でもこれは夢だからいてもおかしくは無いわね、つい驚いちゃったけど。
「まあ、夢だという認識で間違いは無いよ。今、現実の君は眠りについている訳だからね」
「え、ちょ、ユベル、私の考えが読めるの!?」
「やっぱりそうか。ボクの呼びかけに驚いたかと思ったら急に冷静になるもんだから、カマをかけてみたらドンピシャだったね」
うわ、何だか恥ずかしい。
「ユベル、そろそろ本題に移ったらどうなの?」
「そうね、でないと私達が何で呼び出されたか分からないわ」
「ですよね、失礼しちゃう!」
「まあまあ、ボク何だか最近空気気味だったからさ、こうして存在をアピールして行かないと読者に忘れ去られそうで…
全く、遊矢と一番長い付き合いなのはこのボクだと言うのに…」
「ちょっと、メタ発言止めなさい」
うん、それを私達に愚痴られても。
「さて、本題に入るとしよう。今日、君の夢にボク達4人が出て来たのは他でも無い。君に、遊矢の側に立つ覚悟があるのか、それをボク達とのデュエルで見せて欲しい」
ボケに突っ込まれて、気持ちを切り替えたユベルが切り出した事、それはデュエルの申し込みだった。
私の覚悟を、デュエルで…?
「柚子。まあ遊矢から聞いてはいるし、今その様をダイジェストとはいえ見ていただろうけど、遊矢は、デュエルモンスターズが大いに発展している3つの世界を渡り歩き、其々の世界で人生を全うして来た。実年齢で行ったらもう300歳を越えているだろうね。無論、其々の世界で彼は色んな出来事に直面して来た。それは楽しい事、嬉しい事、幸せな事ばかりじゃない。悲しい事、辛い事、怒りを覚える事。実に様々な出来事が、彼に降りかかって来たんだ」
「十代、いや、遊矢って呼んだ方が良いかしらね。出会った頃から彼は心の底からデュエルが大好きで、屈託のないその笑顔が、デュエルを心の底から楽しんでいるその姿が、私は大好きだったわ。それはどんな困難に直面しても、変わる事無かった」
「私が出会った頃の遊星、違ったわ、遊矢の眼には、言い知れぬ憂いがにじみ出ていた。後から聞いたけど、幼い頃にはその日その日を生き残る為に色んな事を仕出かしたそうよ。その時の彼が感じていた絶望感、無力感、並大抵の物では無かった筈、それがあの眼から感じ取れた。けど心根は真っ直ぐで、デュエルバカと言える程デュエルが好きで、何事にも一生懸命なその様に、私は心惹かれて行ったわ。その姿はずっと、私の脳裏に焼き付いている」
「遊馬、じゃなかったわ、遊矢はちっちゃい頃からデュエルが強くて、そしてデュエルを根っこから愛していた。でも時折、本当に私達と同い年なのかなって思う位、陰のある表情になって、何か思い込む所もあったわ。だけど何事にも諦めず、全力で取り組むその姿が、そんな一生懸命な遊矢が好き!」
「ボクに明日香、アキに小鳥、そして柚子、君達が遊矢に抱いた第一印象は皆違う。デュエルモンスターズを、カード達を心から愛しているという根っここそ変わっていないけどね。それだけの人生を遊矢は経験して来たし、そんな中で少しずつだけど変化している所があった」
ユベルの言う通り、私が何時も見ている遊矢の姿と、明日香さん、アキさん、そして小鳥さん、3人が話してくれた遊矢の印象は、少し違っている。
遊矢が歩んで来た300年余りの人生は、確実に遊矢という存在を変化させている。
ましてや、
「それに…
遊星として『遊戯王5D’sの世界』に転生した遊矢は、その余りにも壮絶な幼少期を過ごさなければならなかった事で、遊矢がどういう存在だったかを揺るがしかねない位に荒んでしまったんだ。ボクは、遊矢をそんな状態にしてしまったのはボクの所為だと、自分を責めたよ。あんな筈じゃ無かったんだ。ボクは、ボクはそんな遊矢が見たくて遊矢を転生して欲しいと、神様に頼んだ訳じゃ無かったのに…!」
生きる為だけにアンティデュエルを繰り返し、生きる為だけに犯罪に手を染めると言う、想像も付かない位荒れた生活、それは例え、その時点で既に1世紀もの人生を歩んで来た遊矢であっても、自分を見失ってしまう程のインパクトがあったに違いない。
でもユベル、それはユベルの所為じゃないわ、誰の所為でも無い、ただ、運命の巡り合わせが悪かったとしか言いようが無いわ。
「そんな遊矢の心には、どんな事があろうと揺るがぬ意志を抱いてはいるけど、同時に物凄く深い闇が、奥底まで根を張っている。そんな遊矢の側に立つとなれば、支えるとなれば、それは物凄く大変な事になるよ。ハッキリ言って、並大抵の覚悟では無理だ」
それは、周りの皆と比べて遊矢と過ごした時が短い私にも十分わかっている。
私は遊矢の事を、遊矢がどんな人生を歩んで来たのかを、遊矢の天才的なデュエルタクティクスはどうやって身について来たのかを、最近まで殆ど知らなかった。
遊矢が融合、シンクロ、エクシーズという、舞網市は勿論この世界の何処にもほぼ出回っていなかったモンスターカード達やその関連カード達を大量に持っていた事、ストロング石島とのデュエルでペンデュラムモンスターを手にしてあっさり使いこなした事、それに疑問を覚えはしたけど大して気にする事無く教わり、そして使って来た。
遊矢の事を、知ろうともしなかったと言われても文句は言えない。
けど、けど!
「私は、デュエルを心から愛し、心から楽しみ、心から熱くなれる遊矢が好き!誰よりも一生懸命で、誰よりもひたむきな彼が好き!そんな遊矢が迷った時は支えになりたい!遊矢が落ち込んだ時は側にいたい!その為の、その為の覚悟は出来ています!」
その覚悟があるからこそ、遊矢の、一見するとアニメや漫画の話だと突っ込みそうな身の上話を聞いても納得出来たし、それを受け入れて尚、遊矢へのこの気持ちは揺るがなかった!
今も、この気持ちに嘘は無い!
「良い眼だよ。明日香も、アキも、小鳥もそんな眼をしていた。遊矢が好きなら、そうでなくっちゃ!なら、その覚悟がある前提で聞くよ。
おい、デュエルしろよ」
「ええ、受けて立つわ!」